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最新鋭ステルス戦闘機F35Bの配備先候補は宮崎県新田原基地。その地理的・戦略的狙いを元空将補が解説する

2021年4月15日 11:50 週プレNEWS

今月6日、岸信夫防衛大臣は、2023年度までに18機、最終的は42機が航空自衛隊に導入予定の最新鋭ステルス戦闘機F35Bの配備先として、「宮崎県の新田原(にゅうたばる)基地も有力な候補地であることは間違いない」と記者団に説明した。
F35Bは、2018年、米軍によるタリバン空爆で初めて実戦投入されたロッキード・マーティン社製のステルス戦闘機。昨年から航空自衛隊三沢基地に配備されているF35Aとの違いは、F35Aが通常離着陸タイプなのに対し、F35Bは短距離滑走の離陸、および垂直離着陸が可能なSTOVL(ストーブル)機であること。これは、F35Bが米海兵隊ハリアーⅡSTOVL機の後継機として開発されたからだ。
空自では2024年の運用開始を目指しており、将来的に空母化する海上自衛隊いずも型護衛艦との連携が期待されている。
では、その最新鋭のSTOVL機を新田原基地に配備する狙いは何か? 現在、F35Aを運用する三沢基地所属の第302飛行隊がF4を飛ばしていた時の飛行隊長・杉山政樹元空将補が、こう解説する。
「F35はF16の後継機で、対地攻撃用の航空機として作られた飛行機です。今回、新田原基地に配備することを公表した最大の狙いは、中国へのけん制と言えるでしょう。
東シナ海で勢力を強める中国によって尖閣、先島諸島が占領された場合、日米共同で奪還作戦を行ないます。その際、F35Bは米海軍のワスプ級強襲揚陸艦に20機搭載。そして今後は海自の護衛艦かが、いずもにもそれぞれ10機ずつ、計20機搭載が加わります。
洋上から出撃できるSTOVL機F35Bの存在は、中国にとって大きな脅威です。今回の配備で、日本が本気になって尖閣、先島諸島を守りにきたということが伝わったので、中国に対し大きな抑止力になります」

さらに、東シナ海に近い九州、中国地方のなかから、新田原基地が選ばれた立地的理由についても杉山氏が続ける。
「新田原基地を選んだ最大の理由は、その立地にあると思います。滑走路の全長は2700mあり、超大型輸送機C5が運用可能。またここは標高が79mあり、台風、津波などに対して強い。
福岡県にある築城基地は、滑走路の全長は2400mありますが、海抜は17mしかない。また、山口県にある岩国基地は、海自基地である上に、空母にF35Bが離発着することを考えると、瀬戸内海は狭いのではないでしょうか。
その点、新田原基地は太平洋に面していて、呉のかが、横須賀のいずも、どちらの護衛艦にも容易にF35Bが載ることができます。
さらに、ナイトランディング(夜間着陸)の訓練をしなければならない時、それが将来できる馬毛島(鹿児島県大隅諸島)に近い点が選定理由と推定します」

2018年に沖縄沖でワスプ級強襲揚陸艦におけるF35Bの運用を取材したフォトジャーナリストの柿谷哲也氏が、F35Bの性能を解説する。
「まず、その短距離滑走性能ですが、ワスプ級強襲揚陸艦の艦首から106mの位置から発艦しました。これは、おおすみ型輸送艦からでも発艦できる距離です。
またF35Bは自動制御可能で、同じ垂直離着陸機であるハリアーで必要だったヘリコプター操縦訓練が要らなくなりました。これでパイロットはFA18から容易に機種変更できます。
機能的に重要なのは、機首に備わるEOTSセンサー。これで地上の敵、海上の敵艦艇の状況を撮影して、地上に展開する海兵隊員の簡易デバイスにリアルタイムで提供することが可能です。
偵察分遣隊の将校は、『上空のF35Bからリアルタイムで送られてくる敵情報は、我々にとって生命線だ』と言っていました。この情報が手に入る前線の兵士は強いです」

柿谷氏は、かつて環太平洋合同演習リムパックで、海自護衛艦いせを視察する中国軍関係者から「これにF35Bを載せるのか?」と、何度もしつこく聞かれたと言う。
「中国空母に搭載のJ15戦闘機は非ステルスで、F35Bとの空戦は見えない相手と戦うことになり、厄介な存在であると認識していたはずです。空母かがに搭載された空自F35Bは、中国空母の艦隊行動をある程度、抑止できます」(柿谷氏)
さらにF35Bを空母に搭載するだけでなく、別の使い方も空自は考えていると、杉山元空将補は推測する。

「沖縄伊江島の米軍訓練施設の空撮写真を見ると、空母と同じ大きさの滑走路の近くに4ヶ所、数十m四方の垂直離着陸用のパレット(コンクリートの上に置いた鉄板)が見えます。これはF35Bの離着陸用でしょう。
これと同じパレットを南西諸島、先島諸島の民間空港の滑走路の近くに作ります。そしてF35Bを各島に散らばらせて、最後の手段としてそれぞれが独断で戦う。これは中国に対して極めて有効な戦術となります。
たとえ中国が先制攻撃で膨大な数の地対地ミサイルを空自の各飛行場に撃ち込んだとしても、滑走路の横の数十m四方の複数あるパレットまで破壊するのは、まず出来ないからね」
配備するだけで中国への抑止力となり、奇襲攻撃を受けたとしても最後の切り札になる――それがF35Bの役割だ。
写真/柿谷哲也 取材・構成/小峯隆生

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cat_oa-shuprenews_issue_b8b186b70d57 oa-shuprenews_0_e73bee30afa4_セルジオ越後が考える五輪代表のオーバーエイジ枠「本気でメダル獲得を狙うなら、OA枠3人のフル活用は絶対条件だ」 e73bee30afa4 e73bee30afa4 セルジオ越後が考える五輪代表のオーバーエイジ枠「本気でメダル獲得を狙うなら、OA枠3人のフル活用は絶対条件だ」 oa-shuprenews

セルジオ越後が考える五輪代表のオーバーエイジ枠「本気でメダル獲得を狙うなら、OA枠3人のフル活用は絶対条件だ」

2021年4月15日 06:10 週プレNEWS

今回は東京五輪が開催される前提で、五輪代表(U-24代表)のオーバーエイジ(OA)枠3人について考えてみたい。
五輪代表は先月、強豪アルゼンチンとの2連戦で1勝1敗。久しぶりの強化試合だったけど、内容は悪くなかった。
特に2戦目でボランチに入った田中 碧は、所属の川崎でプレーしているのと同じような感じで攻守にわたって存在感を発揮。ほかにもヘディングで2点を決めた板倉など選手たちがよくアピールしていた。
昨年1月のU-23アジア選手権でのグループリーグ敗退をはじめ、これまでこの世代の強化は順調とはいえなかっただけに、森保監督もホッとしただろう。
でも、だからといって、五輪本番でも好結果が期待できるかといえば、そう甘くはない。強化試合はあくまで練習試合。過大な評価は禁物だ。
その意味でも、五輪本番でカギを握るのはOA枠の3人。フル活用してチームを底上げする必要がある。日本は過去の五輪でOA枠をあまり有効に使えてこなかった。
3人の枠を使い切らないことのほうが多く、前回のリオ五輪でこそ興梠、塩谷、藤春と3人招集したものの、いずれもA代表のレギュラークラスではなかった。本気でメダルを狙うなら、今の五輪代表には少ないA代表のレギュラークラス3人が理想だ。
一部報道では吉田、遠藤、大迫の名前が取り沙汰(ざた)されている。吉田については僕も大賛成。A代表でも冨安と不動のコンビを組み、安定感抜群。リーダーシップもあるし、2008年北京、OAで12年ロンドンと五輪の経験も豊富だ。そんな彼が入るのであれば、これほど心強いことはない。
遠藤も今季のドイツでの充実ぶり、そして、最近のA代表での自信にあふれたプレーを見れば納得。同じボランチのポジションでは一時、柴崎をOAに推す声が多かったけど、ここにきて完全に追い抜いた格好だ。
五輪代表のボランチには前述の田中 碧、板倉、さらにこの世代でずっと主将を務めてきた中山もいるけど、遠藤が入れば彼が軸になる。相手や試合展開によって、攻めたいときは田中 碧、守りたいときは板倉とコンビを組む選手を代えればいい。中山も人材の手薄な左サイドバックに回せる。
強敵がそろう五輪本番では対戦相手に押し込まれる時間帯も増える。でも、最終ライン中央に吉田、冨安のコンビがいて、ボランチに遠藤が入れば、守備はある程度計算が立つ。田中 碧や板倉も充実しているし、A代表と比べても遜色(そんしょく)のないレベルだと思う。
問題は攻撃陣だ。五輪代表のワントップには絶対的な存在がいない。これまでの森保監督のA代表での采配を見れば、大迫への信頼は厚く、やはり有力なOA候補なのだろう。ただ、彼は今季、ドイツでまったく結果を出せていない。そこは心配だね。
結局のところ、攻撃陣は久保や堂安、三笘など五輪世代の選手も含めて、本番メンバーの登録直前まで各選手の調子を見るしかない。場合によっては、OA枠3人を守備の選手で使い切ることもアリ。右サイドバックの山根などは勢いがあって面白い存在だね。
いずれにしても、メダル獲得にはOA枠3人の活用は絶対条件。コロナの影響もあり、海外組の招集は過去の大会以上に困難になるかもしれないけど、せっかくの地元開催だし、日本サッカー協会の頑張りどころだ。
構成/渡辺達也

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cat_oa-shuprenews_issue_b8b186b70d57 oa-shuprenews_0_3d2468ccad78_ドイツの「岩石蓄電」や日本の「空気蓄電」など"原始力"蓄電は脱炭素社会の切り札になるか? 3d2468ccad78 3d2468ccad78 ドイツの「岩石蓄電」や日本の「空気蓄電」など"原始力"蓄電は脱炭素社会の切り札になるか? oa-shuprenews

ドイツの「岩石蓄電」や日本の「空気蓄電」など"原始力"蓄電は脱炭素社会の切り札になるか?

2021年4月15日 06:00 週プレNEWS


菅首相がカーボンニュートラルを宣言し、2050年までに再生可能エネルギーの比率を、全体の5~6割にまで引き上げることを目指す日本。ただし太陽光や風力は、天候や季節に左右され、需要に合わせて発電量を調整することは難しい。
しかし今、そんな再エネ最大の弱点を吹き飛ばす、どこか"原始的"でユニークな蓄電システムが国内外で次々と生まれている!
■熱した岩石で蓄電する「新石器時代」が到来?写真はドイツ・ハンブルク郊外にある大規模な施設で、巨大な箱形のコンクリートの建物にいくつもの配管がつながれていて、一見すると何かの工場のようだ。
だがよく見ると、壁には大きなマンモスのイラストと共に、英語で「新たな石器時代へようこそ」という文字が書かれている。
実はこれ、再生可能エネルギー関連企業のシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー社が建設した「エレクトリック・サーマル・エナジー・ストレージ(ETES)」と呼ばれる、熱エネルギーを貯蔵するための実証実験施設だ。
ETESのメカニズムを解説すると、分厚いコンクリート製の建物の中には1000tという大量の火山岩が詰まっており、そこに風力発電などによる電力で作った熱風を流し込み、岩石を600℃以上まで熱してエネルギーをためる。そして、その岩石の熱で水蒸気を発生させタービンを回し、発電することが可能だ。

わかりやすくたとえるなら、石焼き芋の石や、サウナで使われるサウナストーンを思い浮かべてほしい。要するに、岩石に熱を蓄えることでエネルギーを貯蔵し、その熱を再び電気に変えて利用することもできる、いわば「岩石蓄電」システムなのだ。
ちなみに、この実験施設の発電能力は公称出力が30MW(メガワット)としている。また1000tの岩石にためられるエネルギーの総量は最大130MWhで、同社は近い将来、これをGWh(ギガワット)規模に大型化して商業化を目指すという。
このシステムのもうひとつの特長は、ためたエネルギーを電気だけでなく、熱としても利用できる点だ。エネルギーの変換効率は、出力を電気としてのみ使う場合には45%程度とそれほど高くないが、熱や蒸気などの形でのエネルギー利用も組み合わせると、変換効率は90%を超えるという。
それに、リチウムイオン電池のように高価で希少な材料(レアメタルなど)は不要で、ほぼ既存の技術を組み合わせただけのシステムなので安全性、信頼性が高く、低コストなのも「岩石蓄電」の大きな魅力だ。そのため、日本でも昨年10月、環境省が「岩石発電」の検証事業に乗り出す方針を明らかにしている。
■再エネの弱点を補う大規模な蓄電技術「蓄電デバイス」といえば、一般にはリチウムイオンや、将来の実用化が期待される全固体電池のような、最新の二次電池(繰り返し使える電池)を思い浮かべる人が多いかもしれない。
だが今、そうした蓄電池の技術ではなく、「岩石蓄電」のような「電池に依存しないユニークな蓄電技術」が注目を集めている。その理由は、地球温暖化対策で将来的な「脱炭素社会」の実現が求められるなか、太陽光や風力といった再生可能エネルギー(再エネ)の利用を拡大するためには、低コストで安全な蓄電技術の開発が欠かせないからだ。
昨年10月、菅首相は2050年までに日本の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル宣言」を打ち出したが、太陽光、風力といった再エネを利用する上で大きな課題となっているのが、日照時間や風速などの気象条件に大きく左右される「出力変化」の問題だ。
例えば太陽光なら夜間は発電できないし、日中も天候や季節によって発電効率は変化する。一方、風力には昼夜の区別はないが、出力は文字どおりの「風任せ」で、こちらも電力の需要に合わせて発電量を調節することは難しい。
こうした弱点を抱える再エネを今よりさらに拡大していくには、発電量の多いときに余った電気(余剰電力)を蓄えておき、それを電力が足りないときに利用することで、出力変化の波を埋めることが求められる(図表③)。そのカギとなるのが「大規模な蓄電デバイス」なのだ。

2019年度の電源構成では、再エネの比率が18%(水力含む)と、欧州各国に比べて大きく立ち遅れている日本だが、経済産業省は2050年までに再エネの比率を5割から6割に引き上げるという目標を掲げている。

「再エネの比率が高まれば、電力供給を安定させるためのエネルギー貯蔵に求められる規模も大きくなり、これを既存の揚水発電や蓄電池の技術だけで賄うのは困難です。そのため、大規模なエネルギー貯蔵が可能で、かつ低コストなシステムが必要になります」
そう語るのは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)スマートコミュニティ部の楠瀬暢彦(くすのせ・のぶひこ)統括研究員だ。
では今、「電池を使わないエネルギー貯蔵」には、いったいどんな方法があるのか? 冒頭の「岩石蓄電」のほかに、国内外のユニークな取り組みを見ていこう。
■巨大クレーンを使った位置エネルギー蓄電2番目に登場するのは、エナジー・ボールト社がスイスで実証実験を行なっている「クレーン蓄電」だ。
こちらも再エネの余剰電力を使い、クレーンで重さ35tの巨大なブロックを積み上げておき、電気が必要なときには、ブロックが重力で下がる力を利用してクレーンについた発電機を回すという、原理としては極めてシンプルなアイデア。

「以前から山間部などで使われる揚水発電と同じ、位置エネルギーによるエネルギー貯蔵ですが、クレーンなら平地でも建設できますし、エネルギーの変換効率も80%近くが期待できます。
また、ブロックは製造時や輸送時に二酸化炭素を発生するコンクリート製ではなく、現地の土を使って製造できるシステムも併せて開発しています」
とエナジー・ボールト社は説明する。
同社の制作したCGを見ると、巨大なクレーンの周りをぐるりと取り囲むように、ビッシリとバラストのブロックが積み上げられており、その姿はまるで旧約聖書に出てくる「バベルの塔」か、巨人が積み上げた「ジェンガ」のようだ。
ちなみにブロックの上げ下げはコンピューター制御で完全に自動化されており耐震性も同じ高さのビルと同じレベルの基準を満たしているということだが、地震大国の日本で導入するのはちょっと難しいのかも(汗)。
■基本原理はゴム風船? 圧縮空気の圧力で蓄電最後に、日本の取り組みを見ていこう。2017年、NEDOのプロジェクトで早稲田大学やエネルギー総合工学研究所、神戸製鋼所と共に、静岡県河津町(かわづちょう)で実証実験を行なっていたのが「圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)システム」だ。
これは風力発電の電力を使ってコンプレッサーで空気を圧縮し、高圧の空気をタンクに貯蔵する仕組みで、電力が必要なときにはタンクから圧縮空気を放出し、一気に膨張する空気の力で発電機を回して発電することができる。
こちらも身近な例に置き換えるなら、ゴム風船に思いっきり息を吹き込んで膨らませ、風船が縮むときに噴き出す空気で風車を回すようなイメージだ。ここまで岩石、ブロック、空気ときて、いずれの蓄電デバイスも、どこか"原始的"なのが興味深い。
河津町での実証実験は風力発電と組み合わせた形で行ない、1000kWの最大出力を実現した。また空気を圧縮する際に発生する熱を回収し、発電時にはその熱を使って空気を温めることで、エネルギーの変換効率を高めているという。
ただし、今回の施設では風力発電の出力変動を緩和する機能検証が目的で、タンクの容量や使用できる圧力が限られており、実際に圧縮した空気で発電可能な時間は最長で30分程度ということなので、実用化のためにはさらに規模を大きくすることが必要になりそうだ。

前出のNEDO楠瀬氏が語る。
「CAESは高度な技術に基づいているので"原始力"とは呼んでほしくないのですが、この圧縮空気を使ったエネルギー貯蔵の大きなメリットは、低コストということです。
再エネの利用拡大のためのエネルギー貯蔵は、日本で古くから使われている揚水発電や各種の蓄電池以外にもいくつもの方法があります。例えば再エネの電気で水素を生成し、水素の形でエネルギーを貯蔵し、活用する技術も大きく期待されています。
ただ、ひと言で再エネの出力変化といっても、時間単位の変化から季節間の差までさまざまですから、蓄電デバイスにもそれらに適した多様な技術が求められます。 
私たちが2017年に実証実験を行なったCAESはそうした技術のひとつとして、大きな可能性があると考えています」
CAESの技術開発を担当した、神戸製鋼所の機械事業部門 開発センター開発企画室の猿田浩樹室長は、海外市場への技術輸出にも期待を寄せる。
「今回は地上の施設で、使用できるタンクの規模も限られていましたが、欧州や北米には岩塩ドームと呼ばれる岩塩の採掘によってできた巨大な地下空間が数多くあるため、そうした空間を圧縮空気の貯蔵タンク代わりに利用すれば、大規模なエネルギー貯蔵が可能になると考えています」
ちなみに岩塩ドームのない日本では、鉱山跡などの地下空間を補強して、圧縮空気の貯蔵に利用する方法も検討されているという。
岩石、クレーン、空気以外にも、コマのように回転する円盤にエネルギーをためて活用する「フライホイール蓄電」など、電池以外の技術によるシンプルでユニークな蓄電技術のアイデアや取り組みが、世界にはまだある。
もちろん、そのすべてが今すぐ実用化できるわけではないし、日本の再エネ利用拡大に直接役立つとは限らないが、既成概念にとらわれない自由で個性的な挑戦のなかから「脱炭素社会」への道を切り開くイノベーションが生まれるに違いない。
深刻な被害をもたらした3・11の原発事故から10年を経てもなお、日本で再エネへのシフトが進まないなか、政府からは「脱炭素社会の実現には原子力発電が欠かせない」といった声も聞こえてくる。
だが、環境に配慮した脱炭素社会は、できればユニークな"原始力"蓄電のフル活用で実現してはどうですか?
取材・文/川喜田 研 

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cat_oa-shuprenews_issue_b8b186b70d57 oa-shuprenews_0_c52ec3f25dd9_SKE48高柳明音、卒業コンサートで見せた新たな不死鳥伝説 c52ec3f25dd9 c52ec3f25dd9 SKE48高柳明音、卒業コンサートで見せた新たな不死鳥伝説 oa-shuprenews

SKE48高柳明音、卒業コンサートで見せた新たな不死鳥伝説

2021年4月14日 17:30 週プレNEWS

4月10日(土)、SKE48高柳明音(たかやなぎ・あかね)の卒業コンサート「SKE48 アリーナコンサート in 日本ガイシホール 私の兆し、皆の兆し ~あかねまちゅりだ!~」が愛知県・日本ガイシホールで行なわれ、およそ3500人のファンが集まった。高柳といえばメンバーきってのお祭り女、「あかねまちゅり」のタイトルどおり、歌って踊って大盛り上がりのコンサートとなった。
オープニング、白いドレスをまとった高柳がひとりで『愛の数』を歌いながら登場すると、会場のファンは白いペンライトでお出迎え。続く『兆し』で、全メンバーが手足を高く上げ行進しながら入場。会場は赤のペンライトに染まり、高柳が「行くぞー!」と声を出し、一気にボルテージを上げていく。さらに『恋のお縄』では同期の斉藤真木子が「あかねまちゅりだ! ちゅりちゅりちゅりちゅり!」と会場をあおる。コロナ対策でファンは発声できないが、サイリウムを全力で振りそれに応える。

有観客にこだわり、1年ほど待たされた卒業コンサート。「この景色が見たかった。ファンの方がいるからこそ、この景色が見られる」と会場に集まったファンに語りかけ、「伝えたいことを最後まで盛り込んだので、最後の1秒までついてきてください!」と訴えた。
パフォーマンス能力の高さでも、グループを引っ張ってきた高柳。『夜風の仕業』では野島樺乃、佐藤佳穂を従え、AKB48グループ歌唱力No.1決定戦で決勝大会に進んだ歌声を響かせる。続いて『今夜はJoin us!』をみんなの妹キャラ江籠裕奈とキュートに見せる。かと思えば、SKE48で最難関のダンス曲『ESCAPE』を若い8期生らとともに全力で踊る。さらに高柳ファンが一番愛する『クロス』は炎が上がる演出でカッコよく見せる。

ファンと共に戦ったAKB48選抜総選挙で手に入れた『ハロウィンナイト』、『#好きなんだ』などを次々に繰り出し、本編ラストはしっとりと『ラムネの飲み方』。今から10年前、総選挙で壇上から「私たちに公演をやらせてください!」と秋元康総合プロデューサーに直訴して手に入れた大切な曲だ。
アンコールでは松井玲奈が「ちゅりちゃんに会いに来たよー」とサプライズ登場! 卒業後は一度もSKEのライブに出ることがなかっただけに、会場のファンからはマスク越しのどよめきが広がった。1年前にやるはずだった高柳の卒業コンサートは仕事の都合で出れず、今回もギリギリの調整で参加できることになったそう。また、多忙のためリハーサルの時間はなく、本番の一発勝負だったことを明かした。

最後の曲に選んだのは『道はなぜ続くのか?』。涙で終わるかと思いきや、菩薩のようにほほ笑む彼女。「完璧なアイドルではなかったですけど、本当に悔いのない最高に幸せなアイドル人生でした。SKE48に出会えて幸せでした。こんなにニコニコ終わるって自分でも思ってなかったです。もっとワーってなるかなって思ったんですけど......。幸せだったんです。本当にありがとうございました!」と語り、鳥好きの高柳らしい羽の付いたゴンドラへ乗って天空へ羽ばたいていった。

そして残されたメンバーでしみじみと『卒業式の忘れ物』を歌い、コンサート終了。かと思いきや、上から「あかねまちゅり、まだまだ終わんないよ!」と高柳の声。メンバーもびっくりの復活劇! ゴンドラが再び地上へ戻り、全メンバーで『オキドキ』を熱唱。そして後輩たちに「これからもアイドル最高に楽しんでね!」と言い残し退場。およそ3時間の宴は終了した。
高柳といえば過去に何度も復活を見せる、不死鳥キャラとしてファンから愛された。卒業コンサートでもまさかの復活演出で、最後にまた新たな不死鳥伝説を見せてくれた。
コンサートの模様は「ABEMA PPV ONLINE LIVE」にて、4月18日(日)23時59分までアーカイブ配信中。劇場での最終公演は4月27日(火)を予定。

取材・文/関根弘康 写真/2021 Zest,Inc./AEI

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cat_oa-shuprenews_issue_b8b186b70d57 oa-shuprenews_0_2b5cba3f49e5_ドゥカティ、BMW、トライアンフ、ハーレーから新型が続々登場! 今、乗るべき輸入バイクはどれだ? 2b5cba3f49e5 2b5cba3f49e5 ドゥカティ、BMW、トライアンフ、ハーレーから新型が続々登場! 今、乗るべき輸入バイクはどれだ? oa-shuprenews

ドゥカティ、BMW、トライアンフ、ハーレーから新型が続々登場! 今、乗るべき輸入バイクはどれだ?

2021年4月14日 11:30 週プレNEWS

輸入バイクが激アツだという。二輪では世界初となる先進安全装備を施したマシンから、二輪トップの大排気量を誇る怪物マシンなどが勢ぞろい! 今、どれを狙うのが正解? 『週刊プレイボーイ』でおなじみのモーターサイクルジャーナリスト・青木タカオがガツンと解説する!
* * *

■BMWがクルーザーセグメントに殴り込み

――イタリアが誇るドゥカティから衝撃の新型車が出たらしいスね? ズバリ狙い目?
青木 はい。ドゥカティが新発売したムルティストラーダV4はヤバいです。テストコースでたっぷり乗りましたが、前車を自動でピタリと追従するんです。
――自動運転に近い?
青木 いや、あくまでも安全運転支援システムで、ハンドルから手を離したまま車線の中央を走ったり、停止時までブレーキをかけ続けることはありません。そもそもハンズオフ運転は二輪だと本当に危険ですから(笑)。
――ふうむ。だったら、その安全運転支援システムは具体的にどんな機能なんスか?
青木 バイク初となる前後レーダーセンサーを搭載し、アクセルやブレーキをバイクが自動で操作してくれます。対象物から離れたら自動的に加速し、接近したら減速する。そして一定の車間距離を保ち続けます。
――後方のレーダーの働きはどうなってんスか?
青木 側面および後方車両との車間距離や車速の差を測定し、死角となる後方側面に車両を検知した際は、ライダーが方向指示器を操作すると、ミラーに内蔵された警告灯が点滅し注意を促してくれます。
――走りはどうです?
青木 高速バンクを使ったテスト試乗もしましたが、片手で素早く上げ下げできるウインドシールドで、時速180キロ以上でも余裕のクルージングができます。もちろん、オフロードも難なくこなしてくれました。
V型4気筒の1158ccエンジンは最高出力170馬力と実にパワフル。完全新作のモノコックフレームとの相性も抜群です。ちなみに先代よりエンジン単体で1.2kgの軽量化も実現しています。
ぶっちゃけ、新しい電子デバイスにアレルギーを感じるライダーもいるかと思いますが、ライディングの楽しさはそのままに、より安全に、より快適に仕上がっています。

――BMWも注目のマシンがあるそうですね?
青木 そうなんです。実はR1250RTも前走車との距離を自動で保つアクティブ・クルーズ・コントロールを新型で搭載しているんです。さらに操舵方向へヘッドライトの照射を自動で移動させるアダプティブヘッドライトも新採用しています。

――ほかにもスゴいモデルがある?
青木 はい。BMW史上最大となる1801ccの新作ボクサーエンジンを心臓部にしたR18です。コイツはハーレーの十八番であるクルーザーセグメントに殴り込んできたわけですが、同じ2気筒搭載でもVツインのハーレーは荒々しく大味なのに対し、R18はジェントルに小気味よく回るエンジンです。
まぁ、大きな声では言えませんが、BMWはクルーザーセグメントに進出し、失敗した過去があるんですよ。それが1997年のR1200C。独自の先進スタイルが斬新すぎまして......。ただ、今回のR18はファン垂涎(すいぜん)の戦前モデルR5をオマージュし、クラシックムード満点で推せます!

■あのハーレーからアドベンチャー登場!

――なるほど。ちなみにイギリスの名門トライアンフがとんでもないマシンをブッ込んでいるってマジ?
青木 市販車世界最大排気量となる2458ccを積むロケット3Rのことですね(笑)。
コイツは見た目こそ超ド級ですが、スポーツ車が採用するフロント17インチホイールや片持ち式スイングアームでコーナーも意外なほど軽快に曲がる。水冷直列3気筒は鼓動感豊かなツインの心地よさと、高速で伸びる4気筒の良さを併せ持ち、最高出力は167馬力です。
ちなみにネオクラシックやアドベンチャーなど幅広くラインナップするトライアンフは、日本での販売が絶好調。現在、輸入ブランド3位に立った注目のメーカーでもあります!
――欧州勢ツヨ!
青木 いやいや、やっぱり日本で強いのは米ハーレーですよ。昨年の輸入二輪車のシェアはハーレーが約37%でトップ。続く2位のBMWは約26%ですから、けっこうな差があります。

ちなみにハーレーダビッドソンジャパンの野田一夫新社長に強さの秘密を聞いたところ、「われわれには圧倒的なブランド力と、熱き魂を持つスタッフがいる。その充実した販売体制が大きい」と語っていました。

――今、新型も話題ですね?
青木 ええ。ハーレー初のアドベンチャー「パンアメリカ1250」がついに登場しました。水冷化された完全新作Vツインエンジンや、オフロードも駆け抜けられる脚の長いサスペンションを備えて、上級仕様のS(スペシャル)では、シート高やサスペンションを自動調整する先進的な電子制御までブチ込まれています。
――輸入車クソアツいスね。 
青木 まだ話せませんが、"隠し玉"もありますから。今年は輸入車に注目ですよ!
●青木タカオ 
モーターサイクルジャーナリスト。YouTubeチャンネル『バイクライター青木タカオ【~取材現場から】』。著書に『図解入門 よくわかる最新バイクの基本と仕組み』(秀和システム)など。現役の二輪専門誌編集長だ
撮影/長谷川 徹、中野英幸 写真協力/ハーレーダビッドソンジャパン

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アマチュア野球もシーズン到来! NPB入りを目指す異色の投手たち

2021年4月14日 06:10 週プレNEWS

今春、甲子園球場で選抜高校野球大会が開催された。観客1万人の入場制限はあったが、2年ぶりに開催された春の祭典は異様な熱気に包まれ、東海大相模が10年ぶりの優勝を遂げた。
プロ野球スカウト陣の熱視線を浴びたのは、小園健太(こぞの・けんた/市和歌山)、達 孝太(たつ・こうた/天理)、畔柳亨丞(くろやなぎ・きょうすけ/中京大中京)、石田隼都(いした・はやと/東海大相模)といった逸材たち。春の訪れとともに、ドラフト戦線も本格化している。
現時点では、昨年の佐藤輝明(近畿大→阪神)や早川隆久(早稲田大→楽天)のような明確な"目玉"はおらず、新星が本命に出世する可能性もある。
今回は、3月から試合が始まっている社会人野球、4月3日に開幕したルートインBCリーグ、同10日に春季リーグが開幕した東京六大学野球から話題性に富んだドラフト候補を紹介する。
大学球界で動向を注視したいのは、まだ実績がほとんどない山下 輝(やました・ひかる/法政大)。東京六大学リーグで通算11イニングしか投げていないこの左腕は、今秋のドラフトで1位指名される可能性すら秘めている。
身長188cm、体重95kgの巨体で、ふてぶてしいマウンドさばきからは大物感がにじみ出る。木更津総合高時代は早川の1学年後輩で、侍ジャパンU-18代表に選出された経験もある。当時、プロ志望届を提出していれば「ドラフト上位指名は堅い」と言われた有望株だった。
ところが、ステップアップのために進学した法政大で、早々に左肘を痛めてしまう。回復の経過が思わしくなく、1年冬には治癒に時間がかかるとされるトミー・ジョン手術を受けた。全身麻酔から覚めた山下は、動かない左肘を見てあらためて事の重大さを認識したという。
術後3ヵ月は走ることすらできず、再びボールを握れるようになったのは術後7ヵ月後。山下の大学2年目は、気の遠くなるようなリハビリの時間に充てられた。
3年生になった昨年に戦線復帰し、短いイニングのみの"試運転"ながら2勝をマーク。自己最速の151キロを計測するなどパワーアップした姿を見せた。破壊力のある速球とスライダーに加え、右打者には沈むツーシームも駆使する。
なお、スライダーとツーシームの握りは、高校時代に早川から教わったとおり投げ続けている。
中学時代は部員わずか7人の軟式野球部に所属し、バスケットボール部と音楽部の助っ人(しかも音楽部員は女子)を呼んで試合に出場していた。山下は助っ人に負担をかけないよう「常に三振を狙っていた」と振り返る。何事にも動じないマウンド姿は、弱小チームに所属したジュニア期に培われたようだ。
同じ左腕の大スターであるアロルディス・チャップマン(ヤンキース)のトレーニング動画に刺激を受けて以来、ウエートトレーニングに励むようになった。本人も「MLBに興味があります」とメジャー志向を隠さない。体重95kgとはいえ身のこなしに鈍重さはなく、山下は「あと2、3kg増やしたい」と意気込む。
大学最終学年の今季、体調万全で結果を残せれば、先輩の早川と同様にドラフト戦線の主役になれるはずだ。
社会人球界にもユニークなドラフト候補がいる。ひと際目を引く変則フォームの鈴木大貴(すずき・ひろき/TDK)だ。
両腕を高々と上げるワインドアップなのだが、見ているこちらが「行きすぎ」と心配になるほど上体を反り、大きな反動をつけて左足を上げ、サイドスローの角度から猛烈な勢いで右腕を振る。独特なリズムとモーションから放たれる剛速球は、最速154キロをマークする。
速球の軌道から曲がるスライダーなど変化球の水準も高く、プロで成功できるだけの要素は十分。だが、一方で今の鈴木には大きな弱点がある。ランナーが出塁すると変則投法で反動がつけられないため、球速が一気に落ちてしまうのだ。
鈴木は「股関節に重心をスムーズに乗せるトレーニングを重ねて、セットポジションからでもいいボールが投げられるようにしたい」と課題克服を目指している。鈴木が無事プロ入りできれば、その変則フォームは間違いなくSNSなどで話題になるだろう。
なお、昨年までは振りかぶってからグラブを頭の後ろで2回上下する動作を入れていたが、審判団から「あれはボークだからもうやらないように」と物言いがついた。今春からは、頭の後ろでのグラブの上下動を1回に収めて投げるように努めている。

最後に紹介するのは、奇妙なキャリアを歩む、独立リーグの速球派右腕。神奈川フューチャードリームスに所属する杉浦健二郎は、高校時代はバドミントン部、大学では軟式野球サークルでプレーする草野球選手だった。
だが、動画サイトなどを参考に独学で技術を追究したところ、急激にスピードが向上。大学在学中に独立リーグのトライアウトを受け、最速150キロの快速球を投げて合格をもぎ取ってしまう。
本格的な野球歴が始まったばかりで、入団1年目の昨季は12試合の登板で防御率7.24と結果を残せなかった。それでも潜在能力は高いだけに、いつ開花のきっかけをつかむかはわからない。
中央大法学部に在学中のエリートでもあり、長期間の独立リーグ挑戦は考えにくい。勝負をかける今季、ロマンあふれる杉浦の野球人生が続くのか目が離せない。
2021年のドラフト会議は10月11日に開催される。プロ野球への扉をこじ開けようともがく男たちの激しい闘いは、秋まで続いていく。
取材・文/菊地高弘 写真/大友良行

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映画『BLUE/ブルー』に出演する東出昌大「(対象を)狭めてしまうようですけど、ボクサーの方に見ていただきたい」

2021年4月14日 06:00 週プレNEWS


バラエティプロデューサー角田陽一郎の『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
今回は、現在全国公開中のボクシングを題材とした映画『BLUE/ブルー』に出演する俳優の東出昌大(ひがしで・まさひろ)さんが登場!
■純粋性に惹かれて笑って涙した『ぽんぽこ』――子供の頃に見て印象に残っている作品は?
東出 人生で一番繰り返し見たのは、高畑勲(いさお)監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)だと思います。ジブリはほかにもたくさん好きな作品があるんですけど、でも子供の頃は宮崎駿(はやお)監督とか高畑監督という意識はなくて。細かいことはよくわからずに、VHSにとった『ぽんぽこ』を繰り返し見てたんです。
――どういうところが好きですか?
東出 大人になった今、分解して見ると、すごく緻密に作られていて、ものづくりの精神が込められているなと思います。スタジオジブリ作品に限らず、庵野秀明監督や細田守監督の作品もそうですよね。
でも、子供心にほかのアニメーションと一線を画していたのは「人間は必ずしも清いばかりではなく、動物にとっては悪になる」とか「動物は動物で精いっぱいなんだけど、人間を化かそうとしてしまう」というテーマが描かれていたところ。そういう純粋性みたいなものに惹(ひ)かれて、笑って涙していたんだと思います。
――子供の頃に泣いた作品って忘れられないですよね。では青春時代は?
東出 『日曜洋画劇場』など、テレビで放映される映画にどっぷりハマって、週末の楽しみでした。子供の頃は洋画を比較的多く見ていて、中高になるにつれて日本映画も見るようになりましたね。
ただ、最初は寅さんとかのよさはわからなかったんです。小津も溝口も興味なくて、岩井俊二監督や豊田利晃(としあき)監督、堤幸彦監督や行定勲監督、周防(すお)正行監督......そういう映画をたくさん見て育ちました。そのなかでも衝撃的だったのが豊田監督の『青い春』(2002年)。ちょっと"とっぽい"ものが好きな年頃も追い風になったと思いますね。

■主張しているような、していないような印象を与える演技――東出さんは23歳で俳優デビュー。出演した作品で自分の人生を動かしたものは?
東出 欲張りなので、全部動かしたなと感じているんですけど、あえてひとつ挙げるなら豊田監督の『クローズEXPLODE』(2014年)。台本で決まっていたセリフが毎日のように変わっていったんですよ。
それまでは『桐島、部活やめるってよ』(2012年)しか経験していなかったですし、「セリフから人物を考えろ」と習っていたので、「セリフが毎日変わるってどういうことなんだろう」って。それで最終日に喫煙所で豊田監督に「セリフってなんですか?」って聞いたら、「それがセリフだ」と返されて。
――答えているようで、答えになっていないような。
東出 「自分の中から出た言葉がセリフなんだよ」ってことだったんだと思います。そのひと言は、自分の中で非常に大きかったですね。
――僕は『桐島...』で東出さんを初めて見て、「なんだ、この俳優さんは」と感じた記憶が強烈に残っていて。一見不機嫌な役なんだけど、でも不思議と人間らしいかわいさ、憎めなさがあるといいますか。ご本人的にはどんなことを意識して演じていますか?
東出 それが、自分で意識していることはとても少ないんです。23歳で役者を始めてから「自分はできる」という根拠のない自信を持って目の前のことをこなしてきたんですけど、でも、本当はずっと自信がなかったんです。今でもそれは変わってなくて、撮影初日のワンテイク目が終わった後、監督に「こんな感じですか?」と顔色をうかがいに行く自分がいます。
ただ、自分に自信がない分ずっと思い続けているのは「監督にとっていい材料になれればいいな」ということ。そういうところが、主張しているような、していないような印象を与えるんじゃないかなと。

――東出さんの魅力ですね。では、役者になってから見て印象に残った作品は?
東出 先輩方から、昔の映画を多く紹介していただくようになりました。黒澤明はもともと見ていましたけど、小津や溝口、今村昌平、成瀬巳喜男(みきお)などを追って見ていましたね。役者になっていなかったら、進んで白黒の映画を見ることはなかったと思うんです。 
いざ同業者になって見てみると、「こんなすごいこと先輩方はやっていたのか」とか「こういうお芝居だから黄金期っていわれたりするのかな」と思えてくる。ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンなどの台湾映画も好きですし、あとは韓国映画もいいですよね。感情の爆発を見ていても、「何回戦くらいやってるんだろう」「このテンションで続けられるんだ」と思うんです。
――東出さんって向上心の強い方なんですね。
東出 いや、すごい先輩方はみんなそうしてるんだと思います。わざわざ口にすることはなくても、接しているとうすうす気づくので、先人たちに習っている感じです。
――最後に新作のお話を。今回もひと筋縄ではいかない役柄でしたが、どうでしたか?
東出 ここまで俳優部に任せて、ナチュラルであることを心がける作品は稀有(けう)だと思いました。今は原作モノが多いですし、エンタメ作品って様式美があって、演技でも見えを切ることが要求されやすいんですけど、ただ吉田恵輔監督、松山ケンイチさんがつくり上げていた現場の雰囲気は違いました。
だから、マイク乗りのいい声でしゃべるとかは要求されないし、逆にマイク乗りの悪い声でしゃべることもありました。いつかやってみたいと思っていた芝居がいくつもできた作品でしたね。
――ベタな質問ですが、どんな方に見ていただきたい?
東出 狭めてしまうようですけど、ボクサーの方に見ていただきたいなと思います。どんな仕事にも光と影はあると思うんですけど、この『BLUE/ブルー』という作品は「よくぞここまで描いてくれた!」と言ってくれるんじゃないか、という自負があります。
それくらい、ボクサーの生き方に肉薄した作品なんですよね。「ここまで深く掘り下げたボクサー映画は、今までなかったのかな」って生意気にも感じています。
ですので、ひいてはどんな方がご覧になっていただいても共感していただけると思いますし、共感がなくても、晴れやかな気持ちで劇場を後にしてもらえる作品じゃないかと思います。まずは、全国のボクサーに胸を張って届けたいですね。
●東出昌大(ひがしで・まさひろ)
1988年生まれ、埼玉県出身。2012年、映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。映画『聖の青春』『関ケ原』、ドラマ『ごちそうさん』『花燃ゆ』『コンフィデンスマンJP』など話題作に多数出演
■『BLUE/ブルー』全国順次公開中
取材・文/テクモトテク 撮影/山上徳幸

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J1開幕から絶好調の名古屋グランパスに宮澤ミシェルも大注目「独自の路線を歩むチームには目が行っちゃうんだ」

2021年4月13日 11:00 週プレNEWS

サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第196回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
今回のテーマは、Jリーグについて。「今年のJリーグは面白い試合が多い」と語る宮澤ミシェル。その中でも特に注目のチームは名古屋グランパスだという。
*****
日本代表とU-24代表の活動期間が終わってJリーグが再開されたけど、面白い試合が多いんだよ。
なかでも注目しているのが名古屋グランパス。開幕からの連勝はリーグ再開後2戦目となったFC東京に引き分けに持ち込まれてストップしたけど、9試合を終えて7勝2分け。首位を走る川崎の背中にピッタリくっついてる。
名古屋の何に注目してるかって言えば、やっぱりあの守備力だよ。開幕戦の福岡戦で1失点しただけで、その後は8試合連続で無失点。Jリーグ新記録を打ち立てたけど、福岡戦の1失点だってオウンゴールだからね。
Jリーグは川崎フロンターレが結果を残したこともあって、どこもかしこもポゼッションサッカーを志向している。でも、そのなかで名古屋がやっているサッカーは真逆。イタリア代表のように守備の圧力を高めて、ボールを奪えば一気に攻め込んでいく。
みんなが同じスタイルを目指してもつまらないからね。名古屋のような独自の路線を歩むチームには目が行っちゃうんだ。
ただ、勘違いしてもらいたくないのは、名古屋のサッカーは守備に徹したカウンターサッカーではないことだよ。
相手にボールを持たれた時は守備のブロックをしっかり作って跳ね返して、ボールを奪えば前線のタレントは最初にタテを狙い、それが無理ならサイドに起点を作りながら相手を押し込んでいく。
攻撃陣には柿谷曜一朗と山崎凌吾がいて、マテウス、相馬勇紀、前田直輝でしょ。ガブリエル・シャビエルや齋藤学もいる。阿部浩之がベンチを温める試合が多いくらいタレントが充実しているんだけど、やっぱりDF出身としては守備陣に目が向くよな。
GKランゲラクは1試合に何度もスーパーセーブをするし、それができているのもCBの丸山祐市と中谷進之介が最後の最後まで体を張ってシュートコースを限定しているから。ボランチの稲垣祥と米本拓司も効いているし、C大阪から加入した木本恭生と浦和から加わった長澤和輝もいぶし銀の働きを見せている。
スタメンとバックアップに力の差がないし、守備がベースのサッカーだから、誰が出ても安定した戦いができるのは強みだよ。川崎との直接対決が4月29日に控えているけど、この戦いは目が離せないよ。
チームでは名古屋だけど、選手個人で注目しているのは、やっぱり大久保嘉人だね。38歳の今季はC大阪に15年ぶりに復帰。大久保は昨季はJ2の東京ヴェルディだったから、2019年のジュビロ磐田以来となるJ1の舞台になったけど、得点感覚は相変わらず素晴らしいよね。
開幕戦の柏戦でのゴールは今季にかける大久保の意気込みが感じられたな。体重を絞ってシーズンに臨んだことで切れ味鋭い動きだったし、あのゴールで波に乗ったよね。そこから4試合で4得点だもの。
再開後はゴールは遠いしシュートも打ててないんだけど心配はしてないよ。あれだけ実績のある選手だし、C大阪の2列目には清武弘嗣や坂元達裕などのチャンスをつくり出せる選手が揃っている。大久保はゴール前での動き出しに専念していれば、必ずゴールを量産してくれるはずだよ。
FWで言えばヴィッセル神戸の古橋亨梧にも注目しているんだ。あのスピードはDFにしたら脅威だし、何より「得点を決めてやる」という気迫のようなものが彼には常にある。
ここまで6ゴールは、得点ランキングで8得点のアンデルソン・ロペス(札幌)、7得点のレアンドロ・ダミアン(川崎)に次ぐもの。アンドレス・イニエスタがチームに加わってくれば、古橋のゴールはもっと増えていくんじゃないかな。得点王を狙って欲しいと期待しているんだ。
これからの気候はサッカーをするには最高だし、6月には日本代表戦があって、7月には東京五輪も控えている。それぞれの代表入りを狙う選手たちはアピールに必死だから、今回は触れられなかったチームや選手たちも素晴らしいプレーを見せてくれるのは間違いない。だからこそ、みなさんもしっかりJリーグをチェックしてくださいね!
構成/津金壱郎 撮影/山本雷太

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マツダ初の量産EV「MX‐30EVモデル」を試乗&開発責任者直撃「なぜ日本で500台しか売らないんですか?」

2021年4月13日 06:10 週プレNEWS


待望のマツダMX‐30のEVバージョンがニッポンに登場! その走りはどんな感じ? そして、このEVモデルの狙いは? MX‐30EVモデルの開発者である、MX‐30主査・竹内都美子氏、車両開発本部 操安性能開発部・梅津大輔氏に、自動車ジャーナリストの小沢コージが迫ってきた!
■EV補助金が手厚い欧州――ついにマツダ期待のMX‐30EVモデルが登場しました! 独特の観音開きボディがもたらす開放感はものすごいし、内装のコルク材やフェルト材は"走るデザイナーハウス"って感じで超オシャレ。
そして実際に乗ってみると、EVなのに意外と自然体だなという印象でおもしろい。確かに加速はEVらしい透き通った味だし、乗り心地も異様にソフト。けど、ビックリするほど速いとか、極端に電気的なモーターサウンドもない。コレは意図的?
竹内 その部分に関しましては、かれこれ10年以上、マツダのEVの走り味にこだわってきた梅津に説明を任せます。
梅津 マツダとしてはEVだろうが、内燃機関だろうが、"人馬一体"のコントロール性は変わらない。電動車を特別視する気持ちはまったくないんです。

――内燃機関でもEVでもマツダはマツダであると。
梅津 電気モーターだからできることも多いので、いろいろ挑戦していますが、マツダはモーター駆動の良さを滑らかさに使っているんです。
――もちろん、EVもしっかりマツダの味つけになっていると。でも、だったらですよ、昨年10月に、なぜこのEVモデルを、マイルドハイブリッド版の発売と同時にデビューさせなかったんですか? 同時に発売していたら、かなりのインパクトを世間に残せたんじゃないかと単純に思うんですが。
竹内 そこは本当に、工場での量産の順番の問題です。マツダの中では、ほんの数ヵ月の違いしかありません。日本に関しては、欧州とほぼ同時にお届けしている認識です。

――けどけど、当初日本では、MX‐30EVモデルってリース販売のみでしたよね?
竹内 ええ。
――それが今年1月から一般向けの発売となった。コレは英断だと思うんです。ただ、驚いたのは販売計画台数ですよ。なんと年間500台! 月に均すと50台弱(笑)。いくらなんでもコレはあまりに少なすぎやしませんか。こんなにいいクルマなのにもったいない。あと、451万円スタートという価格も、もう少しお安くならなかったんですか?
竹内 台数に関しては「わからない」というのが正直なところです。
――というと?
竹内 私たちマツダというブランドが初めて日本にお届けするEVですから、果たしてどのくらいのお客さまにお買い求めいただけるか......。
――そこですか! 私はてっきり電池の生産量が足りないのかなと思っていました!
竹内 リチウムイオン電池はパナソニックさんから供給を受け、昨年は欧州に1万台をお届けしていますから、(日本でも今以上の)台数をお届けすることは不可能ではないという認識です。


――価格に関しては?
竹内 価格は課題ですね。電池そのものの価格もそうですし、車両本体も下げていかなくてはならないのかなと。
――ちなみに、ホンダeと価格帯や電池搭載量がモロかぶりしているのはなぜ?
竹内 価格に関しては、参考にさせていただいたと正直に申し上げます(苦笑)。一方、35.5kWhという電池容量に関して開発中はまったく知りませんでした。
――EV界には電池の単1や単3みたいな規格があって、一般販売しやすい容量が35.5kWhだったというわけではない?
竹内 確かに35.5kWhは切りのいい容量なんです。車載の電装品には必要な電圧があって、それはこういう電池を組み合わせると実現できるみたいな部分はあります。

――でも、しつこいですが、日本での年間販売500台はチト少ない。もっと売れますよ!
竹内 実は日本と欧州ではEVへの力の入れ方が国としてまったく違います。例えば価格ですが、北欧だとマツダ3とMX-30EVモデルがほぼ同じ価格か、あるいはMX-30EVモデルのほうが手軽に買えてしまうんです。
――マツダ3のハッチバックが222万円スタートで、人気のディーゼルは279万円から。一方、MX-30EVモデルは451万円スタートで、日本では国から16万円強、東京都だと約45万円の補助、ほかにも細かい免税がありますが、総額100万円引きにも及ばない。そう考えると、やはり欧州のEV補助金の手厚さはハンパないスね! 
竹内 補助金だけでなく、欧州では購入後の駐車場や公共施設の利用料が無料だったり、さまざまな恩恵を受けられるんです。欧州でEVを選ばない理由はないんですよね。 
――しかも欧州の環境規制は非常に厳しく、そこを考慮すると、欧州市場を優先せざるをえない。だからEV版の日本市場導入が遅れたわけですかね。
竹内 優先というより、MX-30には電動化の推進と同時に、もうひとつの使命がありました。それはこれまでご縁がなかったお客さまにもマツダのクルマに親しんでいただくことです。そのためには欧州でEVを出したほうが、単純に訴求効果が高いなと判断しました。一方、日本ではマイルドハイブリッドのほうがお買い求めやすいのかなと。

――確かにマイルドハイブリッド版のMX-30のスタート価格は242万円ですからね。オシャレなクルマとしては安いし、日本はEVに対して積極的とは言い難い。
しかしそんななかで、これからマツダはEVをどう攻めていくんですか? 丸本明社長は2030年のEV比率目標を現在の5%から引き上げると明言していますし、品ぞろえも増やすとおっしゃっていますけれども。
竹内 マツダが一番大切に考えているのは、お客さまに笑顔になっていただくことであり、マツダ車で気持ちよく走っていただくことです。それがマツダの目標です。
そのなかで今の地球環境や各国の規制、お客さまの環境に合わせてEVからマイルドハイブリッド、そして来年発売予定のロータリーエンジンを発電機として使うEVモデルなど、さまざまなバリエーションをマツダはご用意しています。
●試乗&インタビューした人・小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週土曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
撮影/本田雄士 小沢コージ

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哀愁と切なさを求めて......。"妄想道を極めた奇才"が落とし物から他人の人生を垣間見る!

2021年4月13日 06:00 週プレNEWS


軍手、アロンアルフア、PASMO、七夕の短冊、レモン、水菜、VHSのビデオテープ、子ども用バット、松竹錠......。
道端で本当に見つけたさまざまな落とし物をめぐって、あれやこれやと妄想を繰り広げる最新エッセイ集『その落とし物は誰かの形見かもしれない』を上梓(じょうし)したせきしろ氏。
「エロ本自動販売機」「ふたが全部取れるタイプの缶ジュース」「地方都市の高校生」「トニセン」といった哀愁ワードが飛び交ったインタビューで、"妄想道を極めた奇才"は何を語ったのか?
* * *
――「落とし物」をテーマにしてエッセイを書こうと思ったのはなぜでしょうか?
せきしろ なんだったかな、忘れました......(笑)。でも、落とし物の写真はもともと撮っていたんですよ。
――構想はあったわけですね。
せきしろ いや、習慣に近いです。アウトプットする気がないから、カタチにしようって何かを始めることがなくて。同じように落とし物を撮影している後輩がいたので、その後輩にお金が入ればいいなと(笑)。
――同志がいたんですね。
せきしろ 意外と注目している人は多いのかもしれません。片手袋の落とし物だけに焦点を当てた本を読んだこともあるし。その本は手袋の種類とかから地域性などを分析、研究しているまじめな本でしたね。
――せきしろさんもたくさん落とし物を見つけていますが、何か共通点ってあるんですか?
せきしろ 何もないです(笑)。でも、「落とし物には触れない」という信条はその本と共通していましたね。
――写真を撮るときも触らないんですか?
せきしろ 触るのは怖いじゃないですか。それこそ落とし物の写真を撮るときも、周りに人がいなくなるのを待ちます。落とし物の写真を撮っている姿を見られたくないし、「何やってんだ」って怒られたらいやなので。
――数多くある落とし物の写真の中から、「ピンクのジョウロ」を表紙に選んだのはどうしてですか?
せきしろ 表紙はデザイナーさんにお任せしました。落とし物の写真ってキレイなものばかりではないので(笑)。「少しでも色鮮やかなほうがいいだろう」という出版社の販売担当の助言もありつつ、ピンクのかわいいジョウロが表紙に採用されたようです。
――かわいさが決め手だったとは! 落とし物って住宅街のほうが落ちているものですか?
せきしろ そんなこともないですよ。日曜日の閑散としたオフィス街のほうが「なんでここにあるんだろう?」ってものが落ちていたりもします。
――でも、これだけ落とし物に遭遇すると、せきしろさんでも思わずガッツポーズしたものもあるんじゃないですか?
せきしろ ガッツポーズは人生で一度もしたことないです(笑)。僕は哀愁を感じるものが好きなので、昔懐かしいものを見つけたときのほうがうれしいかもしれませんね。例えば、ふたが全部取れるタイプの缶ジュースのプルタブとか。あとエロ本ですね。今でも見つけるとテンションが上がります。
――エロ本、ですか。
せきしろ 雑木林に作った秘密基地でエロ本を眺めていた子供の頃を思い出すんです。考えてみれば、エロ本を拾ったのが僕の"落とし物"の原点なのかもしれません。突然雨が降ったときは、濡れないように慌ててビニールをかけに行っていたくらいなので(笑)。
エロ本って昔は自動販売機でも買えたんですよ。水色だったか、風景に浮く色をしていて。買うときにはけっこう大きな音もするし、とにかく目立つんです。緊張したなぁ......ってエロ本の話ばかりしてすみません。なんの話でしたっけ?(笑)
――テンションが上がる落とし物の話です!
せきしろ そうでした。うーん......リモコンとかも好きですね。帰宅した後、どうしたんだろうって。
――妄想がはかどる、と。
せきしろ そうです。落とし主の生活を感じると、妄想が膨らみますよね。買い物メモとか、資格の本とか。そういうものが落ちているとテンションが上がるかもしれません。
――でも、他人の人生が垣間見えると、「うわぁ」って思わず声を上げたくなるような切なさに襲われたりしないんですか?
せきしろ それも含めて良かったりしますね。
――タイトルの「形見かもしれない」のフレーズがまさにその切なさを言語化していると思うんです。
せきしろ 落ちている靴はだいたい遺品かなって思ってしまいがちですね。
――怖いですよ!(笑)
せきしろ 「うわぁ」ってなる感じには懐かしさもありますよね。いろいろよみがえってくる感覚もあります。その感覚を感じに行くこともありますしね。
――どこにですか?
せきしろ 昔住んでいた家を見に行ったり。あと地方都市が異常に好きなので、前橋とか甲府とかに意味もなくふらっと行くんです。地元の高校生たちを見て、「この子たちはこういうグループなんだろうな」とか「こういう所で遊ぶんだろうな」って考えていると味わえますよ、「うわぁ」を。
――そして妄想が始まるんですね。星野源さん主演で2007年にテレビ東京でドラマ化された『去年ルノアールで』も妄想文学でしたが、今作とは妄想の広げ方が違うように感じました。
せきしろ まぁ、『ルノアール』のときは若かったですし。確実に変わったのは、なるべく誰が読んでも傷つかない妄想を心がけるようになったことですね。それに今回は写真・風景でひと言のような大喜利みたくもあるので。
――もし実写化するなら誰がいい、とか理想はありますか?
せきしろ 星野君がいいんじゃないですかね。でもパラレルワールドみたいになっちゃうか。
――せきしろさんご自身が主人公を演じる可能性はないんですか?
せきしろ 僕ですか? それは絶対にないですね。優しそうな人に演じてもらいたいから......そうだな、V6のイノッチ(井ノ原快彦[よしひこ])とかいいんじゃないですかね。トニセン(20th Century)の。ドラマ化するときはぜひイノッチでお願いします!
●せきしろ
1970年生まれ、北海道出身。作家・俳人。『去年ルノアールで 完全版』(マガジンハウス文庫)、『海辺の週刊大衆』(双葉文庫)、『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』(双葉社)、『たとえる技術』(新潮文庫)など著書多数
■『その落とし物は誰かの形見かもしれない』
(集英社 1430円)
星野源主演でドラマ化もされた『去年ルノアールで』の著者・せきしろ氏がおくる最新妄想文学。「文枝師匠でなければ誰が落としたというのか」「ニュートンは万有引力を発見しキティちゃんは身長計測する」「ラッキィ池田と象のジョウロのミステリー」「鈴木雅之はサングラスを投げ捨てラストスパートするのか?」など、路上で見つけたさまざまな落とし物をめぐる50のエッセイを収録。各タイトルはどことなく自由律俳句の趣を感じさせる

取材・文/金髪りさ 撮影/山上徳幸

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