中島みゆきの名曲「糸」をモチーフに、運命に引き離された男女が再びめぐり逢うまでを描いたラブストーリー「糸」が8月21日(金)に公開。13歳の時に出会った葵(小松菜奈)が忘れられないまま、地元・北海道で生きていく主人公・高橋漣を菅田将暉が演じている。作品について、自分のターニングポイント、縁を感じたことについて語ってもらった。
沖縄とシンガポールに行きたいと思いました(笑)
――映画を見た感想を教えてください。
漣と葵の物語が絡み合って一つになっている作品なので、完成するまで知らないシーンが多かったです。特に葵が海外で必死に働いている姿はぐっとくるモノがあり、普通に泣いちゃいました。漣は北海道という同じ場所で淡々と変わらない日々を送っていたので、そのギャップがすごくて。2人の人生がきちんと描かれていたので物語として濃いなと感じました。
――今回は、北海道、東京、沖縄、シンガポールといった美しい土地の風景も切ない物語を演出していました。
映画を見て、沖縄とシンガポールに行きたいと思いました。僕はずーっと北海道でしたから(笑)。それにしても風景にはいろいろ助けられました。それは葵のシーンも同じで。葵がシンガポールでカツ丼食べて泣くシーンなんて、海外で働いている人の孤独が全て詰まっていましたから。ちなみに小松さんがチキンライスにハマったという話を聞いてうらやましくなりました。何かいいですよね。ちなみに僕らはみんなでジンギスカンを食べに行きました。榮倉さんは食事を節制していたのですが、そのシーンが撮り終えたらすぐに行って。すごく美味しかったです。
想像に想像を重ねなければいけなかった
――平成元年生まれの漣と葵は、13歳で出会い、21歳、30歳で偶然再会します。演じていて難しかった部分はありましたか?
ここまで長いスパンの人生を丁寧に演じるのは初めてでした。今の時代、特殊メークもあるのでいろいろできますが、それでも役者にも限界があると感じました。特に男性にとっての20代の10年はそこまで外見に変化がないんですよ。周りの環境や出来事でその人物の成長を表現することはできるのですが、漣が地元で変わらずの生活をしているのでそこも変化がなく…。
葵を見ていて、20代の大人になっていく感じは女性にしか出せない姿なのかもと感じました。女性がメークや衣装でどんどん大人になっていくのは本当にすごいですから。だからこそ内面を表現することを意識しました。
――漣は香(榮倉奈々)と結婚して父親にもなりました。
榮倉さんとのシーンは難しいことも多かったです。中でも娘と妻の何気ない楽しげな姿を見て涙ぐむシーンは、結構試練だと感じました。本格的な父親役は初めて、ということもありましたし、想像に想像を重ねなければいけなかったので。幸せな姿を見て泣くというのは究極ですよ。
――香が歌う中島みゆきさんの「ファイト!」も印象的だったと語っていらっしゃいました。
すごく個人的で瞬間的な歌詞の曲なんですが、それが登場人物の感情や生活に集約されていると感じました。この作品にぴったりだなって。ちなみに香と幼なじみの竹原(成田凌)と利子(二階堂ふみ)の4人でカラオケに行くシーンがあるのですが、それがすごく好きです。宿泊先のホテルにカラオケがあったのですが、それぞれがずっと練習をしていて、なんか見ていてほのぼのしました。
年を重ねてあの時の出会いは縁だったと気付くことばかり
――人生の中のターニングポイントがいくつも描かれた作品でしたが、ご自身のターニングポイントを教えてください。
映画「共喰い」(2013年)です。青山真治監督にすごくしごかれたのですが、終わった後、「あと5本は主演作を撮りたい」と言ってくださって。まだ叶っていないので早く一緒にやりたいです。ちなみに僕の舞台にも来てくださって…。幕間に楽屋に戻ったら差し入れが置いてあったんですよ。もうその時は、「見られている~」と感じてガチガチになっちゃいましたね(笑)。今でも恩師です。一緒に作品を作ることがあったら、絶対、成長した姿を見せたいと思っています
――人との縁も描かれていました。最近、縁を感じることはありますか?
10年くらいこの仕事をしていると、2回目3回目と仕事をする人が増えてきました。昨年、ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」(2019年日本テレビ系)をやらせていただきましたが、これも7年くらい前に出会ったプロデューサーといつか一緒に作品をやりたいと言っていたのが叶ったからなんです。当時はできなかったことがお互いに頑張ってきて、ある程度自由ができるようになった今だから形になったというか。そういうことが本当に増えました。年を重ねてあの時の出会いは縁だったと気付くことばかりです。
――今回共演した小松さんとも今回で3度目の共演になりました。
そうなんです。こうやって一緒に共演できたのもまたひとつの縁。面白いなと感じました。そんな運命の面白さや人の強さが描かれている作品ですので、ぜひ劇場で楽しんでいただきたいです。
映画「糸」あらすじ
花火大会で出会い、恋に落ちた漣と葵。ある日、葵が養父からの虐待されていると知った漣は、葵と共に逃げることを決意するがすぐに警察に見つかり、2人は離れ離れに。8年後、北海道のチーズ工房で働いていた漣(菅田)は、東京で行われた友人の結婚式で葵(小松)と再会する。
すだ・まさき=1993年2月21日生まれ、大阪府出身。A型。2021年公開の映画「花束みたいな恋をした」「キネマの神様」などを控えている(ザテレビジョン・取材・文=玉置晴子)