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『ヒプマイARB』とは? 訴えかける最高のリリックが心を虜にする

2020年5月1日 17:00 WHAT's IN? tokyo

3月26日にスマートフォン向けゲームアプリ『ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-(オルタナティブラップバトル)‬』(以下、『ヒプマイARB』)が配信されました。本ゲームアプリの原作となっているのは『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』(以下、『ヒプマイ』)というCD作品。J-POPから演歌まで多くのヒット作を生みだしているキングレコードが手掛ける、男性声優18人が登場キャラクターに扮してラップを歌う“音楽原作キャラクターラッププロジェクト”です。始動当初から多くのファンの興味を惹き、今ではYouTubeでチャンネル登録者数79.6万人(4月23日時点)と多くのファンを魅了。新しいジャンルを確立した今、現在進行形で成長を続け新たなファンを次々と獲得しています。そしてこのたび、満を持して登場したのが『ヒプマイARB‬』になります。「ひぷのしすまいく?」と何の知識も持っていない方、彼らのラップバトルにどっぷりとハマっている方、LIVEに積極的に参加されている方すべてに本作の魅力をお届けします。




文 / みかそ


キャラクターと交流できる!? ゲームアプリのオリジナリティに注目!


本作について紹介するまえに、原作CDである『ヒプマイ』のストーリーがわかっているとより一層楽しめますので、公式サイトのテキストを用いて簡単に紹介します。


ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 前文

H歴 武力による戦争は根絶された…

争いは武力ではなく人の精神に干渉する特殊なマイクにとって代わった。

その名も【ヒプノシスマイク】

このマイクを通したリリックは人の交感神経・副交感神経等に作用し、

様々な状態にすることが可能になる。


人々はラップを使い、優劣を決する。

男性は中王区外のイケブクロ・ディビジョン、ヨコハマ・ディビジョン、

シブヤ・ディビジョン、シンジュク・ディビジョン等の区画で生活をすることになる。

各ディビジョン代表のMCグループがバトルをし、

勝った地区は決められた分の他の領土を獲得することができる。

兵器ではなく言葉が力を持つことになった世界で今、

男たちの威信をかけた領土テリトリーバトルが始まる。


『ヒプマイARB』では『ヒプマイ』の世界設定とは異なる、ゲームオリジナルストーリーになっています。


▲ゲームオリジナルキャラクターの呂駒呂にこき使われる筆者……会話はときおり選択肢を選ぶことで進むことも


主人公は、プロローグ中に本作で登場する4つのディビジョンのメンバーと出会うことになります。三兄弟で編成されたイケブクロ・ディビジョン”Buster Bros!!!”、ヤクザ・現役の警官・元海軍の一等軍曹で編成されたヨコハマ・ディビジョン”MAD TRIGGER CREW”、ファッションデザイナー・作家・ギャンブラーで編成されたシブヤ・ディビジョン”Fling Posse”、天才医師・ホスト・サラリーマンで編成されたシンジュク・ディビジョン”麻天狼”。物語はこの4チームによる準決勝戦が始まる少しまえから動き出します。


▲中央に立つのが筆者最推しの麻天狼リーダー、天才医師である神宮寺寂雷(じんぐうじ じゃくらい)。同メンバーの観音坂独歩(かんのんざか どっぽ/画面右)と伊弉冉一二三(いざなみ ひふみ/画面左)を見つめる神宮寺先生の優しい瞳は一見の価値あり


本作のSTORYでは主人公が各ディビジョンと出会い、試合開始までの時間を一緒に過ごすことでそれぞれのチームの人となりや特徴を知ることができます。登場人物全員の名前がかなり特徴的なのも魅力のひとつだと筆者は考えています、それぞれ1章8話まで読むことができ、とても丁寧にメインシナリオが進むため、これを機に今まで曖昧だった方はぜひ覚えてほしいですね。推しチームが見つかると楽しさは2倍3倍と増えること間違いなし! 適宜イベントも開催されており、リズムゲームに使用するカードを手に入れることのできる”G COLLECT(以下、Gコレクト)”では特定のキャラクターがピックアップされることも。推しメンバーがいる方はタイミングを逃さないように注意。筆者は麻天狼ピックアップの際に神宮寺先生をゲットしました。逃しません、勝つまでは! ということで何度か10連回しました。推しは必ず手に入れたい。皆様にはわかっていただけると思います。


▲Gコレクトでは、課金やイベント報酬等で手に入れたチケットで引ける”ジェムGコレクト”、リズムゲームプレイ後に獲得できるDJ POINTで引ける”DJpt Gコレクト”がある



頭から離れなくなる、これが”ヒプマイ”の威力!?


本作では”KILLER SCRATCH!!”でリズムゲームを遊べます。難易度はEASY、NORMAL、HARD、EXPERTの4段階に分かれていて、各難易度でディビジョンの人気曲をプレイすることができます。例えば、”ヒプノシスマイク-Divishion Rap Battle-”という曲では各ディビジョンのパートに分かれてプレイするApart~Dpartを選択することができます。普段リズムゲームに触れない方も、チュートリアルで操作方法の説明がありますのでご安心を。操作内容は覚えやすいのですが、難易度が上がるとノーツによっては盤面が左右に動いたりするため、曲のテンポを覚えておかないとついていくのが難しくなります。リズムゲーム初心者の方はEASYから徐々に慣れていくのがいいと思います。


▲盤面の上にノーツが落ちてくるので本当にスクラッチしているように感じ、かなり新鮮


▲ディビジョンによって曲調も画面の雰囲気もかなり異なる


先ほどKILLER SCRATCH!!について説明をしましたが、本作の進めかたとしてはSTORYを先に体験することを強くおすすめします。先ほども伝えたとおり各チームのことを知ることができ、なおかつ世界設定がわかるからというのも理由のひとつですが、実は3話以降はKILLER SCRATCH!!のそれぞれの条件を満たしたうえでのクリアが解放条件になっているのです。STORYを進めれば必然的にプレイすることになるので、せっかくならストーリーを楽しみつつ効率よく進めちゃいましょう。


▲解放条件は話数が進むにつれて少しずつ難しいものになるので、慣れるには最適


さて、KILLER SCRATCH!!をプレイするうえで欠かせないのが”デッキ編成”です。MY MEN→編成から編集することができますが、カードのレア度やレベルによって総合力が異なってきます。まずはお気に入りのメンバーを集めた編成にしてみてもいいし、おすすめ編成機能を活用するのもいいと思います。総合力はKILLER SCRATCH!!開始まえに表示されるデッキ確認画面で予想スコアを見る際に重要になってきます。このスコアがD~SSのどのポイントまで満たしているかで最終的に達成できるだろうスコアの目安にすることができます。予想スコアがSSまで届かず不足している場合はデッキ編成を見直すか、他プレイヤーのサポートを受けられる”サポート選択”を変えるか、各キャラクターのレベルを上げるなど試してみましょう。また、レア度の高いSSRとSRのカードはリーダースキルを持っているため、活用して高スコアを狙うようデッキ編成を行うのがおすすめです。とはいえ効率重視、好きなデッキで好きなキャラクターを集める、各ディビジョンの曲は各メンバーでプレイするなど気持ちはさまざまだと思いますので、最後は自分のプレイ方法で進めていくのが一番ですが……。ちなみに、クリアすることでGコレクトにチャレンジできるジェムがもらえます。

また、さまざまなアイテムを獲得できる”MISSION”ではデイリー項目以外にウィークリー、通常、イベントといったバリエーションもあります。単純なカード強化でクリアできるものから楽曲を5回プレイするといったもの、イベントとなるとデッキに寂雷を編成し”Shinjuku Style~笑わすな~”で300コンボ以上を10回取る等のかなり絞られた限定MISSIONもあるので、さまざまなプレイヤーが楽しめるようになっています。


▲デッキ確認画面では予想スコアを確認するほか、再編成や登録したデッキの入れ替えも可能。プレイまえには改めてデッキの確認を


さてKILLER SCRATCH!!をプレイした方は、その情報量の多さに驚くのではないでしょうか。レコード状の盤面を流れてくるノーツ、ライブではお馴染みの迫力あるリリック演出、Gコレクトで獲得した格好いいキャラクターたちのカットイン……。慣れてくると次第にそれが最高に思えてきて、映画の好きなシーンを何度も見てしまうのと同じように、一部のリリックと画面の表現が最高に堪らない中毒性をもたらす事態が起きてきます。ラップミュージックを聞きなれていない筆者ですらリリックのなかのライム(一定の場所に同じ韻の言葉で揃えること)に惹かれて、思わずリリックを調べてしまうほどのめりこんでしまいました。ラップ中にはキャラクターそれぞれの特徴がしっかりと捉えられていて、嘲笑いながら、叫びながら、淡々と静かに……と複雑な曲調に乗せられているリリックは強く訴えかけるものがあり、良く作り込まれていることがわかります。


▲筆者が堪らないと感じてしまうKILLER SCRATCH!!のプレイ画面。リリックが大きく表現されていて、視覚的インパクトも大きい。 ”ヒプノシスマイク-Divishion Rap Battle-”という曲の冒頭部分、AからDパートすべてに共通している部分だが、その後は各ディビジョンによって演出が全く異なり中毒性がある


▲各キャラクターが表示されるのは、それぞれのカードが持つ”オートスキル”が発動しているサイン。どんなスキルが発動しているかは盤面のふちに流れてくるテキストで確認できる


▲オートスキル発動のタイミングが重なり、編成しているキャラクター全員が表示。さらにリリック演出も出現していると画面はかなり賑やかだ


現在、『ヒプマイARB』ではイケブクロ・ヨコハマ・シブヤ・シンジュクの4つのディビジョンが登場しますが、原作CDではオオサカ・ディビジョン、ナゴヤ・ディビジョンも登場。ファンの方に限らず気になった方はぜひ一歩踏み出していただき、彼らのラップに魅せられてみませんか? そして、彼らと一緒にオルタナティブラップバトルを盛り上げていきましょう。以下のツイートの告知でわかりますが、新規のイベントが目白押しです。楽しむチャンスですよ。




©IDEA FACTORY / ヒプノシスマイク -Alternative Rap Battle-製作委員会

外部リンク

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vol.1 当たり前にエンタメを受け取れる日まで

2020年5月1日 16:00 WHAT's IN? tokyo

演劇、舞台をメインに執筆しているライターの片桐ユウが、芝居やエンターテインメント全般に思うことを綴っていくコラム。作品は人に様々な感情をもたらすもの。その理由やルーツを訪ねて飛び回ってみたり、気になった場所を覗き込んでみたり、時には深堀りしてみたら、さらに新しい気づきがあるかもしれない。“エンタメ”とのコミュニケーションで生まれるものを、なるべく優しく大切に。
初回は、最近周りを駆け巡った名台詞から思い返したエピソードを書き記します。


いつ明けるとも知れない夜は、こんなにも長い


**“The night is long that never finds the day.”|bold**


シェイクスピア『マクベス』の第四幕第三場。将軍・マクベスに暗殺されたスコットランド王・ダンカンの息子であるマルコムが、同じくマクベスに一家を惨殺され嘆く臣下・マクダフに向かって投げ掛ける台詞だ。


今、きっと多くの人の心の声ともリンクするだろう。いつ明けるとも知れない夜は、こんなにも長い。文化芸術圏は、2月半ばから演劇公演や音楽ライブの延期や中止が相次ぎ、映画館や美術館なども開館自粛。再開の予定は未定のまま苦しい夜が続いている。


この台詞は「長い夜も必ず明ける」という意訳が一般的だが、「明けない夜は長い」という警句とも受け取れる。忠臣を慰めるために掛けた言葉だったのか、あるいはマクベスへの仇討ちに発破を掛けたのか。


物事は全て“解釈”次第。“解釈”=その人の受け取り方次第だ。

台詞や演劇、映画、小説なども含めた“作品”は、様々な解釈が生まれるからこそ面白い。

だが昨今の状況を見ると、違いを“面白い”と括ることは難しい。


音楽・演劇といったライブや文化芸術をひと括りにして表現するが、いわゆる“エンタメ”関係は、この騒動で広がる波紋がイチ早く届いてしまった業界のひとつだったと思う。人命を守るための決断だと納得しつつも、“延期”や“中止”の2文字に涙を飲んだ人は計り知れない。


だが現時点で、その涙や流した血が顧みてもらえるという希望は未だに薄い。それだけ今の社会には余裕がないのだとも思うが、時間の経過とともに、未曾有の混乱が生活に及ぼす影響の大きさや受け止め方がそれぞれ違っているということもむき出しになってきて、“解釈”という範囲では収まらない、深刻な断絶が広がっていくように感じられる。

何が最優先か、不必要か。個々の価値観がさらけ出されていく。


そんな中で、はたしてエンタメはどこまで人間の生活に必要なのかと己に問う時がある。

……と言いつつ、その答えは9年前から持っているのだ。


フリーライターの“ライ”が付いたり消えたりしながらも、志していたエンタメ関係の仕事にようやく携わり始めていた時期に、東日本大震災は起こった。

TVには命の危機に晒された人や大事なものを失った人々の姿と、救命の仕事を全うするために活動する人たちの必死な姿が映し出されていて、身近な中には自分に出来ることを探して被災地に飛んで行った人もいた。


当時、私は“ライ”が付いていない方の仕事のシフト明け、アニメ雑誌に掲載する原稿を仕上げながら、「一体どこに向かって、何のために書いているんだろう?」とぼんやり思っていた。今にして思えば大変失礼な気持ちだったのだが、貴重な原稿依頼も、その数週間前に編集部から採用の連絡を受け、芸能取材をできることになったチャンスすらも全てが色褪せて感じられた。


そんな時、キッカケは忘れたけれど音楽を生業としている友人と話をした。


その友人は、2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロ事件の当日、米国行きの飛行機に乗っていたという恐るべきタイミングの持ち主。彼の乗った便はニューヨークへと向かう予定だったが、テロ発生の知らせを受けてアラスカに緊急着陸。冷え切ったアンカレッジ国際空港でしばらく足止めを食うことになったという。


凍えた乗客たちには、最初にブランケットが配布された。次にサンドイッチと温かいコーヒー。そうして体が少しだけほぐれた頃合いだったのか。「その次に、音楽が流れたんだ」と、友人は言った。


人が、温かさと腹を満たされた後に欲したものは、音楽という“エンタメ”だった。

事実、そのことで訪れた空気の和らぎを彼は肌で感じたそうだ。

「だから我々がやっている仕事は、人間が生きるために必要不可欠なんだよ」

淡々と、だが確信を込めて友人は語ってくれた。


そうかあ、と思った。そうなのか、と思えた。


友人の言葉を立証するかのように、9.11の後も3.11の後も、音楽や演劇、エンタメの力が時に人々の救いとなり、忘れてはいけない想いを刻んでいる。

自分の中にも、このエピソードは仕事に対する信念を形作るひとつとして根付いていて、ずっと胸の内にある。


そして今も、エンタメは人々の支えになっている。

身を削って仕事を休み、自宅待機をして外出を控える人や、リスクを負って外で働く人たちに向けて、様々なジャンルのエンタメが力を振り絞っている。


署名活動、リモート配信、SNSを通じてのバトン・コミュニケーションなど、アーティストや俳優たちが動画や画像をつないでいる。それはエンタメ従事者の生活やアイデンティティの確保というより(もちろんそれもマストで全ての人が守られるべきものだが)、もっと切実な呼び掛けにも感じられる。


この記事を書くにあたって、久しぶりに例の友人に連絡を取った。

あのエピソードを書かせて欲しいというこちらの願いを、友人は「へい。」と了承してくれた。そして相変わらず淡々としたテンションと切れ味で、エールと共に「エンタメがない世界は危険だよ。エンタメは“安全装置”だから」という言葉もパスしてきた。


啓示に思わせておいて、けっこうな重い課題を受け取ってしまった気もしたが、腑に落ちるところがあった。

そう、きっとエンタメには“趣味”という印象が与える“暇つぶし”や“遊び”といった、ほのぼのした役割以上のものがあるのだ。


ブランケットもサンドイッチも配られない中では、途方もなく長い夜の先に感じる話かもしれない。だけど、音楽・演劇、文化芸術これらのエンタメ全て、人には絶対に必要だ。

だから胸を張って、エンタメのいろいろを書き記し続けていきたいと思う。できれば、“安全装置”という切羽詰まった言い方より、“娯楽”という言葉で皆が当たり前にエンタメを受け取れる日まで。


そういえば冒頭の台詞だが、「夜明け」を切望している点は一致している。

全ての人が、この夜明けを笑顔で迎えられますようにと願う。


文 / 片桐ユウ

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実は大の映画好き! 若手女優・畑 芽育おすすめ、“全集中”で観たい珠玉のミステリー映画3選

2020年5月1日 12:00 WHAT's IN? tokyo

2020年1月期にテレビ朝日系で放送され、「予想以上の面白さ!」とSNSを中心に、続編を希望する声も多かった話題のドラマ『女子高生の無駄づかい』で、“ロリ”こと百井咲久を好演して記憶に新しい、注目の若手女優・畑 芽育。



実は彼女、「多い月は6〜8本ほど観る」という映画好き。気になる映画を見つけて観賞しては、「惹かれる女優さん、俳優さんを見つけて、その方が出ている作品を片っ端から見る」そう。



そんな畑に今回は、”おうち時間”で楽しめる「ミステリー映画」を聞いてみた。すると、映画通も驚く、「映画好きっぷり」がひしひしと伝わってくる回答が! 彼女の新たな一面が垣間見ることができた。


取材・文 / WHAT’s IN? tokyo編集部


Q.大作だけではなく、ミニシアター系もよく観るとのことですが、好きな俳優さんは?

沢山いるのですが、1番はブラッド・ピット様! あの吸い込まれるような瞳、他にはないと思っています。生まれて初めて「この人と結婚したい…」という感情が芽生えた男性でした(笑)。「オーシャンズ」シリーズのブラピ様は本当に堪りません。

あと、初めて『レオン』(1994)を観賞した時は、マチルダを演じていたナタリー・ポートマンにも衝撃を受けたのを覚えています。容姿の美しさはもちろんのこと、芝居力や目力に圧倒されましたね。


Q.最近観た作品は?

最近はオドレイ・トトゥ(映画『アメリ』の主演女優として知られる)の作品を鑑賞中です。あと、『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』(2011)を観ました。前作もそうですが、はちゃめちゃで破天荒。何も考えないで観れる最高の作品です。憂鬱な気分な時にみるとスカッとして笑えます^_^


Q.気になっている映画は?

米FOXニュースの元人気キャスターがCEOを起訴した実話を基にした『スキャンダル』(2019)という映画です。映画館に足を運ぶタイミングを逃してしまったのでレンタルを待機中ですね(笑)。


© Lions Gate Entertainment Inc.


Q.おすすめのミステリー映画は?

映画『セブン』(1995)

※Netflix、U-NEXT、TSUTAYA TVで配信中



モーガン・フリーマン演じる定年退職間際のサマセット刑事と、ブラッド・ピット演じる正義感の強い若手のミルズ刑事の2人がタッグを組み、「七つの大罪」をモチーフに繰り広げられる連続殺人事件を解決していくお話です。


この作品、何度見てもラストシーンには度肝を抜かれますし、気味の悪い手口で進められていく事件に鳥肌が止まりません!! 2人の掛け合いや芝居はもちろんのこと、暗い街並みや雨の描写によって表される重苦しく陰鬱な情景は、観ている側にもひしひしと伝わり作品にのめり込むことができる素晴らしい手法だと思います。サイコミステリーとして物凄くクオリティが高く、映画史に残る名作と謳われるのも当然の作品だと思っています。まだ観たことがない方は是非、“2度”観てみることをお勧めします。



映画『母なる証明』(2009)

※Netflix、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ、TSUTAYA TVで配信中



『パラサイト 半地下の家族』でカンヌ国際映画祭パルムドール、そしてアカデミー賞で作品賞を受賞された、ポン・ジュノ監督の作品です。女子高生惨殺事件の犯人として拘束された知的障害をもつ息子の無実を晴らすため、たった1人で奮闘し続ける母親のお話なんですが、たくさんの謎と伏線が散りばめられています。


1番印象深いシーンは、母親を演じるキム・ヘジャの泣き叫ぶ声。今でも頭から離れません。登場人物全員が主役のような…、一人一人の生き様や生涯を追いたくなるような、2時間程度ではとても足りない物語だと思います。とにかく、韓国映画のクオリティの高さを見せつけられるミステリー作品です。


映画『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)

※U-NEXT、Huluで配信中


©2013 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.


エイドリアン・ブロディやジュード・ロウ、ビル・マーレイなど、豪華キャストで繰り広げられるこの作品は、ホテルでも定評のある敏腕コンシェルジュのグスタヴ(レイフ・ファインズ)が、ホテルの上客であったマダムD(ティルダ・スウィントン)が殺されてしまったことによって始まる事件や色々な問題を、ベルボーイのゼロ(トニー・レヴォロリ)とともに解決していくお話です。


“絵のように美しい”。劇中に出てくる台詞そのままお借りましたが、本当にこの作品はずっと絵画を見ているかのように美しいのです。これぞ映像美。質感や色味、衣装からヘアまで全て私のどツボでございます…! ミステリー要素ももちろんのこと、コミカルな部分も大変見どころで、テンポ感もよくとても見やすいです。ミステリー作品を探している友人がいたらまずこれをおすすめしたいなと思います。

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cat_oa-rp87552_issue_f5e5d677065c oa-rp87552_0_4962f5355423_「志尊の自粛部屋」でファン急増! 俳優・志尊 淳の無限大の魅力を堪能。“もっと”虜になるおすすめ5選 4962f5355423 4962f5355423 「志尊の自粛部屋」でファン急増! 俳優・志尊 淳の無限大の魅力を堪能。“もっと”虜になるおすすめ5選 oa-rp87552

「志尊の自粛部屋」でファン急増! 俳優・志尊 淳の無限大の魅力を堪能。“もっと”虜になるおすすめ5選

2020年4月30日 20:00 WHAT's IN? tokyo

志尊 淳が4月23日から本日4月30日まで、毎晩23時から行っているインスタライブ「#志尊の自粛部屋」。“右手に体温計~、左手にコークハイ~”と歌いながら、検温を促し、一緒に宅飲みしている気分になれる自然体の配信が話題を集めている。
若手実力派俳優として人気の志尊だが、「#志尊の自粛部屋」では、料理をしたり、お笑いタレントの丸山 礼を呼んで、あごが痛くなるほど笑い合ったり、ドラマ『Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜』で演じた天然キャラ・川合太一を降臨させたり、ジャイアンのモノマネを披露したり……、書きだせばキリがないのだが、「テレビで見せたことないよ」と自ら顔を赤らめるほど、完全おうちモード。自身の寝室から添い寝姿で配信するなどファンを悶絶させたかと思えば、“持ってるなぁ”としか思えない天然っぷりも発揮し、気付けば、当初2万人前後の視聴者も最大12万人を超えた。これまでのファンのみならず、多くの新規ファンを獲得し、Instagramのフォロワー数も70万人弱から、現在90万人強まで伸ばしている。
現在は「#志尊の自粛部屋」のテーマソングから発展し、志尊の実の叔父である宮崎 歩と曲を作って、ファンに届ける計画もスタート。「#志尊と歩む」で歌詞の募集を行っている。
皆が沈みがちな自粛期間に、温かな「おうち時間」を提供した志尊。今回はこの「#志尊の自粛部屋」からファンになったという人のためにも、俳優・志尊 淳の実力がわかる作品5本をセレクト! どうか「#志尊の自粛部屋」ロスに役立ててほしい。
文 / 望月ふみ トップ画像・撮影 / 斎藤大嗣



ドラマ『きみはペット』

恐るべし愛くるしさ! 抱きしめたくなる魅力が満載


©小川彌生/講談社 ©2016「きみはペット」製作委員会



2017年2月からフジテレビオンデマンドにて先行配信、続けてフジテレビ地上波深夜枠にて放送された。入山法子×志尊 淳のコンビにより、2003年にTBSにて放送されてヒットを記録した小雪×松本 潤コンビとはまた違った新鮮な魅力を携えたドラマとなった。大手新聞社に勤める容姿端麗、高学歴のスミレ(入山)。本当は繊細で恋愛にも不器用だが、周囲にはなかなかその素顔が伝わらない。仕事もプライベートもどん底状態のある日、スミレはマンション前で段ボールに入っていた美少年・合田武志(志尊)にかつての愛犬“モモ”の面影を感じて、彼をペットとして飼い始める。

原作は少女コミック。「キャリアウーマンが美少年をペットとして飼う」という、ならではの世界観を役者の魅力によってうまく実写に落とし込んだ。なかでもモモのキャスティングは最重要事項だが、「モモ!」と呼んで抱きしめたくなる愛くるしさが、志尊の全身からあふれ出ている。また実は武志の素顔は国際的にも通用する才能を持ったバレエダンサーであり、ダンスシーンもきっちりこなした志尊は、身体能力の高さを十二分に感じさせる。さらにスミレと添い寝してしまえる中世的なところがありつつ、時折男子としての顔を覗かせてドキリとさせる。まさに志尊のキュートな魅力全開の作品。なお、同年公開された菅田将暉主演、野村周平、竹内涼真、間宮祥太朗、千葉雄大共演のコメディ映画『帝一の國』でも可愛らしい志尊が拝める。サラサラストレートのマッシュルームヘアの榊原光明役で、語尾に「にゃん♡」とつけるぶりっ子男子高校生役に不自然さを感じさせないのは、恐るべし。

FOD、TSUTAYA TV、ビデオマーケットで配信中

映画『探偵はBARにいる3』

静かな迫力で魅せるケンカの達人

©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会


『帝一の國』を含め、2017年に4本の映画が公開された志尊。限られた出演シーンで、インパクトを残してみせたのが『探偵はBARにいる3』だ。東直己の推理小説「ススキノ探偵」シリーズを基とし、札幌のススキノを舞台に、大泉 洋が主人公の探偵、松田龍平が探偵の相棒兼運転手の高田を演じる人気シリーズの第3弾である。女子大生失踪事件の真相に迫る探偵と高田が、大きな事件に巻き込まれていく。

謎の女性マリを演じた北川景子の美しさが光る作品だが、志尊はそのマリが関わる組織の用心棒・波留役。華奢な体つきで常に微笑みを浮かべ、一見ケンカとは無縁に見える青年だが、実は負け知らずの使い手であり、腕には自信のある高田を完膚なきまで叩きのめしてしまう。ひと蹴りで大柄な高田を吹っ飛ばす波留の絶対的な強さを、アクションのできる志尊が説得力を伴い静かな迫力で魅せる。後半には波留と高田の一騎打ちが展開。『きみはペット』での抱きしめてしまいたくなるモモとは、180度違うケンカの達人ぶりは必見だ。

U-NEXT、Hulu、dTV、Amazonプライムビデオ、Paraviで配信中

『女子的生活』

美しすぎる、完璧な女子姿!


©NHK



どんな役でも自然に演じてみせる実力を持ちながら、見た目のキュートさから、実力が正統に評価されていない感のあった志尊が、その実力を認めさせたのが、2018年の1月にNHK総合「ドラマ10」枠にて放送されたドラマ『女子的生活』だ。「ギャラクシー賞」2018年1月度月間賞と「第11回 コンフィデンスアワード・ドラマ賞」主演男優賞に輝いた秀作である。志尊が演じたのは、体は男性だが心は女性で、好きになるのも女性のトランスジェンダー・みき。ファストファッション会社でOLとして働き、「女子的生活」を満喫しているみきのもとに、ある日、同級生の後藤(町田啓太)が転がり込んだことから、日常が変化していく。

放送当時、志尊のあまりに完璧な女子姿が大評判に。志尊が演じるトランスジェンダーの女性と聞くと、可愛い女性を思い浮かべがちだが、本作でのみきは、可愛いというよりは「美しい」女性。何より凛とした強さが印象に残る。様々な偏見や差別を受けながら、自分が本当に好きになれるもの(ファッション)を見つけて、突き進む姿に、共感と羨望のまなざしを向けた女性は多い。だが同時に、みきは決して神聖化された対象として描かれることはなく、時に攻撃的な態度も見せるイヤな部分も“ちゃんと”持ち合わせている。そのことがとても人間くさく、一歩間違えば共感できない、嫌われるかもしれないキャラクターを、志尊は違和感なく体現してみせた。次第に絆を育んでいく後藤役の町田との相性もぴったりで、後藤によってあぶり出されるみきの弱さや可愛らしさも見る者の心を掴んだ。この年、続けてNHK連続テレビ小説『半分、青い。』に出演した志尊は、ヒロインの鈴愛(永野芽郁)と友達になる漫画家志望のゲイの青年ボクテを演じて人気を博したが、ここではまた全く異なる愛らしさを醸し出していた。

U-NEXT、ビデオマーケットで配信中

『劇場版 ドルメンX』

アイドルパフォーマンスで地球人を虜に!


©高木ユーナ/小学館 © 2018「劇場版 ドルメンX」製作委員会



2018年に『ドルメンX』がドラマ放送され、続けて『劇場版 ドルメンX』が公開された。ある惑星からやってきた宇宙人侵略チームが、トップアイドルとなって地球人の心を掴むことで侵略を達成させようと目論み、メンズアイドルグループ「ドルメンX」を結成。いつの間にか本気でアイドルを目指して奔走し始める。なんとも突飛な設定の本作の原作は、高木ユーナによる人気コミック。志尊は、何事にもまっすぐに突き進む隊長を演じ、ともにアイドルを目指す宇宙人隊員に浅香航大、小越勇輝、堀井新太が扮した。「ドルメンX」のマネージャーを務める唯一の宇宙人女子には玉城ティナ。さらに地球人ながら「ドルメンX」に加入し、隊長らメンバーに影響を与える実光修吾を桐山 漣が演じた。

スポコン系アイドル青春コメディと謳われている本作。おふざけ映画とみえて、その内容は友情や夢への思いと熱く、さらに映画版では15年後まで描くことによって、歳を取らないメンバーたちの一方で、普通の人間として歳を取っていく修吾を置き、大切なものへの気づきを見せていく深い人間ドラマになっている。どこか舞台ちっくな色合いの演出も世界観に合っていて、そのなかで志尊たちが全力で青春を駆け抜ける。また、「ドルメンX」の楽曲の振り付けを「モーニング娘。」などの振り付けで知られる夏まゆみが担当。志尊たちのアイドルパフォーマンスへの本気の挑戦を楽しむことができる。

Huluで配信中

ドラマ『潤一』

孤独を滲ませる男の色気を爆発!


©️2019「潤一」製作委員会



可愛らしく、時に男らしく、また凛とした美しさも持ち合わせ、コメディもイケる。どんなジャンルでも自然に染まってしまう志尊が、男の色気を爆発させたのが恋愛小説の短編集を映像化した『潤一』だ。2019年の7月・8月に関西テレビにて放送された同ドラマは、フランス「カンヌ国際シリーズフェスティバル」コンペティション部門への正式出品を果たした愛のドラマであり、1週間限定で劇場先行公開も行われた。


©️2019「潤一」製作委員会


ここで志尊が演じたのは、さまざまな事情を抱えた6人の女たちの前に突然現れ、孤独な日常の隙間に入り込み、去っていく男・潤一。ベッドシーンがあることばかりが取りざたされがちだったが、主人公でありながら、女性たちの物語を繋ぐ役割として立ち、浮遊感を持ったまま作品全体をまとめる難役だ。夏井美菜、夏帆、原田美枝子、江口のりこ、蒔田彩珠、伊藤万理華と芸達者な女優陣を相手に、志尊は絶妙な距離感と空気で潤一として漂って見せた。ここで見せる艶っぽさは、キャリアを重ねてきた志尊がまた新たなステージへと上がったことを確実に感じさせ、これまでに感じさせたドキドキとは全く別のドキドキをもたらす。そして終盤で滲ませる潤一の孤独が、余韻を残す。

U-NEXT、FOD、Hulu、dTV、Amazonプライムビデオ、TSUTAYA TVで配信中。

着実に実力を積み上げてきた志尊 淳の多面的な魅力が楽しめる待機作に注目


©2020「さんかく窓の外側は夜」製作委員会©Tomoko Yamashita/libre


2011年にミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで俳優デビューを飾り、2014年にテレビ朝日の『烈車戦隊トッキュウジャー』への主演で子供たちのヒーローとなった志尊。振り返ってみると、そこから着実に実力を積み上げ、短い期間で志尊が急激に若手実力派として認知されるようになったことが分かる。

この先は江口洋介主演のNHKドラマ『天使にリクエストを〜人生最後の願い〜』に出演が決定、またディズニー&ピクサーのアニメーション映画『2分の1の魔法』が公開を控えている。そしてヤマシタトモコのミステリー・ホラー漫画を映画化する『さんかく窓の外側は夜』にて、岡田将生が除霊師役、志尊が霊の見える書店定員役で心霊探偵コンビを組み、W主演を務めることが発表済みで、期待の声があがっている。先行き不透明な今だが、ファンとの繋がりを大切にしている志尊のさらなる活躍を応援しつつ、過去作から志尊の多面的な魅力を堪能できる、新作への準備期間にしよう。

※配信情報は4月30日現在のもの

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『コウノドリ』傑作選――山口まゆ・望月 歩の演技に脱帽&小栗 旬の新たな魅力が開花! 今だからこそ噛みしめたい命の尊さ

2020年4月30日 19:00 WHAT's IN? tokyo

春ドラマの放送延期に伴い、傑作選が放送されるやいなや、SNSを中心に再び大きな反響呼んでいるドラマ『コウノドリ』(TBS)。本作は温厚でありながらも冷静な判断力を持つ産婦人科医の鴻鳥サクラ(綾野 剛)が主人公の医療ドラマで、悩みを抱える妊婦とその家族を中心に物語が展開されていく。産婦人科と聞くと、新しい命の誕生=幸せなテーマを扱っているように思えるが、本作では未受診妊婦や先天性の病気を持つ赤ちゃんなど、現代のリアルな出産事情について触れており、ドラマ内で描かれる医師たちの葛藤や母親の心情に涙する視聴者が続出。再放送にもかかわらずネットには「もう全話観ているのに、やっぱり泣いちゃう」「こんな時期だからこそ改めて命の尊さについて考えさせられた」「どの回も何回観ても泣ける」「自分の出産を思い出した」といった感動の声が寄せられた。


そんな今もなお高い人気を誇る『コウノドリ』の傑作選の放送を記念して、WHAT’s IN? tokyoでは編集部ピックアップのオススメの回を紹介。ドラマは『Paravi』などでも配信しているので、GW中のこの機会にぜひチェックしてほしい。


文 / 近藤加奈子


交通事故に遭った臨月の妊婦、その結末は――


まず『コウノドリ』を鑑賞するうえで欠かせない回となるのが第1シーズン(2015)の第2話『答えのない選択』。臨月を間近に控えた妊婦の永井晴美(川村ゆきえ)は交通事故に遭い、病院に搬送され一命を取り留めるも、脳の損傷によって意識が戻らなくなってしまう。駆けつけた夫の浩之(小栗 旬)は、サクラに「奥さんや赤ちゃんの容体はいつ急変するかわかりません。永井さん、その場合、奥さんと赤ちゃんどちらを優先しますか?」と聞かれるもその状況が受け入れられず、「俺に決めろっていうんですか?」「どっちも助けろよ!」と激怒。永井は晴美の回復を祈り続けるも、ある時容体が急変。パニックに陥る永井だったが、その時彼の脳裏に晴美とのかつての会話が頭を過り、彼女の望みを叶えるためにも赤ちゃんの命を優先することを決断。女の子が産まれてきた後に、奥さんは帰らぬ人となってしまうのだった。愛する人の命を取るか、その愛する人が望んでいる命を取るか――。この回では究極の決断を迫られた男の葛藤を描いているが、多くの女性視聴者も涙しただろう。あらためて出産というのは命懸けであり、生まれてくる赤ちゃんはいくつもの奇跡が結実した結果ということを思い知らされる回だ。しかし、永井があの時現実から目を背けることなく決断できたのは、それだけ彼が奥さんを深く愛していた証だろう。ドラマでは、その後の永井の様子も描かれていく。


星野 源演じる四宮春樹の辛い過去が明らかに


第1シーズンの第3話『2つの手がつなぐ奇跡』では、サクラとは対照的に無表情で冷徹な男に見える産婦人科医・四宮春樹(星野 源)の人間性がわかるのも面白い。5年前、四宮は喫煙者の妊婦を担当しており、何度もたばこをやめるように諭したが、彼女は言うことを聞いてくれなかった。しかし、妊娠32週目の時、その妊婦は喫煙が引き金でオペの最中に亡くなり、生まれてきた女児も重度の脳性麻痺を患い今も意識が戻らないでいる。このオペの後に四宮は、「どんなに嫌われてもやっぱり患者に優しくなんてするもんじゃないな」「こんなに苦しいなら嫌われていたほうがマシだった」と肩を震わせて泣き出し、後悔に苛まれるのだった。患者からもクレームが来るほど冷血漢に思える四宮だが、その背景には悲しい過去が存在していた。そして、四宮は今も目を覚まさないでベッドの上にいる女児に絵本を読み聞かせるため、5年間毎日小児科病棟に通い続けている。こんなふうに四宮の本当の人間性がわかると、彼に対する見方も変わってくる。たとえ妊婦から冷たい医者だと思われても、命を最優先することを考え、合理的な判断を貫く――。四宮に魅力を感じる人の多くは、単純に医者として優秀だからではなく、きっと彼の根底にある優しさを感じ取っているからだろう。たしかに笑い顔はめったに見せないが、それも四宮を形成する個性として面白く感じるし、むしろあの無表情さがだんだんと癖になってくるから不思議だ。


山口まゆと望月 歩の演技のふり幅に脱帽


先日傑作選としても放送され、反響を呼んだ第1シーズンの第5話『14歳の妊娠 少女が母になる時』。ある日、妊娠が発覚した14歳の吉沢玲奈(山口まゆ)は、産婦人科を受診。玲奈はすでに妊娠8か月だったが、エコーでお腹の子供を見ても「なんだかCGアニメみたい」と他人事のような態度。結局赤ちゃんは養子に出すことで話が進むが、その時ずっと黙っていた赤ちゃんの父親で元カレの元倉 亮(望月 歩)が、「俺嫌だ。まだ生まれてもないのに他人に渡す相談なんて」と口を割る。玲奈と亮は同じ年で互いに中学生だが、赤ちゃんについて初めて真剣に向き合った時、彼らに変化が表れ始める。玲奈は胎動を感じる度に優しい顔を見せ、自分のこと以上にお腹の子を心配しては、「養父母さんは可愛がってくれるよね? 血が繋がってなくても家族になれるよね?」とサクラに相談していた。そして、陣痛が始まり玲奈は叫び声を上げ全身の力を振り絞るように我が子を出産。その時、分娩室の外で赤ちゃんの産声を聞いた亮は、どうすることもできず無言で涙を流し崩れ落ちた。一方、亮が来ていると知らない玲奈は赤ちゃんを抱き、大量の涙と笑顔が同時にこぼれる。サクラが「じゃあ連れていくよ」と言っても首を横に振り、我が子を抱きしめる。そして、赤ちゃんが去った部屋で玲奈はひたすら泣き続けるのだった。この回で注目してほしいのは、何と言っても山口と望月の演技のふり幅だ。最初は出産の意味すらよくわかっていなかった中学生2人が、初めて妊娠と向き合い自覚を持つことで、だんだん母親・父親の顔に変化していく。当時山口は14歳、望月は15歳でこの役を演じたが、その表現力は何度観ても驚かされる。リアルな14歳の母と父を演じ、たくさんの視聴者の心を動かした若い2人の役者にはこれからも大いに期待できそうだ。


父親役として小栗 旬の新たな魅力が開花


続けて紹介するのは、第1シーズンの第6話『タイムリミット 最後のチャンス』。竹下敦子(森口瑤子)は43歳の妊婦。不妊外来を受診し、これまで着床してから3回の流産を経験。今度こそ我が子を産みたいと願っていた。予定日より早めではあったが、無事女児を出産した敦子。しかし、母体の出血が止まらず、子宮摘出手術に切り替えて何とか一命を取り留めた。また、第2話でシングルファザーとなった永井もこの回に再登場。娘の発熱で病院にやって来た永井は、我が子の誕生と妻の死から半年経過し、仕事と慣れない育児でてんてこ舞いになっていた。そんな永井を演じた小栗が本作で魅せる表情はとても柔らかく、穏やかで、1つ1つのシーンに父親としての説得力を感じることができた。これまでに数々の作品に出演してきた小栗だが、この回では彼の新たな魅力が開花されていたのも印象深い。


まるで本物の親子のようなナチュラルな雰囲気に感動もひとしお


そして、最終話では葛藤の末、シングルファザーとして生きる決断をした永井の様子が描かれている。この回も先日傑作選として放送され再び大きな注目を集めた。第1シーズンの第10話『母と子を救う チームが起こす奇跡』では、仕事と子育ての両立が上手くいかず、娘を田舎の母に預けようかと考え始めていた永井。娘の芽依はもうすぐ1歳の誕生日を迎えようとしていたが、「この先ずっと芽依は自分の誕生日を母親の命日に迎えるんです。そのワケをいつか話さなきゃいけないと思うと気が重くて」とサクラにこぼし、苦しそうな顔を見せた。しかし、サクラが自分も母親の命と引き換えに生まれて来たと明かすと、永井は表情を変える。その後、自分なりに考えた結果、永井はこの先も娘を自分で育てると決断。娘を抱き上げ微笑む永井は、頼もしい父親の風格を漂わせていた。そして、まだ言葉は話せなくても芽依の嬉しそうな表情も実に愛おしい。この話がフィクションであるとは承知しながらも、思わず永井父娘の幸せを願わずにはいられなかった。


今回は第1シーズンを中心に紹介したが、ドラマ『コウノドリ』は第2シーズン(2017)を含む、全21話涙なしでは観られない神回ばかり。鑑賞後はきっと「生まれてきてくれてありがとう」「産んでくれてありがとう」と、そんな気持ちが芽生えてくるだろう。そして、今このような時だからこそ、生きることの素晴らしさ、命の尊さを噛みしめてほしい。




©TBS

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『3年A組』『ソロモンの偽証』『男子高校生の日常』この作品に、あのキャストが!? 豪華配役からディグって観たいドラマ&映画(前編)

2020年4月30日 18:30 WHAT's IN? tokyo

コロナ禍の影響とは言え、ドラマ『野ブタをプロデュース。』(05/日本テレビ)の地上波ゴールデンタイム再放送などで、過去の良作ドラマに対する注目度が増している。さしづめ、映像作品における“ディグ(る)”とも言えそうだ。にしても、膨大なアーカイブスと豊富な鉱脈を“掘る”にあたっては、何かテーマを絞った方が作業がスムーズに進むのでは──と考えて、キャストに焦点を当てることにしてみた。

「えっ、このキャスティングって今からすると豪華すぎない?」「この作品では、あの人たちが共演してたの!? あの人も出演してたんだ!」といったように、配役から数珠つなぎのようにリンクを張りつつ、系譜図さながらに配信で観られるドラマや映画の良作を前・中・後編に渡って紹介。僭越ながら、より豊かな「おうち時間」を過ごすヒントにしていただければ、と──。


まずは“導入口”として、好評放送中の連続テレビ小説=朝ドラ『エール』(NHK)のキャストに着目。実は、1年と少し前に放送された連続ドラマに出演していた若手俳優/女優たちが4人も登場しているのだ。佐久本 宝(主人公・古山裕一の弟、浩二役)、堀田真由(裕一の幼なじみでダンスホールの踊り子・志津=とみ役)、望月 歩(裕一が務める川俣銀行の行員・松坂寛太役)、森 七菜(ヒロイン・関内 音の妹・梅役)…の名前に見覚えがある人も多いことだろう。ということで1作目は、SNS社会に痛烈な一撃を浴びせた、菅田将暉が初めて教師を演じた主演作をクローズアップする。


文 / 平田真人


ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』 次世代を担う若きキャストが結集!


【STORY】

卒業まであと10日。いつものように何事もなく始まろうとしていた3年A組の日常は、担任教師の柊 一颯(ひいらぎ いぶき=菅田将暉)のひと言によって非日常へと変貌する。「今から皆さんは、僕の人質です」。校内のいたるところに周到に仕掛けられた爆弾とトラップによって、完全に外界と断絶された教室。そこで行われたのは、学園のスター的存在だったクラスメートがなぜ自ら命を絶ったのか──その真実に29人の生徒たちを向き合わせる、「最後の授業」だった。


キャスティングの肝(きも)としては、映画『帝一の國』(17)では恋人同士だった菅田将暉永野芽郁(=茅野さくら役)が、教師と生徒役として再びタッグを組んだこと(ちなみに、この映画も今思うとものすごく豪華な顔ぶれ!)。ドラマのキービジュアルも、この2人をフィーチャーしているが、A組のクラスメートたちもそうそうたる名前が並ぶ。クラス内のカーストトップに鎮座する甲斐隼人役の片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)や宇佐美香帆役の川栄李奈を筆頭に、一颯が事件を起こすきっかけをつくる景山澪奈役の上白石萌歌、その澪奈と水泳部でライバルだった水越涼音役の福原 遥、読者モデルにして女王気質の諏訪唯月役・今田美桜…と、この時点でも相当に強力だが、まだまだ終わらないのが、この“3A”のすごいところなのだ。


先ごろまで『大江戸スチームパンク』(テレビ大阪)に主演、『鈍色の箱の中で』(テレビ朝日)でもメインキャストを務めた萩原利久(=逢沢博己役)、同じく『鈍色の〜』に名を連ね、『左ききのエレン』(19/MBS・TBS)で主演、瀧内公美の相手役に指名された映画『裏アカ』も公開待機中の神尾楓珠(=真壁 翔役)、映画『惡の華』(19)で玉城ティナ、伊藤健太郎を相手に存在感を示し、ドラマ『ホームルーム』(MBS)でもヒロイン役を演じて鮮烈な印象を残した秋田汐梨(=秋庭 凛役)、子役時代から数々の名演で知られる存在であり、前クールは『ハイポジ 1986年、二度目の青春。』(テレビ大阪・BSテレ東)での主人公役も記憶に新しい今井悠貴(=西崎颯真役)、『魔進戦隊キラメイジャー』(テレビ朝日)でキラメイグリーン役に抜擢された新條由芽(=金沢玲央役)、『ゆるキャン△』(テレビ東京)でなでしこ役を務めた大原優乃(=辻本佑香役)、同じく『ゆるキャン△』や『俺のスカート、どこ行った?』(19/日本テレビ)や『チア☆ダン』(18/TBS)と立て続けにメインキャストを務めている箭内夢菜(=結城美咲役)、数々のドラマ・映画のみならず、『ヒルナンデス』(日本テレビ)にレギュラー出演中の富田望生(=魚住 華役)、『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(18/TBS)のC5の1人・成宮一茶役で脚光を浴び、MEN’S NON-NOのモデルとしても活躍中の鈴木 仁(=里見海斗役)、『中学聖日記』(18/TBS)などに出演した若林時英(=兵頭 新役)…と枚挙に暇がない。


キャストの羅列だけでかなりの文字数を費やしてしまったが、さらに前出の『エール』キャスト陣である佐久本 宝(=石倉光多役)、堀田真由(=熊沢花恋役)、望月 歩(=瀬尾雄大役)、森 七菜(=堀部瑠奈役)も加わるわけで、改めて若きタレント=才能が結集していたのだなと、思い知るばかりだ。


ネットで知り得た情報や知識で“わかったつもり”になって、ともすれば思考停止に陥ってもいる現代人に「Let’s Think!」と警鐘を鳴らした“問題作”でもあり、平成という1つの時代を締めくくる青春ドラマの金字塔とも言える本作。また、今から1年と少し前には知る人ぞ知る存在だった若き俳優/女優たちが、それぞれ各話でスポットを当てられることで大きな一歩を踏み出した記念碑的作品としても、もう一度じっくりと10のエピソードを噛みしめたい。


余談だが、堀田は現在「ゼクシィ」13代目となるイメージガールとしても活動中。そのCMで相手役を務めているのが鈴木で、両者は同じオーディションを受けて芸能界に入ったという縁もある。また、秋田と富田も『ホームルーム』で共演するなど、さまざまな作品で“3A”のキャスト陣が顔を会わせている。というわけで、次なる一作は少し時をさかのぼり、望月と富田が初めて大きな役を演じた、エポック的な映画を紹介する。




映画『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』 無名だった“原石”たちの、ほとばしるような群像!


【STORY】

記録的な雪で都内が真っ白になったクリスマスの朝。通用口から学校に入った中学2年生の藤野涼子(藤野涼子)は、雪に埋まったクラスメート・柏木卓也(望月 歩)の死体を発見する。当初は自殺と推察されたが、父が刑事である涼子宅と学校、そして担任教師宛てに「柏木は殺害された」とする告発状が届く。事件の真相をうやむやにしようとする学校側や大人たちをよそに、テレビでの報道によって事件が世に拡散されていく。そんな中、同級生がいじめられる現場を見ておきながら何もしなかったことを生前の柏木から咎められていた涼子は、彼の死の真実を知りたいという一心から、級友たちと学校内裁判を起こす──。


映画『ソロモンの偽証』(15)は、宮部みゆきによる「青春×ミステリー」の傑作を『八日目の蝉』(11)や『グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜』(20)の成島 出監督が前・後篇あわせて4時間20分超の大長編として紡いだ、骨太の一作だ。主演の藤野涼子は、この作品での役名を芸名としても名乗り、鮮烈なデビューを飾っている。また望月 歩は、その不審な死から物語が大きく動き出し、全編にわたってカギとなる柏木卓也役、富田望生は柏木が“殺害”された現場を目撃したと告発する三宅樹理(石井杏奈)の親友・浅井松子役で、ともに映画初出演ながら印象的なたたずまいを見せ、それぞれの将来に期待を抱かせた。なお、柏木殺害の“被告”として、涼子たち生徒が自治的に開いた裁判に出廷する大出俊次を清水尋也が、他校の生徒ながら柏木と小学校の同級生だった縁から、大出の弁護人を買って出る秀才の神原和彦を板垣瑞生が熱演。途中から失語症になってしまう樹理役の石井杏奈も含め(大出と彼の仲間が樹理と松子をいたぶるシーンの卑劣さは、本気で腹立たしくなるほど!)、真に迫る芝居で観る者を作品の世界に引き入れる。また、“3A”で高校球児の兵頭を演じた若林時英も、涼子たちと学校内裁判を実現させようと奔走する向坂行夫役を好演。人懐っこい笑顔を見せるも、大出から「ヘラヘラしてんじゃねえよ」と言われてしまうなど、どことなくコミカルな役回りを担っている。





大人の役者陣も名手ぞろいだが(優柔不断な担任教師役の黒木 華と、今で言うモンスターペアレントな永作博美の怪演が見事)、是枝裕和監督の『奇跡』(11)で主演を務めた前田航基と、同作品や『紙の月』(14)で宮沢りえの少女時代を演じた平 祐奈以外は、ほとんどが無名だった生徒役たちの名演が光る。藤野は凛とした芯の強さを目と立ち姿、そして低いトーンの声によって体現。清水もシーンごとに眼差しを微妙に使い分けることで、荒れる少年の苛立ちや孤独感を醸し出している。その清水と『ホットギミック ガールミーツボーイ』(19)で再共演を果たした板垣は、筆者が『響 -HIBIKI-』(18)公開のタイミングで取材した際、『ソロモン〜』を自身の原点的な一作に位置づけていると語り、作品への思い入れのほどを露わにした。

そんな彼女・彼らの織りなす、中学生ならではの拙く、かつ瑞々しいまでにまっすぐな群像と、伏線たる種まきを裁判によって“立証”していく話法が調和した映画の妙を、いま一度心ゆくまで堪能するのも乙なものだろう。


なお、本作のオーディションに臨んだ望月のエピソードはこちら。




富田も、初めてセリフと役名のある役をもらうために、15キロ近く増量してオーディションを受け、松子役に選ばれたことも語り草となっている。




映画『男子高校生の日常』 バカでしょーもないけど愛おしい青き日々


【STORY】

男子校に通うタダクニ(菅田将暉)、ヨシタケ(野村周平)、ヒデノリ(吉沢 亮)の3人は、女子のスカートについて語ったり、どうすれば彼女ができるのか考えたり、すねにガムテを貼って脱毛したり…と、とりとめのない日々を過ごしていた。ところが、今年の学園祭を近くの女子高と合同で開催することになってから、日常が急変。ふだんはいるはずのない女子高生たちがいる風景にとまどいつつも、どこか胸躍らせている自分に気づくのだった…。


“3A”で初めての教師役、近日公開の『糸』で初の父親役を演じた菅田将暉だが、2018年に公開された映画『となりの怪物くん』まで、長らく高校生を演じていた(『溺れるナイフ』では中学生役も!)。その作品群を挙げるとキリがないのだが、“今思うと豪華キャスト”的な視点で一作を選ぶなら、山内泰延のギャグ漫画を、ドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズ(テレビ東京)や、ワンカットムービーとして話題を呼んだ映画『アイスと雨音』(18)を撮った松居大悟が実写化した『男子高校生の日常』(13)がふさわしいと思われる。バカ、スケベ、単細胞と三拍子そろった男子高校生たちの、しょーもないけれども根拠のない無双感にあふれた日々を映していく、青春グラフィティな一篇。菅田は主人公の1人であるタダクニを演じているが、ちょっとふっくらとしたビジュアルが今観ると逆に新鮮に映る。もっとも、彼女はほしいけれども恋することには慣れていない…オーラのない男子高生という等身大のキャラクターにも実在感をもたらしている、との見方もできるだろう。何にしても、菅田将暉という役者のキャパシティーの広さを改めて実感するはずだ。


さて、タダクニと常につるんでいる悪友のヨシタケとヒデノリには、野村周平吉沢 亮がそれぞれ配されている。菅田と野村は『ハンマーセッション!』(10/TBS)や『ブラックボード ~時代と戦った教師たち~ 第一夜』(12/TBS)、『帝一の國』など数々の作品で共演しているが、菅田と吉沢の組み合わせは本作と「銀魂」実写版シリーズ(17、18)ぐらいと、意外にも少ない。一方、野村と吉沢は同じオーディションに受かった同士という縁がある。そんな3人がリアルに10代だったころ、制服姿がいたってナチュラルな時期の作品というだけでも、今となっては付加価値が付く。どことなく初々しく見えたりもする彼らの振る舞いを、ニヤけつつ観てみてほしい。ちなみに、タダクニの部屋で3人が女子のスカートについて、ああだこうだと熱く語るシークエンスは、ほぼアドリブ。台本では4〜5行だけ書いてあった会話を、本番ではノリで話をふくらませた──と、公開当時に筆者が行った取材の場で、彼らが明かしてくれたことを付け足しておこう。


ほかのキャストに目を向けると、ヒロイン役の岡本杏理の友人で、いかにもカースト上位な女子ヤナギン役の山本美月の存在感が、やはり際立つ。また、室内だろうといつもどこでも白いキャップをかぶっている唐沢役の仲野太賀をはじめ、本人の延長線上的なキャラにも見える細野役の栗原 類に、なぜか生徒会副会長役で東京03の角田晃広がいたり(しかも、そんなに違和感がない)…と、バイプレイヤー陣もなかなかに豪華。近々では映画『天気の子』(19)の主題歌のボーカルを担当して話題を呼んだ三浦透子や、吉沢の相手役(!?)を務めた白鳥久美子(たんぽぽ)も、イイ味を出している。また、担任教師役の佐藤二朗がおなじみのヌルッとしたセリフまわしを披露しているが、それをタダクニたちが茶化すのも本作ならではの妙味と言えそうだ。


さて、次回の中編では、菅田将暉と野村周平の数ある共演作の中から、あの“失敗しない大女優”がまさかの女子高生役を演じたドラマへとつなぐ。


おまけ

現在、配信はしていないけれども、これも豪華キャスト作品

ドラマ『先に生まれただけの僕』

“3A”つながりでもう一つドラマを挙げるなら、嵐・櫻井 翔が教師役を演じた『先に生まれただけの僕』(17/日本テレビ)も捨てがたい。森 七菜が初レギュラー出演した連続ドラマでは、『天気の子』でともに主演を務めた醍醐虎汰朗と実はクラスメート役で共演していたりする。また、同作には映画『町田くんの世界』(19)で主演を務めた細田佳央太や『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(18-19/テレビ朝日)でルパンレッドを演じた伊藤あさひ、『ミスミソウ』(18)主演の山田杏奈や、先代のゼクシィガールにして『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(20/日本テレビ)の白石 聖も出演。観る機会があったら、よ〜く探して観てみよう。


ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』

さらに、菅田将暉つながりで『大切なことはすべて君が教えてくれた』(11/フジテレビ)もピックアップ。戸田恵梨香三浦春馬の教師カップルに、生徒役だった武井 咲が絡むトライアングルなラブストーリーだが、生徒役の布陣が菅田を筆頭に何とも豪華。中島健人(Sexy Zone)に広瀬アリス剛力彩芽石橋杏奈…さらに、伊藤沙莉のん岡山天音の名も。残念ながら、現在配信はしていないので、CSなどでの再放送を待つか、自粛期間が終わってからDVDレンタルなどで、ご鑑賞あれ。




トップ画像・撮影

清水尋也 / 荻原大志

鈴木 仁 / 斎藤大嗣

板垣瑞生、望月 歩、森 七菜 / 増永彩子

佐久本 宝、菅田将暉、福原 遥、堀田真由 / 冨田 望

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BiSH 渾身のボーカルとパフォーマンス。乱れた髪、汗、凛々しい表情。凄まじいパワーに満ちた大阪城ホール公演を収録

2020年4月30日 18:00 WHAT's IN? tokyo

“STAY HOME”を充実させるため、家で楽しめるライブ映像作品を紹介する“おうちでライブ三昧”。音楽ライター・土屋恵介がセレクトした5本を紹介。



今回紹介するBiSHのLive Blu-ray / DVD『And yet BiSH moves.』は、2019年9月23日に大阪城ホールで行われたライブの模様を収めた映像作品。

まずこの頃のBiSHを振り返ると、4月から7月にかけて全国ツアー『LiFE is COMEDY TOUR』を敢行し、7月3日にメジャー3rdアルバム『CARROTS and STiCKS』を発売。夏フェスシーズンを経て、ロックのフィールドでも戦ってきたBiSHがどのくらい成長したのかを見せる場所でもあった。しかも、関東以外の初アリーナ規模のワンマンライブ。彼女たちにとって、絶対負けられない大一番だったのだ。さらに言うと、大阪城ホールは、大阪出身のアイナ・ジ・エンドが長年夢見ていた思い入れのある会場でもあった。様々な思いが積み重なる公演は、見事にソールドアウトとなり1万2,000人の清掃員(BiSHファン)が集結して開催された。

オープニング映像のカウントダウンから、白を基調とした衣装のメンバーは、生バンドの演奏とともに「BUDOKANかもしくはTAMANEGI」でライブをスタート。凛々しい表情から、6人の気合いが見て取れる。ハシヤスメ・アツコが「大阪!BiSHと一緒に最高の夜にしようぜ!」と声を上げると「GiANT KiLLERS」を披露し、ライブの勢いは一気に加速。炎とレーザーが瞬く中、渾身のパフォーマンスを見せるBiSH。観客も大歓声で応戦する。曲終わりのセントチヒロ・チッチの「全て飲み込んで行こうぜ大阪!」のシャウトが会場に響き渡った。スクリームとヘドバンの嵐の「MONSTERS」から、高速ハードコアチューン「DEADMAN」の連続攻撃。ライブ冒頭から、メンバー6人の凄味がしっかりと伝わってきた。

MCでメンバーの自己紹介が終わると、アユニ・Dは「みなさん、今日しか味わえないBiSHを体感して帰ってください」と静かに闘志を伝える。

ライブは、メロディセンスが光る「PAiNT it BLACK」、キャッチーな「MORE THAN LiKE」と続く。ポップチューン「HiDE the BLUE」のサビでは、アユニやリンリンの変顔もバッチリ収録。軽快なロックチューン「I am me.」でもメンバー全員のいい表情が見て取れる。映像作品だと、こうしたメンバーの細かい表情がはっきりわかるのが楽しい。家でじっくり観ることで、アイナの作るダンスが歌詞の世界を具現化した、演劇やミュージカルに近いパフォーマンスであることが改めてよくわかった。

「SHARR」では赤の衣装となってスクリームとシャウトを繰り広げ、「OTNK」ではかっこよさと下品さを見事に昇華。「NON TiE-UP」では混沌さと怒りを爆発させ、モモコグミカンパニーが観客に「声を聞かせてください」と指揮をする。さらに、アツコが伸びやかなボーカルを響かせた。ストリングスの音色から始まる「stereo future」では、感情を高ぶらせ歌とダンスに没頭するメンバーの姿が見られる。ロックチューン「FOR HiM」は、さらに感情を爆発させ、乱れた髪、汗、全員の凛々しい表情と惹きつけるパワーが凄まじい。ラストの、アイナの首を掻っ切る動きからの表情も注目だ。

MCコーナーに入ると、アユニの「みなさん元気ですか? 張り切ってますか? 今日の晩ごはんはBiSHですか? 子供の頃のあだ名はなんですか? 小学校の頃の先生は嫌いでしたか?」という謎の問いかけから、アツコが機嫌を損ねるというコントコーナーに突入。まさしく箸休めなパートを経て、切なくも力強い「DiSTANCE」、椅子に座るリンリンを取り囲んだ殺気に満ちたパフォーマンスの「FREEZE DRY THE PASTS」、ダイナミックな歌とダンスで観客を包み込む「My landscape」と、1曲ごとに巻き起こるスリリングな展開にゾクゾクさせられる。

ライブもいよいよ後半戦。ますますBiSHはパワフルなステージを届けていく。前向きな思いの詰まった「Nothing.」を歌唱。ソリッドなパンクチューン「SMACK baby SMACK」の、サビでアツコがモモコをビンタし続ける振りがユニークだ。そして、チッチの「大阪のこの空を超えて響き続けますように」という言葉から披露されたのは「オーケストラ」。儚い歌詞の世界観とグッと来る曲展開に、会場全体が心を掴まれる。アイナとチッチの歌は、問答無用の説得力。観客も拳を突き上げコーラスし、痛烈な一体感が高まった。さらに「プロミスザスター」が披露されると、会場のボルテージは痛烈にアップ。メンバーの渾身のボーカルにぐいぐいと引き込まれてしまう。ラストのサビでは銀吹雪が会場に舞い、メンバーが支えるチッチの手が大切な何かを掴むようなシーンは感動的だ。そして、ラストナンバーは明るいメロディの響く「beautifulさ」。メンバーは、ステージいっぱいに広がりファンに手を振り、笑顔で歌を届けていく。会場全体で拳を上げ大合唱を繰り広げ、ライブ本編はフィニッシュとなった。

アンコールでステージに戻ったメンバーは、ミッドポップチューン「GRUNGE WORLD」を歌唱した。チッチが「大阪! 大好きなあなたたちの声聞かせてもらえますか!」と声を上げると「BiSH -星が瞬く夜に-」が投下される。タイトに疾走する楽曲で会場のテンションはますます上昇。アイナはイヤモニ外し、観客の歌を聴く。最後はメンバーと観客全員でジャンプし、アンコール曲の締めをバッチリと決めた。

しかし、観客はまだまだ興奮度マックスのまま。歓声に応えてメンバーがステージに姿を現した。地元凱旋のアイナは「私は大阪が大好きです」と大阪への愛情を涙を堪えて語る。続けて「これからもBiSHは、そんな夢叶うわけないやろって言われても、どんどん最高を更新していきたいと思うので、よかったらみなさん付いてきてください!」と、これからのBiSHの思いを力強く口にすると、観客は大歓声を上げた。

アイナの「今日は来てくれてありがとう。ここにいるみなさんに愛を込めて」という言葉から、ダブルアンコールで披露されたのは「ALL YOU NEED IS LOVE」。挫折感を振り払い明日へ向かっていく思いが詰まった歌詞を、メンバーひとりひとりが歌いつないでいく。ブレイクを挟んで曲がスピードアップし、会場中が肩組みして跳ねまくる。強烈なまでの一体感が会場いっぱいに広がった。最後にメンバーは手をつなぎ「また会いましょう、We Are BiSH!」の掛け声でお辞儀。会場は大きな拍手に包まれてライブは大団円で幕を閉じた。

アイドルシーンの中でも、ひと際目ざましい躍進を続けるBiSH。この『And yet BiSH moves.』は、彼女たちがライブで放つヴィヴィッドな鮮烈さ、観客を引き込んでいく強力な力がたっぷりと収められた映像作品だった。

文 / 土屋恵介

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生まれ変わった『ファイナルファンタジーVII リメイク』が問題作である理由

2020年4月30日 17:00 WHAT's IN? tokyo

2015年のE3で行われた制作発表から5年後の2020年4月、ついに発売された『ファイナルファンタジーVII リメイク』。伝説的超大作が蘇るとあって、熱烈なファンだけでなく、世界から注目を受けているリメイク作品です。オリジナル版のPlayStation®からPlayStation®4へとプラットフォームを変え、表現の幅は大幅に広がりましたが、いったいどのように仕上がっているのでしょう。この記事では気になるその全貌について、2回にわたり紹介していきます。まずはトレーラームービーで、生まれ変わったミッドガルを体験してみましょう!




※本稿ではゲーム内容に触れる点も多々あるので、全く情報を入れずにプレイしたい方はご注意ください。


文 / 内藤ハサミ


これは……ただのリメイク作品じゃない!


『ファイナルファンタジーVII リメイク』のことを語るまえに、少し昔話をします。

20世紀もあと3年で終わる1997年1月末。発売されるやいなや、大きな驚きを世のなかにもたらしたゲームがありました。それは、もはや説明不要の大人気RPGシリーズ最新作『ファイナルファンタジーVII』。当時高校3年生だった筆者に「ゲームの新時代がやってきた」という感覚を強烈に植え付けるに十分だった本作は、いったい何がセンセーショナルだったのでしょうか。そのひとつは、職人芸の極みともいえる美しい2Dグラフィックが主流の過去作品群から、ポリゴンで描かれたキャラクターをはじめ情報量の増した3DCGへと表現が変化したこと。当時、立体的に描かれたキャラクターたちが生き生きと動き回ることはとんでもない驚きだったのです。

もうひとつは、近代兵器や発達した科学文明が登場するなど、より現代に近い世界へとゲームの舞台も変化したこと。元々はあらゆる世界の文化や神話などを取り入れた世界設定を持つシリーズ作品ではありましたが、全体として感じられた“ヨーロッパ風のファンタジー”という印象が変わったことにも衝撃を受けました。前作の『ファイナルファンタジーVI』はスチームパンク的な世界が舞台で機械も多数登場しましたが、現代のテイストが強調されたのは初めてでした。

そして、スクウェア(旧社名)の関連会社であるデジキューブ提携のコンビニエンスストアでもソフトが買えるという、前例のない販売方法も大きな特徴。当時は流通のシステムなどをあまり理解していなかった筆者も、“コンビニでゲームが買える”ということに「ゲームは社会での市民権を得て、私たちの生活に根差してきたのだ」と強く認識させられたものです。どれも今では当たり前のことですが、当時は何もかもが新しく画期的でした。

このようにいくつもの驚きがあった『ファイナルファンタジーVII』は、シリーズで最も売れたタイトルとなりました。大剣を振り回す金髪碧眼の青年・クラウドをはじめ魅力的なキャラクターとドラマティックなストーリーは海外でも人気を博し、ライトなゲームユーザーや当時まだ生まれていなかった若者も名前と主要キャラくらいは知っているという、今や『ファイナルファンタジー』シリーズを代表するアイコンとなっています。


▲ファンの人気も高い、花売りのエアリス。彼女の壮絶な運命については、当時のプレイヤーたちの間で盛んに意見が交わされました


とはいえ、筆者の発売直前までのテンションはそこまで高くありませんでした。なぜかというと本作は“複数作”で、今回発売されるのは“オープニングからミッドガルを脱出するまでのシナリオ”であるということが初めに知らされていたからです。オリジナル版の内容そのままであれば約5時間前後でプレイが終了する内容ですし、ほぼ序盤というところ。超絶美麗グラフィックでそれを表現したにしても短すぎると感じたのです。それに筆者はテレビドラマやアニメも次回放送まで1週間待つことに苦痛に感じるタチなので、まだ次回作の発売日も決まっていない複数作のひとつをプレイするのは怖かったという理由もあります。「できれば、全作発売されてから一気に遊びたいなぁ……」というのが、正直な思いでした。


▲この情報満載の美しい画面をご覧ください……ロマンが溢れています


ですが、実際にプレイしてみると「今プレイして本当に良かった!」という気持ちしかありません。初めに説明すると、本作は“原作に忠実なリメイク作品”ではなく、原作では描かれなかった部分や新要素をこれでもかと詰め込んで、ミッドガル脱出までを大ボリュームに仕上げた作品です。さらに言えばそれだけではなく、ものすごく大きな“次回作につながる仕掛け”も仕込まれているのです。


▲戦闘も歯ごたえ&爽快感たっぷり。バトルが面白いゲームはいいゲームです!


今作のあらすじについて簡単にさらっておきましょう。星から吸い上げた“魔晄”という生命エネルギーで、階層都市ミッドガルを牛耳る巨大企業“神羅カンパニー”。魔晄の浪費を止め星の命を守るため、反神羅組織“アバランチ”は魔晄炉を破壊するミッションを実行に移します。主人公は、そのアバランチに傭兵として雇われた元ソルジャーのクラウド。クラウドは爆破ミッションのあと、死んだはずの宿敵セフィロスの幻影を見ます。そして、魔晄炉爆破に街が混乱するなかで出会う花売りの女性エアリスは、クラウドに“再会”という花言葉の花を差し出すのです。すると、彼女とクラウドを黒い影“運命の番人”たちが取り囲み……おや、ここまでで既にオリジナル版とやや展開が違いますね。特に、運命の番人はオリジナル版にはまるで登場しませんでした。彼らはいったい何者なのでしょうか?


▲私の知っていた話と違う……! これはかなり大きな変更なのでは?


そういった物語の流れに大きく影響を及ぼしそうな要素以外にも、以前はあまりフィーチャーされなかったアバランチの一員ジェシーの存在感が目立っていたり、クラウドは何でも屋としてスラムの住人からクエストを受けて稼いでいたり、変更や新要素もあらゆるところに盛り込まれています。たとえば……詳しくは次回の記事で触れますが、オリジナル版をプレイしたことがあれば忘れることのできないキャラクター、無法の歓楽街“ウォール・マーケット”を取り仕切る好色漢ドン・コルネオのクエストについても、「ここまでやるか!?」とプレイヤーの度肝を抜く演出がなされています。そのひとつひとつは決して時間稼ぎや水増しではなく、前作では描ききれなかったミッドガルの姿をプレイヤーに体験させるためのいい作用をしていると感じます。


▲ウェッジと混んだ電車に乗っているというシュールな場面。さすがスラム行きの電車、大剣を持ったクラウドが乗っていても気にも留められない!? 徹底的にリアルさを追求した描写だからこその可笑しさがあります


▲廃材を組み合わせた家屋のごちゃごちゃ感がステキなだけでなく、置かれているオブジェクトひとつひとつに意味を持たせていて説得力を感じます


▲なんと、アバランチは活動資金を工面するために浄水フィルターを作って売っています。こんなところにも妙なリアリティがあるんです……


特にスラム地域の描写は素晴らしいのひと言です。23年まえにプレイしていたときは私たちの想像で補完していたスラムの細部が、想像を超えたクオリティで再現されています。細かいところを眺めつつひとつの地域を歩くだけでも数時間は楽しめてしまうくらい作り込みが緻密で、そこに暮らす人々の息遣いも伝わってくるのです。『ファイナルファンタジーVII』発売当時、ミッドガルに強く魅了されて「魔晄中毒になってもいいから、ここに住みたい」と熱望していたS君という友だちがいましたが、彼のような熱烈なファンにはもちろん、新規プレイヤーにも魅力を十二分にアピールしていることでしょう。


▲「オリジナル版からいましたけど?」と言わんばかりの存在感を出してくる新キャラクター、ソルジャーのローチェ。既存のプレイヤーにも新鮮さと驚きを……若干与えすぎかなというくらいの勢いで、クラウドにグイグイ迫ります


スラムで生き生きと暮らす人間たちを丁寧に描いたことで、オリジナル版では感じにくかった恐怖が筆者のなかに生まれました。スラムの人々を含めたミッドガルの住人は、魔晄のエネルギーにかなり依存した生活をしています。アバランチが魔晄炉を破壊するということは、そこで一生懸命に暮らしている人々の生活を根こそぎ奪うことなのです。アバランチが行おうとしていることはどういうことなのか、こうして実感させられるとは……。丁寧な状況の描写でプレイヤーの心理に訴える手腕には舌を巻きました。本作にかける開発スタッフの気合いが伝わってきます。



臨場感に溢れて飽きさせないバトル

先ほど“バトルが面白いゲームはいいゲーム”と書きましたが、本作の戦闘システムはオリジナル版より面白くなったと個人的に感じています。エンカウント制のアクティブタイムバトル(ATB)から、フィールド上に見えている敵に近づくことでそのままシームレスに戦闘に突入するアクションバトルになりました。だいぶシステムが変わった戦闘ですが、溜めたATBゲージを使って魔法・アイテム他を使用するなど、前作のエッセンスも効果的に取り入れているのが心憎いところです。


▲スピード感と派手な演出が実に爽快!


最初に選べる難度は3種類です。アクションは自動操作で行われコマンド選択に集中できるCLASSIC、易しめのEASY、標準的な難度となるNORMALから選択します。NORMALはやや難しめです。アクションバトルが好みでない場合はCLASSICを選択するといいですね。どの難度を選んでもストーリー進行をはじめ他に何も影響はありませんから、好みで決めていいと思います。何百、何千と繰り返すことになる戦闘ですから、自分に一番しっくりくるスタイルを選びたいですね。


▲筆者はNORMALでプレイしました。特にボス戦は、考えなしに通常攻撃を連打しているだけだと勝てないくらい歯ごたえがあります


最初に出会うボス、“ガードスコーピオン”戦に手こずるプレイヤーは多いでしょう。このバトルで敵の弱点となる攻撃を当てて敵をバースト(ダウン)させ大ダメージを叩き込むという、効率のいい戦闘の組み立てかたを練習することになるのですが、筆者は初回のプレイでメタメタにやられ倒されてしまいました。……ゲーム中に表示される説明を適当に流し読みしただけで始めたからですね。しかし慣れてくると、毎回のバトルが新鮮な楽しみになるくらいハマります。クラウドだけではなく、そのときパーティにいるメンバーも操作できます。状況に合わせて操作キャラを切り替え、的確に立ち回れるようになる面白さをぜひ味わってほしいです。


▲懐かしいバイクのゲームは今回も登場します。通常戦闘とはまた違ったスリルが楽しい


ひとつ残念に思ったのは、カメラの位置が近すぎたり微妙な位置に入り込んでしまったりする点で、周辺の状況が把握しにくい場面がたまにあることです。カメラが近いことで味わえる臨場感やダイナミックさが増すといういい点もあるのですが、とくに乱戦になっているときにはもう少し引いたカメラ位置だと嬉しかったですね。しかし、その部分を差し引いてもキャラクターにより近い感覚で楽しめる本作のバトルには魅力がいっぱいですから、オリジナル版の仕様が気に入っているプレイヤーも一度はNORMALモードでプレイしてみてほしいです。

23年まえに大ヒットした超有名RPG『ファイナルファンタジーVII』が、現代の美麗なグラフィックで蘇った……と昔を懐しみ、すでに知っているストーリーをなぞる感覚でプレイを始めたとしたら、きっと面食らうはずです。本作は“完全リメイク!”、“忠実再現!”という類の作品では決してありません。ネタバレを恐れずに言えば、ゲーム中で“オリジナル版とは別の展開”を匂わせるシーンが何回も出てくるのです。それに既存のシーンであっても描写がよりリアルになったことで、プレイヤーのイメージと違った印象に仕上がっているところもあるでしょう。そして次作以降のストーリー展開を予感させて終わることについては、きっと賛否が分かれることになると思います。オリジナル版のストーリー展開に忠実であることを求めていたり、お遊び要素やサブ要素の追加は不要と考えるプレイヤーもいるかもしれません。本作は、ソツなく万人に受け入れられるとは断言できません。しかし、オリジナル版に忠実なだけで終わらせずに新たな展開や新キャラクターを加えたりなど、あえて本作を保守的に仕上げなかったスタッフにはきっと確固たるヴィジョンと自信があるのだということがしっかり伝わる作品です。オリジナル版のリリースから20年以上経ち、技術力もより成熟した“今”の開発陣が並々ならぬ情熱をもって再構築し、ほかに前例のないリメイクとして生み出した本作は、プレイヤーの心をグッと掴んで忘れさせない超問題作であることは間違いありません。今、体験するべきです。


▲薄暗い部屋でティファとふたり。ドキドキするでしょ、こんなの……


おまけ。上のスクリーンショットはティファの部屋で、ティファのオシャレ服について聞かれるシーンです。そんなのひとつに選べなくないですか? 令和始まって以来の難問で、体がねじ切れるほど悩みました……。ここでの選択は、のちの“あの”シーンに影響します。その結果がどうなったかは次回の記事で!




© 1997, 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA/ROBERTO FERRARI

LOGO ILLUSTRATION: © 1997 YOSHITAKA AMANO

※画面は開発中のものを含みます。

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2020春クールアニメの原作マンガを読む! 作者や監督の関連作品にも手を伸ばしたくなる3作品

2020年4月30日 15:00 WHAT's IN? tokyo

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響はアニメ業界にも。続きを楽しみにしていた作品の放送中止・延期は残念だが、そんな時こそ原作マンガや過去の関連作品に触れてみるのも良いかもしれない。

アニメ版をきっかけに、数珠つなぎに興味を広げたくなる3作品をご紹介!


文 / 兎来栄寿


爽やかで熱い野球少女たちの青春の汗

©マウンテンプクイチ/芳文社


『球詠』(著:マウンテンプクイチ)
本作は『まんがタイムきらら』系作品の特徴である主要キャラの大半が少女という世界観の中で、従来の王道スポ根野球マンガに真剣に取り組んでいる作品です。

入学したての高校でかつて子供の頃に「大人になっても一緒に野球しよう」と約束した幼馴染みと再会を果たし、暴力事件で活動休止になっていた野球部を再始動させるところから物語は始まります。魔球のような変化球を投げられるにも関わらず中学生の頃は周囲とのモチベーションの差で真剣に野球をやれたことのなかったヒロイン・詠深が、高校に入って一緒に頑張れる仲間と出会い、それぞれの想いを抱えながら同じ目標に向かって努力していく姿には胸が熱くなります。本作の最大の魅力は、何といっても勝利を目指してお互いに支え合いながらひたむきに努力する少女たちの尊さです。

アニメ版の監督を務めるのは、大人気野球マンガ『MAJOR』のアニメ版3〜6期でも監督を務めた福島利規。3話までは『きらら』系作品の序盤らしい、チームメンバーが集まるパートを中心に描きましたが、「アニメーションで野球を描く」プロによる熱い試合シーンにも期待したいところです。

また、アニメ版は音楽を担当しているのが主にゲームの制作を行っている、ビジュアルアーツであるということも特筆すべき点です。自作品でも野球ネタや野球回を盛り込んでいる大の野球好きであり、『AIR』や『リトルバスターズ!』で知られるシナリオライター・作曲家の麻枝准がOP・EDを手掛けています。劇中でもビジュアルアーツの手がけるゲームを彷彿とさせる独特のメロディのBGMが流れ、ファンとして嬉しくなりました。

なお、1話から「帰りにレイクタウンに行きたい」というセリフが喋られ、実際に3話では重要なシーンの背景として越谷レイクタウンが使われていたり、地方予選の試合会場として大宮公園野球場が登場したりと、舞台に地元に密着した描写もあるので埼玉県民の方には特に注目して欲しいです。

単行本では毎回カバーのイラストに細かすぎて伝わらない野球ネタが仕込まれていたり、登場キャラクターたちの選手名鑑が載っていたり、幕間やカバー下におまけマンガもあるのでアニメを観て更に深く『球詠』の世界に浸りたい方はぜひマンガの方もお手に取ってみてください。





国民的ヒーローの「新世代」を描く

©円谷プロ ©清水栄一・下口智裕/ヒーローズ


『ULTRAMAN』(著:清水栄一・下口智裕)
神山健治・荒巻伸志コンビといえば4月23日よりNetflixで配信の始まったアニメ『攻殻機動隊 SAC_2045』が大きな話題ですが、昨年4月にNetflixで独占配信されていた『ULTRAMAN』もこの春から地上波での放映が始まりました。

本作は初代『ウルトラマン』の数十年後の後日談という設定で、かつてウルトラマンに変身して戦っていた早田 進の息子である早田進次郎が主人公として据えられています。普通の高校生男子として生活していた進次郎が、戸惑いながら自分もウルトラマンとして戦うことになるという内容となっています。

特撮の『ウルトラマン』シリーズを知っていれば随所でニヤリとできるのですが、まったく知らない人でも楽しめる新しいストーリーとなっているのが特徴のひとつです。テーマ的にもただの勧善懲悪のヒーロー物とは一線を画しており、異なる種族との共存や正義のあり方などについて考えさせられます。

原作マンガを手掛けるのは、『鉄のラインバレル』の清水栄一と下口智裕のタッグ。高い画力で描かれるスタイリッシュなキャラクターや戦闘シーンは秀逸です。派手さと格好よさは、フル3Dのアニメ版で更に進化を遂げています。かつてウルトラマンたちを苦しめた怪獣たちとの迫力溢れるバトルアクションの見応えは抜群です。特に序盤では3話のカラータイマーが鳴り始めるシーンの熱さにぜひとも注目してほしいです。

また、アニメ版ではヒロインである女子高生アイドル・佐山レナのライブシーンが作り込まれており、歌われる楽曲も書き下ろされていて、力を入れて作られているのが解る耳に残る曲でいい追加要素となっていました。全体的なキャラクターデザインも刷新されており、マンガ版で読んだ人も新鮮な気持ちで楽しめるでしょう。

アニメは13話で一旦の完結を見せていますが、原作は更にその後も熱い展開を見せているので、アニメで楽しんだ後はマンガで続きを追うのもいいでしょう。





ドタバタコメディの裏に隠された純情な感情

©久米田康治/講談社


『かくしごと』(著:久米田康治)
『かってに改蔵』や『さよなら絶望先生』などで知られる久米田康治の最新作。溺愛している小学4年生の娘・姫に自分の仕事を気取られないよう必死に隠すマンガ家・後藤可久士の「隠し事」である「描く仕事」を描いた内容となっています。

基本的には過去作品と同様にさまざまなパロディや時事ネタ、あるあるネタも盛り込んだコメディの様相を呈しながらも、母親のいない父子家庭の悲喜交々を感じさせる描写が織り交ぜられます。

たとえ他社の作品であっても作中に固有名詞を沢山出してくるのは久米田作品の特徴ですが、アニメ版ではあまりに露骨なものは省略されていました(ただし「やりくりサーカス」や「漫画の実情と筋肉」といったパロディネタのサブタイトルは一部そのまま使われています)。

また、原作では毎話の終わりにつくマンガ雑誌の巻末コメントを模した可久士の一言が秀逸です。更に単行本では幕間に「描く仕事の本当のところを書く仕事」という制作秘話が記されており、作者である久米田の実体験がどれくらい物語に反映されているかが赤裸々に書かれていて非常に面白いです。

原作のマンガ版は次に発売する12巻で完結。これまでの刊行ペースを考えると、アニメと同時期に完結を迎えそうです。アニメは3話の段階で原作単行本1巻+αというペースで進んでおり、もし1クールで完結まで描くのであればカットされるエピソードも多いでしょう。純然たる久米田節を楽しみたい方、『かくしごと』の世界をじっくり堪能したい方は原作を読むこともお薦めします。

一方でアニメ3話の仕事場のデジタル環境化のシーンでは実際の作業現場で使われているとおぼしき資料用の城の3Dモデル画像が「協力:赤松 健」のクレジットの下で登場するなど、アニメならではの豪華な描写もあるので両方を見比べていくとより楽しめるでしょう。

他の代表作でも終盤の展開の巧さに定評があり、『かくしごと』でも序盤から伏線が積み重ねられてきました。完結直前の11巻には予想外の展開もあり、ラストへの盛り上がりを予感させられているのでどういった結末になるのか、非常に期待が高まります。

外部リンク

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アニメ『攻殻機動隊SAC_2045』12話を完走してわかった、従来にない性質の面白さ。実はシリーズ初心者にこそオススメの理由とは?

2020年4月29日 19:00 WHAT's IN? tokyo

士郎正宗によるコミック『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』を起源として、アニメ、ハリウッド実写映画なとの“ユニバース”を広げてきた『攻殻機動隊』アニメ最新作、『攻殻機動隊SAC_2045』が、Netflixにて全世界独占配信をスタートした。



本作の舞台は、全ての国家を震撼させる経済災害「全世界同時デフォルト」が発生し、AIの爆発的な進化による、世界的な計画的かつ持続可能な戦争“サスティナブル・ウォー”に突入していた2045年。突如現れた“ポスト・ヒューマン”と呼ばれる驚異的な知能と身体能力を持つ存在に対抗するため、全身義体のサイボーグである草薙素子と解散していた元・公安9課のメンバーが再び集結する――。



『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズを手がけた神山健治と、『APPLESEED』シリーズの荒牧伸志が共同監督を務め、田中敦子、大塚明夫、山寺宏一など『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズのオリジナルキャストが再集結した『攻殻機動隊SAC_2045』。マニア必見の話題作を観てみたら……意外にも、“『攻殻』って難しそうじゃない?”と今まで二の足を踏んでいたビギナーにこそ薦められる真っ直ぐな作品だった!


文 / 阿部美香


公安9課の面々が満を持して集結する『アベンジャーズ』的なカタルシス



敷居が高いものというのはどのジャンルにもあって、音楽ならジャズやクラシック。小説なら純文学。映画ならミニシアターでやっているアート系などなど。アニメも同じで、なんとなく敷居が高くて手が出ない作品というものはある。そんなアニメのひとつが、『攻殻機動隊』(以下、『攻殻』)の名を持つ作品群ではないか。「海外でも大人気、日本を代表するめちゃめちゃクールで面白い作品だと聞いてはいるし、ぜひ観てはみたいけど……ちょっと敷居が高い」といったイメージ。出てくる用語や扱っているテーマが難しそうとか、さらに同じタイトルを冠したシリーズ作品が多く、どこから見出せばいいのか分からない!と感じる人もいるだろう。

とくに『攻殻』は、1995年に押井守監督の名を世界に知らしめた『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『イノセンス』、2002年から3タイトルが制作された『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズ、キャラクターたちの若き日を描いた『攻殻機動隊ARISE』シリーズなど、作品がひしめいている。さらに言えば、それぞれの作品を一貫する世界観、共通のキャラクターやテクノロジーの設定はあるものの、各作品ごとに時代背景やテーマ性、明確な繋がりは薄い。となればなおさら、どこから手を出せばいいのかが悩ましい。



そんな中での、最新作『攻殻機動隊SAC_2045』の登場である。1シーズン全話を視聴しての結論を先に言ってしまうと、本作配信スタート!の今こそが、『攻殻』ビギナーが、電脳の海に飛び込む格好のチャンスだと思う。理由ははっきりしている。『攻殻機動隊SAC_2045』は、ビジュアルも物語の展開も、今までの『攻殻』っぽさからはみ出た新しいモノになっていたからだ。それはつまり……これまでの『攻殻』を観ていなくても、面白さを堪能できることとイコールだ。

あらすじでは、全世界同時デフォルト、サスティナブル・ウォー、ポスト・ヒューマン……と、難しいカタカナ語が飛び交っている。が、ここは“テクノロジーと資本主義が結びついたらAI等のおかげで世界金融が破綻して、結局、一般庶民が一番迷惑をこうむっている”状況や、“経済を回すために、力を持った民間の軍事会社が中心となって、世界のあらゆるところで計画的に戦争を続けている”状況があるんだなぁ、とざっくり押さえておけば大丈夫! あとは実際に本編を観ていけば、アメコミ映画的、SFヒーロー映画的なノリでストレートに楽しめてしまうはず。



とくにそれを感じたのは、(全12話のうち)前半6話。公安9課が離散後、日本に残り、民間警備会社でどんよりしながら働いていたトグサ(CV:山寺宏一)のもとに、元上司・荒巻(CV:阪脩)が組織再興のために、(自らのデータを抹消してアメリカで傭兵部隊として大暴れしていた)少佐(草薙素子)やバトーたち、かつての仲間を探し出せという命を下す。トグサが少佐たちに出会うまでの奮闘ぶりや、最強傭兵部隊として暴れまくっている少佐たちの活躍はぜひ本編で確かめてほしいのだが、戦いのエキスパートである彼らが、満を持して再集結する様は、『アベンジャーズ』や『オーシャンズ11』を思い起こすカタルシスに満ちている。

背景世界としても、前半6話は“サスティナブル・ウォー”により荒廃しきった世界を描き、公安9課が日本に戻る再集結後の7話以降は、世界同時デフォルトの影響下にあり、残虐な殺人を繰り返す日本の“ポストヒューマン”を追う物語へと変容していく。これは、複雑な事件と事件が螺旋のように絡み合い、ダイナミックな公安9課の活躍により、重層的にスケールの大きな物語があぶり出されていく……というような今までの『攻殻』の設計図に比べると、ストーリー展開が把握しやすい。



逆説的に、ほぼ寄り道なしに一本道で進んでいく『攻殻機動隊SAC_2045』のストーリーは、現在のシーズン1に限っていえば“あっさり”度が高い(ウンチクを語らいながら楽しむワインやウィスキーと、爽快な喉ごしが味わいの大部分を占めるビールくらいの違いはある)。その点で、従来の『攻殻』ファンにとって物足りなく感じられる部分があるかもしれないが、エンタメ色が強く「素直にワクワクできる」点で『攻殻』ビギナー向きだと筆者は好意的に解釈している。



フル3DCG、新キャラクター、そこに賛否があろうとも「続きを早く!」と思わせるストーリーの強さ

『攻殻機動隊SAC_2045』ではビジュアル面でも、『攻殻』初のフル3DCGアニメという新しい表現に堂々とチャレンジした。とくにアメリカを舞台に、少佐率いる傭兵部隊がバリバリにド派手なバトルを繰り広げる前半のエピソードでは、武器、兵器や車などのオブジェクトが3DCG化されたことでのカッコいいメカアクション、キャラクターアクションの迫力が、素直に楽しめる。個人的には第1話冒頭、少佐たちの部隊がタチコマを乗せ、荒れ果てたアメリカの市街地を抜けて砂漠地帯へとジープとごついトラックを走らせ、チンピラ暴徒とヒャッハー!するチェイスバトルは、フル3DCGならではの見ごたえを感じたポイントだ。



3DCGのキャラクター造形に関しては、従来の2Dで描かれてきた『攻殻』を知っている目からは厳しい見方にならざるを得ない面もある。つるっとしたモデリングのルックは、“人形”感が強めに出ており、『攻殻』キャラとしては正直かなり若々しくも見えた。とくに、動きの少ない会話ドラマパートでは、『攻殻』の芝居を知り尽くしたキャストによる重厚感ある演技が展開されるため、画と演技のギャップに戸惑うことも。ただしその上で、観る者の集中力はどんどんストーリーへと移っていくので、見た目の違和感が初めはあっても次第に薄れていくということもお伝えしておきたい。

キャラクターといえば、7話以降に登場する新生・公安9課の新メンバー・江崎プリン(CV:藩めぐみ)にも驚いた。ピンク髪のメガネっ娘なルックスも弾けた性格も、動いている時の女の子っぽい仕草(モーションキャプチャを使っているので、妙に生々しい!)も、すべてがアニメキャラクターらしさに満ちている。これまでの『攻殻』キャラにはないテイストは、意地悪に言えば軽くて浮いているし、逆に良い意味では新鮮。そこにも『攻殻機動隊SAC_2045』ならではの感覚があり、彼女が今後また違う存在感を見せてくれるかもしれない、とも密かに期待している。



逆に、3DCGになったことでメカメカしいかわいさを増したのが、『攻殻』のマスコット的存在──AIにより自ら考え行動する、多脚思考戦車「タチコマ」だ。(声優は玉川砂記子ただひとりだが!)何機ものタチコマが、ワイワイ・キャイキャイ賑やかに話している様子や、バトルでいい活躍を見せて自慢げに手(?)を挙げて喜ぶ様子は、本当にキュート! 従来の『攻殻』ファンも十分納得の、特別な存在感をタチコマに感じてもらえることだろう。

このように、ところどころ気になるポイントはありつつも、『攻殻機動隊SAC_2045』では総じてストーリーのワクワク度が高く、“世界に引き込む吸引力”の強さをまずは素直に喜びたい。配信スタート後のファンの評価としても、「いろいろ言いたいことはあるけど……やっぱり面白い!」が多くを占めているようで、筆者もこれに同意見だ。さらに言うと、第12話までを見終わっても、物語の真相はまだ闇の中。筆者も、「え、ここで終わり? 続きを早く!」とリアルに声をあげてしまったほどだ。

ここからが本番だ、といわんばかりの『攻殻機動隊SAC_2045』シーズン1・全12話。マニアと同じスタートラインに立てるという意味で、『攻殻』ビギナーに今観てほしいシリーズにもなった。あとは次なるシーズン開始までに『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズを復習してもらえたら、さらに楽しみは深まるだろう。




©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

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