cat_oa-shogyokaionline_issue_81cd4b362e87 oa-shogyokaionline_0_81cd4b362e87_Amazon GoとBingo Boxの強さと弱さ 81cd4b362e87 81cd4b362e87 Amazon GoとBingo Boxの強さと弱さ oa-shogyokaionline

Amazon GoとBingo Boxの強さと弱さ

2018年4月20日 05:00 商業界オンライン

(写真)Avalon/時事通信フォト 第14回は、「無人コンビニと従来のコンビニの違い」です。
 皆さん、「Amazon Go」「Bingo Box」という名前を最近耳にしたことはありませんか?
 これらはAmazon、中山市賓哥網絡科技(中国広東省)という企業が経営している無人コンビニの名称です(現状は店内に商品補充などのための人員がいますが、無人コンビニを目指しているといえます)。
 Amazon GoはAmazonの本社があるシアトル、Bingo Box は北京、上海、広州などで実店舗を見ることができます。ぜひ、皆さんも旅行や出張の際に一度、ご自身の目で未来のコンビニがどのようなものかを確認されるとよいでしょう。

モノロジックではなく、コトロジックの発想でつくられている
 Amazon GoもBingo Boxもコンビニエンスストア(以後、コンビニ)という業態の中に含まれます。しかし、セブン‐イレブンやローソン、ファミリーマートなどの従来のコンビニとどこが違うのでしょうか?
 Amazon GoやBingo Boxは、従来の小売業の通説(価格、品揃え、サービス、店舗内環境等の小売ミックス至上主義)に縛られない新たな発想で作られたコンビニなのです。
 従来のコンビニは限られた店舗スペースにいかに売れ筋の商品を在庫切れなく、品揃えするかに力点を置いてきました。いわゆる、商品中心のモノロジックの発想です。
 しかし、Amazon GoやBingo BoxはICTやAIにより、忙しい消費者の買物の負担を少しでも解消することに力点を置いています。つまり、利便性の向上というコトロジックの発想でつくられているのです。

2つある「無人コンビニが提供する付加価値」
 Amazonや中山市賓哥網絡科技が、Amazon GoやBingo Boxで提供する価値は2つあります。
 1つは自社にとっての「生産性の向上」(在庫最適化、店舗運営面での経費削減〈人件費、光熱費等〉、スマホ決済の導入など)です。日本もそうですが、中国でもコンビニで働くパート人材の確保は難しく、人件費も高騰しています。それを無人コンビニは解消できるのです。
 もう1つはAmazon GoやBingo Boxでは、事前にスマートフォンのAmazon Goアプリ、あるいはBingo Boxアプリをダウンロードし、入店時に自身のスマートフォンで入り口にあるQRコードを読み取ると、個人認証が完了し、店内で商品を検討し、購入後、決済は、Amazonの場合、Amazon Pay、Bingo Boxの場合、AlipayやWeChat Payで済ませることができます。
 無人コンビニは、サービス面における「生産効率、利便性」という点で、消費者に付加価値を提供しているのです。

「ニューリテール戦略」を進める理由と背景
 中国では、アリババ集団の創業者である馬雲(ジャック・マー)会長は2016年末に新たな小売成長戦略である「ニューリテール戦略」を発表しました。
「ニューリテール戦略」とは、日本でいう「チェーンに基づく個店経営」に近い概念です。本部に該当するのが、アリババやテンセントなどのプラットフォーマーで、店舗はプラットフォーマーの仕組み(チェーンオペレーションシステム)を使って、地域の商圏特性に合わせ、店頭マーケティングを実施するという概念になります。
 中国ではアリババやテンセントといった2大プラットフォーマーが自社のイノベーションを推進するためにこの戦略を推進しているのは、両者ともネット事業だけではさらなる成長が見込めないことを悟ったということでしょう。

「データを保有するものが、小売りを制す」
 現在、彼らはリアル小売業(百貨店、GMS、スーパーマーケット〈SM〉等)を買収や提携で取り込むことに躍起になっています。
 そして、取り込んだリアル小売業に対し、自社の強みであるICT技術に基づく、ビッグデータ解析、AI、DSCM(消費者視点を持ったSCM)、One to One Marketingのノウハウを無償で提供しています。
 その結果、特に地域の中小小売業(商店)はリアル大型小売業(GMS、SM、コンビニ等)に対し、販売価格面での不利、在庫リスクを一気に解消しつつあります。
 ただし、その一方で彼らは地域の中小小売業に自社の決済サービスを使用することを強制し、顧客の貴重な購買履歴データを決済時に入手しています。この顧客データを基に自社グループの品揃え、商品開発(PB)、メーカーに対する購買力を強化しているのです(Bingo Boxなどもニューリテール戦略の一翼を担っています)。
 これは「データを保有するものが、小売りを制す」の典型的な事例です。かつてはその雄がウォルマートでしたが、今はその存在がネット小売業のAmazonやアリババ、テンセント、日本では楽天等に代わってきているのです。

無人コンビニはまだ商圏特性に柔軟に対応できない
 ただ、無人コンビニが従来のコンビニに劣っている点があります。
 それは地域固有の商圏特性(イベント、食の好み等)にフレキシブルに対応できない点です。
 従来のコンビニでは店舗で発注をする際、自動発注とマニュアル発注を併用しながら、店舗固有の商圏特性に対応し、販売機会ロスを防いでいます。
 しかし、無人コンビニでは人が店内に介在しないか少ないため、自動発注を行います。そのため、上記のような地域イベントが発生した場合に販売機会ロスは免れません。
 品揃えでも、従来のコンビニは消費者からのニーズや不満を直接聞けるため、その貴重な情報を本部に上げ、新たな商品開発のヒントを得られます。
 ところが、無人コンビニではID-POSや消費者の購買動線の分析しかできないため、新商品開発等の需要創造や適切な品揃えが実は難しいのです。

従来のコンビニは「効率と効果のハイブリッドモデル」
 つまり、従来のコンビニは「仕組み(効率)と店頭マーケティング(効果)のハイブリッドモデル」といえるわけです(小売業にとって、人はコストではなく、投資と見る考え方もあるのです)。
 日本でもJR東日本が2017年11月に大宮駅でコンビニ(キオスク)の無人店舗実証実験を行いました。決済ツールは電子マネーのSuica。この実験の鍵を握るAI技術は、サインポスト社が手掛けており、お客が店内で商品を手に取るたびに小型カメラが商品を取ったことを識別し、AIが合計金額をレジで計算する仕組みになっていました。
 アメリカや中国とは違い、日本の消費者はモノ(商品)の良さばかりではなく、サービスの良さも店舗選択の際、非常に重視します。今後、日本のコンビニも、こうした点を踏まえながら「日本人の消費、ライフスタイルに合った独自の無人コンビニの姿」を模索することでしょう。未来のコンビニから目が離せませんね。

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cat_oa-shogyokaionline_issue_81cd4b362e87 oa-shogyokaionline_0_bc8bf66bc58f_ビッグデータなど、信用できない bc8bf66bc58f bc8bf66bc58f ビッグデータなど、信用できない oa-shogyokaionline

ビッグデータなど、信用できない

2020年4月4日 05:00 商業界オンライン

  「マーケティング評論家」という肩書きの商売がある。マスコミ、特にテレビの雑談番組に出たり、著書を著したり、講演をしたり、企業内教育をしたりする。その評論家のほとんどが利用するデータが、ビッグデータである。例えば先日あるテレビ番組に出た某評論家によれば、某大学経営学部の19年春の徹底的な調査によって得られたビッグデータに従えば、男性の考える「結婚適齢」は、30代が34%、40代が25%、50代が8%、わからないが33%だった、ということである。
 視聴者の多くは、なるほど晩婚が増えるわけだ、と納得する、あるいはそんなはずはない、自分の近辺には早婚者が多い、と納得しない。だが重要なことは、その後に起こる。このデータを知って、納得したものも納得しないものも、テレビを見て10分後には、このデータをすっかり忘れてしまっていること、である。マーケティング評論家の役割は、ある定説の説得あるいはその反論という、「結論」補強のために援用され、そしてすべて忘れ去られる。
 ちなみに先に挙げた某大学の調査データと称するものは、私が今思いついた捏造である。だが重要なことは、仮にテレビの評論家のデータが仮にこのような「捏造」であっても、ダレもその真偽を確かめようとしない、ということである。なぜならデータはあくまで、ある結論を導き出し説得するための手段の1つとして用いられているのにすぎない、という常識を、説くものだけでなく、実は聞くものも共有しているからだ。
 もちろんビッグデータが役に立つ場合もある。例えば天気予報。天気予報は、1.繰り返し現象であり(春夏秋冬は繰り返す)、2.パターン化ができ(快晴と大雨の気象配置図はパターン化できる)、3.後にただちに結果を検証でき、4.それがさらに次の予測の資料になる、といった条件を備えているからである。その天気予報さえ最近は異常気象で危ないが。
 「天気予報」が示唆するのは、データが資料として活用できるテーマについては、データ量が多いほど、データを効率的に用いることができる、という事実である。だがマーケティングを知るものなら、マーケティングこそ、むしろ過去のデータを資料として活用できないテーマが圧倒的に多い、と思うはずである。
 それは、いまや場所によっては人口を超える台数が普及している「携帯」は、いったいどんなビッグデータを根拠に生まれたか、という問いを考えてみれば、明らかである。「携帯」普及に先行する、その普及を示唆する、どんなビッグデータがあったか。さすがのマーケティング評論家も、それを見いだすことはできまい。
 いや肝心のことは、仮にそれを見つけ得たとしても、「携帯」具体的に例えばiPhoneを発明した人は、そのデータを見て発明したのではない、ということである。iPhoneは、ビッグデータからは絶対に生まれない。としたら電気自動車も、自動運転自動車も、それを生んだのは決してビッグデータなどではない。
 これは独断ではない。なぜならそれには、こういう事情があるからである。人々の欲望は、「内」から生まれるのではなく、「外」から生まれる。男が女を、女が男を意識するのは、具体的に目前にある特定の異性が現れたときである。すべての異性は、「内」からではなく、明らかに「外」から立ち現れる。理想のマリアそっくりの女性が目前に現れたとき、人は恋に落ちるのではない。逆である。具体的な特定の異性が目前すなわち「外」に現れたという事実がまずあり、そこから後に「内」に、その異性への恋が生まれる。
 「携帯」でも、事情は同じである。人々の前に「携帯」が具体的なモノとして出現し、そこでそれに興味を抱く人間あるいは抱かない人間が現れ、それが「携帯」の購買と所有をもたらし、それを用いる他人という外部が増加するにつれ、さらにそれを持ちたいという欲望が、まさに外から生まれる。
 モノに限らない。米国のダラー・ストア(日本の100円ショップとは違い、はっきりいえば貧乏な人に、生活必需品の小パック・低売価品を売る店である)は、何らかの人口統計、ビッグデータから生まれたのではない。それはまず個人の思いつきから生まれた。思いついた人あるいはそこから起業を考えた人は、その起業のためなんらかのビッグデータを参考にしたかもしれない。だがまだダラ-・ストアが生まれていないのに、ダラ-・ストアに関するビッグデータがあろうはずもない。だからダラ-・ストアは、断じてビッグデータを見て、思いつかれたのではない、と断言できるのである。
 だから日本にもダラー・ストアが生まれるかどうか、それに関するビッグデータなど存在しない。生まれないというビッグデータも存在しない。まして米国のダラ-・ストアで買物のする人々は、ダラ-・ストアが、そこに生まれたから、買ってみようと思って体験し、それが広がり・増えていったのであって、それをビッグデータで説明することはできない。
 ビッグデータが説明し得ること、その役割は、あくまで携帯やダラ-・ストアが生まれ、支持された後、なぜ支持されたか、テレビの雑談番組で、もっともらしい説明が必要になったとき、マーケティング評論家がその参考資料として用いること、しかその用はない。そしてそれこそ、天気予報士が、過去の気象の膨大なビッグデータを前にして、翌日の天気を予報するのとまったく同じ行為である。
 「納得」させるための、「説明」はすべて、リニアに行われる。だがイノベーションは、リニアなデータの上には、決して生まれない。セブン-イレブンが初めて、あの「おにぎり」を売ったとき、あの「おにぎり」についてのデータは、ビッグデータどころかスモールも当然に皆無であった。そのとき、もしビッグデータが存在したとしたら、それはあの「おにぎり」ではなく、過去の「おにぎり」についての通時的かつ共時的なビッグデータであったはずである。
 そのデータは、あの「おにぎり」をマーチャンダイジングする上では、参考になっただろうが、あの「おにぎり」を着想するのには、何の参考にもならなかっただろう。今でこそあの「おにぎり」については、確実に膨大なビッグデータが存在する。だが膨大極まるビッグデータが存在しているはずのこの何十年間、あの「おにぎり」にとって代わる、出現時のあの「おにぎり」に匹敵する、別のあの「おにぎり」は、ついぞ生まれていない。
 考えてみれば、メーカーがなぜビッグデータを参考にできるかといえば、基本的に本当の「新製品」は、ほとんど出していないからである。ビール・メーカーは、かつてからある「ビール」の、いわばバリュエーション、改訂版を、出し続けている。最初は醸造したての生ビールを、次に瓶入りを、さらには缶入りを、そして第3のビールを、さらにはノンアルコール・ビールを。もちろんそれぞれは画期的な「新製品」だが、「ビール」という視点でいえば、要するにビールの改訂版を出し続けているにすぎない。
 これは決して非難ではない。マーケティングとは、そういうものだ、といいたいだけである。だから「マーケティング」は、矛盾なく「ビッグデータ」と親和性がある。それは天気予報に似ている。天気予報は有用である。なくなったら困る。だが同時にビッグデータで予報できないものがあることにも注意しなければならない。
 地震である。地震は、今のところどれだけビッグデータがあっても、ビッグデータからは予測不可能な現象である。地震について、ビッグデータができることは、あくまで事後の「説明」のみである。ビジネスにおいても、本当のイノベーションは地震のように起こるものである。なぜ今それをいうか。これまでの「常識」がまったく通用しない状況が生まれているからである。
・島田陽介先生のメールアドレス:shimad@msb.biglobe.ne.jp
※本稿は島田陽介先生のアドレスにアクセスした方に「今月の提言」の形で送っているものの加筆訂正版です。

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cat_oa-shogyokaionline_issue_81cd4b362e87 oa-shogyokaionline_0_b5ef040d5d97_アマゾンでも「大幅配送遅延と在庫切れ」が起きた b5ef040d5d97 b5ef040d5d97 アマゾンでも「大幅配送遅延と在庫切れ」が起きた oa-shogyokaionline

アマゾンでも「大幅配送遅延と在庫切れ」が起きた

2020年3月31日 22:00 商業界オンライン

フルフィルメントセンターで感染が拡がり、欠品や出荷遅延が起こっているアマゾン。感染発生後の対策が不十分として、従業員がストライキを起こす施設もある〔出所〕アマゾン社提供 筆者の外出禁止生活も10日目となった。本題に入る前に、最も感染被害が大きく非常事態下にあるニューヨーク州政府の対応と市民の様子を報告したい。3月29日時点で米国の感染者数は14万904人、死亡者数は2405人に拡大している[1]。その半数を占めるニューヨーク州では、感染者数のピークは21日後の4月後半と推定し、既に州内は22日から期間を限定せず外出禁止、公立小中高校は4月1日まで閉鎖だったが4月15日まで延長した。既にオンライン授業に切り替わっているので、教育に大きな遅れが生じる訳ではないが、経済への影響は深刻だ。これからピークが来ることが明らかな現在、企業閉鎖期間も15日まで延長、暫定的に4月1日頃に営業再開としていた小売業者も、再開日程の延長は必須で4月中再開の見込みもたっていない。
 全米レベルでは総額2兆ドルの景気対策が成立したが、既に医療機能がオーバーフローし始めているニューヨーク州では、感染拡大の減速と感染者の治療体制の短期拡大に力を入れており、既に不足している医療用保護用品や人工呼吸器、新型コロナ感染患者専用の病院、ベッドの確保を急いでいる。特にベッドは最大14万台が必要なのに対して5万3000台しか確保できていないため、既存の病院の拡充だけでなく、マンハッタン内コンベンションセンターのジャヴィッツセンターや、ホテル、高齢者介護施設、大学寮など全15カ所のコロナ専用施設を設け、ベッド、機材を入れてピーク時に備えている体制を整え始めた。

3月30日、1000台のベッドと12の手術室を持つ海軍病院船コンフォートがマンハッタンに入港〔出所〕スペクトラムNY1 ニューヨーク州クオモ知事は毎日正午前後に30~40分のテレビ会見を通じて、現状および州政府の対策の進捗を報告しているが、このように外出禁止令からわずか1週間で分析に基づいた政策を具体化する指導力を評価する人々は多い。クオモ州知事は会見の締めくくりに必ず市民へのメッセージを語るが、窮屈な外出禁止下にある市民に共感を寄せながらも、市民一人一人が自宅にこもることで、人の命が守れる点を毎回繰り返し強調している。
 加えて、医療関係者、スーパーマーケット従業員、警官、警備員、消防士などエッセンシャルワーカーと呼ばれる人々への賞賛を忘れていない。しかしこちらの現実は一般市民の外出禁止以上に厳しい。医療関係者の間に感染死亡者も出ているが、専門に関わらずコロナ感染者治療に配置され、それを拒否した場合は減給処分の可能性もあるとのこと。
 営業を許されている小売の最前線にも危険にさらされている。25日にコロナ感染者が見つかったマンハッタン内ホールフーズ・マーケットのコロンバスサークル店では店内殺菌のため2日半店舗を閉鎖、近隣のトレーダージョーズも3日閉鎖し、今後も客数の多い大型スーパーマーケットの間では感染者発生のたびに、数日営業休止となる可能性がある。もちろん店内感染を恐れて病欠を取る従業員も後をたたない。

新型コロナ感染者が出たトレーダージョーズ、アッパーウェスト店は店舗消毒のため一時休業〔出所〕筆者撮影 ディストリビューションセンター(DC)やフルフィルメントセンター(FC)でも後述のアマゾンの事例のように、感染が広がっており、感染を恐れて欠勤やストライキが始まろうとしている。前のレポート(『新型コロナウイルスで外出禁止令が出たニューヨーク州で起こったこと』)では消費者のパニックショッピングは小売業者と流通業者の多大な努力でだいぶ収まってきたと書いたが、これから迎える感染ピークに向けて、最前線で働く人々の健康を守り、任務を全うしてもらうかが大きな課題となっている。

フルフィルメントセンターの苦悩:急増する需要、FC内感染拡大

 需要が急増したアマゾンは3月16日、全世界で3億5000万ドルを投資し、米国、カナダ、イギリス、EU諸国のフルフィルメントセンター(FC)、物流、配送、店舗での時給を4月から2ドル相当値上げすると発表。また米国内FCでは10万人の正規、パートタイム社員を募集を開始した。この直後、ワシントン州に続いてカリフォルニア州やニューヨーク州で外出禁止令の施行が発表され、全米で実店舗営業停止が広がった。
 同時期にウォルマートは15万人、ダラージェネラル2万5千人、セブンイレブン2万人など大量に募集を次々発表し、時給の積み増しも行った。2週間後の現在、外出禁止令が30以上の州に広がり、レストラン、ホテル、タクシーやウーバ―、チェーンストアなどで大量の失業者が出て、失業保険申告数が10倍に増えた。エッセンシャル小売業者の人員募集は一過性ではあるが、大きな受け皿となると見られていた。
 しかしアマゾンのFCでは3月18日にニューヨーク市クィーンズ区に同社FCで初めての感染者が出て、26日時点でカリフォルニア州、ケンタッキー州など14カ所に広がっている。感染者が出たFCは一時的に閉鎖し、消毒を行って再開しているが、1万8000人が働くロサンゼルス郊外のFCでのケースでは従業員に感染者発生をメールで伝えておらず、出社して初めて知った従業員たちは恐怖のため多くが自宅に戻った[2]。
 ニューヨーク市スタテンアイランド区のFCでは30日から従業員4500人のうち約100人がストライキを表明しており、この原稿を書いている現在も労使で交渉中だ。理由は同FCで少なくとも7人も感染しているのにマネジャーが状況について従業員に明確なコミュニケーションを取っていなかったこと、感染拡大後もFCを一時閉鎖して消毒を行っていないためだ。従業員側はストライキを行うことで、アマゾンがFCを閉鎖して消毒し、その間従業員に時給を支払うことを要求している。広報担当者は、FCは既に念入りに消毒されており、州の規制通り、従業員同士の距離を2メートル以上空けるソーシャルディスタンシングに従って営業していること、感染者の行動は分析されており、接触者の監視なども行っていると説明している。感染者を出した他のアマゾンFCも、多くは閉鎖なく営業を続けている。
 ストライキをリードする同FCマネジメントアシスタントのクリス・スモールズ氏はCNBCのインタビュー[3]で、アマゾンがマスク、手袋、ハンドサニタイザー、除菌ペーパーなど感染予防の基本的なツールを毎日交換できるだけの数量を従業員に支給していないこと、またマネジャーが感染者が出たことを正確に従業員に伝えておらず、後から人のうわさやソーシャルメディアなどで知った、と語っている。スモールズ氏自身も何人か感染者を自宅まで送り届けたため、現在自宅隔離中だ。

国民生活に影響を及ぼす出荷の遅延、在庫切れ

 アマゾンは3月17日、アマゾンフルフィルメントサービスを利用している米国およびEUの出店者に対して、需要がひっ迫している生活必需品と医療品の出荷を優先するため、大部分の商品の出荷を暫定的に4月5日まで止めるように依頼した。優先対象となるのは、①ベビー用品、②健康および生活用品、③ビューティ&パーソナルケア、④食料品、⑤産業および科学関連商品、⑥ペット用品、だ。

アマゾンで販売しているパンパースのおむつ。3月29日時点で1サイズしかない〔出所〕アマゾン社ウェブサイト この発表の段階で①、②の対象商品、特にせっけんやおむつなどは在庫切れとなっていた。その後徐々に商品は戻ってきてはいるが、1週間強たった29日の段階で、例えば主力ブランドのパンパースのおむつは6サイズのうち1サイズしか在庫が無く、プライム配送なのに配送は5日後だ。もっともベビー専門店のバイバイベビーでもサイズを選ぶと、ブランドは選べないというのが現状だ。ウォルマートはさすがに、長年のサプライヤーとの協力体制のおかげでアマゾンでは販売できていない複数の主力ブランドもサイズも確保している。しかも、食品とファーマシー部門があるためエッセンシャル小売業者と認定され多くの店舗が営業中だ。ただし、需要が高い必需品のオンラインでの購入は不可で、在庫がある店舗に買いに行かなければならない。在庫は全店に行きわたっておらず、ここでも商品供給の苦労が見え隠れする。

ウォルマートではパンパースのおむつの全サイズを販売しているが、サイズによってはオンラインでは買えず、店舗に行かなければいけない〔出所〕ウォルマート社ウェブサイト おむつ以外の必需品についても似たような状況で、アマゾンではハンドサニタイザーやペーパータオルは主力ブランドはサイトから消えていたり、多くのサイズが切れていたり、割高となる容量の小さい商品、聞いたことがないようなブランドがズラズラ並んでいる。サニタイザーは通常販売されている99.99%殺菌ではなく、70%が多い。これでも米国疾病管理予防センターのガイドラインである60%以上なので問題はないが、今まで見たことが無いブランドがほとんどなので、いかにアマゾンがコロナ関連商品の生活必需品調達に苦労しているかがうかがわれる。
 アマゾンによると緊急性の低い対象外の商品は、4月末頃の配達となる予定だ。ただし、マーケットプレースでもドロップシップメント、つまりアマゾンFCを介さず、出店者自身が直接お客に配送する商品はほぼ通常通り配送される。テクノロジーを駆使してスピード配送他、小売業を革新し続け、全米オンライン売上高の39%[4]を占めるアマゾンが、新型コロナによってこのような大型配送遅延や基本商品の品切れを長期間起こす日が来るとは、誰も予測していなかった事態だ。

アマゾン:価格の不当な吊り上げ、不正商品の撤去

3月29日のアマゾンマーケットプレースでハンドサニタイザーを検索した結果、トップには見慣れないブランドがズラリと並ぶが、よく見ると在庫切れもある。サイトのバナーには「商品によっては需要増加のため在庫が無いものもあります。現在パートナー企業と大至急補充するよう調整中です」とある〔出所〕アマゾン社ウェブサイト アマゾンマーケットプレースではマスクやハンドサニタイザーの価格が2月の中旬から急上昇した。ハンドサニタイザーでは主力ブランドのピュレル1リットルボトルが通常ウォルマートなどで1本12ドルしないが、2月の終わりには2本で350ドルで販売されていた。アマゾンは、異常な値上げを行う出店者を公正価格ポリシーに基づいて退店処分にすると警告した。また、マスクの機能についてコロナ感染を防ぐ、というウソの宣伝の取り締まりも強化した。

アマゾンマーケットプレースでは3月5日、ハンドサニタイザーの主力ブランド、ピュレルのボトルが通常の10倍の値段で売られていた〔出所〕メディア、リコードによるアマゾンウェブサイトのスクリーンショット、2020年3月5日 パニックショッピングがピークを迎えていた3月6日には、アマゾンはマスクをはじめハンドサニタイザーなどコロナ感染関連商品の不当な値上げ商品53万点を削除、販売店2500軒を営業停止とした。これを行うために、過去と現在の価格変動歴をモニターする機械学習だけでなく、人間による24時間体制の監視も行った。また、高額品を購入したお客にコンタクトし、司法省からの調査に協力を要請したようだ。その後も監視の手を緩めず、3月23日には追加で3900店舗を退店させたと発表した。
 同様の不当な値上げへの対応はウォルマート、eベイ他のマーケットプレースでも同様に行われている。アマゾンが不当値上げの管理を強化したことはオンライン市場へのけん制だけでなく、その後コロナ関連商品が全米で一時品薄になった際、便乗値上げの可能性のあった中小企業を含む店舗へのけん制にも多少は役立ったのではないだろうか。
 
 まだ3月30日の段階で感染拡大のピークは14日から21日後と言われている米国。アマゾンの事例は小売業界全体の縮図でもある。外出できない市民に、エッセンシャル小売業者は、自社の従業員の健康を守りながら生活必需品を供給し続けていけるのだろうか。
 


  •  
  • [1] 米国疾病管理予防センター集計値
  • [2] NBCニュース、’Amazon’s Largest Warehouse Hub Has a Coronavirus Case’、2020年3月26日
  • [3] NBCニュース、’Amazon Workers Plan Strike at Staten Island Warehouse to Demand Coronavirus Protections’、2020年3月29日
  • [4] eMarketer試算

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cat_oa-shogyokaionline_issue_81cd4b362e87 oa-shogyokaionline_0_7159ce04112a_『小売業のサスティナビリティとは供給の継続だ』 7159ce04112a 7159ce04112a 『小売業のサスティナビリティとは供給の継続だ』 oa-shogyokaionline

『小売業のサスティナビリティとは供給の継続だ』

2020年3月31日 17:00 商業界オンライン

  コロナウイルス蔓延のパンデミック下、マスクや消毒剤からトイレットペーパーやティッシュペーパー、果てはお米やレトルト食品まで欠品が続き、詰め寄るお客への対応に疲弊する店も少なくないが、お客を責めてはいけない。責められるべきは求められる商品を用意できないお店側にあるのは明白だからだ。

買いだめで露呈した調達力

 パンデミックパニックでマスクはもちろんトイレットペーパーからお米まで品不足が続いているが、一体いつまで続くのか、需要と流通在庫や生産の関係を洗ってみた。
 マスクの通常需要は月間4.5億枚で供給も同量あったが、コロナウイルス蔓延で需要が瞬間20億枚に膨れあがる一方、輸入が3.1億枚(うち中国2.8億枚)から半減し、国内生産を1.4億枚から4億枚以上に増産しても供給は6億枚止まりで、需要に追いついていない。政府は4月から7億枚に増産するとしているが、輸入の拡大も含め10億枚まで供給が増えない限り、品不足の解消は難しい。マスクの場合は消費量の異常な急増が原因であり、流通の問題というより生産キャパの問題と思われる。
 トイレットペーパーは流通在庫が2万トン強(1週間分)、工場在庫が6万トン、計8〜8.5万トンあり、通常の月間需要も供給量も8万〜9万トンで拮抗している。国内自給率も97%と輸入が急減しても供給に不安はないが、かさ張るため1週間分しか積めない流通在庫は買いだめが始まると瞬時に枯渇してしまう。増産して工場在庫を増やしても物流の限界があり、店頭への供給が需要に追いつくには何週間かかかるが、消費量が増えるわけではないから家庭の備蓄が一巡すれば品不足は収まっていく。トイレットペーパーやティッシュペーパーについては、欠品騒ぎは近々に終わるとみてよいだろう。
 流通業に求められる安定供給が近年、これほど全国区で問われたことはなく、生産能力だけでなく物流加工や物流のサイクル、キャパシティまでサプライチェーン制御の力量が露呈した。ベンダー/メーカー頼りの実状を痛感し、自らの調達力の限界を思い知った小売チェーンも少なくなかったのではないか。口先だけの「サスティナビリティ」では消費者の期待には応えられない。供給の継続性こそ、小売チェーンに求められる原点的「サスティナビリティ」なのだと再認識すべきだろう。

コロナパニックより恐ろしい飢饉に備えよ

 人気銘柄こそ欠品したものの全面的な欠品とはならなかった家庭用主食米だが、こちらの方が先々を考えると事情は深刻かもしれない。年々減少しているとはいえ、月間需要は60万トン強あり、精米や小口化という事情もあって流通在庫は2週間分程度しかなく、パニック的な買いだめが発生すると欠品してしまう。未精米の出荷段階と生産段階には十分な在庫があるから早々に欠品は解消されるが、銘柄によっては在庫に限界があり、次の収穫が終わって新米が出始めるまで欠品することになる。
 93年の冷夏では作況指数が74に落ち込んで生産量が783万トンしかなく、当時の主食米需要1026万トンを補えず100万トンの政府備蓄を取り崩しても緊急輸入に頼る結果となったが、世界的な飢饉となったら輸入には頼れない。直近の19年では主食用米需要は726万トンに減っているが、その分が小麦(パン食)にシフトしており、世界的飢饉となれば小麦の輸入も途絶える。工業製品と違って穀物は短期の増産が効かず翌年の収穫を待つしかないから、世界的な飢饉が2年も続けば工業化社会の食料備蓄は脆くも枯渇し、先進国とて少なからぬ餓死者を出すことになりかねない。

【出典】農林水産省「米をめぐる関係資料」(平成30年7月) そんなことは起きそうもないと思われるかもしれないが、古代〜中世の文明の多くが飢饉とそれに伴う疫病で衰亡したし、太陽活動の極小期入りや地球軌道の真円化による夏季日射量の低下(ミランコビッチ理論)など、温暖化から寒冷化に暗転する兆候もそろっている。
 地球温暖化を憂うキャンペーンが花盛りだが、寒冷化に転ずれば17〜19世紀前半の小氷期に匹敵する大飢饉に見舞われ、農業も畜産業も破綻して食糧危機が訪れる。温暖化が進んでも餓死者は出ないが、寒冷化すれば工業化した現代文明の脆弱な食料生産剰余は瞬く間に尽き、少なからぬ餓死者が出る。近年の異常気象は安定した温暖期から小氷期へ転ずる前兆と見るべきかもしれない。
 コロナウイルスが世界的なパンデミックとなって人類の文明活動を一時停止させたカタルシスに何を学ぶべきか、もう気づいてもよいのではないか。効率とスピード、快楽と利潤より、もっと大切なことがある。
「サスティナビリティ」とは美しきブランディングなどではなく、平穏な生活と文明の継続を守護する人類共通の責務ではなかろうか。小売業にとって顧客に担保する「サスティナビリティ」とは、いかなるパニック下においても供給を絶やさぬことだ。遠からず訪れる飢饉に備え、揺るがぬサプライ体制をベンダー/メーカーや生産者と共に築いてほしい。

【出典】農林水産省「米をめぐる関係資料」(平成30年7月)

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cat_oa-shogyokaionline_issue_81cd4b362e87 oa-shogyokaionline_0_4c70c89b9f53_新型コロナウイルス対応で忘れていませんか?4月から「食品表示法」完全実施ですよ! 4c70c89b9f53 4c70c89b9f53 新型コロナウイルス対応で忘れていませんか?4月から「食品表示法」完全実施ですよ! oa-shogyokaionline

新型コロナウイルス対応で忘れていませんか?4月から「食品表示法」完全実施ですよ!

2020年3月31日 13:00 商業界オンライン

  小売店は、2月、3月と新型コロナウイルスの対応で大変忙しかったと思います。消費増税の影響で売上げが伸び悩んでいましたが、コロナショックは小売店には追い風となりました。しかし、忙しさに紛れて猶予期間があまりにも長かった『食品表示法』がスタートすることを忘れていませんか。
 食品表示法が施行されたのは5年前の2015年です。猶予期間が終わって、4月からは完全実施となります。法律違反の商品は、店頭に陳列できないので、十分注意しなければなりません。
 食品表示法は、従来の表示基準とは大きく変更されたところがいろいろありますが、特に小売店が注意しなければいけないのが「栄養成分表示の全面義務化」と「原材料と添加物の明確な区分」と「アレルギー表示」の3つです。

意外なものに「栄養成分表示」が必要に!

 青果では「カット野菜ミックス」「カットフルーツミックス」、鮮魚では「刺身盛合せ」、精肉では「焼き肉盛合せ」のように、単品では生鮮食品であっても、種類が違うものを一緒にパックすると加工食品になります。これらの商品を店内で加工した場合は、栄養成分表示は免除されますが、店外で加工した場合は免除されません。
 店外加工の一つに仕入商品がありますが、これは店舗側が表示する項目はないので問題ありません。ただし、店舗のバックヤードで盛り合わせる場合は、栄養成分表示は免除されますが、添加物表示とアレルギー表示は免除されないので、要注意です。
 また、原材料名に、原材料と添加物を表示する場合は、「/」等の方法で原材料と添加物を明確に区別して表示することも必要になります。
 もう一つ、注意しなければならないのが、センター加工や他店舗加工の商品です。店舗と同一敷地内で加工した商品は店内加工と認められますが、センターや他店舗で加工し店間移動した場合は店外加工になるので、栄養成分表示や原材料は免除されません。

  • 【次の問題が分かれば表示のプロです】
  • Q.店内で次の行為をしました。この商品は「製造」か「加工」か「どちらでもない」か。さて何に該当するでしょう。
  • 『面白いほどよくわかる食品表示』(商業界刊)より
  • ①キャベツを半分に切ってラップで包んだ「キャベツ1/2個」
  • ②刺身用のマグロを切ってパックした「刺身1点盛」
  • ③刺身用のマグロとイカを切ってパックにした「刺身2点盛」
  • ④刺身用のマグロとゆでダコを切ってパックにした「刺身2点盛」
  • ⑤加熱用のブリを切ってパックにした「ブリの切り身4切れ入り」
  • ⑥塩サケを切ってパックにした「塩サケの切り身4切れ入り」
  • ⑦ハムの塊をスライスしてパックにした「ロースハム200g入り」
  • ⑧バルク仕入れのシシャモを小分け包装した「シシャモ10尾入り」
  • ⑨筋切りをした生の牛肉
  • ⑩生の牛肉をあぶった「牛タタキ」
  • ⑪生の牛肉を焼いた「牛ステーキ」
  • ⑫仕入れたローストビーフをカットしてパックにした「ローストビーフ」
  • ⑬店内で牛肉を焼き、それをカットした「牛カットステーキ」
  •  

A.次の通りです。

  • ・どちらでもない:①②⑤生鮮食品の切断は加工にならない
  •          ⑨筋切りも切断と同じで非加工
  • ・加工:③同種盛は非加工だが、複数種類の盛合せは加工
  •     ④生鮮食品と加工食品(ゆでダコ)の盛合せ
  •     ⑥⑦⑫加工食品(塩サケ、ハム、加熱した牛肉)の切断は加工
  •     ⑧加工食品の小分けは加工
  •     ⑩生鮮食品の表面だけをあぶるのは加工
  • ・製造:⑪生鮮食品の中まで加熱するのは製造
  •     ⑬製造と加工(加工食品の切断)を同時に行えば製造

加工していないのに「加工者」の表示が必要なものも

 ①②⑤⑨のように、野菜や果物、魚介類、食肉をカット(切断)や筋切りをしただけでは、加工にも製造にもならないので生鮮食品のままです。生鮮食品の横断的義務表示(注1)では、表示責任者や衛生上の責任者の表示は義務付けられていません。
 ところが「生食用のむき身切り身の魚介類」と「食肉」には、個別的義務表示(注2)で「加工者」の氏名等の表示が義務付けられています。①は「生食用切り身」、⑧は「食肉」に該当するので、加工者等の表示が必要です。
 ①と⑤は、それらに該当しないので、「加工者」等の表示は必要ありません。もしも表示する場合は、加工(加工者)にも製造(製造者)にも該当しないので「販売者」とするのが適切です。
 ただし、①②⑤⑨は、計量法で定められた特定商品に該当し密封されているので「内容量と表示責任者」を表示することが義務付けられています。
注1)横断的義務表示:食品に共通して義務付けられている表示のこと。生鮮食品は「名称」と「原産地」
注2)個別的義務表示:特性のある食品だけに義務付けられている表示のこと。水産物の「養殖」「解凍」表示も個別的義務表示の一つ

消費者でも簡単に違反が見抜ける

 食品表示法は、表示の知識を少し知っている消費者でも、簡単に違反かどうかの見分けができる項目が3つあります。

  • ①原材料と添加物を区分するための印が「/」ではなくが「・」のままになっている。
  • ②加工食品に栄養成分表示がない。
  • ③アレルギーの一括表示が「一部に・・・を含む」になっていない。

 表示違反の商品は、販売はもちろん陳列することもできません。しかも、生鮮食品の原産地表示であれば、「表示がなかった」「表示が間違っていた」という場合でも、バックヤードに下げてPOPの表示を修正するとか、シールを張り替えるということで、簡単に処理できます。しかし、栄養成分、原材料名欄、アレルギー表示は、バックヤードで簡単に表示することも、修正することもできません。
 表示が正しくなければ、売りたい商品も売ることができません。違反表示が多いと、行政指導を受けることもあります。今一度、表示を確認してください。

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cat_oa-shogyokaionline_issue_81cd4b362e87 oa-shogyokaionline_0_f5be980bb011_「もう歳だから」が自分を老け込ませてるって知ってました!? f5be980bb011 f5be980bb011 「もう歳だから」が自分を老け込ませてるって知ってました!? oa-shogyokaionline

「もう歳だから」が自分を老け込ませてるって知ってました!?

2020年3月31日 05:00 商業界オンライン

 

 《今回の相談内容》(東大阪市 T・S 58歳)

「歳のせいか、気力・体力の落ち込みをとみに感じる今日このごろ。この分だと定年まで持つか心配になるほどです」

 

自分の限界は自分で決めないこと

 今回の質問者のように、年齢による気力・体力の低下を感じる方は多いことでしょう。でも、その一方で年齢を感じさせないほどフットワークも軽く生き生きと仕事に従事している熟年世代の方もいます。その差はどこにあるのでしょう。
 ハーバード大学の心理学教授エレン・ランガー博士が、自身の著書『“老い”に負けない生き方』の中でその差がどこから生まれるかを開陳しているのでご紹介しましょう。博士とそのスタッフは、1979年のある日、新聞にこんな募集記事を載せました。
「田舎の家で1週間のんびり過ごし、思い出話に花を咲かせてみませんか?」
 応募者から選抜された参加者は16人、全員が75歳の男性でした。当初、参加者たちはその目的は知らされず、単に1週間合宿所で暮らすということしか教えられていませんでした。
 課題を与えられたのは、リビングルームに全員がそろってからのこと。博士はこう切り
出したのです。「これから1週間、今が1959年であると思って生活してください」
 つまり、20年前(55歳)に戻ったつもりで生活するように指示されたのです。その生活を実現するために、当時はやった服が用意され、全員に20年前の顔写真の入った身分証明も配られました。
 生活する空間も20年前に戻ったようなインテリア、そして家電製品も旧式のテレビやラ
ジオが配置されていました。本棚に置かれた本や雑誌も当時のものです。参加者たちは、まるでタイムマシーンで20年前の世界に放り込まれたような状態になったのです。
 そんな空間の中で1週間、参加者はお互いに当時を振り返りながら、自分が20歳若返ったつもりで生活を送りました。果たして1週間後、彼らにはどんな変化が起きたでしょう。
 なんとほとんどの参加者が、体の柔軟性が明らかに増す、姿勢が良くなる、握力も強くなったというのです。また、視力が平均して10%近く改善し、記憶力も向上したといいます。
 つまり、「若いと思い込むことが人間の肉体をも若返らせる」という驚くべき結果とな
ったのです。この結果から、ランガー博士はこう結論づけました。「私たちの限界を決めているのは肉体そのものではなく、むしろ頭の中身のほうなのです。いつまでも若々しく健康でいたいなら、自分で自分の限界を決めつけてしまわないようにすることです」
 確かに私たちは「もう若くないから」「もう歳だから」と、自分で自分を老け込ませているのかも。そういう言葉が口ぐせになっている人は、まずその言葉を封印しましょう。
 そして、「まだ老け込む歳じゃない」「人生に定年はない」と自分に思い込ませましょう。実際、バリバリと仕事をこなす熟年世代の方もきっとそう信じて仕事をなさっているはずですから。

        

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cat_oa-shogyokaionline_issue_81cd4b362e87 oa-shogyokaionline_0_76bd5421ed31_この発想はなかった……。焼きとり串を豪快にご飯へのせた「鶏づくし重」 76bd5421ed31 76bd5421ed31 この発想はなかった……。焼きとり串を豪快にご飯へのせた「鶏づくし重」 oa-shogyokaionline

この発想はなかった……。焼きとり串を豪快にご飯へのせた「鶏づくし重」

2020年3月31日 05:00 商業界オンライン

  主に丼メニューやうどんを提供している“なか卯”。3月にいくつか新商品が販売されたので、今回はそのうちの一つ「鶏づくし重」をご紹介します。3種類の焼きとりとご飯を組み合わせたメニューに、ネット上からは「焼きとりとご飯のセットは反則すぎる」「大好きな焼きとりしか入ってない。最高かよ」などと好評の声が。豪快な見た目をした“鶏づくし”のお重を、さっそく食べていきましょう。

串に刺した焼きとりをご飯と一緒に味わえる

  焼きとりはそれぞれ「もも」「つくね」「むね」の3種類。定番の焼きとりがお重に集まっており、どれも“たれ”がよく絡んでいます。たっぷり詰めこまれたご飯には、細かく刻まれたのりがトッピングされていました。

  串に刺した焼きとりをそのままご飯にのせているため、パっと見のインパクトが半端ではありません。フタを開けると、たれの甘い香りが食欲を刺激します。なか卯の公式サイトによれば、特製のたれはとり肉と相性抜群のよう。一体どのような味わいを楽しめるのでしょうか?

  まずは“むね”をいただいたところ、淡泊でさっぱりとしたテイストが特徴的です。“もも”はとてもジューシーでやわらかく、とり肉のうま味がしっかり舌に伝わってきました。炭火の風味も際立っているため、本格的な焼きとりの味を堪能できますね。

  なか卯こだわりのつくねは、外側がカリカリで内側はふっくら。肉のうま味も感じられますが、ショウガの爽やかな辛味がアクセントになっています。もちろん特製たれとも絶妙にマッチしているので、ご飯が進むのは言わずもがな。夜食につい食べたくなる豪快なお重でした。
 同商品のファンになった人は多く、SNS上では「“串焼きをそのまま乗せる”という発想が良いね。炭火の風味もちゃんと味わえるし、間違いなく当たりメニュー」「夜食に食べた時のぜいたく感がGOOD。お酒と一緒にいただくのもアリ」「焼きとりは塩派だったけど、特製たれの甘みにハマってしまった。しばらくの間なか卯に通う頻度が増えそう」「特製たれが個人的に好きです。ご飯を一瞬で完食できました」といった声が続出中。
 おつまみにもぴったりですが、ガッツリ食べたいときにもオススメの「鶏づくし重」。なか卯に立ち寄った際は、ぜひチョイスしてみてください。

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cat_oa-shogyokaionline_issue_81cd4b362e87 oa-shogyokaionline_0_11a59c496bf9_良品計画松﨑 曉社長が明かした! 11a59c496bf9 11a59c496bf9 良品計画松﨑 曉社長が明かした! oa-shogyokaionline

良品計画松﨑 曉社長が明かした!

2020年3月30日 10:00 商業界オンライン

〔PROFILE〕まつざき さとる 1954年3月10日千葉県夷隅郡岬町(現いすみ市)生まれ。78年中央大学法学部卒業後、西友ストアー(現西友)入社、2003年同社ファイナンスアジア事業部シニアダイレクター部長。05年良品計画に入社、海外事業部アジア地域担当部長、08年執行役員海外事業部中国担当部長、11年取締役兼執行役員海外事業部長。常務取締役、専務取締役を経て、15年5月社長兼執行役員に就任。趣味はウオーキングと読書。 photo/杉田容子 「無印良品」の店頭は極めて好調だ。既存店売上高は第3四半期まで(3~11月)で前期比5.1%増。客数は12.1%増と伸びた。だが今期は2期連続の減益になる見通しだ。それはなぜなのか。その根本原因と今後の戦略を良品計画の松﨑曉社長に聞いた。
 ――ここ数年取り組んできた政策は。
 松﨑:2017年度から始まった中期経営計画(中計)で、国内の大方針を「シンプルで美しく暮らそうとする生活者にとって最良で最強の店舗をつくる」と定めました。そこで店舗を大型化し、衣生食(衣服・雑貨、生活雑貨、食品)の商品領域で生活の基本となる商品を作り、価格を下げてきました。
 2つ目はグローバルサプライチェーンの整備と進化です。マーチャンダイジング領域、会計領域、顧客領域のシステムを変える大改革です。これは業務の整備と再構築でもあり、システムとは車の両輪です。日本は今年1月から稼働を始めました。まだ道半ばですが、早急にグローバルプレーヤーとして戦うシステムインフラを整備します。
 3つ目は社員の意識改革です。当社は将来的には「個店経営」を目指したいと考えています。従来はムジグラムなど業務基準書で業務を進めていましたが、今後は社員が主体的に自ら考えて店舗を運営します。システムが全て稼働したら、いずれは世界中の店舗の店長が自店の商品計画を修正できるようにしたいと思っています。
 システム導入に伴い決算期を変更、来期は6カ月の変則決算になります。

積み上がった過大な在庫は発注枠で抑制

 ――店頭は極めて好調なのに、今期は9期ぶりに2期連続の減益になる見通しだ。原因は何か。
 松﨑:まず国内は経費増。人件費や物流費の値上げを営業収益でカバーできませんでした。人件費の対売上比率は第3四半期では落ち着きましたが、物流費はまだ改革の余地があります。
 問題は売上総利益率が落ちてきたことです。これは第3四半期で如実に表れました。当社は消費増税後も価格を変更せず、増税分をのみ込みましたが、これは織り込み済み。良品週間などの価格施策が多かったのが原因です。
 もう一つは在庫が膨らんだことです。社長就任時には500億円台でしたが、今は1100億円。商品部は販売部や海外から毎週の営業会議で「基本商品が少ない」と言われると、機会損失を避けるために商品を確保しがちです。
 在庫の適正化は大きな課題です。今年は期首から在庫枠、発注枠をコントロールし、販売計画に基づいて作成するPL(貸借対照表)と商品計画を期首に一致させます。その後は売れ行きに応じて、発注枠を超える仕入れはしない。これで在庫問題を収束させます。
 ――海外事業も苦戦した。
 松﨑:稼ぎ頭の中国は堅調です。第3四半期の減益額は約20億円なのですが、実はその大半は香港と韓国です。伸び盛りだった韓国が日本製品の不買運動で赤字に転落し、民主化デモで揺れている香港は黒字ですが大きく減益になりました。
 こうなると人の確保が難しくなるので「ファウンドMUJI韓国」「ファウンドMUJI香港」といった試みを進めて、MUJIと地域の関わりを皆で議論し、当社で働くことの意義を分かってもらって雇用を維持したいと思います。
 ――欧米事業は。
 松﨑:欧州では出店を凍結していましたが、18年度に黒字化し、18年12月にバルセロナに大型店を出店。今年はストックホルム、チューリッヒ、フィンランドに開きました、でもバルセロナ、ストックホルム、チューリッヒの店の売上げが当初計画との乖離(かいり)が大きかった。品揃えを修正して21年8月期には黒字化し、再び利益率を一定水準に戻したいと思います。
 米国では18年度に最大の稼ぎ月であるクリスマス商戦が大きくずれて減益になりましたが、今は昨年5月に立案した再建計画通りに進んでいます。

現地で発掘した商品を売場の20%に

 ――先ほどの「ファウンドMUJI韓国」「ファウンドMUJI香港」というのは現地商品を発掘するということか。
 松﨑:そうです。現地の人と話をして、将来的には売場にある商品のうち、地域で売れるべきローカルな商品を20%まで高めたいという「ローカルトゥウェンティ」と呼ぶ取り組みを始めています。
 実はフィンランドで展開している食品はほとんど欧州の食品です。これからはMUJI的な発想で作られているローカル商品を探して積極的に販売していきたいと思います。
 中国では18年9月に商品開発部を新設し、19年から現地の習慣に合った商品を出し始めました。次はインドで生産した商品をインドで販売し、西南アジア、ASEAN(東南アジア諸国連合)地域、オセアニアにも広げます。地域で物作りをして、ローカルの習慣や風習に合った商品をデビューさせていきたいと考えています。
 ――インドでも商品開発部を設ける。
 松﨑:いいえ。MUJIグローバルソーシング(MGS)という物作りの会社を使って組織は軽めにして、インドのマーケットから商品を発掘します。実はファブリックはすでにインド国内で発売しているのです。来年は200アイテムほどの開発商品をインド国内で売りたいと考えています。
 将来的には中国の次に巨大なマーケットになるのはインドです。MUJIはまだ一般のインドの人が買える価格ではないので、25年以降に出店を加速するまでの準備として、普通の人が買える価格にしたいのです。
 来年はムンバイにMUJIの世界観を示せるフラッグシップ店を開きます。
 ――北欧の新店はなぜ苦戦している。
 松﨑:いずれの店も最初の1カ月はすごいのですが、2カ月目以降が続かない。原因は生活の基本領域をカバーできていない、価格が現地の習慣に合っていない、また海外の大型店を維持できるオペレーションがまだできていないからだと思っています。
 出店計画委員会における審議も甘くなったという反省もあります。この失敗を契機に、社長直轄の「海外賃料減額プロジェクト」(仮)を3月から立ち上げます。法務や不動産の専門家、専門弁護士を集めて、9月までをめどに成果を出したいと思います。海外都市の賃料相場を把握し、出店の可否を決めるKPI(重要業績評価指標)を定めたいと考えています。
 世界のデベロッパーは大手に収斂(しゅうれん)しており、今後は数カ国をまたぐ交渉も必要です。当社はアジアの有力な会社と合弁事業をしており、そのネットワークも使って複数国にわたる物件について一緒に交渉するなどの方法も考えます。

初のロードサイド店となった「無印良品野々市明倫通り」は、次の金脈を掘り当てたエポックメーキングな出店となった。 ――今期の出店は第3四半期時点で56店と前期を超える順調なペースだ。
 松﨑:昨年4月にオープンした野々市明倫通り(石川県野々市市)は次の金脈を掘り当てた思いです。無印良品は都会的といわれ、地方のロードサイド立地には出店してこなかった。野々市明倫通りはアルビスというスーパーマーケット(SM)の敷地内に路面店を開いたのですが、想定をはるかに超える売上げです。
 今後は地方のロードサイドやSMと同じ敷地に出店を加速します。将来的には年間30店くらい出店できる体制を整えたいと考えています。

漬物や惣菜、菓子といった食の専門店を12社導入するなど地元の事業者との協業をテーマに掲げた「無印良品 京都山科」では、野菜売場を初めて直営で手掛けた。 ――昨年11月に開店した京都山科(京都市)は。
 松﨑:一昨年3月に開いたイオンモール堺北花田(大阪府)に続く「食」の大型専門売場を備えた2号店で、さらに進化した店になりました。野菜売場を初めて直営で運営。食のテナントを導入し、フードコートも当社が運営。非常に高い支持を頂き、客数が増えた効果で衣服が売れています。SMのお客さまは従来あまり無印良品に来店されなかったので、これは大きな相乗効果となっています。
 また昨年7月に開店したMUJIcom武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス(東京)は産学共同の取り組みです。都心のコンビニ、コミュニティという形の店舗には今後も取り組みたいと思っています。

ベトナムに「世界最安値」の店を開く

 ――来期の戦略は。
 松﨑:来期は中計の最終年度の21年8月期に営業収益5000億円、営業利益600億円を達成するための準備の6カ月間であり、20年8月期ということになります。こでは生活の基本商品、価格の見直し、在庫の適正化に引き続き取り組みます。
 物流費も改革します。新潟市でEC(電子商取引)向けのセンターを自社運営していますが、関西地区は今年外部のセンター運営に切り替えます。翌年は関東も替え、センターのオペレーションも見直します。ラストワンマイルは自社でやりますが、倉庫の運営は自社か委託か冷静に見極めます。配送料も見直します。
 ――商品政策だが、衣服・雑貨は。
 松﨑:まだまだ伸びる余地があるので、強化カテゴリーとして特に500坪の大型店では売場を拡大します。売上構成比は40%を超え、次は50%も視野に入れます。第2四半期のグローバルの構成比は46.6%でした。
 ――生活雑貨の復権も課題だ。
 松﨑:昨年8月末に実施した価格見直しの効果が出て、生活雑貨は上期に0.1%増だった既存店売上げが第3四半期に7.3%増と伸びました。ただ家具と家電は苦戦しています。
 昨年2月に生活雑貨部内に「生産・調達担当」「品揃え・商品開発担当」「企画デザイン担当」の3つの部門を配置しました。生活シーンを考えて、品揃えから物を作っていこうと考えたのです。秋冬から商品が変わり始めます。
 ――堺北花田、京都山科のような食の大型専門売場を備えた店の開発は。
 松﨑:国内では堺北花田や京都山科のような大型ショッピングセンター(SC)か、野々市のようなSMとの併設か一体型の立地に出店したいと思います。中国など海外でも出店したい。ヘルシンキにはSMを内在した店を開きました。
 ――今後の出店ペースは。
 松﨑:国内では年間15~20店のペースです。500坪級の大型店は41店になりました。大型店は22年8月期をめどに100店に拡大したいと思います。
 ――今後の海外戦略は。
 松﨑:中国における商品開発を加速させます。どんどんアイテムを出していく。ベッドやシーツ、マットレスが中国仕様のサイズに変わり、マグカップも中国の生活に合ったサイズになった。生活雑貨の構成比は10%未満ですが、これをいかに早く作るかです。
 昨年12月に青島にオープンした大型店、青島銀座商城は「MUJIインフィル」という内装・造作サービスのショールームを世界で初めて店内に併設しました。住の領域も今後拡大します。
 中国の店はコーヒーカウンターがあって、お客さまが集まって雑談できるような入り口にしています。よりコミュニティにつながる店に変えていきます。出店は年間30店を維持します。
 また今年中に上海に中国で働いている社員たちに社宅を造ります。中国の不動産が高騰して、みんな電車とバスを乗り継いで2時間ぐらいかけて出勤している。だから都会に自分たちで作った内装・造作の環境で社宅を造る。そこでいろんな実験をします。「MUJIインフィル」のショールームも併設するので、社員が住んでコミュニティをつくり、それが支持をされて販売につながればいいと思っています。
 ――新規国への出店は。
 松﨑:ベトナムのホーチミンに8月までに1号店を出店します。最初から大型店を造ります。ベトナム産をはじめASEANで数多く生産していますから、平均的なプライスとしてはMUJIの世界最安値の店を目指します。
 ――デンマークへの進出は。
 松﨑:デンマークは秋になります。

地域の問題を解決するプラットフォームに

 ――新潟県上越市と地元企業の頸城(くびき)自動車と1月に包括連携協定を結んだ。
 松﨑:無印良品は地方の再生の役に立ちたいと考えており、上越市の直江津SCを運営元の頸城自動車と一緒につくり上げていきたいということです。無印良品が出店し、地域コミュニティとつながって、しかもSCとして成り立つものをやっていきたいと。
 ――疲弊した地方都市を再生する。直江津SCは昨年5月にイトーヨーカドーが撤退した。
 松﨑:SMが撤退したということは人がなかなか集まらないということ。でもやはり必要なのです。無印良品が出店することによって、テナントも入り、コミュニティができればいいなと。
 ――夏ごろに2階に出店する。
 松﨑:これは正式発表を待っていますから、申し訳ありません。

単なるチェーンストアオペレーションではなく、将来的には店長が品揃えや店づくりを主体的に考える「個店経営」を目指したいと松﨑社長。 ――地域再生に関連して、「暮らしの編集学校」という社内研修を実施している。
 松﨑:一つの都市を選んで、そこでどう市民や地域とつながるのかを社員に勉強させる取り組みです。第1回は岐阜県の柳ケ瀬、第2回は山形県、そして第3回は直江津で2月に開きました。コミュニティをどうつくるか。そしてどう発信するのか。自分はこの地域をどうしたいのか考えをまとめてもらって、チームに分けて意見交換をして、具体的な物件を通して、構想をまとめています。
 ――この背景には金井政明会長の言う無印良品の「大戦略」である「役に立つ」の実現がある。
 松﨑:ローカルからコミュニティの再生をしていきたいと思うのです。将来的にはわれわれは地域のさまざまな問題を解決するプラットフォームになりたいと考えています。コミュニティをつくるというのは人が集まる場所にしていくわけですね。店舗にお客さまが来て、地域の人と話をしながら、そこで問題を解決する。その実現のために取り組んでいるのです。

  ※本記事は『販売革新』2020年3月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。
※『販売革新』はオンラインストアや紀伊国屋書店など大手書店で発売しております。
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髙島屋村田善郎社長が力説!

2020年3月30日 08:00 商業界オンライン

〔PROFILE〕むらた よしお 1961年10月26日東京・千駄木生まれ。慶応大学法学部卒業後、1985年4月髙島屋入社。東京店(現日本橋店)のワイン売場を振り出しに、紳士服、ドイツ駐在員事務所、新宿出店準備室などを経験。労働組合委員長も務めた。2011年柏店長、13年2月執行役員、15年3月常務執行役員。15年5月常務取締役。17年8月代表取締役常務総務本部長、企画本部副本部長、経営戦略部長。18年3月同企画本部長。19年3月に代表取締役社長に昇格。 photo/杉田容子 富裕層とインバウンド(訪日外国人客)が引っ張っていた百貨店が変調を来している。2020年に髙島屋はこの難局をどう乗り切ろうとしているのか。昨年3月にトップに就いた村田善郎社長を直撃した。
 ――20年2月期は営業利益こそ増益だが、リーマンショック直後以来の2期連続の経常減益になる見通しだ。
 村田:トップライン(売上高)はここ数年、富裕層の比較的堅調な消費とインバウンドの両軸で回ってきました。しかしインバウンドは減速し、消費増税で中間層を中心に消費が減退。
 利益面では、アパレルが売れなくなり、売上比率が食料品などより低率な商品にシフトし、商品利益率が低下。売上げの伸びがそのまま利益には結び付きにくい構図が続いています。
 実は今までのお化粧がはがれただけで、本来の基調が伸びていないのは変わっていません。
 ――村田社長の使命である構造改革の必要性がより明確になった。
 村田:百貨店の再定義が必要になるかもしれません。物を仕入れて売るのは変わりませんが、マーケットインに近づけ、適時適切に対応する旬な品揃えを実現するためにはしがらみを断ち切り、専門店と百貨店をミックスし、融合することが重要です。
 ショッピングセンター(SC)開発の東神開発や飲食店事業のアール・ティー・コーポレーションといった食の関連事業などをミックスさせた髙島屋グループとしての百貨店を目指します。

構造改革と同時に成長戦略も進める

 ――19年を振り返って。
 村田:グループ総合戦略の「まちづくり戦略」の一つのモデルと考える日本橋髙島屋S.C.が昨年3月にグランドオープンし、18年11月に出店したバンコクのサイアム髙島屋と合わせて成長路線をいかに安定軌道に乗せるかが19年のテーマでした。

まちづくり戦略のモデルケースとなった日本橋髙島屋S.C.。グランドオープンから丸1年を迎えた。 ――日本橋髙島屋S.C.の状況は。
 村田:本館、ウオッチメゾン、東館に、18年9月に開いた新館を加え4館体制になり、入店客は予想を若干上回り、売上高もほぼ予算通りです。ベイエリアから新しいお客さまを呼び込み、既存のお客さまにも満足していただき、当初の狙い通り、回遊していただいています。
 ――地方店・郊外店では横浜市の港南台店の閉店を決め、米子髙島屋(鳥取県)は地元への株式譲渡を決議した。
 村田:できる限り店舗を存続させたいという強い思いは変わりません。港南台店は横浜店と同一商圏にあり、閉店後もお客さまをフォローできると判断し、今年8月に閉店します。一時ニトリなど大型テナントを導入し百貨店と専門店を融合させましたが、商圏の高齢化が進み、マーケットがしぼんでいて、継続は難しいのが実情です。
 ――米子髙島屋は地元企業に全株式を売却し、撤退するが髙島屋の看板は残り地元も喜ぶという理想的な継承だ。
 村田:行政との密接な連携もありました。本館と東館のうち自社ビルだった東館を無償で米子市に譲渡し、コンペで新しいスポンサーが名乗りを上げてくれました。
 ――20年度からの重点施策は。
 村田:百貨店の構造改革が第一ですが、成長戦略も同時に進めます。緊急的な取り組みもします。間接部門を減らしフロントの営業に人をシフトします。要員を圧縮して得られた原資を成長部門に振り替えます。東神開発が新たに手掛ける国内の流山おおたかの森(千葉県)の周辺開発や海外ではベトナムへの成長投資が中心になります。
 髙島屋には①優良な顧客基盤、②東神開発やアール・ティー・コーポレーションなどの優良な子会社、③売上高1000億円を超える東西の大型店やシンガポールなど国内外を含めた店舗立地――という3つの大きなアドバンテージ(優位性)があります。これらを組み合わせて成長モデルをつくることが成長戦略です。
 3つを組み合わせることで「金融事業」も海外事業と匹敵する収益の柱にできる可能性があり、今春から本格的な事業としてスタートさせます。

金融事業は23年度営業利益100億円に

 ――金融事業の具体的な取り組みは。
 村田:銀行業に参入するわけではなく、冠婚葬祭や終活も含めライフタイムバリューをいかに上げるかです。例えば信託や資産運用など。横浜店で評判が良かったのが割賦販売。ジャックスと組みローンが組めるようにしたら、単価も上がりました。使う、貯める、決済するなど髙島屋クレジットでできることがあるでしょう。
 髙島屋クレジットが髙島屋保険を3月に吸収合併します。専門人材が接客し、来店するお客さまが気軽に相談できるカウンターを設け、外商マンとも連携します。両社の営業利益は現在54億円。与信枠や外部利用の拡大による手数料増や新サービスを積み増して23年度に100億円を目指します。
 ――構造改革で得られた利益のうち国内百貨店事業への投資は。
 村田:収益性が低いので多額の投資はできません。従来のようなリニューアルは極力圧縮します。リニューアルはキャッシュアウトだけして、結局利益につながっていません。ただ横浜店で進めている駅直結の食料品売場の増床のような間違いなく収益性が確保できるものには投資していきます。
 ――20年度の改装計画は。
 村田:横浜は国内百貨店では最大級の食料品売場になります。4弾ロケットで昨年11月に続く第2弾が今年5月ごろ、第3弾が11月、売場を5000㎡増床し完成するのは来年2月です。京都店は四条通に面した部分のリニューアルに着手しました。
 ――国内店の閉鎖は。
 村田:当面予定はありません。まだまだやりようがあります。
 国内17店には17通りの事情と方策があります。生き残りに向けた手は打っています。国は地方創生を掲げるなど行政も同じ船に乗っています。米子のように知恵を出し合えば、完全撤退しない方法もあると思います。
 ――まちづくり戦略はさらに進める。
 村田:まちづくりには3つあります。1つ目は百貨店グループ内のまちづくりです。日本橋髙島屋S.C.は代表例で、4館を一つのまちと捉えて、楽しく回遊していただく。
 2つ目は百貨店グループを核とする周辺を含めたまちづくり。代表例は流山おおたかの森です。行政とも話をしながら、周辺のインフラも含めて開発します。22年までに開く3施設ができれば営業面積は1.4倍に拡大します。
 将来は相当なベッドタウンに成長するとみており、第2の二子玉川にしたいという希望的な思いがあります。
 3つ目がEC(電子商取引)です。自社ECの「髙島屋オンラインストア」と子会社の「タカシマヤファッションスクエア」のIDを共通化し、プラットフォームをつくって、その中を楽しくネットサーフィンしてもらう。EC事業は18年度は168億円の売上げでしたが、23年度には285億円を目指します。

海外事業は成長国のベトナムにも投資

 ――今後の海外事業の戦略は。
 村田:シンガポールを中心としたASEAN(東南アジア諸国連合)地域と中国で展開している4店の収益力をいかに高めるかが大事です。タカシマヤシンガポールの18年度の営業収益は181億円、営業利益は32億円。この人、モノ、金をうまく他の3店に援用し、各店の収益力を高めていきます。
 ベトナム・ホーチミンのサイゴンセンターにも期待しています。不動産投資事業とテナント運営事業、百貨店事業の3層構造になっており、既に百貨店以外は黒字です。百貨店もIFRS(国際会計基準)では今期は黒字化しています。来期はIFRSの影響を除いても黒字にしたい考えです。
 ベトナムは伸び代があるので、積極的に投資します。東神開発のノウハウを生かして、ハノイ市の副都心となるスターレイクプロジェクトに参画します。現地の教育企業と合弁で、21年初めに開校予定のバイリンガルスクールと22年ごろに開業する商業・オフィスなどの開発事業です。ハノイは大使館もあり、海外子女も多い。既にある学校が移転してくるので収支も堅い。商業施設は東神開発が中心にテナントを集積します。
 ――18年11月に開業したタイのサイアム髙島屋の状況は。
 村田:今年7~8月に高架鉄道が接続すれば早い段階で黒字化するでしょう。開業当初の狙いとずれも出ているのでマーチャンダイジングも見直します。紳士服や婦人服はニーズに合っていないので修正。食品はハイエンドなものをそろえて和牛やフルーツなどを前面に出しましたが、価格帯の上下を調整して、もう少しボリュームに近づけます。一方で、ランチで2万円するカウンター寿司も人気なので、ハイエンドな顧客の期待にも応えていきます。
 ――昨年8月に撤退する予定だった上海店は一転、営業継続が決まった。
 村田:認知度の低さと上海の周辺開発や環境整備が当初想定よりもかなり遅れたことで苦戦していました。行政も家主も含めて諸条件が整ってきたので、継続する判断をしました。

「構造改革には早晩取り組まなければならないと思っていた。従来とは異なる次代の百貨店にどういう形でシフトしていくか。今はそのタイミングにきている」と村田社長。 ――国内百貨店の売上高は1990年に比べ4割減り、百貨店業態は終わったとの声もある。都心部ではまだ生き残れそうだが、地方や郊外では業態としての役割を終えたのでは。
 村田:そうは思いません。むしろこれからは百貨店の時代だと声を大にして言いたい。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やECなどが拡大する中で、リアルの良さにもう一度光が当たっています。当社の最大のアドバンテージはリアルの店舗を持っていること。店で得られるリアルの体験などいよいよ百貨店の出番です。悲観的ではなく、むしろポテンシャルが大きいと楽観視しています。
 一方で、旧態依然なものにデジタルの要素を取り入れ、新しい感動を与えていくことが百貨店の新しい使命です。
 特に高齢化が進むと買物にストレスを感じる方が増えてくる。独居老人が増えると人とのつながりがより大事になる。地方ではモノだけでなく止まり木になれるような店舗が必要になります。
 デジタルの良い点を取り入れ、まさに百貨店を再定義した次世代型百貨店グループを考えていきます。まだまだ成長できると信じています。

  ※本記事は『販売革新』2020年3月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。
※『販売革新』はオンラインストアや紀伊国屋書店など大手書店で発売しております。
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型にはまらぬ事業で地元貢献する「ゼネコンの枠を超えたゼネコン」

2020年3月30日 05:00 商業界オンライン

三島宿の再来たるゲストハウスに生まれ変わる「大社の杜」

随所で「文化の香り」を感じる三島市街地

 今回の舞台は静岡県三島市。
 三島は私に「湘南と富士山の間に新ブランド地域を創ることは可能だ!」と確信させた運命の街で、街並みの美しさは当連載の2回目で触れています。
 初めて三島の土を踏んだ日、私はまず駅前にある市立公園「楽寿園」に入りました。
 そこで私を感動させたのは「ほんの樹」と名付けられたアウトドア図書館。

文化的なだけでなく見た目も美しい「ほんの樹」 東屋(あずまや)内の樹の周囲に多彩なジャンルの書籍入りバスケットが配置され、入園者は興味ある本を借りて園内の好きな場所で読めるのです。
 六本木の東京ミッドタウンでも「ミッドパークライブラリー」という同種の試みがなされていますが、あちらが単発イベントなのに対しこちらは常設。
「なんて文化的な街なんだ」と私は感動しました。
 次に向かった「白滝公園」という水辺の楽園の脇の空き地では当時、こんな試みがなされていたのでした(現在は終了)。

こんなイキな提案をできる企業は全国でも数少ないでしょう 小さいとはいえ駅近の一等地です。
 そこを「無料で1日貸し」するとは「文化的な街には文化的な企業があるんだなぁ」と私はまたも大感動。
「文化事業=文化の2文字を冠したハコモノを建てること」と考える人もいますが、「文化とはハードではなくソフトである」と私は思っています。
 だから「場と最低限の道具」だけを貸して「あとは創意工夫で」というこの在り方こそが「真の文化事業」だと感じたのです。

地域文化を発信する企業の次なる試みとは

 その後に向かったのが、源頼朝・北条政子ゆかりの「三嶋大社」の真正面にある複合商業施設「大社の杜(もり)みしま(以下、大社の杜)」。

和モダンのサンプルのような洗練されたエントランス 飲食を中心とした小規模店舗が約15軒集まり、共有の野外テーブル席で食事もできる素敵な造りとなっていました。
 ほんの樹がこちらにもあって「商業と文化の融合」が自然な形で成立。
 外観もスタイリッシュで、「首都圏の同系施設と比べても遜色ない」と私は感じました。
 ところが私の移住直後の2019年11月30日、大社の杜は閉館してしまったのです。
 開業日が2013年11月30日なので営業期間はちょうど6年で、延べ250万人超が訪れたといいます。
 しかし残念ながら車社会の静岡では必須とされる「駐車場」がなく、マイカー通勤者が多くて「仕事帰りに一杯やる」という使われ方もされにくい土地柄のため、観光客以外にはいまひとつ浸透しにくかった。
 首都圏だったら必ずはやったはず、と私は今でも思っています。

日没後もライトアップされて風情のあった大社の杜テラス席 そんな大社の杜がゲストハウスに生まれ変わるという噂が今年になって流れてきました。
 運営会社のホームページで確認すると事実で、しかも「メディア取材を積極的に受けます」と!
 私が早々にアポを取ったのは言うまでもありません。
 運営元は、三島を拠点とするゼネコン「加和太(かわた)建設株式会社(以下、加和太建設)」。
 しかしながらこの会社、普通のゼネコンではないのです。
 建設業と並行して「サービス付き高齢者住宅・宿泊施設・道の駅・カフェ・創作寿司店の経営」「シェアサイクルの運営」「フリーペーパーの発行」などさまざまな地域活性化事業を手掛けており、これだけ聞いても一味違うのが分かります。

近隣に多くのステーションを持ち、旅行者に優しいシェアサイクル ちなみに三島初日に私を感動させた「ほんの樹」も「無料レンタル空き地」も仕掛人は加和太建設で(しかも「ほんの樹」の選書担当は「ミッドパークライブラリー」と同じブックディレクターの幅允孝さん)、それを知った私の期待度はいっそう高まりました。

首都圏人が「終点」と考える地の「その先」

「日本遺産に登録された『箱根八里』の古道を新観光ルートとして提案し、東海道五十三次でも有数の賑わいを誇った『三島宿』を再生させる」
 これが今回のプロジェクトのコンセプトで、コアターゲットは「箱根八里の踏破を目的とする外国人バックパッカー」。
 眼前に三嶋大社、彼方には霊峰富士という絶好の立地が海外ゲストに好評を博すのは想像に難くありません。
 私も静岡県人の端くれですが「三島宿」という発想には目からウロコでした。
 鉄道だと静岡県の首都圏からの入り口は熱海ですが、東海道においては確かに三島で、昔の旅人は箱根宿と三島宿を行き来してました。
 大学駅伝が箱根で折り返すこともあって「その先はない」と思いがちでしたが、ちゃんと三島という「次の街」があったのです。
 箱根~三島間は路線バスも通っており、そういえばテレビ朝日の人気バラエティ『帰れマンデー見っけ隊』でも三島から箱根までのバスルートを辿った回がありました。
 その回を私は観ていたのに「三島宿」という発想には行き着きませんでした。

「開く」ことで街全体がゲストハウスになる

 箱根を越えてチェックインしたゲストには周辺を散策する楽しみが待っています。
 市街地を回遊することで、街全体が巨大なゲストハウスになるわけです。
 ゲストハウスと三嶋大社を隔てる大通りは旧東海道で、今も門前町の風情が残る商業中心地。
 老舗飲食店もあって、弥次喜多気分を疑似体験しながら外食が楽しめます。
 自炊派ゲストのための共有キッチンも用意される予定です。
 飲食店の厨房だった場所を解放し、自分で作った料理をテラス席で食べることも可能だといいます。
 取材の時点ではまだ改修が始まったばかりでしたが、元・店舗は次々に客室へ生まれ変わっていきます。
 とはいえ周囲に溶け込むシックな外装や、経年変化の楽しめる銅板装飾など「残しておくべき良いモノ」はそのまま活かされるんだとか。
「ゼネコン=スクラップ&ビルド志向」ではないわけです。
 ゲストハウスは全15室で1日40人程度が宿泊可能。
 二段ベッドでシャワー・トイレ共有のドミトリーからファミリー向け和室まで、さまざまな部屋が用意されるそうです。

畳敷き個室はファミリー向け和室になる予定「街に開かれた場」とすべく、敷地内のカフェテラスは「地域住民と宿泊者と観光客が交流できるスペース」になるんだとか。

未曽有の危機下でも悲観一色にはならない

 オープン予定日は7月4日ですが、気がかりなのは新型コロナウイルスの状況。
 感染拡大予防のためにプロ野球オープン戦や大相撲春場所が無観客開催となり、春の選抜高校野球が中止され、東京オリンピックまでも延期されるような未曽有の事態ですから、それへの対策方針を聞かないわけにはいきません。
 すると「スケジュールを変更する予定は現時点ではありません」という予想外の答えが。
「事態は絶えず変化しますし、政府の要請一つで状況も一変するので、先を見越して手を打つのは不可能。われわれができるのは最新情報に注意を払いつつ、その時々におけるベストを尽くすことのみです」
 お話を要約するとこのようになりますが、もちろん「開業までに終息宣言が出されるのが一番ですが」とのことでした。
 自社運営施設の中にもキャンセルが多く入ったところがあるそうですが、しかし「社内のムードは悲観一色ではない」そうです。
 その理由を「あまりピリピリしない気質の静岡県の企業だからでしょうかねぇ……」と自己分析して微笑む社員さんたち(一大プロジェクトということで、なんと5人も来てくださいました)。
 これは「気の緩み」ではなく、やみくもに恐れない「理性の現れ」なのだと思います。
 観光・飲食・イベント業界がかつてない大打撃を受けている年にあえての開業となる新ゲストハウス。
 波乱万丈の幕開けではありますが「禍福はあざなえる縄の如し」を実証し、日本経済の沈滞を打ち破る先鋒となっていただきたいと心より思います。

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