(写真左から)榮倉奈々、倉科カナ、夏菜
平均13・5%のワースト1を記録「
「民放ドラマなら18・8%という数字は十分に合格点。20%を切ったことがニュースになるのは、朝ドラならではのことです」
「朝、家事をしながら見たり、時計がわりとして見ていたり。そういう見方が習慣となって根づいている」
「朝ドラの歴史の中でよく言われるのが、’00年代が低迷期ということです。作品でいうと’04年の『天花』のあたりからですね。そこからジリジリと下がって、’09年『ウェルかめ』で平均13・5%のワースト1を記録してしまいました」(木俣さん)
「全部、お話が現代モノなんです。この時期以前にもあったのですが、ヒロインが家庭で夫を支え、その出世の手助けをするといったオーソドックスな朝ドラの雰囲気は保っていました。
ある意味、民放のゴールデンタイムなどに放映している、若い女性が見る感じのドラマの雰囲気で作り始めたんです」
「’00年以降のヒロインは、みんな自分探しをしているんですよ。個人的な人生の目標があって、紆余曲折ありながら進んでいく。ただ、それまでの朝ドラファンは、貧困や戦争の中でも健気に生きていく女の子、というヒロインが好き(笑)。視聴者が求めているものと乖離してしまった。
ヒロインはベテランより若手の方がいい!?
「すごくいい作品なんです。でも、ヒロインが朝ドラ史上最年長の藤山直美さん。当時47歳で、まだこの記録は破られていません(笑)。上の世代の主婦層に共感されるようにと藤山さんを起用して、円熟味のあるしみじみしたいいお話を作ろうとしたのかもしれませんが……。
「これまで朝ドラで悪役もやられていますし、何しろ演技が達者ですから、視聴者が共感して応援したいヒロインではないですよね。でも、夫役の國村隼さんとのベテラン同士の掛け合いは本当に面白かった」(田幸さん、以下同)
「『芋たこ』はそういった日常シーンがずっと続く感じ。今放送したら、もっと数字はとれるんじゃないですかね」
「ヒロインの嫁ぎ先は子どもが5人いる10人家族。子どもにとっては“おばちゃん”の主人公が少しずつ家族としての関係を育んでいく。そういった新しい家族のカタチを描いているので、今ならもっと注目されると思うのですが」
「『ちりとてちん』はDVD化されていて記録的な売り上げを達成しています。この作品、内容がすごく濃くて、1回見ただけだと見落としてしまう小ネタがあったり、意味がすぐにはわからない伏線も多くて……。言ってしまうと、忙しい時間帯に見る朝ドラ向きではないんです(笑)。
「このスタイルは、のちの『あまちゃん』につながりますよね。何度も見たいと思わせる作品なので、視聴率が悪くてもDVDは売れているんです」
伝説? 黒歴史? 物議を醸した作品
「やっぱり『純と愛』ですかね。これでもかと不幸が連続して、見ていても“私たちの人生、素敵だった”という気持ちには、とうていなれませんから(笑)。
「純が一本気なんですけど、“まっすぐなヒロインて怖い”と思わせてくれました(笑)。行く先々でトラブルを巻き起こし、ヒロインの存在がまさに“トラブルメーカー”。
脚本を担当された遊川和彦さんの作品は、好き嫌いがはっきり分かれますが、彼の作品の鬱展開というか、暗黒時代の頂点がこのドラマだと思います。
もともと朝ドラの脚本を受けたときも“朝ドラをぶっ壊す”とおっしゃって、本当にぶっ壊した作品ですよね(笑)。ある意味“伝説”の作品です」
“ストーリーが暗い”といえば、ワースト7に入っている本仮屋ユイカがヒロインの『ファイト』も負けてない、と田幸さん。
「ヒロインも足のケガで大好きだったソフトボールができなくなり、やがて不登校に。ここまで不幸なのに、不思議とみなさんの記憶に残っていないんですよね。脚本は『僕の生きる道』シリーズの橋部敦子さんなんですけど、もうちょっと話題になってもよかったのに、と思います」
「『天花』はヒロインの藤澤恵麻さんが小顔ですごく可愛かったんですけど、作中で描かれた米作りや、ヒロインの保育士という仕事の描写が薄っぺらいんです。
保育士が天職と言うんですけど、子育てもわかっていない若いヒロインが、お母さんたち相手に上から目線で説教をする。しかもストーリーが米作りや保育士よりも恋愛寄り(笑)」
挑戦を続けてきた朝ドラ
「ヒロインの原田夏希さんが“生きてるだけで丸儲け”と、さんまさんみたいなことを言うんですけど(笑)、造園会社に就職したらすぐにちやほやされ、ケンカを売った取引先業者の男性といい感じになって結婚して……。若葉を愛せないという視聴者の声が多かったと聞いています」
「これも『天花』なんですけど、ご当地要素が薄っぺら。舞台になったのは仙台ですけど、牛タンを食べて“固い”と言ったり、冬に夏の風物詩・ずんだ餅を食べていたりと季節感がまるでありませんでした」
「川越らしさはまるでありませんでした。この作品で話題になったのは、リオのカーニバルのようなサンバダンサーが唐突に現れて踊るシーン(笑)。インパクトはありましたけど、ご当地からしてみれば“?”ですよね」
「『瞳』ではヒップホップのダンサーを目指す榮倉奈々さん演じるヒロインと、里親養育をしている祖父と里子との関係をテーマにしました。普通に考えて、相性がいいと思いませんよね(笑)。狙いを完全に一本に絞れない、制作サイドの自信のなさみたいなものが見える気がします」
「前述した朝ドラの低迷期は、民放のドラマが刺激的で、NHKはトラディショナルすぎておもしろくない、と思う視聴者が増えてたんでしょう」
「でもそういったチャレンジがあって、’10年代の『あまちゃん』など視聴率の回復につながっていると思います。今から思えば、’00年代朝ドラは出てくるのが早かったのかなと(笑)」(木俣さん)
「数字がよくても悪くても、話題になってしまうのが朝ドラ。ですから『おちょやん』には頑張ってほしいですね。
コロナ禍で変わってしまった日程の影響で、放送期間も短くなる可能性もありますし、いろいろ予定どおりにいかないといった事情もあると思いますが、こんな時代なので明るく楽しい作品であってほしい。とにかく、応援しています!」(田幸さん)
木俣冬(きまた・ふゆ)……エンタメ作品に関するレビューなどを執筆。『excite』のエキレビ!でドラマレビューを執筆。著書に『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)など
田幸和歌子(たこう・わかこ)……ドラマコラムの執筆や、ジャニーズウォッチャーとして活動。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など