■鋭い言葉の連続
▲優里「かごめ」Official Music Video
SNSを中心に次世代アーティストが増えている昨今。
そのなかでも路上ライブとSNSの両方で話題となったのが、シンガーソングライターの優里です。
路上ライブをメインに活動をしている彼が注目を集めたきっかけは、ひとつの偶然から始まります。
路上ライブでMY FIRST STORYの『花 -0714-』を歌っていたある日、メンバーの1人であるボーカルのHiroが偶然通りかかり、演奏に飛び入り参加。
その様子を収めた動画がSNSで拡散され話題となりました。
さらにはこの出会いをきっかけに、さいたまスーパーアリーナで行われたツアーファイナルで共演を果たします。
路上ライブでの夢のような偶然の出会いから、その後TikTokでの弾き語りカバーで人気急上昇となりました。
そんな彼が2019年2月にデジタルシングル『かごめ』を配信しました。
USENインディーズランキング週間1位を獲得し、YouTubeの再生回数は100万回を超えています。
鋭い言葉が連続する『かごめ』には、一体どのような意味が込められているのでしょうか。
かごめ 歌詞 「優里」
思わずドキリとした方も多いのではないでしょうか。
人身事故によるダイヤの乱れは珍しいことではありません。
おそらく多くの人が「またか」と思い、なかには「人身事故のせいで遅れた」と舌打ちをする人もいるでしょう。
「人の死への無関心さ」がストレートな言葉で描かれています。
しかし舌打ちをしていた「他人の死」が一変し「身近な人の死」であったことを知ります。
■大事なのは自分という皮肉
かごめ 歌詞 「優里」
他人に無関心な人々の様子が描かれています。
自分の大切な人だけ守れば他人はどうでもいい、という現代を痛烈に批判しているかのようです。
MVでも道端に倒れる男性を気にもとめず、人々が通り過ぎる内容になっています。
かごめ 歌詞 「優里」
「貴方」が死んでも悲しむことしか出来ません。
「貴方」から出ていたかもしれないSOSに気づけなかった自分や助けることが出来なかった自分。
何も出来なかった「自分」を責めてしまう、もどかしさや自責の念が表れているようです。
■「後ろの正面だあれ」は誰?
「かごめ かごめ」は歌詞に2度登場し、曲のタイトルにもなっています。
目隠しをした鬼の周りを輪になって囲み、歌の終わる頃に鬼の真後ろにいる子を当てる遊びです。小さい頃に遊んだという方も多いのではないでしょうか。
この「かごめ かごめ」は歌詞のなかで、自分を責めているような場面で登場します。
かごめ 歌詞 「優里」
かごめ 歌詞 「優里」
「後ろの正面だあれ」は自分の真後ろにいるため、その姿を見ることはできません。
ここで「僕」の心情をみてみましょう。
どんなに鏡を殴っても死んだ貴方の痛みには足りず、黄色い線の外側でどれだけ懺悔をしても心が黒く澱んだ気分でしょう。
そんな苦しさや悲しさに、もがきながら「僕」はもしかしたら死を考えているのかもしれません。
このことから「僕」の後ろにいる姿の見えないものは「死」を意味しているとも考えられますね。
■実は希望を歌っていた
かごめ 歌詞 「優里」
他人に無関心な世の中で、どうせ自分には見向きもしないからと投げやりな感情が剥き出しになっています。
しかし意外にも続く言葉は「俺は俺らしく生きてやろう」という前向きな言葉です。
衝撃的な言葉が続いていましたが、この部分で一気に光が差し込みます。
他人に無関心で自分の声が届かない世の中で、それでも生きたいと思わせる「希望」の歌なのではないでしょうか。
「後ろの正面」にいる誰かを「死」と考えたとき、まとわりつく「死」を「希望」に変えて生きていく決意の現れと言えるかもしれません。
上っ面だけではない心の叫びを言葉にしているからこそ、わたしたちの心に響きます。
『かごめ』は悩んでいる人や辛い思いをしている人を救う、救世主のような曲かもしれませんね。
TEXT サトイ モノコ