(左から)賀来賢人、唐沢寿明、二階堂ふみ
テレ朝の刑事・医療ドラマが鉄板
「それは、テレビ朝日系の刑事ドラマと医療ドラマが鉄板なだけで、他局となるとそうでもない」
「実際、大した内容ではないけれど(笑)、こういったドラマには固定客がついているんです。たとえるなら、毎月毎月、効くかどうかわからないサプリを買い続けている通販の顧客層と同じで、ドラマにもずっと見続けているファンがいるわけです。そこが“鉄板”なんですよ」(吉田さん、以下同)
「見ている人は流動的ではなく、固定しているということ。毎週同じ層が見続けている。新規の視聴者が加わることは少ないわけです」
視聴者が振り向くには?
「ひとつは“放送枠の問題”です。どうしてもドラマで数字がとれない時間帯というのがあるんです。例えば、今はなくなってしまいましたけど、TBSが『月曜ミステリーシアター』というドラマ枠を月曜20時台に作っていました。
「ジャニーズのアイドルたちの使い方ですね。刑事ドラマを見る人たちって、年配の方が多いじゃないですか。何十年も警察モノや刑事モノを見てきたファンにとって、目が肥えているというか純粋に面白いドラマを求めているわけです。別にジャニーズのタレントさんたちがダメというわけではありませんが……」
「この前のクールで放送していた『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)は『Sexy Zone』の中島健人と『King&Prince』の平野紫耀が主演しましたが、平均視聴率が11%。今をときめくアイドルが出演しているなら、もっとよくてもいいはず。ファンとストーリーを楽しみたい層とは違うわけです」
「どれだけいい役者をキャスティングしても、地味すぎたり硬派すぎるとダメなんです。以前、今野敏が書いた警察小説の『隠蔽捜査』なんて本当に面白いストーリーだけど、TBSでドラマ化したときのキャスティングが杉本哲太と古田新太。おじさんしかいないわけです。
「渡瀬恒彦さんとイノッチこと井ノ原快彦のコンビがすごくバランスがよかったんです。そして、ふたりの周りに吹越満や田口浩正、津田寛治、羽田美智子といったなかなかの手だれ俳優を置いて。
低視聴率ドラマを辛口ぶった斬り!
「これは前シリーズが完璧な布陣で制作されていた反面、新バージョンは失礼な言い方だけど“劣化版”みたいになっちゃった(笑)。
「オリンピックで増えるインバウンドたちの、東京に対するネガティブなイメージを払拭するために、NS係なんて部署を警視庁が作った、という設定がまずわからない。しかも、女性起用といいながらも、NS係はキムラ緑子と水川あさみのみ。
「主演が浅野忠信と神木隆之介で、ゲストに斎藤工や中川大志、新田真剣佑、オダギリジョー! 二階堂ふみも出演していて、豪華な俳優陣。痴漢冤罪の弊害に、女教師と男子生徒の恋、聖人君子の夫が家ではDVをしていたり、娘を犯した鬼畜な父親……。
「『3年A組』が当たったので、その流れを酌んでそのまんまというノリはわかる。でも『3年A組』は学園モノで、今の若い子の気持ちや感覚を全部くみ取ったからウケたわけです。それを刑事モノに引きずり込んでもね……。
でも、いろんなことを入れ込みすぎじゃありませんか、と。主演の賀来賢人は何でもできる人だけど、どう演じたらいいんだろう、と悩んでいたんじゃないのかな(笑)」
今クール“爆死”が決定的!?
「初回が7.7%というのも驚きだったんです。こんなに数字をとれないのかと思うけど、視聴者からすれば4文字で終わっちゃうんです。“い・ま・さ・ら”って(笑)。私、元ネタのドラマを1秒も見ていないんですけど、逆に本家を見ていないから楽しめるかなと思っていたんです。
「“この枠にドラマ?”みたいなものをどんどん作ってもいいと思うんです。かなりの英断だけど、朝8時からの枠とかね。今、仕事もリモートで家にいる時間帯が以前とは違うじゃないですか。視聴習慣も変わっているんだから、新しい枠でチャレンジしたほうがいいのかな、って。
最近の“爆死”刑事ドラマ
『隠蔽捜査』(2014年TBS系)■7.5%■今野敏の小説が原作。杉本哲太と古田新太が主演。絵ヅラがおっさんすぎたか。硬派で面白かったのに
『ホワイト・ラボ 警視庁特別科学捜査班』(2014年TBS系)■7.9%■北村一輝主演、科捜研ストーリー。北村と宮迫博之がエリート科学捜査官というキャスティングに違和感あり
『SMOKING GUN 決定的証拠』(2014年フジテレビ系)■7.4%■民間の科捜研が舞台の香取慎吾主演ドラマ。元刑事の所長役に鈴木保奈美を据えるも、数字とれず
『京都人情捜査ファイル』(2015年テレビ朝日系)■6.8%■高橋克典主演。犯罪被害者支援室を描いたドラマ。刑事モノというよりは人情モノになっちゃった
『最強のふたり 京都府警特別捜査班』(2015年テレビ朝日系)■7.3%■名取裕子と橋爪功の大御所W主演。京都モノ2時間ドラマの“常連”で主演作があるふたりはそっちに専念しろって話か
『キャリア 掟破りの警察署長』(2016年フジテレビ系)■7.2%■玉木宏主演。のんびりイケメンのキャリアが署長になって大活躍というぬるい物語。1度も2ケタにいかず
『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(2016年フジテレビ系)■8.0%■殺人に興味ある女刑事を波瑠が演じた。バディ役が関ジャニの横山裕。これも1回も2ケタ届かず
『嫌われる勇気』(2017年フジテレビ系)■6.5%■アドラー心理学の原作を刑事モノにアレンジして大失敗。学会からも抗議文。主演は香里奈
『警視庁いきもの係』(2017年フジテレビ系)■6.5%■橋本環奈主演。警察モノなのに動物モノって……。エンディングで踊らされる渡部篤郎が気の毒
よしだ・うしお コラムニスト、イラストレーター、テレビ評論家として『週刊新潮』で『TVふうーん録』を連載中。『幸せな離婚』(生活文化出版)『親の介護をしないとダメですか?』(KKベストセラーズ)など著書多数