月刊ザテレビジョンで連載中の「草なぎ剛のお気楽大好き!」。今回のテーマは、公演中の舞台「アルトゥロ・ウイの興隆」(2月2日[日]まで)について。主人公・ウイの演じ方や、稽古期間、公演期間の過ごし方などについてたっぷりと話してもらいました。
僕にしかできないウイになっていると思う(草なぎ)
舞台「アルトゥロ・ウイの興隆」の幕が開き数日がたちました。お客さんが入るとみんな気合が違うね。演出の白井晃さんの熱も上がり、毎日ダメ出しが飛ぶ。2日目も本番前に稽古、3日目は終演後に白井さんが僕の楽屋に来て話し込んでるうちに劇場の閉館時間を15分超えちゃって、劇場の人に白井さん、マジで怒られてた(笑)。この感じ、千秋楽まで続くな。
舞台「バリーターク」(2018年)のときなんて、千秋楽終わってもダメ出ししてた人だから。日々変化していく。舞台って面白いなと思う。
今作はヒトラーが上り詰めていく様子を、僕が演じるシカゴのギャング団のボス、アルトゥロ・ウイが手段を選ばずにのし上がっていく姿を通して描いたもの。
ジェームス・ブラウンの歌と踊りもあって、聴衆を引きつける演説もあって、やることがいっぱいでとにかく疲れる(苦笑)。体力的には20代とかでやる芝居でしょう。それこそ僕が舞台「蒲田行進曲」(1999年ほか)をやってたころとか。
でも、当時ではこの芝居はできないんだよ。あの若さでは。30年近くこの世界で積み重ねてきた今じゃないと。いや、今だってできてるかどうか。だからフルスロットルで1回1回持ってる力を使い切るだけ。自分で言うのもなんだけど、新境地切り開いてるなって感じてる。
踊るシーンで振り付けが決まってるのは女の子たちと踊るところだけ。あとはウイとして自由にやってくれと言われてます。心の中で高揚してる感じが踊りに出ればいいと。「偉い人たちをどんどん取り込んで、めちゃくちゃ調子に乗ってる感じで」みたいな言葉が白井さんからあるので、自分の中でイメージしてやってる。
やっぱり熱量がないとつまんないし、ちょっと暴れた感じに近いこともある。そのときのソウルを表現するのはなかなか難しいけど、曲の尺だけ覚えておいて舞台に立つと、今までやってきたコンサートとかの経験があるから、パフォーマンスとして体が覚えてる。僕にしかできないウイになっていると思う。
今から感じてるのは千秋楽が終わったらめちゃめちゃ寂しくなるだろうな(草なぎ)
そんなわけで、ここ数カ月は基本、舞台モード。横浜の稽古場に通うのも電車で。役者さんってみんな自分で通ってるじゃないですか。気分を変えるのは自分自身も好きだし、舞台入ってるんだ!というマインドになるので半分くらい電車通勤させてもらってました。
もちろん本番中の今は万全にしてもらってるので。舞台が終わったらマッサージで全身ケア、ノドもいたわってる。食べ物は焼き鳥がいい。ぼんじり最高。お酒は飲まない。飲みたくないんだよね。
今は全力で“泳いでいる最中”なので、最終的に自分がどこにたどり着くか分からないけど、今から感じてるのは千秋楽が終わったらめちゃめちゃ寂しくなるだろうなということ。やり切った感というか、喪失感はすごいあると思う。
それだけ苦しいし、楽しい。僕の集大成であり、僕の人生が全て詰まった舞台。最後まで出し惜しみせず走り続けたいと思います。(ザテレビジョン)