麻木久仁子 撮影/山田智絵
「突然、右手と右足にしびれが出たので、慌てて病院に行きました。それで脳のMRIを撮ってもらったら、脳梗塞(のうこうそく)が見つかったんです」
「私もついに病気をするような年齢になったんだなと自覚しましたね。このとき、身体をいろいろ検査したのですが、脳梗塞につながる動脈硬化や高血圧などの生活習慣病は何も出てきませんでした」
「それまでは忙しさを言い訳にして受診しないとか、マンモグラフィーは痛いから今回はやめるとか、とにかくいい加減だったんです(笑)。でも、そのときはまじめに受診して、オールA判定で50歳という大台を気持ちよく迎えようと思っていました。だから、悪いところが見つかるなんて思ってもみなかったんです」
「最初に診てもらったとき、しこりがはっきり確認できないような段階で、精密検査をするために国立がん研究センターに行きました。すると、左右の乳房からがんが見つかったんです。もう少し早かったら小さすぎて見つからないし、もう少し遅かったら進行した状態で見つかるし……。見つかるギリギリの大きさでの早期発見だったので、本当にタイミングがよかったんだと思います」
「ラクって言っちゃったら変なんですけど、私の場合、転移もなかったので、がん治療はそこまで大変じゃなかったんです。がんが見つかった後は、部分切除して、放射線治療、ホルモン治療を約5年間続けました。
乳がんとともに直面した家族の病気
「母は昔から身体をよく動かす人で、社交ダンスが趣味。すごい健康自慢の人だったんです。でも70歳を過ぎたら人間ドックに行きなさいよって、私に言ってたんです。だから、てっきり母は毎年受けているもんだと思っていたんですよ。
「まず、いい年になったら、がん検診や人間ドックは受けること。乳がんになってからは友人にも検診をすすめているんですけど、なかなか行ってくれない。理由を問い詰めると“だって、がんが見つかったら怖いじゃん!”って言うんです。でも、それっておかしいじゃない、と。見つけるために行くんだけど、たしかに見つからないほうがいい。それでも、もし早く病気が見つかれば、それだけ治療はラクになるんですから。
「薬膳は、必ずしも生薬のようなものを鍋に入れて煮込むというわけじゃない。そのときの体調に合わせて、食材選びや調理法を工夫することで、身体の調整ができるんです」
三世代同居で母と娘の健康管理を担う
「シェアハウスみたいですよ。2人に“ごはんだよ”“おやつだよ”って言うと、自分の部屋から出てきて真ん中のリビングに集まってくる(笑)。母の朝食は母が自分で作った煮物、ナッツ、ヨーグルトを食べるのが習慣。昼間は外出してほとんどいないので、夜ごはんが私の出番です。母が“今日は高野山に行ってきたのよ”と言えば、疲れがとれるお酢をたっぷり使ったレシピを考えます。食事が家族とのコミュニケーションにもつながっていますね。娘の場合、平日は仕事でほとんどいないので、週末のごはんで腕を振るいます。外食だと肉や魚が多いと思うので、豆類を使った料理で身体のバランスをとるようにしています」
「女三世代でうまくやるコツは?」という問いに、「期待しないことかな」と笑顔で答えた麻木。病気がきっかけで、家族はひとつ屋根の下に集い、その絆(きずな)はより深まった。
あさぎ くにこ◎テレビやラジオ番組で司会者、コメンテーターとして活躍するほか、クイズを中心としたバラエティー番組にも出演。'16年には、国際薬膳師の資格を取得。