cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_22ec678ac327_西川可奈子、映画『アンダー・ユア・ベッド』の過激な暴力や性描写を体当たりで演じ、描いた究極の愛のカタチ 22ec678ac327 22ec678ac327 西川可奈子、映画『アンダー・ユア・ベッド』の過激な暴力や性描写を体当たりで演じ、描いた究極の愛のカタチ oa-rp87552

西川可奈子、映画『アンダー・ユア・ベッド』の過激な暴力や性描写を体当たりで演じ、描いた究極の愛のカタチ

2019年7月18日 18:00 エンタメステーション

誰からも必要とされず存在を忘れ去られた男・三井が、学生時代に初めて名前を呼んでくれた女性と11年ぶりに再会。彼女への執着から、近所に住んで監視するようになり、やがて自宅に侵入してベッドの下で真上の彼女を思いながら過ごすようになるーー。

そんなショッキングな内容で公開前から話題を集めている映画『アンダー・ユア・ベッド』で、ヒロインの千尋を演じているのが西川可奈子。高良健吾演じる三井が歪んだ愛を捧げるミューズであり、夫から激しいドメスティック・ヴァイオレンスを受けている専業主婦という難役を迫真の演技でリアルに体現した彼女が、今回の撮影を通して得たもの、作品に込めた個人的な思いとは……?


©2019映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会


取材・文 / 井口啓子 撮影 / 荻原大志


どうしてもやりたいと思った千尋。「本当にヒリヒリした緊張感が漂った現場でした」


ーー 西川さんは女性同士の禁断の愛を描いたロマンポルノ『ホワイトリリー』や、集団レイプされた女性の復讐劇『私は絶対許さない』など、過激な作品に積極的にチャレンジされてきた印象がありますが、今回の『アンダー・ユア・ベッド』はその極みともいうべきショッキングな作品ですね。


そういう作品がたまたま続いたのもありますが、今回は台本を読んで、どうしても千尋をやりたいと思ったんです。DVは社会的にも大きな問題になっていますが、これまで私自身は夫婦の問題なんだし、どちらか一方だけが悪いとは言えないんじゃないかな…と考えているところがあったんです。でも今回、千尋の立場で台本を読んで考えると、やっぱり彼女は逃げることも考えられないぐらい精神的に追い込まれていたんだなってわかったし、現に今も千尋のように恐怖と闘っている人がたくさんいるんだと思うと、自分も作品を通してなにか伝えたいと思ったし、あとはやっぱり、ここまで尖った作品って最近はあまりないので、役者としてはチャンスがあればやりたいという気持ちもありました。



ーー 確かに、こういった過激な暴力や性描写を含む作品は、コンプライアンスの面でも興行的な面でも実現が難しくなっているだけに、役者さんとしては貴重な作品でもありますよね。


そうなんです。難しい役だなとは思ったけれど、この役を他の誰かが演じるなんて考えたくなかったし、とにかくぶち当たろうと。今回はオーディションだったんですが、実際に私の演技や私自身を見て、いろんな方の中から千尋に選んでいただけたのは本当に嬉しかったです。


ーー 千尋という役はどのように作られて行きましたか? 


この作品は原作があるんですが、脚本は監督の安里麻里さんが描かれていて、また原作とは違った世界観のものになっているので、あえて原作は読まず、この脚本の中だけで生きようと思って。まず、安里監督と夫の健太郎役の安部賢一さんと三人で撮影に入る前にディスカッションをしました。千尋と健太郎の関係って、普通だったら何でこんな酷い状況で一緒にいるの?と疑問に思うんだけど、千尋は閉鎖された世界で夫を怒らせないように張り詰めたギリギリの状態で生活している。それが見ている人にもリアルに伝わるように、千尋と健太郎はどういう家庭で育って、どういう過程で結婚してここに至ったのか?という、映画の中では描かれていない部分も含めて話し合いながら役づくりをしていきました。大学生の千尋と11年後の千尋を演じるに当って、年齢的な見た目の変化やDVを受けて精神的に追いつめられているような変化は意識しましたが、人間って根底はそんなに変わらないと思うので、千尋がもともと持っている優しくてピュアな部分は一貫して出したいなと心掛けました。



ーー 二人のDVシーンに関しては想像以上にリアルでハードで、大学時代のキラキラした千尋も見ているだけに息苦しくなるほどでした…。


DVシーンは監督も大事なシーンだからと力が入ってたんですが、本当にヒリヒリした緊張感が漂った現場でしたね。ただ暴力を描きたいだけの映画では当然ないんですが、やっぱりそこを中途半端に手加減しちゃうと、本当に描きたい部分まで中途半端になってしまう恐れがあるので、そこはリアルにやらなきゃという覚悟は私もありましたし、安部さんも中途半端にする方が失礼だから全力でやるよって言ってくださって、壮絶なシーンになりましたね。



日ごとに自然のアザがどんどんできていく過酷な撮影


ーー フィクションといえども精神的なダメージはありませんでしたか?


こういう重たい作品は良くも悪くも引きずってしまう部分があるんですが、今回は皆さんすごく私のメンタルを気遣ってくださって。安部さんもカットがかかるたびに「大丈夫?」って駆け寄ってくださいましたし、高良さんも「大丈夫?」と本当に眉間にシワを寄せて聞いてくださって。撮影は福島ロケで二週間ぐらいの間にギュッと集中して撮ったんですが、それも後から聞くと監督やプロデューサーさんがこんな撮影の後に私をひとりで自宅に戻すわけにはいかない!と配慮して下さったみたいで。千尋の家や熱帯魚屋のある町並みもセットでいちから作り上げて下さって、おかげで精神的に落ちることもなく集中して撮影ができました。リアリティという意味で今回はアザ以外はノーメイクだったんですが、ありがたいことに撮影が順撮りだったので、自然のアザがどんどんできていって(笑)。それも結晶だと思えるぐらい役者として幸せな時間を過ごせましたね。


©2019映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会


ーー まさに役者冥利に尽きる、ポテンシャルの高い現場だったんですね。


今回『ハイテンション・ムービー・プロジェクト』の第二弾ということもあって、キャストもスタッフもみんな勝負してる感があった気がします。現場には常になにか言葉で説明できない熱量が漲ってて、撮影が終わった後もそれが止まらなくて、ひとりでも多くの人にこの作品を届けるんだって気持ちで私も試写の後に毎回勝手に挨拶をさせてもらってるぐらい(笑)、熱い現場でした。

(西川は、関係者向け試写会の終演後毎回挨拶していた)



ーー 高良さん演じる三井が千尋に抱く、変質的な思いもガツンと来るものがありました。特にベッドの下から千尋を感じて恍惚とする姿は、クローネンバーグや江戸川乱歩の「異形の愛」にも通じるものがあり、不気味でありながらもコミカルでキュンと切なくなるような純粋さも感じさせます。


三井は気持ち悪いと感じる人もいるかもしれない役ですが、高良さんが演じることによってピュアに見えるというか、心から三井くんがんばれ!と応援したくなるようなお芝居をされる。それは高良さん自身がもともと持ってらっしゃる人間性によるものでもあって、とにかく繊細な方で、細かい目の動きとか、出来上がった作品を見て、こんな表情をしてくれてたんだ!と感謝がこみ上げるぐらい、本当に素晴らしい役者さんだなと改めて思いました。


©2019映画「アンダー・ユア・ベッド」製作委員会


ーー 西川さん自身は本作で描かれているような「愛」について、どう思われますか?


人って紙一重だと思うんですよ。確かにベッドの下にまでっていうのは特殊かもしれないけど、いろんな愛の形があって、ただ千尋に名前を呼ばれることが三井くんにとっては生きていく唯一の希望になっていて、千尋にとっても閉鎖された孤独な世界で誰かはわからないけど自分を視てくれている誰かの存在が唯一の心の支えになっていた。そういう意味では、たんに恋人同士になるとかセックスするとかも超えた、すごく純粋なもので結ばれた関係だなと思うし、千尋の夫の健太郎にしても、DVは絶対に許せないことなんだけど、健太郎にとっては千尋しかいなくて束縛や依存も彼なりの愛だったのかもしれない…と思うと、なんともいえない気持ちになりますよね。そういう感情って人を愛したことがある人なら多かれ少なかれ抱いたことはあると思うので、誰もが他人事じゃないし、だからこそヒリヒリした感情を掻き立てられる作品になっていると思います。



ーー 確かに、好き嫌いは問わず、何らかの感情を掻き立てられる作品になっていると思います!


本当に暴力だけでなく、人間の弱い部分や醜い部分、異常ではあるけれどピュアな部分を、ここまで逃げずに表現した映画って私の中ではあまりないと思うし、これはテレビでは絶対できない、映画でしかできない表現に挑んだ作品だと思うので、ぜひ劇場で見て、なにか自分なりの思いを感じていただければ嬉しいですね。

外部リンク

cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_46287a215b52_【インタビュー】奥平大兼、ドラマ『レンアイ漫画家』で初の“愛されキャラ”に挑戦!「目標は自分らしさがある演技を見つけること」 46287a215b52 46287a215b52 【インタビュー】奥平大兼、ドラマ『レンアイ漫画家』で初の“愛されキャラ”に挑戦!「目標は自分らしさがある演技を見つけること」 oa-rp87552

【インタビュー】奥平大兼、ドラマ『レンアイ漫画家』で初の“愛されキャラ”に挑戦!「目標は自分らしさがある演技を見つけること」

2021年3月31日 12:00 WHAT's IN? tokyo

新ドラマ『レンアイ漫画家』が、いよいよ4月8日(木)よる10時より放送がスタートする。漫画一筋で恋愛下手なレンアイ漫画家・刈部清一郎(鈴木亮平)と“ダメ男ホイホイ”と呼ばれる崖っぷちアラサー女子・久遠あいこ(吉岡里帆)の不器用な恋愛模様が描かれる本作で、物語の展開を大きく揺るがすきっかけとなる清一郎の弟・刈部純(白石隼也)の少年期役を演じるのが奥平大兼。昨年公開された映画『MOTHER マザー』で俳優デビューすると、その演技が評価され、「日本アカデミー賞」「第94回キネマ旬報ベスト・テン」「第63回ブルーリボン賞「日本映画批評家大賞」で新人賞4冠を達成。デビューから僅か1年で演技派若手俳優として注目を集めている。



今回はそんな期待の新星・奥平大兼にインタビュー。「日本アカデミー賞」授賞式のことをはじめ、ドラマ『レンアイ小説家』の話を聞いた。


取材・文 / WHAT’s IN? Tokyo


ドラマ『レンアイ漫画家』では、新鮮な面を見て頂けると思います。

ーー まずは、デビュー作『MOTHER マザー』で新人賞4冠を達成されましたこと、おめでとうございます! 改めて受賞した感想をお願いします。

今もまだ、僕がこのような素晴らしい賞を受賞させてもらえたことに驚いてますし、本当に自分がもらっていいのかなと思ってしまいます。ですが、このように自分を評価してくださるのはすごく嬉しいですし、役者として自信ももらえました!


©2020「MOTHER」製作委員会


ーー 先日の「日本のアカデミー賞」授賞式では、今後の役者人生の覚悟が伝わる堂々としたスピーチでした!

ありがとうございます! 「日本アカデミー賞」授賞式という大きな舞台で、さまざまな役者の先輩方や一緒に新人賞を受賞された方のスピーチを聞いて、改めて役者というお仕事が好きになりました。

ーー 受賞したことで、新たに見えてきた目標などあれば教えてください。

まだ僕は演技経験が浅いので、今後の目標は、いろいろな現場や役柄を経験して、自分らしさがある演技を見つけることです。

ーー 映画『MOTHER マザー』はご自身の中でどんな作品になりましたか?

自分の人生にとって、とても大きな作品です。僕に演技の楽しさを教えてくれた作品であり、役者を目指すきっかけをくれた作品でもあるので、本当にこの映画に携われてよかったと思います。




ーー そして、ドラマ『レンアイ漫画家』が始まりますね。今作では“超が付くほどの女好き”という役で、映画『MOTHER』やドラマ『恋する母たち』で演じられた役とは正反対ですが、演じてみていかがでしたか?

今までやったことない役な上に、コミュニケーション能力が高いところなどが僕とはかけ離れていたので、現場に入る前は不安もありました。ですが明るい役をやってみたいという思いが前からあったので、こういう役を演じられることがすごく嬉しかったです。

ーー 奥平さんご自身の印象とも遠いキャラクターのような気もします。役作りはどのようにされましたか?

今回の役の一番の壁は人とのスキンシップの仕方でした。僕は普段あまり初対面の人と会話をするのが得意ではなのですが、今回演じさせてもらった純は、誰とでも話せるような役だったので、現場に入る前に初対面の人と会話を自然にできるように、積極的に初対面の方と会話をしたり、現場の人と話すようにしました。

ーー 純を演じられる白石隼也さんともお話しを?

実は、白石さんとは一度もお会いできなかったんです。

ーー そうなんですね。奥平さんが純を演じる時に、白石さんが演じられる純を意識したりは?

意識しすぎたら、僕の本来の演技ができなくなってしまうかも、とも思っていたのですが、白石さんが演じられた純が見れていなかったこともあり、そこはあまり意識せずに自由に演じさせてもらいました。



ーー 奥平さんが演じるモテ男、楽しみにしています! ちなみに、奥平さんも現在17歳で高校生ですが、モテエピソードなどあれば教えてください。

全然ないです(笑)。

ーー みなさん、そうおっしゃるんです(笑)。

僕自身、会話をするのがあまり得意じゃないので、学校では仲良い友達以外とはあまり話さなかったりするんです。話す相手が限られてきてしまっているので、モテることはないですね(笑)。

ーー 奥平さんからみて、どんな男性がモテると思いますか?

やっぱり、シンプルに面白い人や優しい人が一番いいんじゃないかって思います(笑)。

ーー ドラマのタイトルにちなんだ質問になりますが、奥平さんは恋愛漫画は読みますか?

読みます! 僕はどちらかというと漫画を読む方で、中でもラブコメなどは結構読んでました。最近読んで面白かったのは『青春豚野郎バニーガール先輩の夢を見ない』という漫画なのですが、最初はアニメで見て面白いと思って、続きをライトノベルを買って読みました。

ーー チェックしてみます! 最後に本作で演じられる役の見どころを教えてください。

僕自身、今回初めて明るい愛されキャラを演じさせていただいたので…新鮮な面を見て頂けたらと思います(笑)。そして刈部純はこのドラマの中の人間関係において とても重要な部分で関わっている人物です。こんなに明るくて誰からも愛されるような人が、主人公たちにどういう影響を与えるのか、楽しんでいただけたらと思います。

ーー 放送楽しみにしています。ありがとうございました!

外部リンク

cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_3b83f27ee3fe_仲 万美が愛するジュリエットを胸に立ち上げた“Juliet aria”第1弾作品、『DustBunnySHOW』。“後悔の無い航海”へと出航する彼女の今の思い── 3b83f27ee3fe 3b83f27ee3fe 仲 万美が愛するジュリエットを胸に立ち上げた“Juliet aria”第1弾作品、『DustBunnySHOW』。“後悔の無い航海”へと出航する彼女の今の思い── oa-rp87552

仲 万美が愛するジュリエットを胸に立ち上げた“Juliet aria”第1弾作品、『DustBunnySHOW』。“後悔の無い航海”へと出航する彼女の今の思い──

2021年3月29日 17:00 WHAT's IN? tokyo

加藤ミリヤ、BoA、椎名林檎などのアーティストダンサーをはじめ、2015年にはマドンナのワールドツアーに約1年半バックダンサーとして帯同するなど世界的にも活躍している、仲 万美。近年はダンスの世界のみならず、映画『チワワちゃん』や舞台 Rock Opera『R&J』、「RADICAL PARTY -7ORDER-」に出演し、女優としても活躍の場を広げている。

そんな彼女が立ち上げたアートプロジェクト“Juliet aria”の第1弾となる舞台『DustBunnySHOW』(脚本・演出:三浦 香/コンテンツ演出:植木 豪)が、4月29日(木・祝)より東京・天王洲 銀河劇場にて上演される。

本作には仲をはじめ、ポールダンス、アイドル、バレエ、アクロバット、ブレイクダンス、バイオリンなど、それぞれのフィールドで独自の世界観を作り上げている女性パフォーマー8人が出演。彼女たちにしか表現できないパフォーマンスに加え、マッピングなどの最新技術を取り入れた映像演出で、摩訶不思議な“ダークファンタジー”へと導く。

仲 万美に、“Juliet aria”を立ち上げた経緯や、『DustBunnySHOW』に向けた思い、表現者として大事にしていることなどを聞いた。


取材・文 / 松浦靖恵


私の中にジュリエットはまだ生き続けている


ーー 仲さんがアートプロジェクト“Juliet aria”を立ち上げた経緯をあらためて教えてください。


Rock Opera『R&J』(2019年)でジュリエットを演じさせていただいたことが、とても大きな起点になっています。 “ジュリエット”として、“仲 万美”として、表現できることがまだまだあるんだと思えた作品でしたし、その感覚や思いを忘れたくなくて。私の中にジュリエットはまだ生き続けている。ジュリエットにはまだたくさん伝えたいことがあったと思うので、それを仲 万美の身体を使って表現できたらという思いがありました。


ーー その思いをどのように実現させていったのですか?


もともと裏方のお仕事にも興味があったし、いつになるかはわからないけれど、そういうことをやっていきたいという思いを持っていたんです。それに、自分ができることを出せる場所があるのならば、全部やっていきたいとも思っていました。そんなときに周りのスタッフさんから、「“仲 万美”という存在をもっとブランディングしたほうがいい」というアドバイスをいただいたことが、“Juliet aria”立ち上げの背中を押してくれました。



ーー Rock Opera『R&J』は、仲さんの人生においても大きなターニングポイントになったんですね。


はい。すべて変わりました。Rock Opera『R&J』は初めての舞台出演だったんですが、それまで自分自身では、舞台には絶対に向いていないと思っていて。私、とにかく緊張しがちであがり症なんです。ダンスでステージに上がるときにも、いつも吐きそうになるくらい緊張しているのに、そんな私が生の舞台に出られるわけがないと思っていました。


ーー ダンサーとして大きなステージを何度も経験している仲さんが本番前にそんなに緊張していたなんて驚きです!


誰も信じてくれないんですけどね(苦笑)。でも、人生って本当にわからないもので……『R&J』をやったら、舞台というものにすごくハマってしまった。生の舞台で人前に出るという気持ちよさを体感できた。しかもカンパニーの皆さんから、それまでの自分が出会ったことのないようなたくさんの刺激をもらえて、いろんなことを教えていただいて。私にとって『R&J』は自分のベースになったと言っていいほど、大切で大きな存在になっています。


ーー 新しい引き出しを開けちゃいましたね!


それまでとはまったく違う自分に変身したような感じがあります(笑)。昔からの友人たちが、『R&J』での私の姿を観て「万美は舞台に向いてるよ」って言ってくれたこともすごく嬉しかったです。


ブレない存在。強い女性になりたい


ーー プロジェクト名の“Juliet aria”には、女性としての力強さや美しさを実体化させるという思いを込めたそうですね。


はい。ジュリエットは私の中にまだ生き続けているので、彼女の名前を入れました。初めて自分で立ち上げたプロジェクトなので、どこまでできるかわからないですし、プレッシャーは大きいですが、たくさんの方たちの力をお借りして『DustBunnySHOW』を送りだすことができるということを、今すごく実感しています。内容のイメージも、話し合っているときに「仲 万美にはこういう世界が似合うと思うんだよね」って “ダークファンタジー”の世界という案が上がってきたりして。私自身も好きな世界でしたし、そういう世界観を表現したいと思っていたので。それに、ひとりひとりのキャストに合った衣裳イメージを提示したら、1週間ほどで出来上がってきたんですけど、想像していた以上のものが出来上がってきて。プロジェクトというのは、こうしていろんな方のお力を借りて、一緒に形にしていくんだなと思いました。



ーー “Juliet aria”の第1弾となる作品の中で、ご自身はどんな役、キャラクターを演じたいと考えていましたか?


様々なキャラクターがいる中で、ブレない存在でいたいと思いました。今の世の中は女性ひとりでも自分の意思を持って立って生きていける。もちろんいろんな方の助けは必要ですけど、自分はそんな強い女性になりたいと思っているので、年齢に関係なく女は強いんだよっていうメッセージ伝えたいということを、強く持っていました。


ーー 脚本・演出に三浦 香さん、コンテンツ演出に植木 豪さんを迎えての共同作業になりますが、おふたりにはどのような印象を持っていましたか?


『R&J』で共演させていただいた諸星翔希さん(7ORDER)が出演されていた舞台『Oh My Diner』(2020年)を観させていただいたのですが、華やかでワクワクするお話に引き込まれてしまった。あのワクワク、ドキドキした脚本・演出をされた三浦さんが今回参加してくださると聞いて、脚本を待っている間は「どんなお話になるんだろう?」とずっとワクワクしていました。


ーー 植木 豪さんはご自身もダンスをされている方ですが、以前から交流があったのですか?


豪さんが演出やコンテンツを担当されている作品はたくさん観ていましたし、ダンサーとしても長年活躍されている方なので、前々から存じ上げていましたが、一緒にお仕事をしたことはなくて。ダンサーなら誰もが憧れる存在の豪さんが、今回手がけてくださるコンテンツ演出は今から楽しみでしょうがないですし、興奮しかないです(笑)。自分がもうひとり欲しいくらいです。三浦さんの脚本・演出で豪さんのコンテンツ演出の作品を、どうして私が生で観られないの!?、って思う。自分は出ているから客席で観られないのはわかっているんですけど(苦笑)。


ーー 三浦さんの脚本を読まれた感想を教えてください。


ダークファンタジーの絵本を読んでいるような世界にワクワクしました。人間関係の複雑さの中にある人間くささも感じましたし、このエンディングを迎えたあと、彼女たちはいったいどうなるんだろうという想いまでもめぐらせられるような物語でした。ただ、どんなに脚本を読み込んでも、舞台では生身の人間、生身の声で表現していくので、自分の想像を超えるものになるはずで。どんな舞台になるんだろうと楽しみになりました。


全員が組み合わさっていく化学反応の面白さ


ーー ご自身が演じるキャラクターは、どのような人物だと捉えていますか?


私が演じる女性は葛藤しているバニーという子……挫折して何もかもがイヤになって、自分のすべてを捨てて無機質になっている。それでも捨てきれない希望があって、人間らしいなと思いました。人間は仕事や恋愛で失敗や挫折をしても、どうにかしたい、前を向きたい、どこかで生きたいと願っている。彼女もそうなんですよね。脚本を読みながら、思わず「わかるよ!」って応援したくなりました。私もそういう気持ちになった経験があるので、「捨てちゃダメだよ。まだやれるぞ! 挫折したってまだ立ち上がれるよ」って声をかけながら、自分でもそう信じ続けているところがあります。


ーー 今回、様々なジャンルのパフォーマーが揃っていますが、どのようなカンパニーになりそうですか? 


これまでいろんな舞台を観てきましたけど、こんな組み合わせの作品は観たことがないので、どう組み合わさっていくのか……以前から知っている方や初めましての方もいますが、全員が組み合わさっていく化学反応の面白さを楽しみにしていますね。ポールダンサーのAcha(亞蝶)は10年以上前から知っていて、一緒の作品にも出たことがあるんですけど。普段の性格はほわ~んとしているのに、自分の好きなことややりたいことに対してはすごくアクティブに動くし、頼もしいんです。この舞台に立つ女性パフォーマーの8名は自分の個性を捨てない、芯のある人ばかりなので、様々なジャンルが集まっても誰ひとりつぶれることはないなって思っています。自分の意思で生きてきた、強い女が詰まったカンパニーだと思います。


ーー 個性のぶつかり合いから生まれる化学反応が楽しみですね。


どんどんぶつかってほしいです(笑)。いい意味でバチバチしたいというか。ぶつかり合うことで生まれる絆ってあると思うので、遠慮や躊躇はしないでほしいなって思っています。



ーー 仲さんは女優としても活躍されていますが、芝居の面白さ、難しさはどこにあると思いますか?


難しいことが楽しいです! まだ女優としての経験が浅いので、台詞を覚えたり、役づくりをすることに難しさを感じることもあるんですけど、その難しいことがすべて面白い。これまでの作品では自分に近いキャラクター、自分と似ている子を演じてきて共通項も多かったので、正直、そこまでしっかりとした役づくりをしてきてはいないので、そこはひとつの課題でもあるのかなと思っています。でも、自分と似た役でも、仲 万美ではない違う人物を演じているので、自分を捨てて存在している。それもお芝居の面白さですよね。


ーー 『DustBunnySHOW』ではどう演じられますか?


『DustBunnySHOW』で私が演じる女の子には共感できる部分もあるけど、私自身とはかなり離れている子なんです。私はおしゃべりだし、前を向いて生きていきたいタイプだけど、彼女はすべてを捨ててしまった抜け殻みたいな子なので、彼女の無機質さをどう演じたらいいんだろう、と考えています。


人の記憶に潜入する。一生離れない記憶になる


ーー ダンスやパフォーマンスをするときに大事にしていることはありますか?


私、人の記憶に潜入するのが好きで。ダンサー時代によくやっていたことなんですけど、客席にいるお客さん、ひとりひとりの目をじっと見つめたままダンスをしていたんです。


ーー 見つめられたお客さんはビックリしたでしょうね。万美さんと目が合ってる!?って。


見つめられたり、目が合ったりしたことが、そのお客さんの記憶に残ると思うんです。「ドキドキしたな」とか「私のことを見てた!?」とか……作品を観ているなかで何かひとつでもその人にとって一生離れないくらいの記憶や印象になるようなことを、“仲 万美”って名前を聴いただけでも何か記憶がよみがえってきちゃうようなことを、これからも残していきたいです。


ーー 本作に限らず、表現者として何を伝えていきたいですか? 仲さんのモットーはありますか?


自分ができることは限られているかもしれませんけど、作品を観てくださる方の心に少しでも寄り添えるような存在でいたいです。そのときそのときに皆さんが必要としているものを伝えていけたらいいなって。その思いの支えになっているのが、“Juliet aria”なんです。自分のモットーは、“人生は一度きり”。昔から言い続けていることですけど、人生は一度きりなんだから、悔いを残さないために自分のできることを最大限にぶつけて、やりたいことは全部やりたい。だから私は“NO”と言わないようにしています。自分に向いてないなと思っていた生の舞台も、『R&J』をやってみたら楽しくて、舞台が大好きになった。だから、まだまだ自分にできることがあるんじゃないかって、自分に期待しています!


ーー コロナ禍でいろんな思いをめぐらせた1年だったとも思いますが、どのようなことを考えていましたか?


舞台に出たいとずっと思っていました。私はヒマが苦手で、じっとしていられない性格なので、去年の自粛期間はずっと気持ちが上がらなくて。でも、気分を落としたままにはしたくなかったので、自分が出ている舞台のDVDを観ながら、ずっと舞台に出たいなって。


ーー じっとしていられないということは、外出もままならない期間は自宅で身体を動かしたりしていたんですか?


いっさいやらなかったです(笑)。誰かと一緒に踊るとか、何かに向けた筋トレやレッスンはできるんですけど、目標がないと続かなくて(苦笑)。今回の舞台が決まってから身体を動かし始めてはいます。急にやったら身体がビックリしちゃうので、少しずつですけど(笑)。



ーー 5歳からダンスを始めている仲さんですが、ダンス以外で没頭できるものはありますか?


ダンスを始めた同じ頃から好きなのはアニメです。フィギュアを集めたり、プラモデルを作ったりするくらい好き。あと、絵を描くことも好きですね。考えをめぐらせすぎてしまうようなときやストレスを感じ始めたときは、一回リセットするために、がむしゃらに絵を描きます。


ーー 今回、インタビューをさせていただく前は、“仲 万美”に対してかなりストイックなイメージを勝手に持っていたんですけど(笑)。


ストイックそうに見えるみたいですね(笑)。でも、そうでもないんですよ。“仲 万美”に対して皆さんが持っているであろうイメージはどんどん覆したいと思っています。


見たことのない世界が目の前に繰り広げられる


ーー では最後に、Juliet aria『DustBunnySHOW』の見どころと意気込みをお願いします。


『DustBunnySHOW』は、それぞれ違う個性を持った女性たちが出演する舞台です。彼女たちの個性と魅力が出会い、作り上げていくダークファンタジーな世界を思う存分感じていただけると思います、ワクワクする脚本、ダイナミックな演出も絶対的な見どころです。そして、このような状況下なので、みんなで幕を開けられて、みんなでステージ上で同じ景色を見られたら、どんなに幸せなんだろうなと想像しています。だからこそ、一日一日を精一杯にやるしかないと思っていますし、この作品で自分に何ができるか私自身もワクワクドキドキしています。皆さんが見たことのない世界が目の前に繰り広げられるので、絶対に皆さんを驚かす自信があります。不思議な『DustBunnySHOW』の世界にお連れしますので、ぜひ楽しみにしていてください。

外部リンク

cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_deeae671280c_日本語の美しさを感じる――市川染五郎、映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』の魅力と歌舞伎役者としての思いを語る deeae671280c deeae671280c 日本語の美しさを感じる――市川染五郎、映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』の魅力と歌舞伎役者としての思いを語る oa-rp87552

日本語の美しさを感じる――市川染五郎、映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』の魅力と歌舞伎役者としての思いを語る

2021年3月29日 12:00 WHAT's IN? tokyo

十代目松本幸四郎を父に、女優の松たか子を叔母に持つ八代目市川染五郎。4歳で初舞台を踏み、これからを担う若手歌舞伎役者として期待され、その端正な容姿から歌舞伎ファン以外からの人気も高い。



そんな彼が、初映画・初声優・初主演(杉咲 花とW主演)を務める劇場アニメーション『サイダーのように言葉が湧き上がる』が7月22日(木・祝)に公開を控える。初めての経験で彼は何を学び、どんなことを感じたのか。そこにはやはり、歌舞伎役者としての強い思いがあるようだ。


取材・文 / 望月ふみ 撮影 / 冨田 望


いつかはオリジナルの新作歌舞伎を書きたい。


ーー 初めての映画、初めての声優、初めての主演と本作では様々なことをご経験されたと思いますが、感想はいかがですか?

初めての映画がアニメーションだとは思っていなかったので、最初はビックリしましたけど、父や叔母も声優の経験がありますし、やってみようかなと思って挑戦しました。以前に朗読のお仕事をしたことがあって(13歳の時に朗読劇『ハムレット』に初挑戦している)、そのときにも声のお芝居の難しさは感じていましたが、改めて声だけという限られたなかでの表現の難しさを痛感しました。でも、『ハムレット』の時よりは、少しは成長できたかなと思います。

ーー このお話をいただいたときはどう思いました?

今回のお話を聞いたのは父からの電話だったんです。父から「こういう話が来ているんだけど、勉強になるからやってみるか?」と言われて。朗読のお仕事が全然うまくできなくて、正直、声の仕事はもうイヤだな(笑)と思っていたので、最初は不安でした。

ーー 声だけというのは、やはり大変ですか?

そうですね。普段、歌舞伎の役をやるにあたって、最初に動きなしでセリフの稽古をするんですが、そのときにも自然に手が伸びたり、気持ちが入ってくると余計に身体も動くんです。だけど、アフレコの場合は、動くとその音が入ってしまうので、じっとしているのが大変でした。



ーー 染五郎さんが演じたチェリーは、コミュニケーションが苦手で、自分の思いをいつも俳句に託している引っ込み思案な男の子です。演じるにあたってどのようなことを思いましたか?

チェリーの人見知りな部分は自分と似ているので、あまり役作りはしないほうがいいなと思いました。それから、チェリーは俳句がすごく好きで作ってはいるけど、誰かに発信したいという気持ちはあまりないんです。僕も小さい頃、台本をイチから書いて、妹とぬいぐるみで人形劇をやっていましたが、そのときもただやるのが楽しくて、見せたいとは思っていなかったので、その点についても当時の自分と重なるなと思いました。



ーー ご自身に近い役柄だったんですね。ちなみに、どんな人形劇だったんでしょうか?

3、4歳のころに祖母がプレゼントしてくれた“ボン吉”というぬいぐるみが主役で、物語としては立ち回りがたくさんあるものでした。ボン吉はお守りのような存在で今も控室にいます。ほかにも、雪を降らせたり宙乗りさせたり、家にあるスモークマシーンを使って煙を炊いたり、衣装とかも作ってやってました。

ーー 本格的ですね。

まだ完成してないんですけど、悪役をやっている歌舞伎役者が主人公で、悪役が好きすぎて現実でも役と同じことをしてしまうというものもあります(笑)。作るからにはちゃんと作りたいと思ってるんですけど、ちょっと今は執筆が止まっちゃってます。

ーー 映像に残したりはしてないのですか?

1つだけ、小学校5、6年くらいの時に妹と一緒にやった1時間弱くらいの作品が残っています。いつか新作歌舞伎として上演したいと思いながら話を書きました。最近は原作があるものが多いので、オリジナルもやりたいな、将来自分でできたらいいなと思いながら書いています。


実は“陽”より“陰”に惹かれがち。大好きな映画は『ジョーカー』


ーー それは楽しみです! 作品の話に戻りますが、今回のアフレコは、山寺宏一さんや他の声優さんたちと一緒に録音されたそうですね。

はい。山寺さんは、いろんな声を持ってらっしゃって本当にすごいです。ご一緒させていただいて、すごく嬉しかったですし、尊敬の念がつきません。

ーー アニメは結構見るんですか?

う~ん…『笑ゥせぇるすまん』くらいしか知らないかも(苦笑)。

ーー それは新しく放送されていたシリーズ(2017)でしょうか。

新しいものも、古いシリーズもどちらも好きです。

ーー お話を伺っていると、ご自身が書く台本では悪役を主役にしたり、アニメでは『笑ゥせぇるすまん』が好きだったりと、“陽”より“陰”、ダークなものがお好きなのでしょうか?

はい、完全にそうだと思います(笑)。映画は洋画をよく見るんですが、悪役が主人公だったり、バッドエンドだったり、謎を残したまま終わったりする作品ばかりを好んで観ています。たとえば『ジョーカー』(2019)とか。本当に大好きで、公開の1年前からニュースを追ったりして、ずっと楽しみにしていました。映画館で2回観て、配信版でも5、6回は観ています。



ーー そうなんですね。先ほど性格的に似たところがあるという本作のチェリーは、自分とは全く違う明るいスマイルに惹かれていましたが、そこは共感できますか?

うーん…僕自身はその気持ちはあまり分からないです。テンション高い子はちょっと苦手というか、僕がそこまで高くないので、たぶんついていけないと思います(笑)。自分と近い感じ、静かな人のほうが惹かれます。



ーー 2018年に、八代目市川染五郎を襲名されてから、歌舞伎ファン以外からも注目されていますが、ご自身ではどう感じていますか?

僕を通じて歌舞伎を知っていただけるのは、とても嬉しいです。ただ、ファンになっていただいた方にも、やっぱり歌舞伎を観ていただいて、自分の芝居もですけど、歌舞伎自体を好きになってくれたら、もっと嬉しいです。

ーー お父さまから、今回のお仕事について「勉強になると思う」と最初に言われたとのことですが、実際にどんなことを学べましたか?

息遣いのお芝居が新鮮でした。走って息切れしたり、鏡を見てため息をついたり。セリフのように決まっているものではないですし、自分自身でキャラクターの状況に合わせて変えていく必要があって、その微妙なニュアンスをすごく学べたと思います。ただ、具体的に「こういうところが勉強になった」というよりは、新しい感覚を得られた感じです。

三谷幸喜さんの『月光露針路日本 風雲児たち』に出させていただいたとき、はじめて現代語のセリフでお芝居をしたのですが、それまで古典しかやったことがなかったので、三谷さんをはじめ、共演の八嶋智人さんたちからイチから教えていただいたんです。そのときに学んだことが、今回のアフレコで生かせたと思ったのと同じように、今回のアフレコで学べたことも、今後、実際に何かお仕事をさせていただいたときに、生かせていると感じられると思っています。



ーー これからも現代劇や映像の作品もやりたいですか?

もちろんです。もともとやりたいと思っていましたし、より興味が湧きました。

ーー 最後に、本作の見どころを教えてください。

最後の櫓でのシーンです。監督からもセリフを言っているときの気持ちや、前のシーンからの気持ちの変化を丁寧に教えていただきました。あと、俳句がテーマのひとつになっているので、日本語の美しさを感じられるのは、やっぱりこの作品の魅力だと思います。




©2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

外部リンク

cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_7a938cee6768_壮大なスケールで描かれた舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-。刀剣男士たちが見上げた空に馳せた想い── 7a938cee6768 7a938cee6768 壮大なスケールで描かれた舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-。刀剣男士たちが見上げた空に馳せた想い── oa-rp87552

壮大なスケールで描かれた舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-。刀剣男士たちが見上げた空に馳せた想い──

2021年3月29日 11:00 WHAT's IN? tokyo

舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣- が、3月28日(日)に千秋楽を迎えた。1月10日(日)の開幕から約3ヵ月間にわたり、IHIステージアラウンド東京で上演された話題作だ。

本作は、「刀剣乱舞-ONLINE-」(DMM GAMES/Nitroplus)を原案とした舞台シリーズ、通称“刀ステ”の中でも最大規模のステージ。ダイナミックな殺陣と壮大な物語で観客を魅了した。

あらすじと共に、刀剣男士をはじめとする登場人物たちの魅力、活躍ぶりを振り返る。


取材・文 / 片桐ユウ


戦い抜いた刀剣男士たちには、突き抜けるような蒼空がふさわしい


冒頭、「大坂の陣」の説明を担うのは刀剣男士・一期一振(本田礼生)。心地よく柔らかな声で「方広寺鐘銘事件」を発端にした、豊臣と徳川の衝突について語り出す。


続く場面では、豊臣秀頼(小松準弥)と大野治長(姜 暢雄)、徳川家康(松村雄基)の両陣営が戦の準備に入る様が描かれる。背景に浮かぶ家紋の迫力も相まって、歴史作品としての重厚感が溢れる。

ここで驚かされるのは、家康の側に刀剣男士・太閤左文字(北乃颯希)の姿があることだ。

なぜ、太閤左文字は徳川家康の元にいるのか……。


そして豊臣軍にも、「ジョ伝 三つら星刀語り」(2017年上演)で黒田官兵衛の元に身を寄せていた織田信長の従者、弥助(日南田顕久)と、「時間遡行軍」の阿形(安田桃太郎)と吽形(杉山圭一)が現れる。

いったいなぜ弥助と時間遡行軍が行動を共にしているのか……。



場面が切り替わり、並び立つ刀剣男士が次々に名乗りを上げる。一期一振による「それでは、出陣いたしますか」との優雅な宣言を合図に、殺陣とダンス、歌を織り交ぜたオープニングがスタート。

彼らのカッコよさと、提起された不穏な謎を焼き付けて「天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」は始まった。


まず惹きつけられるのが、IHIステージアラウンド東京特有の巨大スクリーン、回転する座席の浮遊感、そして舞台セットの迫力である。


豊臣側の戦国武将・真田信繁(鈴木裕樹)が作り上げた出城「真田丸」の朱色、出陣した刀剣男士たちが落ち合う場所として使用する「岩場」の高さ。広い空間に組み立てられた舞台セットの説得力をこれでもかと見せつけられた心地だ。


一方で、太閤左文字が回想する「二条城」会見のシーンは、スクリーンの派手な映像とポンポンを持ちチアリーディング風に場を盛り上げる兵士たちによってファンシーな仕上がりに。秀頼と家康のやりとりはコメディタッチに綴られ、シリアスな物語の中で清涼剤的な役割を果たす。


今作は多方向から描かれ、それぞれに重みと見応えがある。



まず戦国武将たち。

豊臣秀頼は天下人だった父・秀吉から世を任されたという重責に加えて、自分が本当に秀吉の息子なのかという疑念もあり、「豊臣秀吉の息子」と呼ばれる己の立場に思い悩んでいる。秀頼にとって「大坂の陣」は、戦国武将として“間に合った”千載一遇のチャンスだ。


秀頼を支える大野治長は、そんな悩み多き主君に寄り添い、支えようと奮闘。真田信繁は秀頼同様、偉大な父という存在に悩みつつも戦国武将としての活躍を切望している人物。だが「歴史」の行く末を知ってしまったばかりに苦しむことになる。


徳川家康は、後世で“狸”と呼ばれるような慎重でしたたかな人物とは思えぬ豪胆さで周囲を圧倒する。しかし彼もまた戦国武将として戦の中で散りたいという願望を抱いており、その人間くささがひと波乱を巻き起こす。


己の人生という“一人分”以上のものを背負って葛藤しながらも、ひとりの人間としての在り方を模索する彼らの生き様が熱い。


歴史上の人物たちの顛末だけでも“物語”となるのは数々の歴史創作物が証明しているが、舞台『刀剣乱舞』という世界の中で描かれることによって、これまでの作品とは違った一面を目にすることができる。



松村雄基の演じる家康は一声で天下人のそれとわかるような強さを備えており、大物感がすさまじい。有無を言わせぬ気迫と貫禄だ。

真田信繁 役の鈴木裕樹と大野治長 役の姜 暢雄は、特撮やドラマ、舞台と幅広く活躍中。鈴木は泥くさく激しく、姜は落ち着きと色気を持って、豊臣家に使える忠臣を演じ切る。


豊臣秀頼 役の小松準弥は、2.5次元ミュージカルで人気を博しつつ、硬派な舞台作品にも精力的に出演してきた注目の舞台俳優。悩み多き青年の等身大さと唯一無二のカリスマ性を繊細に織り交ぜ、風貌や性格は冴えないものとして描かれがちな秀頼を魅力的な人物として存在させてみせた。


そして、この戦を大きくかき回す弥助と「時間遡行軍」の阿形・吽形。

彼らが今作で登場した理由には、“刀ステ”シリーズとして脈々と続く因縁がある。「歴史の狭間(はざま)人」になった弥助の思いもよらない行動が、この「大坂冬の陣」を形作っていく。

弥助 役の日南田顕久は「ジョ伝 三つら星刀語り」の頃より異彩を放っていたが、今作ではさらに重要な役どころを担い、その役割を存分に果たしている。



それから、刀剣男士たち。

混乱を極める各陣営に入り込み、歴史上の人物たちを見守りながら過ごす刀剣男士たちもまた、この「歴史」のひとつとして激しい戦いを繰り広げることになる。


歴史上の人物たちや敵対する弥助らの生き様を目の当たりにして、刀剣男士たちも各々の悩みや因縁に決着をつけていく物語が今作の要であり、大きな見どころだ。


中でも大きな変化を起こすのが、今作の中心である一期一振。

刀剣の一期一振は、豊臣秀吉の愛刀とされた太刀。「大坂の陣」で焼け、打ち直しをされたという経緯がある。それ故に刀剣男士の一期一振は、刀であった頃の思い出を持たない。一期一振は兄弟たちから「いち兄」と慕われる存在でもあるが、だからこそ秘めたる“喪失感”を処理しきれずにいる。

そんな彼が秀頼に共感を覚え、元の主(持ち主)であった秀吉を思い起こす場面は感動的だ。


一期一振 役の本田礼生は今作が“刀ステ”初出演。柔和な顔立ちと穏やかな物腰が一期一振にハマっている。さらにダンスとアクロバットで培ってきた身のこなしで、複雑な立ち回りをダイナミックかつ優雅に見せた。


一期一振と同じ刀工、粟田口吉光の作である鯰尾藤四郎と骨喰藤四郎も記憶が焼失している刀剣男士。骨喰藤四郎は特に記憶が残っておらず、アンニュイな雰囲気が漂っている。それを励ます前向きな鯰尾藤四郎という、兄弟関係が微笑ましい。

鯰尾藤四郎 役の前嶋 曜、骨喰藤四郎 役の北川尚弥、両者とも弟としての可愛らしさと、立ち回りのときに見せる切れ味の良さとのギャップが印象的だ。



豊臣と徳川の手を渡り歩いた太閤左文字は“刀ステ”シリーズ初登場。両陣営を見てきた刀剣として、また謎めく存在として物語の鍵となる刀剣男士である。

演じる北乃颯希もシリーズ初参加だが、物怖じしない立ち振る舞いで場面をグイグイと引っ張り、テンションを落とさぬままラストまで愛くるしくステージを駆け回った。


太閤左文字の兄弟である宗三左文字を演じるのは佐々木喜英。初演とその再演である「虚伝 燃ゆる本能寺」(2016年・2017年上演)以来の“出陣”となったが、久々とは思えぬ安定した存在感、かつ妖艶さを振り撒いた。彼の太刀筋は優美で力強く、目を奪われる。



宗三左文字と同じく、落ち着いた物腰で「本丸(刀剣男士たちの本拠地)」の古参感を漂わせていたのが加州清光。“刀ステ”シリーズには初登場だが、劇中では「本丸」に初期からいたことが語られる。

そこに説得力を持たせられたのは、演じた松田 凌のキャリアと覚悟があってこそだろう。この先の歴史を知る存在として家康を叱咤する場面は、心からの叫びに震えた。


“刀ステ”シリーズの軸を担う山姥切国広 役・荒牧慶彦とは共演歴もあってか、山姥切国広と加州清光の二振りで語り合う場面や立ち回りの最中、互いへの信頼感が美しく伝わってきたことも特筆しておきたい。

山姥切国広を演じる荒牧慶彦は、より削ぎ落とされた感触。何気ない言葉や物静かな姿勢の中からも確かな自負心が見える。山姥切国広が対峙する因縁と、その戦いぶりに息を呑んだ。



刀剣男士たちそれぞれが魅了した戦いの果て、クライマックスの壮大な立ち回りはIHIステージアラウンド東京ならではの演出。客席の回転に従って、観客はキャスト総勢による圧巻の殺陣を堪能できる。


戦い抜き、さだめられた「歴史」を守った刀剣男士たち。彼らには、なるほど突き抜けるような蒼空と「天伝 蒼空の兵」というタイトルがふさわしい。


続く後編のタイトルは、「无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-」。

「天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」から続く伏線が解き明かされる瞬間を心待ちにしている。





©舞台『刀剣乱舞』製作委員会 ©2015 EXNOA LLC/Nitroplus

外部リンク

cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_cb8d59c1d927_さみしい思いをさせた猫が、飼い主に取った行動がプロだった。第121話「猫、芝居上手」原田ちあきのやばみ系猫マンガ! cb8d59c1d927 cb8d59c1d927 さみしい思いをさせた猫が、飼い主に取った行動がプロだった。第121話「猫、芝居上手」原田ちあきのやばみ系猫マンガ! oa-rp87552

さみしい思いをさせた猫が、飼い主に取った行動がプロだった。第121話「猫、芝居上手」原田ちあきのやばみ系猫マンガ!

2021年3月28日 09:00 WHAT's IN? tokyo


原田家に暮らす猫“いっちゃん”との日々は、ほっこり癒し的なものとは程遠いもので――。

一度見たら絶対忘れない超話題の新鋭アーティスト・原田ちあきが、猫への愛と服従の日々を描く、中毒性高めのやばみ系猫マンガ。

子犬のとこちゃんが仲間入りして、ますますにぎやかになった「やは猫」。連載は終わるけど、家族は永遠なんだズェ。




第121話「猫、芝居上手」





第121話「猫、芝居上手」メモ:

やはり猫にはかないません。


これからも、なんでもわがまま聞かせてね。


【お知らせ】

121回にわたりお届けしてきた本作ですが、Webメディア『WHAT’s IN? tokyo』の終了に伴い、連載は終了となります。ご愛読いただいた皆さまに、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

連載は終わりますが、マンガ「やはり猫にはかなわない」はまだまだ続きます。またどこかでお会いしましょう!

外部リンク

cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_4d945390b276_『砕け散るところを見せてあげる』で三度目の共演。中川大志×石井杏奈の役作りの信念。「自分を知ることが大切」 4d945390b276 4d945390b276 『砕け散るところを見せてあげる』で三度目の共演。中川大志×石井杏奈の役作りの信念。「自分を知ることが大切」 oa-rp87552

『砕け散るところを見せてあげる』で三度目の共演。中川大志×石井杏奈の役作りの信念。「自分を知ることが大切」

2021年3月26日 12:00 WHAT's IN? tokyo

漫画家の浅野いにおやヤマザキマリ、作家の伊坂幸太郎らが絶賛した竹宮ゆゆこの小説『砕け散るところを見せてあげる』が中川大志と石井杏奈のW主演で実写化される。曲がったことが大嫌いな清澄(きよすみ)に壮絶ないじめから救われた玻璃(はり)。二人の出会いは高校生の青春物語からサスペンスへと展開し、やがて壮大なラブストーリーへと広がっていく。「小説の新たな可能性を示した傑作」と称されたベストセラーの映画化に、1998年生まれの同級生である中川と石井はどう挑んだのか。ドラマ『GTO』、映画『四月は君の嘘』に続いて三度目の共演となる二人に話を聞いた。


取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 冨田 望


幸せな瞬間と受け入れがたい残酷さは隣り合わせ。衝撃的だけど、シュールなコメディ要素もあるクオリティの高い映画になった。(中川)


ーー まず、W主演を務める心境から聞かせてください。

中川 初めて共演したのが中学校2年生の時だったんですよね。今回3回目の共演でW主演ということで、最初に杏奈ちゃんがこの役をやりますって聞いた時は、すごい安心感というか、信頼感がありました。それと、これまでの杏奈ちゃん自身のイメージとは全然違う役柄だったので、どんな玻璃になるのか、すごく楽しみでもありました。とにかく、こういう難しい作品に一緒に挑む相手としては本当に心強いなっていう印象でした。

石井 中学2年生の時に出会った大志くんとご一緒できて、しかも、W主演ということで、すごく感慨深いです。でも、いい意味で変わってないなと思って。大志くんの真っ直ぐさやお芝居にかける情熱は刺激的でしたし、撮影中も毎日、清澄としている大志くんに、改めて尊敬の念を感じていました。私は頼りっぱなしで、支えていただいていたのですが、すごく演じやすかったですし、三度目の共演だからこその空気感もあったのかなと思います。

ーー 石井さんは「いい意味で変わらない」とおしゃってますが、中川さんは当時、石井さんのことをどう思ってました?

中川 僕たち当時は年頃で思春期だったので(笑)、そんなに喋った記憶がないんですよね。最初に会った時は学園もので、同級生が何十人いる中の二人だったこともあって。けど、基本的には溌剌として、元気で明るい、健康的な女の子っていうイメージです。



ーー お互いに成長したなと感じたところはありますか。

中川 変わらないですね(笑)。

石井 お酒が飲めるようになったくらい?

中川 そうだね。もちろん、お互いにその間に積み重ねてきてる経験はあるんですけど、一緒に作品をやっていく中で、ここ成長したなとか、考えてる暇も余裕もなくて、今のことに精一杯でした。ただ、コミュニケーションという意味では変わってる部分はあって。撮影の合間とか、こういう取材の時も、歳が離れてるとないんですけど、同い年なので、なんか、同級生の女の子と、あんまり喋れない時期があるじゃないですか(笑)。そういうのは今はもうないですね。そこは変わったところかな。当時は年頃だったので(笑)。

石井 あはははは。そこが大事なんだね。

中川 すごい自然体でいやすいというか。ね。

石井 そ、そうですね。

中川 ……僕だけだったかもしれないです(笑)。

石井 いやいや、同じくです!



ーー (笑)。脚本は読んでどう感じました? 

石井 純粋に好きな作品でした。どういうお話か知らずに読み始めて、きれいなラブストーリーで終わるのかなと思ったら、結構衝撃的で。

ーー 原作を知らないで観るとびっくりしますよね。高校生の青春ラブストーリーかと思いきや……。

中川 あまり身構えないで観ていただいたほうが、衝撃的だと思いますね。最初に脚本を読んだ時は、これは大変だなって感じました(苦笑)。残酷的な部分もリアリティを持って観ていただくためには、徹底的に生々しくやらないと刺さらない話かなと思って。だけど、残酷な瞬間と何気ない幸せな瞬間が絶妙なバランスでこの映画の中に共存しているんですよね。それは、全く別々のものでもなくて、意外と幸せな瞬間と受け入れがたい残酷さは隣り合わせであって、観る人によって、観る角度によって、見え方が変わってくるような、180度違うように見えても、意外とそうでもないような本だなと思って。どの瞬間も大切に演じたいなって思っていました。

石井 そうだね。大志くんが言ったように、私が感じたように、お客さんも同じ気持ちになってほしいな。なので、まだ読んでないという方は、映画を観てから読んで欲しいです。私は脚本を読んで、度肝を抜かれましたし、人間はこういう風に愛を作っていくのだなと不思議な気持ちになりました。



ーー そうですね。本作はあまり情報を入れずに、フラットに観に行って欲しいなと思ってます。撮影で特に印象に残ってるシーンを1つだけ挙げていただけますか。

石井 たくさんありますが、私が素に戻ったのは、保健室でお汁粉の話をしている時の大志くんがすごい面白くて(笑)。

中川 監督がカットを全然かけないから、ずっと喋ってたんですよ。

石井 アドリブで。あれはキツそうだった。

中川 キツかった! あと、おはぎを顔面に喰らうシーンがあるんですけど、結構、難易度が高くて。何回もやったんですよ。

石井 そうそう。しかも、硬いんだよね。



中川 「おはぎ、案外、固ぇ」みたいなセリフもあったんですけど、おはぎ、痛いんですよ、まじで!あのシーンは好きですね。そのあと、尾崎妹(清原果耶)がガムを捨てるのに使ったティッシュくれてね。ああいうシュールな場面をやりすぎず、やらなさすぎず、どうやるか。その瀬戸際を攻めるのが楽しかったです。

ーー 清澄の家でお汁粉を食べるシーンも面白かったです。もっと観ていたかったくらい。

石井 あのシーンも長かったんです。

中川 すごく長かった。ほんとに1シーン10ページ以上とかざらにあって。結構、長回しでやってました。



ーー 重くシリアスなテーマを扱ってるけど、日常の会話では思わずクスッとしてまうようなやりとりも多くて。その匙加減が抜群でしたね。

中川 そうですね。二人の会話もそうなんですけど、ひと言しか喋らない尾崎姉(松井愛莉)が尺を食ってたり、誰も突っ込んでくれない時間が続いてたりもして。そういうシュールな時間がやってて楽しかったですね。

ーー 二人のコメディ作品も見たいです。

中川 僕はもうコメディのつもりでやってました。

石井 あはは。強いな!

ーー (笑)。完成した作品をご覧になってどう感じました?

中川 僕の全体的な印象はカッコよく仕上がったなって感じですね。言語化できないような抽象的なものも映像としてカッコよく描かれていたと思いますし、時系列の崩し方もお洒落でカッコよかった。映画として、様々な要素がギュッと詰まった、クオリティーの高い作品になっているし、そんな作品に参加できてよかったなって思います。

石井 すごく壮大なラブストーリーであり、ミステリーであり、ヒューマンドラマでもあって。全部が、受け止められないくらい壮大だったなという印象です。


化けるためにも常に染まれるようになりたいなと思う(石井)


ーー 劇中で玻璃は清澄に救われますが、ご自身の人生で救われたなっていうエピソードはありますか。

中川 僕は同級生ですね。小学生からこの仕事をしていて、仕事の現場と学校を行ったり来たりだったんですけど、僕を色眼鏡で見ずに、ただの同級生として接してくれてたんです。当時、よく「学校と仕事でオンオフを切り替えてますか?」って聞かれてたんですけど、学校に行けば、僕はただの学生に戻れるので、自然に切り替われていました。それは同級生のおかげだし、すごくありがたいことでもあって。友達に恵まれてたなって思いますね。

石井 私は、仕事と学校を両立しないとならない中学生の時に、学校も行きたくないし、仕事も嫌だ、みたいな時がありまして(苦笑)。反抗期でしたし、自分の中でもモヤモヤした状態が続いていた時に、母から「じゃあ、どっちかやめろ」と、きつい言葉で怒られました。その時に、泣きながら「どっちもやる!」と言って今に至るのですが、当時、そういう風にきついことを言われていなかったら、きっと今でも中途半端だったなと思っています。その時は、腹も立ちましたし、対抗心が剥き出しになってしまっていたのですが、今になって振り返ると、あの時の渇が人生を左右したなと思います。



ーー 玻璃は清澄を「ヒーローみたい」だと思い、清澄は「本当のヒーローになる」と心に誓います。お二人のとってのヒーローは?

石井 お母さんかな。自分の将来像は、お母さんみたいなお母さんになりたいなと思ってて。私、4人兄弟がいるのですが、4人だからといって、愛が偏ったなと思うこともなく、友達のような感じで接してくれるんです。そういう、ふざけたというか、おかしなお母さんなので(笑)、自分の子供とずっと等身大で立てるような人になりたいなと思います。

中川 僕は、スパイダーマンですね(笑)。初めて映画を見たのは幼稚園の頃だと思うんですけど、主人公が蜘蛛に刺されるだけなので、もしかしたら自分もなれるかも? って思わせるじゃないですか。お父さんにスパイダーマンのマスクを玩具屋さんで買ってもらって、それを被ったまま幼稚園に行ったら、無茶苦茶怒られましたけど(笑)、小さい頃からすっごい好きですね。

ーー あはは(笑)。では最後に、劇中で語られる「ヒーローの三箇条」にかけて、それぞれの「役者の一箇条」を教えてください。

中川 映画やドラマは基本的には作り物ですが、それをいかに“本当っぽく”ではなく、”本当”にできるかです。だから、まず台本を読んだときに、自分の経験や記憶から似た感覚を引っ張ってくるんですね。例えば、誰かを殺しちゃう役であれば、自分にとって殺したいものはなんだろうって考えて……ゴキブリとか。

石井 あはは。ゴキブリ!



中川 本当にそういうことなの(笑)! 自分の感情に嘘があってはいけない。それは常にテーマですね。だから、自分のことを知っておくというのがとても大切だなと思ってます。自分がどんな時に腹が立って、どんな時に嬉しくなって、どんな時に涙を流すのか。自分の経験をちゃんと積み重ねていかないといけないなと思ってます。

石井 私は染まりたいなと思っています。この作品だったら、玻璃に染まること。現場の風景に馴染みたいですし、役柄にちゃんと染まりたい。東京で生まれ育った自分が、どこかで生まれた役を演じる時に、そこに馴染んだり、染まらないとリアリティが出せない。化けるためにも常に染まれるようになりたいなと思います。


中川大志:スタイリスト / 徳永貴士 ヘアメイク / 堤紗也香

石井杏奈:スタイリスト / 粟野多美子 ヘアメイク / 内田香織




©2020 映画「砕け散るところを見せてあげる」製作委員会

外部リンク

cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_df1d72c0e957_vol.14 言葉 df1d72c0e957 df1d72c0e957 vol.14 言葉 oa-rp87552

vol.14 言葉

2021年3月25日 18:00 WHAT's IN? tokyo

演劇、舞台をメインに執筆しているライターの片桐ユウが、芝居やエンターテインメント全般に思うことを綴っていくコラム。作品は人に様々な感情をもたらすもの。その理由やルーツを訪ねて飛び回ってみたり、気になった場所を覗き込んでみたり、時には深堀りしてみたら、さらに新しい気づきがあるかもしれない。“エンタメ”とのコミュニケーションで生まれるものを、なるべく優しく大切に。



今号は最終回。あらためて文字で記す「言葉」について。


「朕の言葉を受け取れ。朕の与えるやすらぎを受け取れ。お前の傷口に水を注いでやろう」

──アタウアルパ/『ピサロ』より(ピーター・シェーファー戯曲「ROYAL HUNT OF THE SUN」)


先日、アンコール上演が発表された『ピサロ』(PARCO PRODUCE 2021「ピサロ」)には、利己的な通訳者が出鱈目な通訳をして、スペインからの侵略者・ピサロ(渡辺謙)と囚われのインカ皇帝・アタウアルパ(宮沢氷魚)の関係を危うくさせる場面がある。

「言葉」は一触即発の事態を招くものだ。それが故意であれば尚更に。


その後、アタウアルパが「文字」なるものを知り、はしゃぐ場面もある。インカ帝国は文字をもたない文明だった。アタウアルパは新しく通訳を務めることになったピサロの小姓から、己の爪に単語を書いてもらって別のスペイン人に見せ、その人が「文字」(アタウアルパにとっては「記号」)から「言葉」を読み解くことに驚く。

「言葉」は人と人との間をつなぐものだ。……もっとも、ピサロ将軍は叩き上げ故に文字が読めない男だったため、アタウアルパの無邪気さがピサロにとっては余計に突き刺さる場面でもあるのだが。


ともあれ人にとって「言葉」を共有することは重要である。「言葉」の中には情報が詰まっているからだ。生活に必要な知識や名称といったものばかりではなく、人間が共に生きる時に必要不可欠となる感情や思考も詰め込まれている。「言葉」は、人間の関係性を保つために、とても重要な役割を果たしていると思う。


最近は音声や動画、専ら耳で聞くものが流行しているが、だからといって文字や文章といった目から読み取るものがなくなったというわけでもない。なので、最終回は文章を綴るコラムとして、「文字」で記す方の“言葉”というものを見つめ直してみようかと思う。


世界には文字があふれている。


「文字」の発祥を辿ると、紀元前何千年といった頃まで遡らねばならないらしい。その文字で書かれる記述は、天候など日々の記録や王朝の歴史に始まり、思想や学問、報告書や物語、宣伝文句と幅を広げながら、目的としては大凡「伝える」ためのものとして発達していった。


現在という時点においても、大衆に向けて書かれる新聞や各媒体、ターゲットを狙ったファッション誌や専門誌、創作物、社内向けの報告書、チームで共有するレジュメ、大切な人に宛てた手紙と、範囲は様々ながら「伝える」という目的はほぼ変わっていない。


誰に見せるつもりもない日記や呟き、目を通したらすぐに捨てて構わない走り書きのメモもあることはあるが、基本的に「書き記した」言葉というものは、「残すもの」としての使命をじんわり帯びているように思う。


紀元前に書かれたものから残っているわけだから、人類が所持する文章は増加の一方だ。


とは言え、失われたものも数え切れないほどあるに違いない。これまでに書かれた文章の内、今に至るまで残っているものの割合を数えることが出来たら1%にも満たないだろうなとは思う。

失われた文字や文章の貴重さは計り知れないが、それでも残されたものが地層のように積み重なっている様を知ることが可能で、更にそこから自分が欲するものを取り出し、目にすることが出来るという環境は、有り難いことこの上ない。


「伝えたい」と「知りたい」という人間の欲求がある限り、今日も世界は言葉であふれている。


当然、正義としての使命感によるものばかりではない。「伝えたい」という欲望に他の願望が絡んで、“盛っている”場合だってある。売れたい。売りたい。目立ちたい。混乱を招きたい。孤独から逃れたい。

言葉は嘘を付かないが、言葉を使う人間が嘘つきだったりもする。


「知りたい」という欲求は、下手をすると下衆の勘繰りになりかねない。好奇心は猫を殺してしまうと言うが、発信手段が発達して刹那的な徒党が組めるようになった状況では、好奇心は簡単に攻撃の色を纏い、時には醜い思い込みに姿を変えて面識すらない人でも平気で殺してしまう。


人を傷付けて良いわけはない。だが、傷付けたことを無かったことには出来ないし、無かったことにすることも良くない。過ちも人類の歴史。思考と試行錯誤の歴史だ。


「文字」で書かれた言葉は、本来は書いた時と変わらないから、変えられないから価値があるのだと思う。(とは言え、言葉の意味自体が変わっていく場合も多いので、書かれた当時の意味や意図を探ることも必須だが)


「文字」として、その時の物事や想いを留めた言葉たちは、人間そのもの、あるいは己の不変さに呆れたり、笑ったり、感動したり、絶望するための装置だと私は思っている。

その上で、ほんの少しだけ前進する勇気をくれるものだと思っている。


……そんなわけで、私には「文字」にする「言葉」は、「伝える」もの、そして「残す」ことをある程度見込んでいるもの、という感覚を持っていたので、3ヶ月後に全てのログが消えるのはやはり寂しい。

だが個人的な思いで残したいのであれば、それこそ日記に書き留めて机の引き出しに仕舞っておけば良い話であり、媒体の連載枠をいただいてすることではないのも重々承知している。


それに“言葉”そのものは共通認識を前提とした入れ物に過ぎないと感じる時もあり、実質の「文字」が「残る」かどうかということより、読んだ相手に「残る」かどうかの方が大事なのだという気もする。


このコラムは砂上の足跡と同じようにWEBの波に消えていくものだけれど、自分の足には歩いたという心地の良い実感が残っているので、無駄に綴ったという虚無感はない。

今はただ、短い間ながらこの連載に触れてくださった方々に感謝するばかりである。


皆様の人生がこの先、優しく温かい言葉であふれるものでありますようにと願ってやまない。


文 / 片桐ユウ

外部リンク

cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_165043cafd0c_山本一慶×橋本真一×井上希美の実力派キャストが“真実の愛”をめぐるミュージカル・コメディ『ラヴ』で劇場を笑いの渦に包む!! 165043cafd0c 165043cafd0c 山本一慶×橋本真一×井上希美の実力派キャストが“真実の愛”をめぐるミュージカル・コメディ『ラヴ』で劇場を笑いの渦に包む!! oa-rp87552

山本一慶×橋本真一×井上希美の実力派キャストが“真実の愛”をめぐるミュージカル・コメディ『ラヴ』で劇場を笑いの渦に包む!!

2021年3月24日 19:00 WHAT's IN? tokyo

3月24日(水)より東京・六行会ホールで開幕したミュージカル・コメディ『ラヴ』のゲネプロが初日前日に取材陣に公開された。

1964年にブロードウェイで上演され、大ロングランを達成した舞台『WHAT ABOUT LUV?』。その後ミュージカル化され、日本では1994年に鳳蘭、市村正親、西城秀樹によって上演され話題となった。

当時、音楽監督を務めていた日本を代表する音楽家・宮川彬良を父に持つ、宮川知子・安利姉妹が、27年ぶりの再演となる本作で、音楽監督&ピアノ演奏と演出を担当。平均年齢30歳の実力派俳優陣&スタッフによる愛の悲喜劇が再び幕を開ける!


取材・文・撮影 / 近藤明子


人それぞれ多くの愛があって、それぞれ思うことがいっぱいある


ゲネプロの前にはフォトセッションが行われた。


エリートサラリーマン・ミルトを演じる山本一慶は「やっと“ここ”にたどり着いたなという思いです」とほっとした表情を浮かべ、「登場する3人のキャラクターは全員ぶっ飛んでいるミュージカル・コメディ。こういう時期ですが、観に来ていただいた皆さんに笑っていただけたらと思っています。笑顔になる準備をして劇場に来ていただけたら」と続けた。



ミルトの大学時代の親友・ハリー役の橋本真一も「三者三様の“愛のカタチ”や“生き方”が描かれている作品。難しいことは何も考えず、心を手ぶら状態にして観て笑っていただいて、幸せな気持ちで帰っていただければと思います」と熱く語った。



ミルトの妻・エレン役の井上希美も「とっても人間らしい3人がワタワタとする、あっという間の2時間です。コメディでポップな作品ですが、そこに込められている祈りやメッセージがちゃんと皆様に届くように、誠心誠意演じさせていただきます」と意気込む。



演出を手がける宮川安利は「このご時世、舞台を上演できることすら奇跡だと思っております。素晴らしい3人の役者とピアニストの宮川知子、そしてスタッフの皆さまのおかげで、いよいよ明日初日を迎えます。とても面白いコメディになっているので、ご観劇いただく皆様に楽しんでいただけたらと思っております」と感慨深げに語り、音楽監督・ピアノ演奏を担当する宮川知子も「まずは身体の健康を第一に、感染しないようにすることが大事ですが、何より喜怒哀楽は“魂の健康”には不可欠だと思っています。今作はコメディなので、“笑い”をお客様とシェアできたら……」と笑顔を見せた。



最後に山本が「今のこの時期、愛する人のことを思う時間が昔より多くなったんじゃないかと思います。人それぞれ多くの愛があって、それぞれ思うことがいっぱいある。愛とは何だろうというのを、この舞台を見たあとにあらためて考えていただけたら……。と、真面目なことを言いましたが、コメディですので、ただただ笑顔になりに劇場に足を運んでいただきたいです。僕らキャスト3人と、ピアノの宮川知子さん、演出の宮川安利さん、そしてスタッフ一同、すべての力を注いで皆さんを笑いの渦に巻き込みたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします!」と力強いメッセージで締め括った。


3人の大胆な芝居に驚かされる


その後行われたゲネプロでは、冒頭からフルスロットルで歌い、踊り、ステージ狭しと走り回るキャスト陣の熱演に圧倒された。



人生に絶望し、橋の上から身を投げようとするハリー(橋本真一)。そこに偶然やってきた大学時代の親友・ミルト(山本一慶)が声をかけたことから物語は大きく動き始める。


背中を丸め、ボロボロの服を身にまとった浮浪者同然のハリーとは対照的に、おしゃれなスーツをスマートに着こなすエリートサラリーマンのミルト。



そんなミルトだが、実は現在進行形で不倫中。妻・エレン(井上希美)との円満離婚を画策中だった。そして、ハリーにエレンを押しつける作戦を思いつく。


「君に足りないのは“愛”だ! 人生に愛がないのは不幸だ。今からここに来る僕の妻を口説け」とミルトに言われたハリーは、無茶苦茶だと思いつつも渋々同意。そこに不機嫌な表情のエレンがやって来て、ミルトとの愛のない生活をデータにまとめて問い詰める。



どうにかハリーとエレンを引き合わせたミルトはさっさと退散してしまうが、残されたふたりの間に新たな“愛”が芽生えるのか──。

捧腹絶倒の悲劇が始まる──。



「劇団四季」出身の井上希美を筆頭に、キャスト陣の歌がとにかく素晴らしい。正統派ミュージカルといった楽曲から、ポップス、タンゴ、民族音楽風など、様々なジャンルの楽曲を表情豊かに歌い踊る。その数25曲というから驚きだ!



また、多くの2.5次元作品で激しいアクションもこなす山本一慶と橋本真一は、橋の欄干に飛び乗り、“落ちそうで落ちない”絶妙なバランスで笑いも誘えば、井上も知的で上品な女性から急にドスの効いたタンカを切ったり、セクシーなドレス姿で身体を張ったアクションを見せるなど、3人の大胆な芝居には驚かされた。



実際に目にするまでは“アクションの山本&橋本、歌で引っ張る井上”という役割分担なのかと勝手に思い込んでいたので、三つ巴のぶつかり合いに驚くと同時に、あらためて山本一慶、橋本真一、井上希美という役者のポテンシャルの高さに、すっかり魅了されてしまった。



歌詞の内容はというと、よくよく聴けばかなり物騒な言葉が並んでいて、「それはないわ~」と思いつつも面白く、ついニヤけてしまう。また、3人の目まぐるしく変化する感情、予想の斜め上を行くような思考や行動には驚きつつも、気づけばグイグイと物語に引き込まれてしまうパワーがあった。



ジェットコースターのような展開に理性や常識は不要だ。

ただただ目の前の登場人物たちに目を向け、楽しめばいい。


“誰”に感情移入するかによって、見え方や感じ方が変わってくるであろう本作。

観劇後にあらためて“愛”について考えてみるのもいいかもしれない。



本作は、3月28日(日)まで東京・六行会ホールにて上演中。物語の行方、キャスト3名の実力を劇場で体感してほしい。

外部リンク

cat_oa-rp87552_issue_22ec678ac327 oa-rp87552_0_94c4dedb581d_松下洸平が新たに生み出す『カメレオンズ・リップ』の魅力。そして、今夏頃に再デビューが決定した彼にとっての“音楽” 94c4dedb581d 94c4dedb581d 松下洸平が新たに生み出す『カメレオンズ・リップ』の魅力。そして、今夏頃に再デビューが決定した彼にとっての“音楽” oa-rp87552

松下洸平が新たに生み出す『カメレオンズ・リップ』の魅力。そして、今夏頃に再デビューが決定した彼にとっての“音楽”

2021年3月24日 18:00 WHAT's IN? tokyo

松下洸平が主演を務めるKERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』(演出・河原雅彦)が4月に開幕する。

NHK連続テレビ小説『スカーレット』(2019年)でヒロインの夫・十代田八郎を演じ、俳優としての知名度を上げ、舞台やドラマ出演のみならず、今年に入ってからはバラエティ番組「ぐるナイ」の『ゴチになります』に新メンバーとしてレギュラー出演も果たしたほか、これまで俳優活動と並行して行ってきた音楽活動を本格的に再始動させるなど、精力的に活躍の場を広げている松下洸平。

そんな彼に『カメレオンズ・リップ』に対する意気込み、また、“松下洸平”名義で今夏頃に再デビューが決まった音楽活動への思いを聞いた。



※「KERA CROSS」とは──劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が手がけた数多くの戯曲の中から選りすぐった戯曲を、様々な演出家の演出で上演するシリーズ企画。これまでに第一弾『フローズン・ビーチ』(演出・鈴木裕美)、第二弾『グッドバイ』(演出・生瀬勝久)が上演された。


取材・文 / 松浦靖恵 撮影 / 青木早霞(PROGRESS-M)

スタイリスト / 渡邊圭祐 ヘアメイク / 五十嵐将寿


音楽をやっているからこそ見ることができる景色


ーー 松下さんの近況としては、今年1月から3月にかけて初めてのツアー「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2021 HEART to HEART」を開催しました。久しぶりのライブはいかがでしたか?


特にここ数年はテレビのお仕事が続いていたこともあって、ファンの方と直にお会いして交流する機会が持てなかったので、“松下洸平”自身としてファンの皆さんと交流できたことがとても嬉しかったです。



ーー もともと松下さんはシンガーソングライターとして2008年にデビューされていますが、今回初めて開催したツアーの中で、ご自身の音楽に対する思いを再確認されたのではないですか?


ツアーでは音楽をやっているからこそ見ることができる景色を見ることができましたし、ライブでしか経験できない感覚や、音楽を通して繋がれることを実感できたので、音楽を続けてきて良かったなと思いました。ステージ上では、“こんなに素でいいのか!?”っていうくらい素でしたけど(笑)。


ーー 3月6日のお誕生日当日には、名古屋公演のライブ配信もありました。


34歳になりたての日にライブをやらせていただいたのは、本当に貴重な経験でした。



ーー 34歳になられて、30代後半に向けた思いというのは何か生まれましたか?


僕は30歳になったときに“どんな30代にしたいか”を考えたんです。そのときに掲げた目標が、“自分が抱いている夢をひとつでも多く叶える”だったので、30代の今の自分はまだその目標を叶える階段の途中にいる。33歳のときに朝ドラに出演させていただいたこともそうですし。特に2020年はコロナ禍でいろんなことを考えた1年でもあって、34歳は“自分が自由に表現できる場所をひとつでも多く作ろう”と思っています。それが、掲げた目標に向かうステップアップにもつながると思うので。


ーー ご自身にとって“音楽”はどんな存在ですか?


自分が普段考えていることや頭の中だけで考えあぐねてしまうようなことを、音楽の力を借りて“整理整頓”していくような感覚があって。すごく楽しかった日にこの思いを形にして残しておきたいとか、つらいことがあったときの悔しさとか、それらを記録していく整理整頓作業が、自分の音楽になっているような気がします。



ーー 松下洸平として届ける音楽では、どんな自分を表現したいと思われていますか?


僕は誰かの思いが音楽の中に入らない、隙間がない音楽は作りたくないと思っています。僕自身の思いや経験を、僕が歌詞に書いて、僕が歌っていても、そこには誰かの思いが入る隙間を作るように心がけていますね。たとえ作り手の一方的な思いであっても、その思いを音楽として伝えることで、聴いてくださる方が共有してくれて、誰かの背中を押すことができたり、一歩を踏み出す勇気になったりする。僕個人の整理整頓という作業がめぐりめぐって誰かのためになる。そんな相乗効果が音楽にはあると思います。音楽はメロディやリズムが自分の思いを残す手助けをしてくれるもので、時に難しい作業でもあるんですけど、ひとつのものが完成したときの喜びというのは、音楽をやっていないと感じることができない楽しさなんだと思います。



僕たちは初演とどうやって戦わなければいけないのか


ーー 続いて、KERA CROSS第三弾『カメレオンズ・リップ』のお話を聞かせてください。堤 真一さん、深津絵里さんが出演された初演時(2004年)の映像を観られたそうですが、どのような感想を持たれましたか?


僕が演じさせていただく“ルーファス”を、堤さんは40歳のときに演じられていたので、今回のキャスティングは、年齢層が少し下がったんですね。ましてや、初演はKERAさんが当て書きしたキャスティングでもあるので、まさにルーファス=堤 真一さんであり、エレンデイラ=深津絵里さん、そのものがいる舞台だと思いました。僕たちはそことどうやって戦わなければいけないのかを考えたときに、演出の河原さんが「たしかに初演の方たちと比べれば年も若いし、演劇的なキャリアも少ないけれど、全体的に君たちは愛らしさがプラスされて、可愛いぞ」とおっしゃってくださって(笑)。


ーー 可愛い!?


河原さんもそこは妥協点ではなく、いかに魅力に変えるのかと強調されていて。この座組みで舞台に立つ僕たちが、どう胸を張って台詞を言うのか、役柄を作っていくうえで何を大切にしなければならないのかということを、河原さんと稽古のたびに丁寧に話し合いをさせていただいています。



ーー 河原さんには音楽劇『魔都夜曲』で初めて演出を受けていますが、松下さんは今回の稽古に対しては、どのような気持ちで挑んでいますか?


『カメレオンズ・リップ』は登場人物たちがお互いに騙し騙されていく物語で、それこそクレイジーな人しか出てこない。そんな物語の中で、先程も話しましたが、初演時に当て書きされた役柄を自分たちはどう自分のものにして演じ、それを僕らの魅力にしてどう押し出して作品を作っていくのか。今は台詞を覚えながら、動きを決めながら、頭の片隅でそのことを考えながら稽古をしています。


ーー 2020年に上演されたケムリ研究室 no.1『ベイジルタウンの女神』では、KERAさんの演出を受けていらっしゃいますが、KERAさんにはどのような印象を持っていらっしゃいますか?


とてもシニカルな戯曲をお書きになるので、哲学的な難しいことをおっしゃる方なのかなと、演出を受けるまでは勝手に想像していたんです。でも、『ベイジルタウンの女神』で実際に演出をしていただくと、とても丁寧にひとつひとつの会話を作ってくださったので、そこにとても救われました。僕は舞台での芝居をまだまだ勉強中なので、KERAさんが丁寧にアプローチをしてくださったのは、とてもいい経験になりました。あと、KERAさんはとても優しさに溢れた方です。『ベイジルタウンの女神』が終わってからも連絡をくださって、誕生日当日にも“おめでとう”メールをいただきました。KERAさんからこんなふうに連絡をいただけるなんて、と感動しましたね。



ーー 『カメレオンズ・リップ』で演じられるルーファスに対しては、どんなキャラクターだと捉えていますか?


ルーファスはこの作品の中では一番人間らしいというか。ただ、彼もクレイジーではあるので、ルーファスの人間らしい部分を残しながら演じられたらと思っています。


ーー ルーファスと松下さんが似ている部分、似ていない部分があれば教えてください。


似ていない部分で言うと、ルーファスは“なんでこんな嘘をつくの!?”っていう意味のない嘘を時々つくので、そこはなかなか理解できないです(笑)。似ている部分は、基本的に後先を考えていないところかな。僕も後先考えずになんでも先に進めちゃうので。“これがこうなったら、その先をどうする”っていう先読みをしないルーファスの野性的な部分が、彼の愛らしさにつながればいいなと思っています。



ーー 本作で主演を務められますが、心がけていることはありますか?


多くのキャストさんがいらっしゃる中で、一番初めに自分の名前があるのは初めてですが、この作品は登場人物それぞれが活躍する、全員が主役の物語だと思っているので、自分が主演として何かをしなくてはという感じにならないんです。これだけの素晴らしいキャストさんがいらっしゃるので、皆さんの力を借りながら千穐楽まで走り抜けたいです。


自分の好きな音楽を聴くことがリセットになる


ーー このご時世なので、稽古場もマスク着用をされていると思いますが、マスク以外に稽古場に持っていく必須アイテムはありますか? 


僕は稽古場の床や舞台の上でも平気でゴロゴロ寝転がっちゃうほうで(笑)、皆さんはストレッチするときにヨガマットみたいな敷物をよく使われているんですが、これまでほとんど使わなかったんですよ。それが、今はコロナ禍なので、稽古場でも床や地べたに直接座らないというルールがあるので、初めてヨガマットを稽古場に持って行ってます。



ーー 特にここ数年は多忙な日々を過ごされていると思いますが、気分転換にされていること、自分のテンションを上げてくれるものは何かありますか?


僕は、やっぱり音楽ですね。昔からR&Bやソウルなどのブラックミュージックが好きなので、自分の好きな音楽を聴くことがリセットになります。例えば、稽古が終わっても「今日も難しい芝居だったな」「あの場面どうしようかな」って考えをめぐらせている自分を、いったんリセットするために好きな音楽を大音量で聴きます。


ーー 最近お気に入りのアーティスト、楽曲は?


ブルーノ・マーズです。彼の新しい曲にドはまりしているので、それを聴くとリセットできますね。(人差し指と親指で丸を作って)仕事をしている自分がこの“丸”の中にいて、普段はその中でうろうろしているんですけど、そんな僕を包んでくれている“側”の部分が、自分の好きな音楽なんですよ。なので、迷っているときはいったん“丸”の外=“側”に出る。すると、ぐるぐる迷っている“丸”の中にいる自分を俯瞰で見ることができるので、僕は自分が好きな音楽を聴くっていうのを大事にしています。



ーー 『カメレオンズ・リップ』は登場人物たちの騙し騙されの応酬も見どころのひとつですが、松下さんご自身は、何があっても絶対に信じていることはありますか?


十数年前に、“俳優になって有名になってやる!”って思ったときの自分ですね。あのときの自分を裏切りたくないし、“まだ信じてるぞ!”って言いたいです。十数年後の将来の自分も、きっと若かりし頃の自分を信じていると思いますし。


いつのまにか彼らの嘘に巻き込まれていく


ーー では、『カメレオンズ・リップ』に足を運んでくださる皆さんにメッセージをお願いします。


全員が嘘をつきまくっているのに、騙し騙されながらも、なんとか自分はおかしくないんだというのをそれぞれが見せ合う本編を通して、お客さんもいつのまにか彼らの嘘に巻き込まれていくと思います。その嘘の戦いに、渦巻きのようにお客さんもキャストたちと一緒に引き込まれていくことで、すごく楽しい舞台になると思っています。観客の方たちも彼らの嘘に麻痺していただけたら(笑)。劇場に足を運んでくださる皆さんには、時に笑いながら、時にうるっとしながら、生のお芝居を思う存分に感じていただきたいです。



ーー 最後に、意気込みをお願いします。


自分にとって“舞台”というのは、ホームだと思っています。この1年間、テレビや音楽の世界、様々な場所で経験したことがあります。そこで自分がつけた力はどれくらいのものなのかを、それは芝居のことだけではなく度胸だったりも、この舞台にどれだけ還元できるのかを目標にして、『カメレオンズ・リップ』に挑みたいと思います。


衣装協力 / 中綿シャツ ¥36,000、パンツ ¥33,000[共に、エドウィナホール]

外部リンク