モビリティカテゴリーチェンジャー略して「モビチェン」
あるときは電動バイク、あるときは自転車、そのような乗りものの「道路交通法上の扱い」を一瞬で変える装置が、間もなく登場する見込みです。
電動バイクや電動キックボードを製造販売するglafit(和歌山市)が、自転車タイプのペダル付き電動バイクに取り付け可能な「モビチェン(モビリティカテゴリーチェンジャー)」なる装置を、5月19日(水)、20日(木)に東京ドームプリズムホールで開催中の「バイシクルシティエキスポ」(ライジング出版主催)にて出展しています。
原付のナンバープレート(左下)をワンタッチ動作で隠す「モビチェン」(中島洋平撮影)。
モビチェンは、原付として登録される同社のペダル付き電動バイク「GFR」シリーズに取り付けるもので、かんたんにいうと「ナンバープレートを隠す」装置です。
従来、GFRシリーズは電源OFFの自転車モードであったとしても、道交法上は原付のため、運転免許を携帯し、ヘルメット着用で車道を走行する必要がありました。モビチェンでナンバープレートを隠すことにより、道交法上も自転車として認められ、自転車通行帯や自転車が走行可能な歩道を走ることもできるようになるといいます。
「自転車モードで、車道から歩道側へちょっと逃れたいという場合にも、原付扱いなのでそれができない、といったユーザーの声を受けたものです。国の制度を活用して警察庁から認可を得ました」(glafit)
これはあくまで、glafitのGFRシリーズ、最新モデル「GFR-02」向けとして発売されます。2020年11月の同モデル発表時にモビチェンの試作版も披露されましたが、今回、その量産版ができたというわけです。
もちろん、このような装置は日本初のもの。モビチェンの発売と同時に警察庁からも、モビチェンを付けたGFR-02の取り扱いについて、全国の都道府県警察へ通達される見込みだそうです。
つまり、当面は同社の同モデルのみの特例的な取り扱いになるわけですが、今後はどうなるのでしょうか。
「いまは自転車ですよ」対外的に示すための「モビチェン」
バイシクルシティエキスポに出展していた他の電動モビリティのメーカーからも、いずれは同様の機構で、走行できる場所を拡げたいといった声が聞かれました。
glafit以外のメーカーがそれを実現する場合、当面は、個別に警察と掛け合う必要が生じますが、glafitのモビチェンは、その先駆例として今後のモビリティの在り方に一石を投じそうです。
というのも、警察庁の有識者委員会が2021年4月に今後のモビリティに関する法整備の在り方について中間報告を行い、おおよそ走行速度と大きさでモビリティごとの法律の枠組みを区分する方針を打ち出しています。そのなかで、自転車にもなるペダル付き電動バイクのような「状態が変化するモビリティ」の扱いについては、保留になっているからです。
有識者からは、「歩道において徐行速度を厳守させるようなシステムやメカニズム等が必要」「どのモードで走行しているのかが、周囲の人にも明らかに分からなければ非常に危険」といった意見が出ており、今回のモビチェンは、「いまは原付ではなく自転車」であることを、対外的に示す目的があるといえます。
これに応える機構として、モビチェンは、停止し電源OFFの状態でしか、ナンバープレートを隠せないようになっています。
「モビチェン」対応のglafit「GFR-02」(中島洋平撮影)。
最新型のGFR-02は、これに対応した電気配線になっていますが、旧式のGFR-01については「作動はバイク本体の電源OFF時のみ」という機構になっていないことから、同機種へのモビチェンの対応には少し時間がかかるということです。glafitはGFR-02対応のモビチェンを、この夏にも販売する予定です。
ちなみに、状態が変化するモビリティとは、単に電動か自転車かというだけではありません。たとえば電動キックボードシェアのLUUPは、乗る人の年齢を自動判別して電動キックボードからサドルが出てきたり、最高速度が歩道を走れる6km/h以下になったりと、1台で形も性能も変化するモビリティを企画しています。
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