今年の初売りは、市場の飽和感もあってジリ貧化に歯止めがかからない福袋をやめる企業が増えてきた。元々、無印良品やユニクロ、ユナイテッドアローズは取り扱いがないし、アダストリアグループも昨年から福袋企画をやめた。そして今年はライトオンもその流れに加わった。
1年前から工場の閑散期を狙って安価に生産したものを入れてお値打ち感を出すのが「平成の福袋」だった。それが競争激化で、購入前に福袋の中身が確認できるのは当たり前に。中身のサイズカラーのアソートが表記され、中のセット枚数も増えいく傾向にあっては取り組むメリットが年々薄れているのが現実だ。
だが、福袋を取りやめた企業がその分の売上げを他で稼げているかというと、決してそうは思えない。在庫リスクや企画・生産労力も踏まえて費用対効果に見合っていないという総合的な判断をしたのだろう。
そんな1月のアパレル6社の状況を振り返ろう。
〈1位〉良品計画(既存店)売上高 100.8%*1、客数 110.9%、客単価 86.7%
【主要施策】SALE/【話題の取り組み】1/14まで期間限定価格、2/4まで期間限定価格/【注目アイテム】〔レディス〕縦横ストレッチチノバルーンスカート(税込み4990円)、〔レディス〕ウールシルク洗えるクルーネックカーディガン(税込み3990円)、〔メンズ〕新彊綿オックスショップコート(税込み4990円)
例年に比べて高く推移した気温の影響から冬物アウター、ニット、防寒小物は伸び悩んだものの肌着や靴下などの実用衣料が好調に推移して売上げを底支えした。期間限定価格を切れ目なく対象アイテムをローテーションさせながら続けた結果、「買上客数がアップし、客単価がダウンする状況」は続いている。
そうした中、2020年2月期連結純利益を従来予想の294億円から251億円へ下方修正。中国のコロナウィルスによる影響もあり、6日までの中国の休業店舗は138店舗まで広がっているようで、さらなる業績への影響が心配される。
〈2位〉アダストリア(既存店)売上高 98.4%、客数 97.4%、客単価 100.9%
【主要施策】WINTER SALE MAX60%(グローバルワーク)/【話題の取り組み】Chocolat Color Knit (グローバルワーク)、HERSHEY’S KISSESコラボ、ツモリチサトコラボ(ニコアンド)/【注目アイテム】〔レディス〕ツモリチサト コラボワイヤー入ビッグシャツ(税込み7590円)、〔レディス〕ツモリチサト コラボワイヤービッグワンピース(税込み9460円)/ 〔メンズ〕MOTION TECHスキニーパンツ(税込み4950円)
初売り福袋をやめて2年目となる今年は「ハッピーシェアニット」や「リバーシブルボアニット」といった限定特価商品を売り込んだものの、冬物セール商戦自体に力強さを欠き、1月の既存店売上高の前年割れは3年連続となった。
月後半は春物企画としてバレンタインシリーズを展開。グローバルワークではチョコレートカラーニットとしてミルクチョコレート、ミルクティーチョコレート、ホワイトチョコレート、ラズベリーチョコレート、ミントチョコレートの5色をそれぞれのチョコレートイラスト・ラベルとともに訴求したが、それが目をひいた。ブランド別ではローリーズファーム、レイジブルー、ページボーイ等が好調だった。
〈3位〉ユナイテッドアローズ(既存店*2)売上高97.1%、客数94.3%、客単価101.9%
【主要施策】 SALE30~40%OFF+2点以上お買い上げでSALE対象商品がさらに10%OFF/【話題の取り組み】FINALSALE UPTO60%OFF(グルーンレーベル)/【注目アイテム】〔レディス〕HAMILTON WOOL MIXメルトンロングPコート(税込み4万9500円)、〔レディス〕ビーバーノーカラーロングコート(税込み2万3760円) 、〔メンズ〕:THE NORTH FACE ビレイヤーパーカー (税込み6万5000円)
暖冬で冬物衣料が苦戦した。
ユナイテッドアローズも2020年3月期連結業績を下方修正し、予想売上高1642→1612億円(▲30億円)、営業利益119→108億円(▲11億円)、経常利益120→109億円(▲11億円)。10月の消費増税による駆け込み需要の反動減やオンラインストアの停止(期間は2カ月強)に伴うネット通販や実店舗のマイナスなどが影響した。
ネット通販の自社運営化を行う中、約12億円のソフトウェア開発について今後の利用が見込めなくなった部分の減損処理を約5億円計上。さらなる減損損失が追加で発生する可能性も示唆しており、自社運営への取り組みは予定通りには進捗していないようだ。
〈4位〉ユニクロ(既存店*3)売上高 92.1%、客数 94.9%、客単価 97.1%
【主要施策】新春SALE/【話題の取り組み】ミラクルエアー3Dジーンズ、クレイアニメーションパジャマ企画(ベビーサイズ)、初売り税抜き1万円以上買い上げ紅白タオルをプレゼント/【注目アイテム】〔レディス〕スウェットオーバーサイズプルパーカー(税抜き2990円)、〔レディス〕スウエットクルーネックシャツ(税抜き1990円)、 〔メンズ〕ドライストレッチスウエットパンツ(税抜き1990円)
全体的に暖冬の影響が大きかった。ダウンジャケットをはじめとした防寒アウターや保温肌着の動きも鈍く、既存店売上高は5カ月連続で減少と秋冬商戦は厳しい結果に終わった(今年は1月末までしっかりダウンコートやダウンジャケットの値引き販売スペースが取られ、不振だったシーズンを象徴していた)。
そうした中でもおおむね好調に販売できたハイブリットダウンは来期380万枚のオーダーを計画しているようで圧倒的な単品販売力は健在だ。ただ、中国にある全750店舗の半数にあたる約370店で休業を余儀なくされており、ユニクロも中国での販売の影響が心配。これまで好調だった海外売上げをけん引してきた東アジア店舗の売上状況について不安を抱える。
〈5位〉*しまむら(既存店)売上高 90.1%、客数 91.6%、客単価 98.8%
【主要施策】歳末感謝祭、初売り福袋/【話題の取り組み】華マルチスーツ(レディスフォーマル)、親子で着るヒーローアイテム企画(ウルトラマン、仮面ライダーコラボ)/【注目アイテム】〔レディス〕12Gフリルネックニットプルオーバー(税抜き1290円)、〔レディス〕小花柄Aラインタックスカート(税抜き1290円)、〔メンズ〕T/C裏起毛雪山モチーフトレーナー(税込み980円)
昨年に比べ休日が1日少なく冬物販売が伸び悩んだ結果、前年同月実績を5カ月連続で下回る結果となった。例年販売している福袋に関して今年は好調だったようで、レディスのコーディネイト福袋がよく売れた。フェミニン5点セット(税込み3000円)、ガーリー4点セット(税抜き2000円)、マニッシュ7点セット(税込み5000円)など。
昨年の増税後あたりからチラシやSNSなどでは本体価格表記に切り替え、安さを強調。455円(500円)、637円(700円)、819円(900円)と衣料品にはなじみの薄い1円刻みの表記で安さをアピールした。
〈6位〉ライトオン(既存店)売上高 88.1%、客数 75.2%、客単価 117.2%
【主要施策】GO!GO!BARGAIN 最大70%OFF ニューイヤースペシャルプライス5日間限定/【話題の取り組み】元旦限定プライス税抜2020円、人気ブランドボトムス2本目半額/【注目アイテム】〔レディス〕ラグマシーン・バックプリントロゴトレーナー(税抜き3990円)、〔メンズ〕キャンプセブン・エンボスロゴパーカー(税抜き4990円)、〔メンズ〕チャンピオン・無地クルーネックトレーナー(税抜き4490円)
今年から元旦の福袋販売をやめ、代わりに年始のセールを実施。大晦日の2019円→元旦は2020年と西暦年度を文字ってセールイベントのアピールをした。秋冬不振の反省を踏まえ、春物から商品価格やテイストの見直しに取り組むよう。レディスでは今まで取りこぼしていた客層を狙った新たなヒット商品も出始めているようで、これからの動向に注目したい。既存店売上高の前年割れは8カ月連続。
〈1月のまとめ〉「超暖冬」が冬のセールにマイナスの影響
1月は時折、寒波に覆われることもあったが、継続した寒さはなし。「超暖冬」で推移した秋冬は本格化した冬のセールにも影響を及ぼす結果となった。
ストライプインターナショナルが従来の梅春、晩夏を含めた6シーズンMDをやめ、マイナス3度から36度の気温を3度刻みで14分類したカセット納品に取り組むように、往来の企画タームによる組み立ではリアルシーズンとの乖離が大きい。
これを見直す必要があり、例えば、今年になぞらえると丈長コートは年内投入が適切だったのか。定時のタイムスケジュールのままだと、プローパー販売期間が限りなく短く、あっという間に冬のセールに入ってしまう。供給側も早々のセールとその長期化に向けては段階的な値引き策をとらざるを得ないから、セールインパクトに欠け、客離れの一因になりかねない。
おおよそのシーズンセール開催スケジュールは予定しても、気候要素に応じ弾力的なスケジュールにしていかないと業界全体が疲弊しかねない。セール自体が長期化しているのだから、例えば①歳末、②年始、③大寒、④立春(春節)と、①~④回にわたってセール対象商品を組み替えていくことが、これからのシーズンセールには必要となってくるだろう。
東京都の平均最高気温は11.1℃、平均最低気温は3.7℃。昨年と比べても最高気温で1.2℃、最低気温では2.3℃も高かった。8、18日と大型の低気圧に覆われたものの寒気の影響が弱く、気温は平年を上回った。降水量と日照時間は平年を下回っている。
(2月商戦のポイント)集客対策が重要、コンテンツ企画も活用!
コロナウィルス騒動は気になるところで、中国国内の店舗を構える企業は直接的な影響を受けることになる。そうでない企業でも直近のビジネスに影響は出ないものの、2018年ベースでも中国からの衣料品輸入は58.8%と決して低くない(財務省統計より)ため、影響は出かねない。中国では10日から工場を再開するところが多いようだが、中国国内での人の移動や他の近隣アジア地域への拡散傾向など注視したい。
2月は閑散期シーズンで、1年で一番寒い時期にあたるため、コンテンツ企画も絡めた集客対策が重要。アダストリアグループではツモリチサトコラボやバレンタイン企画としてチョコレートメーカーとのコラボレーション、Bリーグとのコラボレーション企画を予定している。しまむらでも人気コミック『鬼滅の刃』とのコラボレーションのように特定のターゲットを絞り込んだ打ち出しで売上げを作っていきたい。
2月はバレンタイン以外にも節分、プロ野球のキャンプインやグラミー賞大賞の発表など、まだまだ取り組めそうなイベントもあるので、英知を絞って対策していくことが重要となる。
*印の企業=20日締め、*1=衣料品部門の数字、*2=小売既存+ネット通販既存の合算数字、3=既存店+Eコマースの合算数字/文中の売れ筋動向はIR情報および筆者視察によるもの。税込価格は全て10月1日以降の増税後価格としました。
外部リンク