2018年9月1日で関東大震災(1923年)から95年目の「防災の日」を迎えました。かつて「関東大震災69年周期説」という説が唱えられたことがあります。何が根拠だったのか、そしてなぜ消えたのでしょうか?
東京大学地震研究所の所長が提唱
「関東大震災69年周期説」を唱えたのは、東京大学地震研究所の川角廣(かわすみ・ひろし、1904〜72年)所長です。関東大震災から69年後といえば1992年。誤差は前後13年とされるので、1979〜2005年の間に75%の確率で関東大震災級の大地震が起こるというのです。
なにしろ東京大学地震研究所の所長が提唱したのですから、多くの人は信じました。東京都は1970年代、大地震の被害が江東・墨田・荒川の下町3区に集中すると予測を立てて防災対策をこれらの地区に集中。江東区白髭東地区の再開発では、都営集合住宅を屏風のように配置して、屏風の内側の防災拠点となる広場を火災から守るという計画を完成させました。
2種類の地震を混同していた
しかし、関東大震災は起きませんでした。69年周期説の誤りを元東京大学地震研究所の都司嘉宣さんが解説します。
「川角さんは、神奈川県鎌倉市で9世紀以降に検知した震度5以上の地震年表をつくり、確率論の手法を使って69±13年の周期性があるとしたのです。しかし、南関東で周期的に発生する地震は2種類あるのです。1つは70〜80年に1回発生するM7クラスのプレート内地震、もう1つは約200年に1回発生するM8クラスのプレート間地震です。川角さんは、この2つを混同していたのです」
M7クラスの地震に警戒を
約200年間隔で起こるプレート間地震は、相模トラフで発生しています。
最近では関東大震災(1923年)、その前は元禄関東地震(1703年)、さらにさかのぼると明応関東地震(1495年)、永仁関東地震(1293年)と約200年の周期で発生しています。すると次の関東大震災は2130年前後ということになります。
「確かに次の巨大地震は100年以上先になるでしょうが、プレート内地震は70〜80年周期とされています。M7クラスの地震はいつ起こってもおかしくないので油断はできません」(都司さん)
関東大震災69年周期説は否定されましたが、大地震は関東大震災だけではありません。いざというときの備えは怠るわけにはいきません。