シリーズ累計250万部突破の人気小説作品『八男って、それはないでしょう!』のTVアニメが、2020年4月2日(木)より放送スタート! 放送に先駆けてアニメイトタイムズでは、メインキャスト陣のインタビュー連載を実施!
第1回は、エリーゼ役の西明日香さん、ヴィルマ役のM・A・Oさんです。作品の印象やキャラクターの魅力について、さらには回を重ねるにつれて過激になっていくアドリブなど、お話いただきました!
あらすじ
食品関係の商社に勤めるサラリーマン ・一宮信吾が目を覚ますと、異世界の小さな子どもになっていた。
ド田舎の貧乏貴族の八男・ヴェンデリン(5歳)となった彼は、領地も継げず、先も見えない手詰まりの境遇の中、魔法の才能に恵まれたという一点を突破口に独立を目指す。
やがて12歳となり、冒険者予備校の特待生となったヴェンデリンは、ある事件を解決した功績により、貴族として身を立てることとなる。
だがそれは、貴族社会のしがらみに振り回される人生の始まりに過ぎなかった――
バックボーンを持ったキャラクターたちが織りなす人間ドラマに注目
――最初に原作を読んだ際は、どのような印象を受けましたか?
西明日香さん(以下、西):異世界転生モノと一括りにすると様々な種類の作品があると思いますが、本作はその世界でどのように政治を動かしていくか、人間関係のドロドロした部分が描かれている珍しい作品だと思いました。
今まで良い人だと思っていたのに、実は……みたいな展開もあり、そうした人間関係や心の動きを描いた作品に関わる機会は多くなかったので、とても印象的でした。
――それぞれのキャラクターに家の事情などのバックボーンがあった上で、人間関係が展開していきますよね。
西:例えば、ルイーゼちゃんはただ明るいだけではなく、家の将来のためにヴェルの側室に入るといった経緯が描かれていて。どの登場人物も簡単な人生じゃないんだなと感じる場面がありました。
M・A・Oさん(以下、M・A・O):私は、タイトルの時点で八男?!という驚きがありました。ヴェルさんは転生したときから強いので2周目くらいかと思わせつつ、実際は苦労する部分が多いのはとても斬新だと思いました。
政治や家柄などが関係して繰り広げられる展開にはドラマ性を感じます。良い意味でヴェルさんを中心にただハーレムがあるわけではないという感じで。
西:周りの女の子も自分以外の女の子とヴェルが仲良くしているところを見ても、ヤキモチを妬いたりするわけじゃないんですよね。
正妻や側室など、昔の日本にもあったようなシステムが当たり前の世界観だからヴェルに妬くこともなく、きちんと棲み分けができている珍しい作品だと思いました。何より女同士のドロドロがないのはビックリしました(笑)。
――本作のストーリーで共感できる場面などはありますか?
西:自分自身が末っ子なので、ヴェルの家族からの扱いというか、立ち位置というか……お前は一番下だもんな!という雰囲気は共感できます(笑)。
M・A・O:政治や家柄の問題などがその時代背景にあっていて、それぞれの立場での考え方や身の振り方にリアリティがあり、とても勉強になりました。
――先ほどから話題に挙がる主人公のヴェルですが、女性であるお二方からご覧になって彼の魅力はどういったところだと思いますか?
西:貴族の複雑な世界に振り回されていて一見草食系に見えるけど、内なる野望というか、やるときはやる!!みたいな信念があるところが魅力的だと思います。あとさりげない優しさがあったり、たまに弱音を吐いて母性本能をくすぐるところですかね?
M・A・O:ヴェルさんの魅力は、しっかりと地に足がついていて器も大きいところだと思います。現実的な物の見方ができ、おごることもなく判断力に優れていて、本当に当主としての素質が詰まっている方だなと思いました。
▲ヴェンデリン:王都から遠く離れた辺境に住む貧乏貴族の八男。元は、食品関係の商社に勤めるサラリーマン・一宮信吾で、うたた寝から目を覚ますと、異世界の小さな子どもになっていた。領地を継ぐこともできず、手詰まりの境遇の中、魔法の才能に恵まれたという一点を突破口に独立を目指す
――それぞれ演じられるキャラクターの印象についてお聞かせください。西さん演じるエリーゼは、枢機卿(高位聖職者)の孫娘で、後にヴェルの正妻として結婚する聖女という役どころです。
西:エリーゼは、The・聖女というキャラクターで、見た目も性格も完璧な女の子です。オーディションを受けたときも、清楚に……皮をかぶっていました(笑)。
一同:(笑)。
西:それで受かって「ヨシ!」となって(笑)。だから、本当に自分とは似ても似つかないとキャラクターだと思っていて、高嶺の花のような印象が彼女にありました。そんなエリーゼをお嫁さんに迎えられるヴェルが羨ましいくらいですね。
――たしかに西さんのおっしゃる通り、見た目から立ち振る舞い、言動まで清楚で上品かつ、まったく角の立たない性格ですよね。
西:険悪なムードの中、間に立って話すときも終始穏やかで、一貫して落ち着いている子だから、本当に人間として出来ている子だと思いました。
▲エリーゼ:“聖女”と呼ばれる枢機卿の孫娘で、聖の治癒魔法を得意とする。祖父であるホーエンハイム枢機卿の引き合わせにより、ヴェンデリンの婚約者となる。金髪ロングヘアで、王宮筆頭魔導師アームストロングの姪でもある
――M・A・Oさん演じる軍務卿の義娘・ヴィルマは、おとなしそうな見た目からは想像しにくい怪力や食欲旺盛さが特徴的なキャラクターです。
M・A・O:ヴィルマちゃんは、感情の起伏があまりないような第一印象でしたが、ご馳走を目の前にしたときに目が輝く場面が本当に可愛らしくて、かなりイメージが変わりました。
大好きなご飯に対しては彼女の中で溢れるものがあるのだと、演じさせていただくうちに実感しましたね。
――普段は淡々としているだけに、ご飯を食べるシーンはギャップが感じられて魅力的ですよね。
西:ヴィルマちゃんが喋るとき、つい後ろでニヤニヤしちゃうんです。ヴィルマちゃんが「カマトロ……」と言っているときに、私は後ろで「(鼻息荒く)可愛い……!」って!
M・A・O:ありがとうございます(笑)!
▲ヴィルマ:エドガー軍務卿の義娘。ピンク色の髪をまとめた、食欲に忠実な怪力少女。魔力が筋組織を強化する「英雄症候群」と呼ばれる体質で、斧など重武器を扱う。代償としてカロリー消費が激しく、常にお腹が減っている
――(笑)。ではお互いのキャラクターの印象や、その変化についてお聞かせください。
西:ヴィルマは見た目は可愛くて、でも無表情で、何を考えているのかわからないキャラだなと思いました。でも実際にM・A・Oさんが声を当てると、可愛さが何割も増して……!
食べ物の名前を連呼したり、他のキャラとセリフが被るため、別録りでずっとモグモグしてたりと、話が進むにつれて魅力がどんどん溢れていました。
M・A・O:エリーゼさんは優しく包容力があり、本当に聖母のような方だなという第一印象でした。そして、ヴェルさんの横で佇みしっかり支えていく姿からは、芯の強さを感じました。
――ほかにも個性豊かなキャラクターが数多く登場しますが、ご自身が演じるキャラクター以外で気になる・お気に入りのキャラクターをお聞かせください。
西:三村ゆうなちゃん演じるルイーゼです。不思議な踊りをするシーンがあるんですけど、笑いをこらえるのに必死でした!
▲ルイーゼ:ブライヒレーダー辺境伯家で拳法師範を務める陪臣家の三女。青髪ショートカットの明るく活発な少女。冒険者予備校ではイーナと組む。魔力を用いた身体強化で戦う格闘術である『魔闘流』を得意とする
あとは長男のクルトさんですね。杉田(智和)さんの怪演がとてもグッときます。これ以上は言えない!
▲クルト:次期領主の座に固執するバウマイスター騎士爵家長男
M・A・O:お気に入りのキャラクターはローデリヒさんです。文武両道で本当に素敵な方ですが、たまにみせる抜けたところにギャップがあり可愛らしいと思いました!
▲ローデリヒ:ヴェンデリンに仕える事を望む、「槍術大車輪」を得意技とする槍の使い手
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回を重ねるにつれて過激になっていくアドリブ、その元凶は……?
――そんなキャラクターを演じるうえではいかがでしょう。エリーゼは先ほど西さんがおっしゃられていたように、聖女としての清楚さが求められるのかなと思いますが……ちなみに聖女役のご経験は?
西:実は初めてではなくて……声だけは清楚なものですから(笑)。これまで清楚な女性を演じる機会はあったので、キャラクターにつられてアフレコ現場では静かにしているときが多かったんですけど、今回はそうもいかず、普段とのギャップも含めて楽しく演じさせていただきました。
――と言いますと?
西:私は、自分のラジオ以外のアフレコ現場などでは、自我を出さないようにおとなしく過ごしているんですよ。でも榎木さんをはじめ、優しくて盛り上げてくださる方がたくさんいる現場だからこそ、ちょっとした私の心の汚れに気づいてツッコミを入れてくれると言いますか、イジってくれるんですよね。
そうすると徐々に自我が出てきてしまって、結局、榎木さんに「魂が汚れている」と言われてしまい(笑)。でもこういった地を出せるアフレコ現場は多くないので、休憩時は楽しくお喋りさせてもらっています。
それにエリーゼは私にないものばかりを持ったキャラクターなんです。だからこそ、役として清楚感を振り絞って演技するのはとても楽しいですし、そうじゃない自分を出せる休憩時間も楽しいから、もうアフレコ自体が終わってほしくないんですよね。
――収録ブースから少し離れたところで待機しているときも、休憩中に西さんの大きな声が聞こえたと思いきや、その直後さらに大きな下野さんの声が聞こえてきて、本当に楽しそうな現場だなと(笑)。
西:あはははは!(笑) 下野さんのキレッキレのツッコミがまたボケたくなるんですよね(笑)。
――でも、いざ収録が始まったら!
西:そうなんです! 聖女なんです!!
――そんな賑やかな現場でヴィルマを演じられるM・A・Oさんですが(笑)。
M・A・O:はい(笑)! ヴィルマちゃんは普段から淡々としたキャラクターで、あまり感情の起伏をつけない方向でとディレクションをいただきました。そのため、ご飯の場面以外は省エネモードなヴィルマちゃんを観ていただけると思います(笑)。
西:戦闘シーンはいかがでしたか?
M・A・O:戦闘シーンはキャラクターがブレない範囲で普段より強めに演じさせていただきましたが、そのまま採用していただけたので嬉しかったです!
――他のメインキャストのみなさんからは、かなりアドリブの多い現場だと伺っています……!
M・A・O:私は主に後半からの参加だったため、それまでの現場の雰囲気やアドリブが多いという話は知らなかったのですが、いざ参加してみると、みなさんテストからアドリブを入れていました! そのアドリブが採用されつつも、本番ではさらに上を求められる収録現場を、純粋に「すごい!」と思っていました(笑)。
西:あれ全部、榎木さんのせいなんです(笑)。
――榎木さんからは、アドリブを入れ始めたらスタッフに要求されるようになり、徐々にハードルが上がっていったと伺っていたのですが……。
西:あ~、被害者ヅラしてました?(笑) 奴が元凶なんです! テストのときにアドリブを入れて、回を重ねるごとにスタッフさんも乗ってきて「もっともっと!」と言われてしまって。だから最初に原因を作ったのは榎木さんなんですよ(笑)。
M・A・O:なるほど!
西:でもヴィルマちゃんはそこまでアドリブは入ってなかったですよね?
M・A・O:そうですね。ただ、ご飯を前にしたときはテンションが上がるので、ニュアンスをつけられるように意識しています。
――ちなみにエリーゼにアドリブを入れることは?
西:エリーゼは聖女なので、そこまでアドリブを入れないよう自分の中で線引きをしています。「ボケなくてもいいんだ!」と思いつつ、聖女役でラッキーだったなと(笑)。
――(笑)。では改めて、作品を楽しむ上でのポイントや演じられるキャラクターの注目してほしい場面について教えてください。
西:個人的にエリーゼは、“理想の女の子”という印象が強いキャラクターです。最初は家の事情でヴェルと結婚することになりますが、そういった政略結婚は作中の世界観ではありふれたことで。とはいえエリーゼは結婚をしても、まだ恋はしていないんですよね。
そんなエリーゼが、回を重ねるごとにヴェルに惹かれていく様子が描かれていきます。もちろん一目惚れのケースもあると思いますが、人って簡単には惚れないじゃないですか。1話の中でパッと惚れるわけではなく、じわじわと惚れていくところがリアルだと感じたので、ぜひ心の動きに注目してもらえたらなと思います。
また、ストーリーを通して人間同士の確執が描かれます。戦闘シーンも見どころのひとつではありますが、八男という立場からヴェルがどのように自力で独立を目指すのかを、観てもらえると嬉しいです。
M・A・O:ヴィルマちゃんは可愛くて守ってあげたくなるようなルックスですが、実際は守る側というギャップが魅力のキャラクターです。ご飯があるときは本当にずっと食べているため、ヴィルマちゃんのもぐもぐタイムをひとつの癒しにしていただけると嬉しいです(笑)。どうぞ、宜しくお願いします!
[取材・文/鳥谷部宏平]