最近の泰葉(写真/マネージャー提供)
「もう……手がつけられないような“鬼”みたいな人になっていました。『鬼滅の刃』の妹(禰豆子)みたいな……あんな可愛くはないですけど(苦笑)。そんな状態だったと思います」
「鬼のような顔をしていた」 躁状態の当時を振り返る
「'16年に精神科のお医者様に診ていただいたときに、“PTSDによるうつ状態”という診断をもらっていました。そのころ2年間くらいは、すごいうつになっていました。その後、とても調子がよかったので、病院に行かなくなってしまったんです。
「とても元気ではあったのですが、すごく怒りっぽくなっていました。たとえば、すごく怒って自分の大切にしている着物を水浸しにしたり、昔のアルバムを切り刻んでしまったり、さらには家族に当たってしまったり……。何に対しても、ものすごく怒るんです。
「なんでもできると思っちゃうんですね。事業を大きく展開しようとしてしまって、それが現実は読みが浅かったり。必ず人と喧嘩になってしまうし。普通にお付き合いしていれば、お互いにうまくやり合えるんでしょうけど、何をやってもその方の嫌なところに言いがかりを付けてしまって、お仕事がうまくいかなくなったり。
社会的にうまくやっていけなかったです。トラブルばかり起こしてしまっていました……。『週刊女性』さんでもいっぱい報道していただきましたけど(苦笑)」
どこかで私もおかしいなと思っていた
『週刊女性』では泰葉についてこれまで、「借金問題で自己破産」「脅迫罪の疑いで書類送検」「高級ホテルで100万円踏み倒し」「元マネージャーの自宅に出刃包丁・犬のフン・脅迫状を送りつける」などなどを報じてきた。
「大変なことばかりしてしまっていたので……。私というと“奇行”みたいに言われていたものですから。事件まで起こしてしまっておりますので……。今の私としては考えられません。あんなことをするなんて……。すべてが病状だったとは言いませんけれども、あれらは(双極性障害の)病状だったんだろうなと思っております。今になって思うと、自分が自分ではないような感覚でした。そのときは自分が正しいと思ってやってしまっていました」
「知人の勧めで、身体のケアで鍼治療やマッサージに行くようになっていました。そのなかで“身体だけでなく、心もメンテナンスもしたほうがいいんじゃない?”と、柔らかい言い方でアドバイスしてくれた方がいて。どこかで私もおかしいなと思っていたので、行きたいなと気持ちが芽生えたんだと思います。
「すっかり! すっかりなくなっていたんです。もしかすると出しきったのかもしれませんね。ただ、双極性障害は一生続くもの。障害なので。お薬治療は一生続けなければならないんですけども、ちゃんと(治療を)続けていれば社会復帰もできる病気だそうです」
「友人を頼りながらですね。とても親切な方がいるので、今は安定して生活させていただいています。ただ、詳しいことはちょっとまだ言いたくないので、すみません。ご迷惑もかけるので」
「そうですね……ちょっと向こうもコロナで日本に全然来られなくなってしまって。飛行機も日本に入れなくて。また、私の病気が出てしまって、2週間に1回通院しなくてはならないというのもネックになって。それでパキスタンに行って、結婚して生活っていうのができなくなったんですね。
「どうしてこうなったんだろうって……もう還暦になったので考えて。やはり自分がすべきことを全うしてなかったっていうことがいけなかったと思うので、自分が培ってきた音楽をまたイチからやり直すというか、音楽を中心に活動していきたいと思います。待ってくれているファンの方もたくさんいるので、ライブを中心に活動していくと決めました。歌をうたうことに決めました」
「今後が楽しみですね。これだけの経験をした今、どんな歌がうたえるのか。(YouTube用の)動画もたくさん撮ったものがあるので、編集が終わり次第、どんどんあげていきたいと思っています。今はYouTubeが音楽活動となっていますが、やはりコロナが終息して、またライブができるようになったら、ライブで“復活”ということになると思います」
病気に人生を振り回される人も
「双極性障害とは、“躁状態”と“うつ状態”が起きる病気です。人数としましては、世界的におよそ100人に1人くらいの割合。けっしてまれな病気ではありません。
うつ病だと思っていたら、双極性障害だったということもしばしばありまして、診断が非常に難しく、また時間がかかる病気です。診断に至るまでに平均4年から10年くらいかかると言われています。そして多くの方が、病気を受け入れない、受け入れるのに時間がかかるということから、病気に振り回される人生を送られる方も少なくないというのが実際のところです」
「うつ状態からはじまった場合は、うつ病と診断するのがある意味正しいわけですので、その途中から躁状態が出てきて、双極性障害と診断が変わります。最初からどうしても双極性障害と診断できないという原理的な問題が1つ。
「基本的に気分が爽快になる状態が1日中続き、それが毎日毎日ずっと続きます。よく勘違いされるのは、何かいいことがあって気分が上がるとか、ひどいことを言われて、カーっとなるとか、それらは全然違いまして、1週間くらいの間ずっとハイテンションが続いてしまう。しかも思いついたことをどんどんやりすぎてしまうので、場合によっては借金を抱えてしまったり、身近な人に暴言を吐いたり、それで人間関係を失ってしまったりします」
泰葉は「心が軽くなると嬉しい」
「双極性障害には『I型』と『II型』がありまして、I型というのがこれまでお話した躁状態が出る病気になります。II型はうつ状態をくり返した上に、“軽躁状態”というそこまで問題にならない状態のもの。今、原因の解明が進んでいるのが、主にI型の双極性障害です。これには、ストレスなどの環境因というよりは、体質というか、細胞レベルの機能の変化が関係していると考えられています」
「私が研究をはじめた30年前は、治療薬が非常に少なく治療に難渋していたのですが、その後30年の間に次々といろいろな薬が開発されまして、現状では双極性障害を予防するための薬である『気分安定薬』と『非定型抗精神病薬』、これらを組み合わせることで、かなりコントロールできるようになりました。
ただ双極性障害の予防療法というのは、薬物療法と“心理社会的治療”の2つが両輪となっています。いくら有効な薬があっても、その有効性を引き出すためには、“この病気である”ということを受け入れること。そういった心理的な治療が非常に重要となってきます」
「患者さんからもよく尋ねられますが、たとえば高血圧という病気は完治するのか。血圧が高いので降圧剤を飲む。すると血圧が下がる。それを飲んでいれば血圧は上がらないし、心筋梗塞や脳梗塞などにならないで済む。これは“完治”なのかということです。
「私がみなさまにできることはないんですけど、ただ、社会復帰もできる病気なので、治療を続けてほしいということと、お互い仲間同士という気持ちを持って、励まし合って、気持ちを共有していけたらと思います。苦しみだけでなく、喜びもあります。ちょっと身体がよくなるとうれしいんですよ。心が軽くなるとすごく毎日うれしいので、そういうことを共有していけたらと思います」(泰葉)