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「媚びない、錆びない。」女優・真木よう子が大人論を語ったら、その奥深さにぐっときた!

2019年2月2日 05:05 東京カレンダー

“魅力的”といわれる大人の女性たちは、いかにして32歳を迎え、通過していったのか。

女優として、そしてひとりの女として多くの経験を積んできた真木よう子が、自身の32歳を振り返りつつ、赤裸々な“大人論”を語ってくれた。


自由奔放でクール、飾らない、意志が強くて、言いたいことははっきりと言う、美しい、そしてどこかミステリアス……

真木よう子、と聞くと頭に思い浮かぶイメージはこのようなものだろうか。それはどれも、男性に限らず女性にとっても、魅力的なものだ。

それは彼女が演じる役柄ゆえなのか、それとも彼女がこれまで積み重ねてきた、波乱万丈な人生から滲み出てくるものなのか。

現在、36歳。ひとりの大人の女として、ひと通り経験した〝今〞の彼女だから語れる大人像に、迫ってみた。


「笑顔でいても、クールな顔を切り取られることが多いんです」
「若かりし頃は、30代っていうとひとりでバーに行ってシャンパンをいただくような、そういう格好いい女性を思い描いていた気がする。それか、母親として家庭に入っているか」

自身の20代を振り返って、当時イメージしていた大人の女性像を、淡々と語りだしてくれた真木さん。しかし直後に、「実際は反面教師にしていましたけどね」とニヤリと笑う。

「当時、たまにバーで年上の女優さん方と一緒になることとかがあって、『目が覚めたら車の下だった』とか『駐車場で寝てた』とか、20代の頃にそういうエピソードをたくさん聞いて、自分はそうはならないようにしようって思っていました(笑)。酒豪が多いんで、この世界は。楽しい人たちばかりでしたね」

ちょっと皮肉めいたことを言いつつも、その年上の女性たちは真木さんの瞳には、とても魅力的に映ったのだろうと感じる。

「30代でも年齢を感じさせない、よくいえば20代に見える無邪気さがあって、年下の私にもフレンドリーに接してくれるような、可愛らしい方たちばかりで、大人の品格を持ちつつもチャーミングな部分も残っている、素敵な女性が多かったですね」

当時を思い出しながらくしゃっと笑う真木さんを見て、彼女もまた大人のチャーミングさを持ち合わせた女性になっているのだと気付く。

憧れる大人の女性の輪郭がぼんやりと見え始めた20代後半を経て、30代に突入すると、遊び方も徐々に変わっていった。


「30前後は一番遊んでいましたね。ちょうど32歳くらいの頃に、秘密にしておきたい隠れ家のようなお店を知って、ひとりでも行くようになりました。周りにグルメな方も多くて、美味しいお店にたくさん連れてってもらってはそこでまた繋がりができての繰り返しで人脈も広がりました」

ドラマや映画の俳優チームで食事に行くときの店選びは、ほとんど真木さんが担当していたのだとか。

「三宿も行くし中目黒に西麻布に、駒沢も行くし……エリアも店のレパートリーも、おのずと豊富になっていくのが大人なんでしょうか」

そんな側面でいえば、真木さんが大人になって変わったことが、またひとつあるようだ。

「歳を重ねて店のレパートリーは増えつつも、反比例して、最近は以前ほど外へ繰り出さなくなりました。飲みに行く店だって、もはやウーロンハイがあればどこでもいい(笑)。

遊び尽くすとそうなりません?『東京カレンダー』に載っているようなラグジュアリーなお店も制覇したけど、結局は赤提灯が一番落ち着く(笑)。こういうのもきっと、大人になったってことなんでしょう?」


今回のテーマでは、32歳を大人としてのひとつの分岐点と掲げているが、真木よう子なりの32歳は、「教わることが楽しくなる時期」だと話してくれた。

「20代の時より年上と話も合うようになってくるし、徐々に大人の階段をのぼるというか、いろんな場所へ連れてってもらえるようになる年代なのかも。また、それを楽しめる年。

年上と付き合うと、仕事の捉え方も変わってきますよね。先輩の俳優さんにお仕事の相談をしたときに、ぽんっと言われた言葉にハッとさせられたりすることもよくありました」

大人への道が開けていくと同時に、仕事や人生の正解を探し求めて、もがいていたのもこの頃だった。

「実は、プレッシャーに弱かったんです、私。与えられた仕事を最後までやり遂げられるか、周りの期待を裏切らずにちゃんと応えられるか、とかを執拗に考えてしまう時期だった。今はだいぶ変わりましたよ。子どもができてからかな、もう無駄なことは考えなくなったのは」

女、妻、母。若くして三役を担った彼女だから、言えることがあった。


「まだ分からない未来を考える時間なんて、もったいない」
結婚、出産、離婚を経験し、妻、母、女の三役も担った。人生の酸いも甘いも知る真木よう子だが、今は「娘が笑って幸せでいることが一番の幸せ」と柔和な表情で話す。

「子どもは本当に宝物。娘を産んだとき、このために私、頑張って生きてきたんだなって思いました。自分の命より大事な命がそばにあるって、ものすごく大きいこと」

その存在は、母としてはもちろん、ひとりの人間として、そして女としての生き方にも大きな影響を与えた。

「自分のことばっかり考えていられませんから。未来や過去のことについて悩まなくなりました。マイナスなことを考えること自体が時間の無駄、と思えるようになったんです」

結婚と離婚を経験したことで、恋愛観も変わってきたという。

「結婚っていう契約はもうしなくていいかな。するなら事実婚でいい。契約の意味がないと思うんです」

と、バッサリ。そんな真木さんが、ママ友との間で話題なのが〝卒婚〞。

「要は離婚のことなんですけど結婚を卒業するから〝卒婚〞。卒婚する人、籍を入れずにパートナーといる人、シングルママだって多いし、ライフスタイルが多様化していますよね」


とはいえ、「好きな人と結婚するっていうことは素敵なこと」とも話す。

「継続は力なりって言葉があるように、それをクリアできる人間はほんとひと握り。でもダメならダメで、少し柔軟に考えてみてもいいと思うんです。自分の選んだ道こそ正解って」

固定観念に捉われず、周りに媚びず、自分を強く持っている真木さんは恰好いい。その自信は、周りよりもスピーディに経験値を延ばし、36歳にして、女としての三役すべてを担ったからなのだろうか。

「いや、自信を持てるようにと、心がけて生きるんです。自ら意識していないと自信はつかない。自分を信じられなければ他人も信じてあげられないし、何を言っても薄っぺらくなっちゃいますから。

私の尊敬する大人の女性は、みんな強い自尊心を持っていて、でも肩の力は抜けている。大人としてやるべきことをやったうえで、『まぁどうにかなるか』と思えるようになるんです。

それって、もちろん、これまでの経験があったから。なんとかなってきたんだから、なんとかなるでしょうって。過去の積み重ね、こそがそうさせる」

そういうことか、と腑に落ちる。〝経験〞こそ、大人の魅力を形成するのだ。彼女の言葉は、大人にならなくてはと足掻きながら32歳を迎える者たちの肩の荷を、きっと軽くしてくれるに違いない。


■プロフィール
真木よう子 千葉県出身。1982年10月15日生まれ。2001年に映画出演を果たしデビュー。2006年の映画『ベロニカは死ぬことにした』で初めて主演を務める。2013年映画『さよなら渓谷』で日本アカデミー主演女優賞、『そして父になる』で助演女優賞のダブル受賞を果たす。主演を務めるドラマ『よつば銀行原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~』が1/21(月)スタート。

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「君に触れなくなった理由は…」若い女に惚れ込んだ夫が打ち明けた、むちゃくちゃすぎる言い分

2021年5月12日 05:03 東京カレンダー

結婚しても子どもを持たないという選択は、もう特別なものでもない。

“2人”が、家族のかたち。

明るい未来を信じて、そう決断する夫婦も多い。

それでも…悪気のないプレッシャーや、風当たりの強さに、気持ちがかき乱されることがある。

これは、3人の女が「夫婦、2人で生きていく」と決めるまでの、

選択と、葛藤と、幸せの物語。

◆これまでのあらすじ

夫の浮気の証拠をおさえるために、興信所に調査を依頼した真琴。すぐに手に入った証拠写真を自宅に残し、真琴は荷物をまとめて実家へ帰った。そこについに夫が訪ねて来て…

▶前回:「私、お母さんに孫を見せられない」母に本音を語り涙する35歳女の絶望


“夫婦間のプライバシー”に関する答えはない。

お互い一切の交友関係に口出ししない夫婦もいれば、スマホを見ることさえ許しあっている夫婦もいる。

正解がない以上、それぞれの夫婦2人が、お互いの意見をぶつけ合い、話し合い、すり合わせて同じ価値観を見出すほかないのだ。

「俺は…」

浮気の証拠写真を突きつけられた樹は厳しい顔つきで言った。

「お互いのプライバシーを尊重するって意味を履き違えていたよ」

その言葉を聞いて、真琴はぐったりとうなだれた。

「悪かった、真琴。申し訳ない。許してくれとは言わないよ。ただ俺がバカだった」

樹は視線を落とし、頭を下げた。

「違う。まだ樹は嘘をついてる」

真琴の声は、震えていた。

「嘘だなんて…。もう、あの女性との関係も隠すつもりもないし、縁も切る。正直に全部話してるつもりだ」

「違う。履き違えてたなんて言うの、卑怯よ。自分が好き勝手に外で恋愛するために、“お互いを尊重する”だなんて、意識高めな大義名分を掲げてただけだよね。この期に及んで、じゃあ仕方ないよって許してもらいたいだけでしょ」

真琴は、しっかりと樹の目を見据えて、言い切った。

「あなたが自分の罪を認めないなら、そしてこれからも変わらないなら、離婚するしかないわ」

樹のひどすぎる言い分とは?

真琴は、準備していた離婚届を差し出した。再構築の願いを込めて、最後の決意だった。

樹は面食らった様子でうなだれたまま、一言も発することはなかった。

「もう、なにも弁解しない。これだけはわかってくれ。真琴のことを、愛しているんだ」

「それなのに、恋人は外に作るの?愛しているのに、指一本触れないの?どれだけ惨めな思いをさせてきたかわかる?」

とめどない思いが、ようやく言葉になって溢れ出す。余裕のある妻として振る舞いたい。みっともない姿を見せたくない。幻滅されたくない。そんな風に自分の心に蓋をし続けていた。

「嘘をついていたのは私も同じだから、謝るわ。私は、同志なんかじゃなくていい。妻として、女として愛されたい。ずっとそう思っていたわ。それが無理なら、離婚しましょう。仕事上では同志でいられると思う。だから同志なのか夫婦なのか、どちらが良いか、あなたの答えを聞かせてほしい」

言葉は重く、悲痛に満ちたものだ。ただ、真琴は心はすっきりと浄化されていくことを感じる。

35歳。家族構成、夫婦2人。今が、決断のときだった。


その後、しばし別居生活は続いた。とはいえもちろん仕事では毎日のように顔を合わせる中で、徐々に心の距離感が縮まっていくのを感じていた。

今日は、間もなく2人目の子が生まれる家族の、大詰めの打ち合わせだ。

「お2人の意見はまとまりましたか?」

樹がそう問いかけると、夫婦は目を合わせて苦笑いをした。

「結局平行線でした。なので…樹さんと真琴さんご夫妻のご意見を参考にさせてください!」

そう夫が言うと、妻が頷きながら続ける。

「建築家夫婦の理想の一軒家って気になります!」

これには思わず樹と真琴も目を合わせてしまう。最初に口を開いたのは、樹だった。

「そうですね。僕は元々1人の空間は大事って言いたくなるタイプの建築家だったんですが…最近はそれもちょっと変わってきまして…」

そこまで言うと、樹はなぜか少し照れくさそうにした。依頼人夫婦も不思議そうに次の言葉を待つ。

「せっかく縁あって家族になったわけですから、ちょっと気乗りしないときでも、1人になりたい日でも、ちょっと強引にでもお互いの存在が感じられるような、そんな空間づくりが理想だなって…だって、家族ですし…」

樹が話せば話すほど、きょとんとした表情の依頼人夫婦だったが、真琴は思わず微笑んでしまう。

「あ…なんか、すみません」

空気を察した樹が慌てて取り繕うが、夫婦は目を合わせて満足そうに頷いた。今度は妻の方が口を開く。

「私たちも、そんな家造りが理想です。喧嘩もするでしょうし、ぎくしゃくする日もあるでしょうけど、やっぱりそれでもお互いの存在を近くで感じていたいですよ。家族ですから」

樹と真琴も大きく頷き、4人は図面に視線を落とした。

帰り道、コインパーキングへ向かう樹に向かって、真琴は言った。

「じゃあ、私、歩いて駅まで行くから」

樹は、穏やかな表情で真琴を引き止めた。

「平塚から都内まで毎日通うの辛いだろ。帰っておいで。…いや、帰ってきてください。話し合おう。これまでも、これからもずっと家族なんだから」

真琴は、とても素直に、その気持ちを受け取ろうと思えた。

「まずは浮気についての謝罪から。話し合いはその後よ」

いよいよ再構築?それとも?

そんなことを言いつつも、樹が差し伸べた手を真琴は取っていた。触れ合う指と指。この温もりすらもう何年も感じていなかったのだ。懐かしくて愛おしくて、胸の奥がジンと熱くなった。

車に乗り込むなり、樹の謝罪の嵐だった。あんなにかっこつけて生きていたくせに、情けない姿だった。

若い女に惚れ込んでしまったことを恥じ、不貞行為を素直に詫び、縁を切ったことを主張し、「君が大切だ」と繰り返した。

悲惨で情けない姿だったが、ようやく人間らしいところを見ることができた気がして、真琴はどこか安心していた。

「一つだけ聞きたいんだけど…。私を抱かなくなったことと、その彼女のこと、関係はある?」

「ないとは言えないよ。不倫している罪悪感で、真琴に触れるのが怖くなったんだ」

あまりにもむちゃくちゃな言い分をもっともらしく言う姿に、真琴は情けなくなって笑ってしまった。

「なんで笑ってるんだよ」

「笑うしかないわよ。情けなくて」

樹は、視線をまっすぐ前に向けて静かに言った。

「…ごめん。俺とやり直してください。これからのことも考えよう。子どものこととかも…」

「まずは、夫婦2人。向き合おう。それが私の望むことだよ。子作りや子育ては、私たちがきちんと夫婦として向き合えてから考えること。きちんと愛し合えるなら、私は家族構成、夫婦2人もいいなって思ってるよ」

樹は真剣な表情で頷き、そのまま心地よい沈黙が続いた。

真琴は、窓の外に目をやりながら、ぽつりと呟いた。

「樹。少し急げる?」

「え?なんで?」

「今日、ピラティスのスタジオ予約してるの」

「ああ。…ってことは、最初から今日は家に戻るつもりだったんだな」

真琴はいたずらっぽい微笑みを見せ、樹もつられて少し笑った。

少しずつ、一歩一歩、本当の夫婦として手を取って歩き出せる。真琴は、流れる景色をぼんやりと見つめながら静かに決意をする。


「あれ?真琴ちゃん、久しぶりだね。仕事忙しかったの?」

スタジオに入るなり声をかけてきたのは、美容皮膚科医の藍子だ。43歳の、いわゆる美魔女。“自分の顔は実験台”と豪語する藍子は、サバサバした性格で人当たりもよく、スタジオの人気者だ。

「実はしばらく実家に帰ってたんです。夫と色々あって」

思わず真琴も、ついつい本当のことを話してしまう。

「あらら。色々あるわよね。すっごく聞きたいけど、聞かないでおく」

藍子の明るい調子に、真琴も救われる。

「藍子さんのところは、本当にご主人と仲良しで羨ましいですよ」

「仲良しっていうか、すでに老夫婦みたいな感じよ。子どももいないのに、子育て終わっちゃったみたいな状態。ま、余生だと思って仲良くやるわ」

藍子はからっと明るい調子で言った。

―そう。今日から夫婦2人きりの余生の、はじまりはじまり。

そう念じる藍子の胸が、少しだけぎゅっと苦しくなる。

夫婦2人で生きる。その覚悟をするのは、一体何度目のことだろう。


▶前回:「私、お母さんに孫を見せられない」母に本音を語り涙する35歳女の絶望

▶NEXT:5月19日 水曜更新予定
藍子が選んだ夫婦2人の物語とは?

外部リンク

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彼氏に内緒で、夜な夜な男のもとに通う女。その場で“ある強引な誘い”を受けて…?

2021年5月12日 05:02 東京カレンダー

文化・流行の発信基地であり、日々刻々と変化し続ける渋谷。

渋谷系の隆盛から、ITバブル。さらに再開発を経て現在の姿へ…。

「時代を映す鏡」とも呼ばれるスクランブル交差点には、今日も多くの男女が行き交っている。

これは、変貌し続ける街で生きる“変わらない男と女”の物語だ。

◆これまでのあらすじ

14歳の頃に渋谷で出会い、その後付き合い始めた梨奈と恭一。広告代理店に就職し、カメラマンをしている彼。一方の梨奈は就職に失敗し、フリーターになっていた。

そんななか、梨奈は渋谷のIT社長たちと遊ぶことを覚えてしまい…?

▶前回:「暗がりのダイニングバーで、いきなり…!?」美女が恋人に内緒でハマった、怪しげなパーティとは


2006年7月

「そろそろ本気ださないと…って思い始めて、3年かあ」

恭一と同棲している富ヶ谷の部屋でひとり、私はつぶやいた。あれから結局、まだダラダラとフリーターをやっている。

とりあえず何かしようと、陶芸教室やイラストスクールに通ってみたりしたものの、ちっとも続かなかった。

まだ私が何者なのかわからない。つまり、絶賛自分探し中なのだ。

恭一とは同棲継続中。でも、社長さん達ともいまだに遊んでいる。顔ぶれは変わって、規模は小さくなったけれど。港区方面に遊び場が変わったり、警察のお世話になる人もいたりしたから。

…盛者必衰、時代は変わるね。

渋谷だって、パンテオンがあった東急文化会館はとっくになくなって再開発中だし、新しい地下鉄も渋谷に通る予定らしい。

だけど北見社長は、会社も急成長させていて絶好調なのだ。どういうわけか、私が彼の中でいちばんのお気に入りになっている。

ちなみにむつみはターゲットを別の経営者に変えたから、友人関係は大丈夫だ。…元々あってないようなもんだけどね。

恭一はというと、勤めていた広告代理店を3年で辞めた。だから私、彼といるのが少々不安なのだ。…いろいろな意味で。

恭一が代理店をやめたワケ

Age26. 若いのは今のうち。

恭一は、報道写真に進みたいらしい。

広告代理店は、やりたいことの対極にあるそうで。若いのに企画を任されたり、ハチ公口の大きな看板広告を撮ったりしたのに勿体ない。

彼が言うに辞めた一番の理由は「結局、親のコネで入った会社だから」だそうだ。

― よく言うよ。今も会社のときのつながりで、映画のスチールとか宣材写真の仕事もらってるくせに。

コネは嫌って言いながら、コネが元の人脈を切らないのって、矛盾していると思う。私なんかコネもなんにもないから、就活失敗していまだにフリーターなのに。

「報道に行くんじゃなかったの?結局コネでしか生きられないんじゃん」

ムカついてこの前直接本人に伝えたら、大喧嘩になってしまった。図星なのかもしれない。

さらに売り言葉に買い言葉で、社長さんと遊んでいることを責められた。これは半ばバイトみたいなものなのに。…彼は、時給生活の厳しさを知らないのだ。

そんな感じで最近、恭一とは口論ばかり。だからこの前、勢いでmixiに愚痴ってしまった。彼の足跡がついていたから見ていると思うけど、何も言ってこない。

私たち、別々の道に進む時期なのだろうか。なんだか彼を見ていると、イライラする。

これって、自分に対してのイライラなのだろうか?恭一は自分の意志で先に進んでいるのに、私はなんにもなくて、フラフラしているから。

それとも経営者と日常的に会ってるせいで、彼が小さく見えるから?

いっそ彼のお嫁さんになるって割り切って、お料理とか花嫁修業を頑張る道もあるけれど、私にはできなさそうだ。…常に恭一と同じ目線でいたいから。

彼とは好きなものや考えることが一緒で、まるで自分の分身みたいだと感じる。

よく見る映画や聞く音楽、物の見方や感じ方。彼には共感しかなかった。中学時代に初対面で話が弾んだのも、そういう話題がいっぱいあったからだ。

でも今は、お互いの考えが磁石のように反発し合っている。

そんなわけで、しばらく口をきいていなかったら、恭一が珍しくディナーに誘ってくれた。彼も今の関係に、危機感をおぼえているのかもしれない。


母校・青学の近くにある老舗フレンチ『ラ・ブランシュ』。

在学中は手が届かないお店だったのに、恋人に連れて行ってもらえるようになるなんて。私も大人になったよなあ、と思う。

一皿一皿、こだわりを感じさせる丁寧な味わい。社長さんたちに連れて行ってもらったどのお店よりも、美味しく感じた。

― やっぱり、好きな人と一緒だから?

そんなことをしみじみ思いながら、食後のエスプレッソを口にしていたとき。恭一は目を輝かせ、私にこう告げてきたのだ。

「実は…。宇佐美康之さんの事務所に入ることになったんだ」

「えっ。宇佐美さんって、あの?」

唖然とした。宇佐美康之は私も写真集を持っているほどのフォトグラファー。有名な雑誌やCDのジャケットを、いくつも手掛けている時代のトップランナーなのだ。

「うそ、なんで?」

なぜか、おめでとうという言葉が出てこなかった。

そして、梨奈が言い放ってしまった言葉とは…?

「梨奈が大騒ぎするから言えなかったけど、実は、昔から父親を通じて知り合いなんだ。会社辞めたのを言ったら、誘われて」

その言葉に、カチンと来てしまった自分がいた。

― 報道に行くんじゃないの?それに「大騒ぎするから言わなかった」って、バカにされてる感じ。

「ふーん。さすが、恵まれているよね」

よせばいいのに皮肉が出てしまう。恭一は、何かをこらえているようだ。

何となくわかるけど、指摘すると喧嘩になるから言わない。

その直後。ちょうど北見さんからお誘いのメッセージが届いた。…断る理由はなかった。



その日のラウンジは、深夜番組でよく見る芸人さんも来ていた。経営者の誰かが知り合いらしい。

私はむしゃくしゃしていたこともあって、芸人さんに執拗に絡んでいく。すると彼も面白がってくれて、その場が盛り上がった。私のテンションも最高潮で、お酒も進む。

「やっぱ、梨奈ちゃんがいると場が盛り上がるね。呼んでよかった」

ニッコリ笑うと、北見さんは私の肩を抱いた。いい雰囲気になると今夜はヤバそうなので、その手をやんわりと払う。

「コミュ力には自信があるの」

「言うねえ。うちの会社に欲しいくらいだよ。まだショップ店員なの?」

頷くと、北見さんがハッとした表情を見せた。次の瞬間、酔いがさめたような目の色に変わっている。

「実はね、前から梨奈ちゃんのmixi面白いと思ってたんだ。事業拡大して、webマガジンに力を入れようと思っているところでさ。文章上手いから、編集やライターで参加する気ない?」

「え、やるやる!」

容姿と愛嬌以外を褒められることなんてめったにない。考えるより先に、言葉が出ていた。

「じゃあ、前向きに考えておいてよ。本気だから」

北見さんは笑顔で手を差し伸べる。私は気持ち半分でその手を握り返した。




― 北見さんってやっぱりすごい人だったんだ…。

数日後。初めて昼間から北見さんに呼び出された私は、その会社の規模に度肝を抜かれた。

渋谷で1、2を争う大きなオフィスビルの中にある会社。人工芝が敷き詰められた公園のような休憩ゾーンや、カフェのようなワーキングスペースがある、開放的な雰囲気だ。

そこで何百人もの若い社員たちが働いている。

さっそく、宮益坂の『ビストロ・コンコンブル』で、他の社員と顔合わせついでのランチをする。社長である北見さんの強い推薦もあり、すんなり入社が決まった。

怒涛の展開だったが、大きな人生の歯車が動き出している予感がする。そのままバイトの退職を申し出てから、自宅へと帰った。

「ねえねえ恭一、実はね…!」

興奮した私は、疲れた顔で夜遅く帰宅した彼に、就職したことをすぐ報告した。

「え、なんで?」

おめでとうより先に返ってきた言葉にイラつきながらも、私は事の経緯を報告する。すると恭一は、静かに返答した。

「ああ、結局君もコネなんだ。お互いさまだね」

好戦的なその言葉。

それに言い返して自分の主張を理解してもらおうとする気力が、不思議と出なかった。

― あ。もう、ダメだ。

これまでは、どこかで彼に甘えていた。だけど今は、自分で前に進める自信がある。だから決心できたのかもしれない。

それから数日経って、私は“最後の言葉”を口に出した。すると「自分もそう思う」と、すんなり受け入れてくれたのだ。

― やっぱり恭一とは気が合うんだな。

一抹の寂しさはあったけど、部屋を出るとき、私たちは何かから解放されたようにお互い微笑んでいた。

いい別れって本当にあるんだなって、心から思った。


▶前回:「暗がりのダイニングバーで、いきなり…!?」美女が恋人に内緒でハマった、怪しげなパーティとは

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就職し、恭一と別れた3年後の梨奈は…?

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日常のお家ディナーを、艶やかな夜に! 大人がチョイスすべき“ちょっといい”お酒とは?

2021年5月12日 05:01 東京カレンダー

今だからこそ、おうちでの食事を贅沢なひと時に格上げしようとする人が増えている。

食事はもちろんだが、合わせるお酒、キッチンに高揚感をもたらすギアなど、気分が高まるアイテムは必須。

そこで今回は、お酒をピックアップし、艶やかな夜を約束してくれるだろうおすすめをご紹介。

“大人のこだわり”を持てば、きっとあなたのおうち時間が、より豊かな日常へと変わる!



手前から時計回りに、琥珀色のスペシャルハーブエール「ネブラ」、低アルコールだがコクを持つセッションホワイトエール「トレ・ピュウ・ドゥエ」。通常の4倍のホップを使ったベルジャンペールエール「オッパーレ」。全て750ml 2,420円〈32 Via dei Birrai/selesta TEL:03-3382-3666〉

洒落た大人のビアタイムには「イタリア」という選択肢

家で楽しむアルコールの中で、最も手軽でポピュラーなビール。

馴染み深くどんな料理にも合う万能選手だからこそ、新たな味を開拓すべく、イタリアのビールを試してみるのはどうだろう。

実は、南欧であるイタリアには暖かい土地らしい爽快感のあるビールが揃っており、それは実に日本人好み。ワインの国のイメージが強いが、近年は世界的に注目されるクラフトビール大国でもある。

ブルワリーの数は800を超えるといわれ、750mlのフルボトルをワイングラスで楽しむスタイルで注目を浴びる「32(トレンタ デュエ)Via dei Birrai」など、個性が光るビールも。

さらに、ポップで洒落たラベルは、テーブルに並べるだけで圧倒的に気分が盛り上がる。

彩り豊かな料理をテーブルに並べてイタリアンビールで乾杯すれば、かつてない陽気なテンションになることは請け合いだ。


左.小さなブルワリーで無着色・無保存料・無濾過にこだわり醸造する、「マイエッラビール ノヴィ・ルーナ」。330ml 750円〈アントビー TEL:0570-000-725〉

右.イタリアで最初のクラフトビール。日本でもレストランなどでなじみがある、「バラデンノラ」。330ml オープン価格〈三井食品 TEL:03-6700-7100〉


約60年前にローマで誕生して以来、イタリアのみならず世界で愛され続けているイタリアが誇るビール、「ペローニ ナストロアズーロ」。330ml オープン価格〈アサヒビール お客様相談室 TEL:0120-011-121〉

日常を最高に艶やかにしてくれる、至極のスパークリングワインとは?

特別な日じゃなくても、場を艶やかにする泡がある

世界的に評価される日本人醸造家沖田晃司氏によるクレマンは、シルキーでエレガントなブルゴーニュらしい美しさと、エキゾチックな雰囲気を併せ持つ。ルー・デュモン クレマン・ド・ブルゴーニュ ブリュット 3,300円〈ヌーヴェル・セレクション TEL:03-5957-1955〉

自宅での食事も増え、ワインをボトルで買うことも日常になってきた。大人のカップルなら、何げない日にこそ、スパークリングワインで乾杯するのも洒脱である。

イタリアやスペインの泡ももちろんいいが、さり気なく特別感を演出するなら「クレマン」が理想的。

シャンパンと同じ製法を用いたスパークリングワインの中でも、フランスで造られたもので、手頃でありながらもシャンパンのようにエレガント。

それもそのはず、違いは「シャンパーニュ地方でない」というだけなのだ。

オススメは「クレマン・ド・ブルゴーニュ」。シャンパーニュ地方のすぐお隣、ワインの名産地のブルゴーニュ地方で造られるゆえ、そのクオリティはお墨付き。

その中でも世界が認める日本人醸造家が造る「ルー・デュモン」は、注目の一本だ。

高級店のテイクアウトとフランスの泡、なんて組み合わせは、日常を最高に艶やかにしてくれる。


価格で選ぶなら、おすすめは「クレマン・ド・ロワール」。

1,000円台からの手頃なラインナップがある、ロワール地方のクレマン。きめ細かい泡の優しい口当たりが魅力の一本。

メゾンP&F クレマンドロワールブリュット ヴィニョーブル・フェレー 1,892円〈トスカニー TEL:03-6435-1750〉


オーガニックが好みなら、おすすめは「クレマン・ダルザス」。

無農薬栽培のブドウを使った高品質な味わい。ビオディナミ、ビオロジックという自然派ワインの手法を、いずれも取り入れる。

クレマン・ダルザス アルベール マン エクストラ・ブリュット 3,740円〈モトックス TEL:0120-344101〉



いいお酒があるだけで、自然と気分が上がる。

何気ない日のお家ディナーが、華やかでちょっと特別な1日になるはずだ!

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「彼のためなら何でも…」上司に心酔する女が引き受けてしまった、禁断の仕事

2021年5月11日 05:03 東京カレンダー

東京の平凡な女は、夢見ている。

誰かが、自分の隠された才能を見抜き、抜擢してくれる。

誰かが、自分の価値に気がついて、贅沢をさせてくれる。

でも考えてみよう。

どうして男は、あえて「彼女」を選んだのだろう?

やがて男の闇に、女の人生はじわじわと侵食されていく。

欲にまみれた男の闇に、ご用心。

◆これまでのあらすじ

久しぶりに再会した高校時代の友人・ひかり。黒川の名前を聞いた途端、様子がおかしくなり、秋帆は怪しむ…。

▶前回:未経験・スキルなしで、月給60万を得た女。その裏に隠された、男との蜜月


「あの…。黒川社長は、“友兼ひかりさん”って、ご存知ですか?」

スケジュール確認を終えた秋帆は、コーヒーを差し出しながらおずおずと尋ねた。

昨晩。

高校時代の友人・ひかりは、黒川の名前を聞いた途端、様子がおかしくなった。異様な警戒心を見せ、「何かされてない?」と、訝しげに聞いてきたのだ。

最後までその理由を教えてはくれなかったが、秋帆の心にはどうにも消化しきれないモヤモヤした気持ちが残った。

書類を眺めていた黒川が、パッと顔を上げる。

「トモカネヒカリ…?」

沈黙が流れ、秋帆に緊張が走る。やはり余計なことを聞いてしまったか。

黒川はしばらく首を傾げていたが、「さあ、知らないね」と、書類に目を戻した。

「そのトモカネさんが、どうした?」

「高校時代の友人なのですが、黒川社長のことを知っていたみたいで…。もしかしたらお知り合いなのかなと」

すると黒川が、「俺がひどいことしちゃった相手なのかな」と、明るく笑った。

― ひどいこと…?

“何かされてない?”という、ひかりの言葉が、瞬間的に脳裏をよぎった。

黒川の名前を聞いた途端に様子がおかしくなった友人。だが彼女は…?

初めての感覚

昨晩のこと。黒川の名前を聞いたひかりは、異様な警戒心を見せた。

「…大丈夫なの?何かされたりしてない?」

そんな訳の分からない質問に、秋帆は苛立った。言いたいことがあるなら言ってくれれば良い。

「何か知ってるなら教えてよ」

つい語気を強めて言い返すと、ひかりは、ワインを口に含みながら目を逸らした。

「…まあ、秋帆が良いなら。私が口を出す話じゃないか。ごめんごめん」

ゴクリ。

ワインを飲み込んだ音が、大きく響く。秋帆は、ひかりが喉まで出かけた言葉も一緒に飲み込んだと、直感的に思った。

「ごめん、ごめん。気にしないで。ねえ、私デザート食べたくなっちゃった。頼んでも良い?」

その後ひかりは、ビジネスや黒川の話には一切触れず、恋愛話や高校時代の思い出話ばかりを続けた。

その変わりように、秋帆の心は疑念を抱く。だが、ここまであからさまな態度だと、何かタブーに触れるような、そんな気もして、話を蒸し返す気にもなれない。

なんとなくギクシャクした空気が漂い始めたところで、ウェイターから「そろそろ閉店の…」と声を掛けられ、その場は終了した。

「じゃあ、私はここで。またね」

秋帆は、タクシーを捕まえようと大通りへ歩き始める。するとひかりが、「ねえ」と、後ろから呼び止めた。

「さっきは変なこと言ってごめん。…でも、本当に気をつけてね。それじゃ」

― 気をつける…?

夜ベッドに入っても、秋帆の頭から、ひかりの言葉が離れることはなかったのだ。




そんな昨夜の、ひかりとのやりとりが脳裏に浮かぶ。やはり思い切って尋ねよう。そうしないと気になって仕方がなかった。

「ひどいこと、ですか…?」

秋帆は、それがどんなことなのか想像がつかないまま、黒川に尋ねた。

すると彼が、「そんな深刻な顔しないでくれよ」と、大笑いした。

「その人、僕が面接で落としたのかも。それか、出世が懸かったコンペで僕に負けたとか。

不合格だったり、負けたり。理由はそれぞれだが、僕に対して恨みを持っている人は一定数いるはずだ」

秋帆は自分の就職活動時代をふと思い出す。一時期は、不合格だった会社の商品を二度と使うものかと、ひとり不買運動したこともあった。

ひかりもそんな気持ちだったのだろうか。

「だから、どんな理由かは分からないけど、僕はそのお友達にひどいことをしちゃったのかもな」

ハハハと笑った黒川は、席を立ちながら「そうそう」と、思い出したように話し始めた。

「明日、白田さんの歓迎会を準備したよ。社員とコミュニケーションをとる機会もなかなかなくて悪かったよ」

ようやく社員と仲良くなれるチャンスがやってきた。秋帆が喜んでいると、黒川は不意に近づいてきて、耳打ちをした。

「それで、ちょっとお願いがあるんだ」



昼休み。

秋帆は、最近仲良くなったwebデザイナーをランチに誘った。彼女はフリーランスとして働いているため社員ではないが、オフィスに頻繁に出入りしている。

社員はドライな人間が多いようで、業務に関わること以外は話さない。挨拶も雑談も最低限だ。

― せっかく一緒に働いている仲間だし仲良くなりたいのにな…。

秋帆は、そんな希薄な人間関係に寂しさを感じていた。そんな矢先、休憩スペースで話しかけてくれたのが、webデザイナーの彼女だった。

「あの…。黒川社長って、どんな人なんですか?実は昨日…」

秋帆は、昨晩ひかりに“気をつけなよ”と言われたことを打ち明ける。彼女なら、もしかしたら黒川のことを詳しく知っているかもしれないと、聞いてみることにしたのだ。

「気をつける、ねぇ。それだけだとなんとも言えないけど…」

「うーん」と、しばらく首を傾げていた彼女だが、突然「あっ」と、思いついたような表情を見せた。

彼女の口から告げられた、予想外のこととは…?ひかりの秘密が明かされる…?

秘書としての仕事

「嫉妬かも」

「嫉妬!?」

秋帆は予想外の答えに、素っ頓狂な声を上げてしまう。ひかりは誰もが名前を聞いたことがあるだろう大企業の勤め人だ。人数にして30人程度の会社の何がうらやましいというのだろうか。

― 絶対ないでしょ。

同意しかねるという顔を向けると、彼女はこう続けた。

「この会社、とにかく待遇が良いじゃない?広告業界じゃ有名な話よ。

今は、大企業と言っても、家賃補助もカットされて、賞与も減って大変みたいね。そのお友達、実はこの会社に転職考えてるとか?もしくは、過去にこの会社を受けてダメだったとか?」

その言葉に、秋帆は咄嗟に自宅マンションを思い出した。破格の給与をもらっている上に、社員寮まで貸与されている。

― ひかりが私を羨んでいる…?

高校時代、秋帆はひかりに負けてばかりだった。成績も運動神経も、男性からの人気もすべて。いつも敵わない存在だと思っていた。

そんな彼女に羨まれるなんて。秋帆の頬がフッと緩む。

― 黒川社長が言ってた通りなのかも。

最後まで理由を言わなかったのも合点がいく。ひかりは悔しかったのかもしれない。

秋帆は、黒川にプレゼントしてもらったワンピースを誇らしげに見つめた。




迎えた歓迎会。

手短に自己紹介を終えた秋帆は、早速社員のところに挨拶して回った。そして、さりげなく黒川への印象を聞きだして頭の中にインプットする。

「黒川さん? いい人だと思うよ。結果に厳しいけど、ちゃんと評価はしてくれるし」

「そうねぇ、色々なプロジェクト参加してきたけど。正直、仕事場でここまで自由にさせてくれるのは黒川さんくらい」

側から見れば、自分は新しい同僚に挨拶をして回り、これから自分が業務をサポートすることになる社長の人となりを聞いて回っているだけのように見えるだろう。

それはある意味正しかったが、秋帆の行動には別の側面があった。それは黒川からの“お願い”だ。

「上司が部下を評価するのはそれも仕事のうちだから当たり前なんだけど、一方通行はもう古いと僕は思ってる」

黒川の依頼は、“社員の自分に対する評価を調べてきて欲しい”というものだった。

「お互いに人間だし、会社だから一枚岩になるべき、とも思ってない。ただ、ウチで働いてる間はやり甲斐を持って仕事をして欲しいんだ。

足りない部分が僕にあるなら、それを知っておきたい」

秋帆は秘書を始めるにあたりいくつかの書籍を通読していた。その中には“社内の人間関係の把握は秘書にとって重要なステップアップ”と書いてあったのを思い出し、二つ返事で引き受けた。

黒川の真摯な態度に報いたいと、秋帆は心の底から思っていたのだ。



「どうだった?」

翌朝。

タクシーに乗り込んだ黒川は、開口一番に聞いてきた。秋帆は、一瞬、なんのことだろうと首を傾げる。

普段の黒川は、移動中は仕事をしていることが多い。だが、今日は様子が違った。

「歓迎会」

言葉も短く、どこか怒気があるようにも聞こえる。

そんなに急ぐことなのだろうか。そう思った秋帆だが、すぐに昨晩帰ってからまとめておいた資料を取り出し、読み上げた。

概ね、社長としての黒川の評価は上々だった。

“結果を出せば評価してくれるし、そのためには快く相談に乗ってくれる”、“全力で仕事に打ち込めるだけの環境を作ってくれていると思う”など。

秋帆が報告を読み上げながら黒川の顔を盗み見ていると、次第に顔が緩んでいくのが分かった。

安心したのだろうか、と秋帆が思っていると、黒川はある1人の社員の報告に眉根を潜めた。

「今の、もう1回。名前、なんて言った?」

「ええと、経営企画部の…」

秋帆は、慌てて資料に視線を戻して、コメントをもう一度読む。

「“最近のM&Aはじめ、黒川社長の経営手法に強引さを感じてしまう。事業内容に関係の薄い案件は控えるべきだと思う”とのことです」

すると黒川は、「ううむ」と低い声を出した後、秋帆から資料を奪い取るように掴みとり、眉をひそめて読み始めた。


▶前回:未経験・スキルなしで、月給60万を得た女。その裏に隠された、男との蜜月

▶︎Next:5月18日 火曜更新予定
翌日。秋帆が出社すると、社内は異様な雰囲気が漂っている。その訳とは…?

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cat_oa-rp53865_issue_6203ac51ae43 oa-rp53865_0_5d7921727387_金曜の夜。疎遠になっていた女から突然呼び出され…?そこで告げられた、驚きの一言 5d7921727387 5d7921727387 金曜の夜。疎遠になっていた女から突然呼び出され…?そこで告げられた、驚きの一言 oa-rp53865

金曜の夜。疎遠になっていた女から突然呼び出され…?そこで告げられた、驚きの一言

2021年5月11日 05:02 東京カレンダー

女といるのが向いていない、男たち。

傷つくことを恐れ、女性と真剣に向き合おうとしない。そして、趣味や生きがいを何よりも大切にしてしまう。

結果、彼女たちは愛想をつかして離れていってしまうのだ。

「恋愛なんて面倒だし、ひとりでいるのがラク。だからもう誰とも付き合わないし、結婚もしない」

そう言って“一生独身でいること”を選択した、ひとりの男がいた。

これは、女と生きることを諦めた橘 泰平(35)の物語だ。

◆これまでのあらすじ

麻里亜への“二度目の失恋”を経て「生涯、独身貴族として生きていく」と改めて誓った泰平。そんなことを考えていた頃、ある1本の電話がかかってきて…?

▶前回:「他の男と同時進行されていた。それなのに…」最低な元カノから届いた、ありえないメッセージ


ある金曜の夜。

自宅から参加していたオンラインミーティングが思いのほか長引き、もうすぐ19時をまわりそうだ。

麻里亜がいなくなってから最近はなんだか食欲もなく、シャワーを浴びて寝てしまおうかと思っていたとき。突然、電話が鳴った。

スマートフォンに表示されている『灯』という名前。…もはや懐かしいものにすら思える。

「…おう。どした?」

「泰平さん、久しぶり!…今、何してる?」

声を聞くのは、1ヶ月以上ぶりだった。相変わらず明るくてハキハキと響く声だ。

「え?風呂入ろうかと思ってたけど」

「じゃあちょうどいい!今からさ、代々木公園走ろうよ」

僕は「えぇ…」と返事を濁しながらも、その明るい声に塞いでいた気持ちがわずかに晴れるのを感じる。気づけば、どんな服装で行けばいいのかを考えていた。

結局、ストレッチパンツにTシャツという適当な服装を選ぶ。そうしてスマホに送られてきた現在地に向かうと、ランニングウェア姿でベンチに座っている灯が見えた。

僕が片手をあげると、彼女は立ち上がって「久しぶり」と手を振る。

「久しぶり。いきなり何なんだよ」

灯に近づきながら自分の口から出たフランクな言葉に、少し驚く。麻里亜にはこんな口、聞けなかったからだ。

灯が突然誘ってきた理由とは…。

「いいじゃん、近所なんだからさ」

灯の大きな目が僕を見据える。それから彼女が準備運動を始めたので、僕もそれに倣ってストレッチを始めた。

「…灯は、元気だった?」

「そりゃあもう」

彼女はそう返事して長い髪を束ねると「行くよ!」とハツラツとした声で言った。

夜の公園を結構なスピードで走り出した灯は意外にも健脚で、並走して走るだけでも僕は必死だった。3分も走ると全身がポカポカしてきて、腹の底からエネルギーが湧いてくるような感じがする。

どのくらい走っただろう。

気づけば僕らは汗だくになっていて、最初にスタートしたベンチまで戻ってきた。それを合図に僕は、倒れ込むように座る。

灯はすぐそばの自販機で冷えた水を2つ買い「どうぞ」とこちらに差し出してきた。

「足、速いのな」

「ええ。陸上部のエースだったからね」

まだ息が上がったままの僕を見て、悪戯っぽくそう言った後、彼女は僕の方をまっすぐに見た。

「泰平さん。発散できた?」

その目を見て、麻里亜と僕に何があったのか知っているんだなとわかった。樹のやつがあれこれ細かく話すことは、容易に想像がついていたけれど。

「ちょっとは発散できた。でも、走って吹っ切れるほど単純構造じゃないわ」

そう言うと、ふふっと小さく灯は笑った。

「だってまだ麻里亜が夢に出てくるし、何かの間違いで戻ってこないかなーとかも思うよ」

灯には、素直になんでも話せる。彼女はペットボトルを握りながら神妙な面持ちで頷いていた。

「麻里亜はきっとな、自分で自分を愛せないから、必死に誰かの愛を探すんだろうな。もっと頑張って愛を伝えられてたらよかったのにって後悔してる。今さらだけど」

僕がそう言うと、灯は黙って月を見上げながらしんみりと言った。


「でも、必死だったでしょ?麻里亜ちゃんといるときの泰平さんは、無理してるような感じだった」

「うん。だからわかってたよ、どうせ長くは続かないって。だけど失いたくなかったんだ」

麻里亜が去った後、僕の心にはしっかり麻里亜の形に穴が開いた。寝付きの悪い深夜や、休日の暇な夕方なんかに、ふとそれがうずくときがある。

例えばもし僕がもっと魅力的な人間で、彼女の寂しさを満たしてあげられていたら。そしたら今頃も…。こんなのは、たられば話だ。けれど、どうしても考えてしまう。

「麻里亜に2回もフラれたよ。失恋しかしてないな、僕」

灯は結んでいた髪を解きながら、ゆっくりと首を横に振った。

「…でもね。泰平さんは、ただ愛してくれない子を失っただけなのよ。愛してくれる人を失ったという意味では、麻里亜ちゃんの方がよっぽど惜しいことをしてる」

「うん」

「本当にもったいないよ、麻里亜ちゃん。もったいない」

その言葉は、傷を撫でるように優しく響いた。

「ありがとう」

そう言いながら灯の横顔を見ると、彼女は小さく笑いながら泣いていた。僕は泣いていないのに、自分のことのように。

灯の様子に、泰平は思わず…?

「あー。なんか悔しくて泣けちゃうね」

そう言った灯。彼女は自分最優先で生きているようでいて、こういう柔らかな温かさがある。

…そんな灯を、好きだと思った。

本当は抱きしめたいような気持ちになったけれど、僕は遠慮してしまって、精一杯の気持ちで手を握る。何も言わないまましばらく経って、彼女が「ねえ」とつぶやいた。

「30歳になってからさ、恋愛って言葉がよくわからなくなったの。だけど代わりに、この人と一緒に生きてみたいっていう気持ちがわかるようになった」

雲が切れて、月がじんわり周囲を明るく染める。

「…私たちさ、もっと一緒に生きてみない?」

僕は少しびっくりしながらも、彼女の言葉に大きく頷いた。



どこからか、蝉の声が聞こえてくる。

僕の城であるこの部屋には、いつの間にか灯の服やアクセサリーが置かれるようになった。

週末は、彼女がこの部屋へ泊まりに来る。それがお決まりのパターンになったのだ。

灯が来ている日も来ていない日も、僕の暮らしはそんなに変わらない。もちろん気を使うこともあるけれど、お互いがお互いの人生を同じ場所で進めているという感じだ。

今だって、彼女は自分の会社のカタログを見ているし、それを横目に僕はスパイスからカレーを作っている。

それでもドキュメンタリーの鑑賞は、共通の趣味になった。


今日のテーマは、婚活に勤しむ40代女性の話だ。ああだこうだと意見を言いながら見るドキュメンタリーは数倍面白いことを初めて知った。

すると番組を見終わってから、灯はあっさりとした様子でこう言ったのだ。

「私はさ、結婚したいってそもそも思わなかったけど。泰平とこういう感じで過ごせるなら、いいかもなって思うけどね」

それは、ちょうど僕も思っていたことだった。こういうのはちょっと奇跡だと思う。

「灯。一緒にいてくれて、ありがとうな」

「なにそれ」

彼女は楽しそうにケラケラと笑う。

「私の方が、随分感謝してるわ」

僕は幸せを噛み締めた。

一人は楽だ。でも二人は楽しい。楽してばかりより、楽しい方がいい。

どうせ人は、究極は一人だ。でもそんな当然の真理にすがって怠けていないで、せっかく楽しい人がそばにいるのだから、一緒に生きてみたらいい。

「泰平、ごちそうさま。美味しかった!洗い物は任せてね」

僕は、キッチンに向かう灯にうなずいた。

そしてその背中を見つめながら、どんなふうにプロポーズしたら彼女が喜んでくれるかを、こっそり想像していたのだった。


Fin.


▶前回:「他の男と同時進行されていた。それなのに…」最低な元カノから届いた、ありえないメッセージ

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cat_oa-rp53865_issue_6203ac51ae43 oa-rp53865_0_8921bc9dd723_大切な人を乗せてドライブしたい一台! 東京の街に似合う「エクストレイル」の魅力とは? 8921bc9dd723 8921bc9dd723 大切な人を乗せてドライブしたい一台! 東京の街に似合う「エクストレイル」の魅力とは? oa-rp53865

大切な人を乗せてドライブしたい一台! 東京の街に似合う「エクストレイル」の魅力とは?

2021年5月11日 05:01 東京カレンダー

成熟した大人は、仕事と同じくらい遊びにも精を出す。

そんな大人のオフタイムを充実させてくれるのが、クルマの存在。

意外とまだ知らない東京の街をドライブしたり、非日常を求めて遠方に足を伸ばしたり。

クルマがあれば、ライフスタイルの幅は間違いなく広がっていく。

今回は、街でも支持される都会派のSUVを紹介しよう。



「NISSAN X-TRAIL」。「エクストレイル」がデビューしたのは、SUVがブームになるはるか前の2000年。タフさを強調していた初代モデルから、乗り心地とデザインに磨きをかけて都会派SUVの先駆けとなった。

モダンなデザインとハイテクな運転支援装置。マイナーチェンジを重ねて進化するロングセラー

物事には必ず旬があって、クルマでいうなら世界的にSUVが人気だ。

某自動車メーカーの統計によると、今では高級車市場の6割以上をSUVが占めているという。

では、なぜこれほどまでに好まれているのか。

日本でSUVパイオニアとして知られる日産「エクストレイル」を題材に考えてみたい。

〝オフロード4駆〞と呼ばれていたかつてのSUVは、悪路に負けないタフさを誇る反面、乗り心地が固く重いせいで遅くて燃費も悪かった。

これはトラックで用いる基本骨格を採用していたからである。

ところが技術の進歩によって、乗用車と同じ軽量構造でも強いボディが作れるように。

これをいち早く採用したのが「エクストレイル」だ。都心や高速道路ではすいすいと走り、燃費もいい。

一方で、本格的な4駆システムを備えているから、悪路や雪道でも頼りになる。

SUVの弱点をすべて吹き飛ばし、いいところだけを残したのだ。

可変型4WDシステム「インテリジェント4×4」を搭載する現行モデルは、運転支援装置を改良するとともにインテリアの高級感も向上。

3列シート仕様や、ハイブリッド仕様もラインナップする。

3,161,400円~(日産お客様相談室/TEL:0120-315-232)


アクセル、ブレーキ、ハンドル操作をサポートする運転支援装置「プロパイロット」。

前を走る車両と適切な車間距離を保ち、車線の中央をキープ。

運転の疲れを大幅に軽減してくれるのだ。

内装はプレミアム感あふれるレザー仕様(写真)や、アウトドア向けの防水仕様を用意

そこに最先端の運転支援装置を加え、洒脱なデザインでまとめるなど日々アップデートを続けている。

都内でゆったりと乗るもよし、4駆システムを活用して遠出するもよし。

万能の「エクストレイル」を見ると、SUV人気の理由がよく分かる。

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都合よく扱い、弄んでいた男に会社の前で待ち伏せされて…。28歳女が気付いた真実

2021年5月10日 05:04 東京カレンダー

PR会社で多忙を極める28歳の綿谷あんな。掃除ができず、散らかった部屋に帰りたくないので、求愛してくるいろんな男のもとを毎晩泊まり歩く。

母親の“呪い”に、乱れた生活。そして歪んだ自尊心…。

これは、そんな女が立ち直っていくストーリーだ。

◆これまでのあらすじ

乱れた生活と決別するため、毎晩泊まり歩いていた男の1人・西島に別れのLINEを送ったあんな。彼との連絡を絶ってから数日後、なんと会社の前で待ち伏せされて…?

▶前回:「好きでもない男の家に転がり込んでるの」28歳女の告白に、後輩男子の反応は


大学病院に勤務する医師・西島隆司と出会ったのは、2年前の食事会だった。

その日のうちに彼から熱烈なデートの誘いが届き、あんなが彼のマンションを住まいのひとつに加えるまで、そう時間はかからなかった。

毎日ジムに通って鍛えている体と裏腹に、内面は繊細な男だった。執着心の強い甘えん坊。

あんなを手に入れようと、ヴァレンティノのブレスレットにセリーヌのバッグ、マノロブラニクのパンプスなどを贈っては、何度も愛の言葉を囁いた。

うんざりしたあんなが冷たくしても、西島はめげずにアタックし続けた。

「ううー…」

そんな男がいま、あんなの目の前で泣いている。

「一方的に、LINEで『別れる』なんて…」

嗚咽が大きくなり、周囲の視線が痛い。カフェを選んだのは、少しでも人目のある場所じゃないと危ないと思ったからだ。あんなが出てくるまで会社ビルの前で待ち伏せしていたのだから、正気の沙汰じゃない。

「西島さん、ごめんね」

あんなは好奇の視線から逃れるように声をひそめた。

「でも別れるもなにも、最初から私たち、付き合ってなかったよね」

あんなの言葉に激高した西島は…

「…俺は、真剣だったのに」

血走った目からボロボロと涙を流しながら、西島は唸るように言った。

「気が向いたときだけ泊まりに来て、キスもさせてもらえないままベッドだけ貸して、俺の話なんて興味も持ってくれなくて。それでもあんなが好きで、真剣に将来を考えていたから理不尽な扱いに甘んじていたんだ」

顔を覆い隠す大きな手のひらは、震えていた。

「…本当に好きだったのに。言うことを聞いていれば、いつか振り向いてもらえると思ってたのに…」

あんなはズキンと胸の奥が痛むのを感じた。一生懸命話しても興味を示してもらえず、ないがしろにされ、それでも構ってほしくて従い続ける。いつか自分のことを見てもらえると信じて…。

それは、自分と母親の関係そのものだった。

「…西島さん。私、あなたが思っているようないい女じゃないよ」

とにかく謝って落ち着かせて、危害を加えられないうちに逃げよう…。そう思っていたのに、気づけば口が勝手に動いていた。

「私の部屋、ゴミ屋敷だったの。散らかり放題で足の踏み場もない。だから帰りたくなくて、西島さんとかいろんな人の家を転々としてた」

西島のすすり泣きが小さくなる。

「自炊は生まれて28年、一度もしたことなくて、野菜の洗い方もわからないの。コンビニでお弁当買って、それすら面倒だったらUber Eats注文して…」

あんなはこれまで見せていた『完璧な自分』をかなぐり捨て、開き直って続けた。

「私のこといつも綺麗って褒めてくれるけど、髪はほっといてもいい感じになるパーマかけてるだけ。服だって、美容院に行ったときにいい女風のコーデを雑誌で探して、全く同じものを上から下まで揃えてるだけ」


コーヒーに手をつけると、すっかり冷えていた。

「…母親に冷たくされて育ったからか、異常なくらい自分に自信がないの。だから、西島さんみたいに社会的ステータスもあってモテそうな男の人から求愛されることで承認欲求を満たして、あえて冷たくすることで自尊心を保ってた」

最低な女でしょ、と小さく付け加える。

「…許してもらえるとは思わない。本当にごめんなさい」

そこまで話し、あんなは深々と頭を下げた。『私は可哀想だから、ストレスを吐き出す先が必要』…そう思って、西島たちと接してきた。可哀想であることが、免罪符だと思っていた。

こんなにも人を傷つけているなんて、想像したことがなかった。

「何だよそれ。詐欺じゃないか…」

再び泣き出した西島に、あんなは「ごめんなさい」と詫び続けることしかできなかった。

人間関係を整理したあんな。最後の課題は…

まだ5月だというのに汗ばむ陽気で、あんなはジャケットを脱いだ。

ぬるいビル風が吹き抜ける、会社ビル前のロータリー。ナチュラルローソンで買った温野菜サラダをつつきながら、LINEを立ち上げる。

トーク履歴から、これまで『宿借り』をしていた数人の男たちの名前は消えていた。

会って別れを告げると罵られたり粘られたりすることもあったが、自分のしてきたことの報いだと思ってひたすらに頭を下げ続けた。

曖昧だった人間関係を断ち切ったことで、心はすっきりと晴れやかだった。

「あ、綿谷さん」

背後からの声に、頬が緩む。12時15分頃になると、祥吾は手作りの弁当を持ってここに現れるのだ。タイミングを狙っていることがばれたら恥ずかしいので、あんなはわざとらしく驚いたように目を丸くしてみせた。

「浅霧くん、本当にいつもここでランチ食べてるんだね」
「そうですよ。綿谷さんも最近よくいらっしゃいますね」
「うん、外回りがある日以外は」

そうなんですねと返しながら、祥吾はあんなの正面の椅子に座った。最初は「座っていいですか」と断りを入れていたが、今では当たり前のように腰を下ろす。

彼との距離が近づいた気がして、少し嬉しい。そんなことを考えていると、祥吾が眼鏡越しにあんなの顔をじっと見た。

「…え、何?なんかついてる?」
「いえ…。綿谷さん、すごく顔色良くなりましたよね」

それは見つめられたことでどきどきして、顔が赤くなっているからではないだろうか。あんなは慌てて両頬に手を当てた。


「そ、そうかな?浅霧くんのおかげで家に毎日まっすぐ帰るようになったし、部屋も綺麗になってきて、たまに料理もしてるからかも」

「人間らしい生活になったよね」と笑う。祥吾もふっと表情を緩めた。

「そうですよ。人間生きているだけで上出来なんですから、無理しすぎないほうが良いんです」

生きているだけで上出来…。あんなは小首を傾げた。

「それ、よく言ってるよね。座右の銘?」

祥吾は弁当箱の蓋をあけながら「いえ」と答えた。

「僕の祖父95歳なんですけど、特攻隊だったんです。明日特攻するっていうところで、終戦を迎えました」
「特攻隊…」
「両親共働きだったんで祖父に面倒を見てもらうことが多かったんですけど、何かあるたびにそう教えられて育ったんです。『生きてるだけで上出来なんだ』って。だから言葉が染みついちゃって」

少し照れくさそうに笑う祥吾の顔は、普段よりも幼く見えた。

「素敵だね。会ってみたいな、浅霧くんのおじいさま」
「香川来てくれたら、案内しますよ。うちすごくボロいですけど」

香川の生まれで、決して裕福とはいえない実家。大家族。年下で垢抜けない印象。スペックだけで人を判断していたこれまでだったら、決して惹かれることはなかっただろう。

だが、祥吾に会って内面を見ることを知った。一緒にいるだけで安らぐ人は、祥吾が初めてだった。

「…ありがとう」

あんなは小さく微笑んで頷いた。



「あー!綿谷戻ってきた!」

オフィスに戻るなり、山本の叫び声が響いた。嫌な予感に思わず眉を寄せる。

「さっき、あの化粧品メーカーから連絡あったんだよ」

あの化粧品メーカー…。あんなはごくりと固唾を飲む。女性なら誰もが知る、有名な化粧水などを扱う会社だ。大きな成功報酬が見込めるクライアントで、次の案件の依頼がそろそろ来ることになっていたが。

「この内容で、来月にインスタライブをやりたいそうだ」

渡されたA4の資料を受け取り、ざっと目を通す。血の気が引いていくのを感じた。

「…どう見積もっても、準備に3か月くらいかかりますが」
「そこを何とか!お前ならできる!頼んだぞ!」

両手をあわせて山本に拝まれ、あんなは溜息をついた。これはまた、しばらくの間帰りが遅くなりそうだ。だが同時に、少しわくわくした気持ちもあった。あんなが大好きな商品を扱うクライアントなのだ。

「…わかりました」

頷くあんなのバッグの中で、スマホが振動していた。ブーブーと震え、電話を知らせる。不在着信の履歴が4件残る画面が、再び『ママ』からの着信で光っていた。


▶前回:「好きでもない男の家に転がり込んでるの」28歳女の告白に、後輩男子の反応は

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激務に加え、強まる母からの依存にあんながとった行動とは

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「自分の武器って何だろう…?」足立梨花を救ったのは、あの国民的ドラマへの出演だった!

2021年5月10日 05:03 東京カレンダー

女優だけでなく、タレントとしても大活躍中の足立梨花さん。

今やバラエティでの印象も強いが、バラエティ番組へ苦手意識を感じていた時期もあったという。

そんな彼女はなぜ、コント番組への出演、トーク番組のMCなど、積極的にバラエティタレントとしての活動を続けるのか?

彼女の仕事への向き合い方に迫った。





楽しんで仕事を続けたい。だから私は、敢えていろいろな事に挑戦する

深田恭子さん、綾瀬はるかさん、石原さとみさんら錚々たるメンバーを輩出してきた「ホリプロタレントスカウトキャラバン」の第32回に出場し、5万人以上の中からグランプリに輝いた足立梨花さん。活躍の場は、ドラマ、映画、バラエティと多岐にわたっている。

自分が出演する作品の宣伝を兼ねて、俳優がバラエティ番組に登場するのはよくある話だが、足立さんの場合は事情が違う。

彼女は女優業と並行して、コント番組にレギュラー出演したり、トーク番組のMCを務めたりと、バラエティタレントとしても存在感をしっかり示しているのである。

「どっちも楽しいからひとつに絞れないし、今の時代、敢えて絞らなくてもいいように感じています。

やりたいことがあったらとりあえずチャレンジして、失敗したら向いてないって思うだけのこと」足立さんは潔く言い切った。

確かにそうだ。しかし、誰もが同じように思い切れるわけではない。それに、あれもこれもと手を出せば、どれもが中途半端になりかねないのではないか。

そんな感想をぶつけてみると、芸能界にデビューして5年ほど経った20歳過ぎの、ある転機について語ってくれた。

私たちが楽しまないと、きっと観ている人は楽しめないから

「『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)に出演していたとき、同じように隔週レギュラーとして共演していた平 愛梨さんや河北麻友子さんと自分のキャラクターを比較して、自分は面白くない、武器がない、と悩んでいたんです。

そんなとき『あまちゃん』(NHK)のオーディションに受かって出演すると、その後はバラエティに出ても『あまちゃん』の女優ということで、いじってもらえるようになりました。

そして、そのうち自分にとって苦痛だったバラエティを楽しめるようにもなったんです」

二者択一ではなく二足の草鞋を履くことで「普通」からはみだし、レアな存在になる。足立さんが経験したのはそういうことかもしれない。

それはとても〝イマドキ〞だ。というのも、昨今、会社に勤めながらダブルワークやトリプルワークを実践し、自分の価値を高める人が増えている。

ひとつの道をとことん極めるのも素晴らしいが、気持ちの赴くままに自由にトライすることで見える世界や、沸き上がる感情が、その人を豊かにすることもあるだろう。



■プロフィール
足立梨花 1992年、長崎県生まれの三重県育ち。中学3年生で芸能界入り。現在、TOKYO FM新番組『青木源太・足立梨花 Sunday Collection』(日曜7時30分〜)に出演中。

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異例のスピードで出世した女課長。いつも強気に見える彼女が抱えていた、まさかの“裏の顔”とは

2021年5月10日 05:02 東京カレンダー

「こういう人、いるよね…」

出会いの場に足を運んでいると、たまに遭遇する“ひと癖あり”な人。

だけど、そんな“ちょっと癖ありな言動”には、理由があった!?

先週は男のことをいちいち条件付けして評価する、ひと癖ありな女が登場した。

さて、今週の体験談は…?

▶前回:「彼って、どれくらい貰ってるの…?」男が席を外した瞬間、女がスマホでチェックしたこととは


Vol.5:ブラックネイルを好む女の、裏の顔

今週の体験者:後藤俊太郎(31歳男・飲料メーカー勤務)


それは2020年、9月のこと。

「この資料、本気で考えて作ったの?」

俊太郎のプレゼンが終わった後、堤課長から真っ先に飛んできた言葉がそれだった。

「すみません…。今できる最良の策を考えたつもりです」

淡々とそう反論すると、彼女からは大きなため息が漏れる。

― この人、何だったら納得するんだよ。

今日は来年の春に発売が予定されている、新しいアルコール飲料の企画プレゼンをしていた。

俊太郎に痛烈なダメ出しをした堤恭子は、部下に厳しいことで有名な上司だ。30代半ばの独身女性。出世争いが激しい社内でも、異例のスピードで課長に昇進している。

「後藤くんさ。自分が仕事できるほうだからって、手を抜かないで。…とりあえず、明日までにもう一度やり直してちょうだい」

その言葉に俊太郎は肩を落とし、執務室のフロアに戻っていった。



「堤課長へのプレゼン、どうでした?」

会議を終えて俊太郎が自席に戻ると、後輩の卯野葉月が話しかけてくる。

「今日はまったくダメだった…。毎回こんなにボコボコにされると嫌になるよなあ」

そう愚痴をこぼすと、葉月はフロアの奥にいる課長を一瞥して言う。

「堤課長って“鉄の女”感が半端ないですよね…。服装もいつもモノトーンだし、ネイルもブラック系で」

いつも強気に見える女上司だが、ある秘密を抱えていて…?

「そういえば、確かにそうだよなあ…」

今まで意識して見たことはなかったが、堤課長に資料を渡されるとき、いつも爪がブラックに塗られていたような気がする。

― 堤課長って、好きな男の前ではどんな感じなんだろう。

仕事ではいつも抜け目ない彼女について、俊太郎は思わずそんなことを考えてしまうのだった。



そして、その週の日曜日。『ピーター・ドイグ展』を見に行った帰り道のことだった。俊太郎は、まさかの光景を目にしてしまったのだ。

― あれ、もしかして?

国立近代美術館から竹橋の駅に向かう橋を渡っていると、対向車線側の歩道に、堤課長らしき人物の姿を見つけたのである。

そして、驚くべきことがもうひとつ。何やら年上の男性と親密な雰囲気で歩いており、彼女の手は男の腕に絡んでいたのだ。

いつもは怖い上司の“女の顔”を見て、俊太郎はなんだか不思議な気持ちになった。


堤恭子(36歳女)の場合

― 私って、いったい何がしたいんだろう。

それはここ3年ほど。恭子が課長職に昇進してから、毎日頭の中でグルグルと考えていることだった。

仕事が好きで求められるがままに管理職になったけれど、納得のいく仕事を周囲にも求めすぎて、空回りしているのだ。


仕事に関する悩みが増えてからというもの、それに比例するようにして自宅で一人、お酒を飲むことが増えた。

この日も仕事から帰り、冷蔵庫を開けてワインを取り出す。

コルクを抜いた瞬間、キッチンカウンターに置いていたスマホが鳴った。手を止めてLINEを開くと、恋人からのメッセージが表示される。

『今週の日曜日、出張ってことにしておいたから』

恭子は7歳年上の恋人・篤史と1年半ほど交際している。しかし彼は、初めて知り合ったときから既婚者だった。

出会いは2年前。篤史は仕事関係のセミナーで知り合った、アートディレクターだ。

元々は特段気の強い性格ではなかった恭子だが、管理職になりたての頃、急に“強い自分”を求められることが多くなり、精神的な苦労が増えた。

そんなとき、親身になって相談に乗ってくれた篤史のことをいつの間にか好きになり、ズルズルと関係を続けてしまっている。

― 日曜日、空けてもらっちゃってよかったのかなあ。

妻と6歳になる子どもがいる彼とは、普段は平日の夜にしか会えない。

『本当?嬉しい。前に話したかもしれないけど、行ってみたい美術展があって…』

悩む気持ちを押し殺してそう返信すると、篤史にピーター・ドイグ展のリンクを送るのだった。

― 何を着ていこうかな?

恭子は罪悪感を抱えつつも、ほんの少しウキウキした気持ちでウォークインクローゼットの扉を開ける。

仕事用に着る服は、気持ちを引き締めるためにもモノトーン系が中心だが、デートのときくらい明るい色の服を着ていきたい。

「これにしようっと」

そうして取り出したのは、トリーバーチの水色ワンピースだった。

週末の美術館デートで、恭子は不倫相手から衝撃の一言を告げられる…

「全部映画のワンシーンみたいに綺麗で、すっごくよかったね」

展示を見終わり、ミュージアムショップをなんとなく物色しながら、篤史が恭子に話しかけてくる。

「わ、グッズもすごく素敵。…ねえ。ポストカード、お揃いの買わない?」

恭子の提案に彼はうなずき、二人は繊細な色彩の絵画が描かれたポストカードを買ってカフェに入った。



「あのさ。今日は大事な話があって…」

「えっ、何…?」

カフェに入るなり篤史が急に深刻な表情になったので、なんだか不安な気持ちになる。

「実は来年、息子が小学校に上がるタイミングで妻と離婚しようと思ってる」

「そ、そうなんだ」

彼のことは好きだけれど、恭子はこの言葉に自分が喜んでいいのかわからなかった。

「やっぱり俺は妻よりも、君のことが好きだからね。だから一緒になりたい。…俺が離婚した後のこと、考えてくれるかな」

突然の告白に、ただうなずくしかなかった。

― 私と、彼の今後か…。

その選択をしたら、自分は幸せになるかもしれないけれど、その代わり彼の奥さんと子どもは不幸になるかもしれない。今さらながら恭子は、自分のしてきたことの重さに苛まれるような気持ちになった。

だからといって、このままずっとこの恋を続けるのもつらい。

仕事場では自分を強く見せている反動で、誰かに甘えるために恋愛をしている。そんな自分の生き方も、何だか違う気がしていたのだ。



翌日。恭子はあまり眠ることができず、頭がぼんやりとしたまま出社していた。

そして昼過ぎから始まる、広告代理店との打ち合わせに向けて忙しくしていると、部下の後藤俊太郎が急に話しかけてきたのだ。

「午後の打ち合わせの進行、俺がやりましょうか?なんかバタバタされてるみたいなんで…」

「えっ…?ありがとう」

そう言った瞬間、少しバランスを崩してしまい、デスクの上にある資料やノートを落としてしまう。慌てて落としたものに手を伸ばすと、俊太郎が拾うのを手伝いながら尋ねてきた。

「あれ。爪の色、変えました?」

「あっ、そうなのよ…」

恭子は思わず、自分の指先に視線を移す。久々に違う色をのせてみようと、ピンクベージュに塗り替えたのだ。

「そういう色の方が似合いますよ。…あと、あんまり無理しないでくださいね」

その言葉に驚いて俊太郎を見返すと、彼は「何でもないです」と小さく否定した。

― 私、やっぱり無理してたのかな。

仕事で自分にも他人にも完璧を求めていたこと、そのために自分を強く見せようと必死だったこと。それに篤史との関係も、もう限界だった。



その日の夜。

「この前の話、本当に申し訳ないけど断らせてほしいの。篤史が結婚してるのを知ってて好きになった私が悪かった。ごめんね…。もう、会うのもやめたい』

彼に電話をかけて一方的にそう告げた。そして電話を切ると、恭子は再びピンクベージュに塗られた自分の指先を眺める。

― もう“強い自分”を無理につくって生きるのはやめよう。

心の中でそう決意した。

そしてその爪は、もう二度と黒く染められることはなかった。


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