ネイキッドサンダルからカチューシャ、パリッとした白シャツから薄手のスリップドレス……。カルバン クライン(CALVIN KLEIN)の広報担当で、ジョン・F・ケネディ・ジュニアの妻であったキャロリン・べセット=ケネディの90年代スタイルが、改めて新鮮だ。デザイナーたちがミューズと崇めるトレンドセッターであった彼女の着こなしから、今まさに参考にすべき7つのポイントを解説しよう。
90年代のスタイルが、時代が大きく変わった今なお新鮮に映るのはなぜだろう? 今日のファッション界の最前線でも、90年代への憧憬が色鮮やかにみてとれる。しかも、私たちを魅了するのは、パワフルなランウェイスタイルもさることながら、むしろ当時のスタイルアイコンのリアルな着こなしだ。
その代表格が、キャロリン・ベセット=ケネディ。カルバン クライン(CALVIN KLEIN)の役員として、常に完璧な着こなしを披露していた彼女が初めて世間の注目を浴びたのは、1994年にジョン・F・ケネディ・ジュニアと交際しはじめたときだった。2年後、ふたりはジョージア州カンバーランドの離島で結婚式を挙げ、ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)のシルクドレスにビーズをあしらったマノロ ブラニク(MANOLO BLAHNIK)のサンダルというシック極まりないキャロリンの装いが、世界中の紙面を飾った。
不幸にも、1999年の飛行機事故で命を落としたキャロリンだが、彼女の生んだファッションレガシーはいまも語り継がれている。過去20年間、キャロリンの写真はデザイナーたちのムードボードに何度も登場し、ファッション界でその評価は高まるばかりだ。ポーツ 1961(PORTS 1961)の2019-20年秋冬コレクションは、彼女のすっきりとしたラインと落ち着いたカラーパレットにインスピレーションを得ているし、アレキサンダー・ワンは彼女をビューティー・ミューズと呼んでいる。また、マリアム・ナッシアー・ザデー(MARYAM NASSIR ZADEH)にとってキャロリンは、毎シーズンの創作に欠くことのできない着想源であり続けている。
私たちを魅了してやまないキャロリンだが、そのスタイルを振り返ると、実は7つの偏愛アイテムが存在する。早速、それらを見ていこう!
1. ネイキッドサンダル
今季トレンドインしているシューズが、キャロリンがこよなく愛した細いストラップのミニマルなミッドヒールだ。ソニア・リキエル(SONIA RYKIEL)とレジーナピョウ(REJINA PYO)の2019年春夏のランウェイにも多く登場していた。
カジュアルな印象強めのシューズだが、よりドレッシーなタイプがよければザ・ロウ(THE ROW)を覗いてみよう。あるいは通勤にやさしいフラットタイプがお好みなら、エーティーピー アトリエ(ATP ATELIER)やエマ パーソンズ(EMME PARSONS)、エンシェント グリーク サンダルズ(ANCIENT GREEK SANDALS)をチェックしてみて。キャロリンをお手本に、クロップジーンズとタンクトップを合わせれば、肩肘張らない90年代カジュアルの完成だ。
2. パワーカチューシャ
プラダ(PRADA)のルックで人気再燃中のボリューミーなカチューシャは、キャロリンのシグニチャーアイテムでもあった。彼女のお決まりの装いといえば、べっ甲の幅広カチューシャにラウンドのサングラス、白いTシャツのミニマル極まりないニューヨーカースタイル。今季はプラダ以外にも、シモーネ・ロシャ(SIMONE ROCHA)やアレクサンドル ドゥ パリ(ALEXANDRE DE PARIS)、レレ サドイ(LELE SADOUGHI)といった多くのブランドが、存在感のあるヘアアクセを打ち出していた。ランウェイでは一見主張が強すぎるように見えるこうしたアイテムは、実はストリートからミーティングまで、幅広いシーンで使える優れもの。一つ足すだけで、一気に今季らしいスタイリングが完成する。
3. ドレスアップシャツ
普遍アイテムの洗練された着こなしという点で、キャロリンの右に出るものはいない。ホイットニー美術館で開かれたブラックタイの晩餐会では、見るからに上質そうな白シャツのボタンを胸骨まで外し、袖をラフにまくって登場。ボトムに床まで届くティアードスカートを合わせたことで、デイリーウェアを巧みにイヴニングウェアへと変貌させてみせたのだ。
こうした着こなしにおいて、アクセサリーは重要だ。キャロリンは、黒のサンダルとゴールドビーズのバッグをチョイスし、アップタウン的な自身のシンプルな美学を貫いた。夏の夜会に彼女のスタイルを真似てみたいなら、ジャックムス(JACQUEMUS)の胸元の開いた白いシャツに、モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)のラッフルスカートを合わせてみてはどうだろう?
4. スキニーなスリップドレス
キャロリンのワードローブの中心には、いつもバイアスカットのスリップドレスがあった。ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)のウェディングドレスにはじまり、都会の夏の黒いミニドレス、肌寒い日のリブ編みドレスにジャケットの着こなしなど、さまざまなパターンを愛用していた。
キャロリン的スリップドレスは、今季、パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)やアルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)のキャットウォークで返り咲きを果たしている。他にも多くのブランドが需要の拡大に応えようとアイデアを捻り出しているが、オススメは、ロンドン拠点のレーベル、リファイン(REFINE)のミドル丈スリップドレスだ。「ザ・クレヨン」と名付けられた本作は、嬉しいことに、おそろいのカチューシャも用意されている。
5. ベージュ × ブラック
キャロリンが証明するまで、ある意味タブー視されていたのがベージュとブラックの組み合わせだ。彼女は長いあいだ、この2色のスタイリングを独自に楽しんでいたわけだが、ついに世間が追いついたというわけだ。淡いベージュのペンシルスカートにブラックのニットとブラウンのブーツ、黒いTシャツにキャメル色のパンツとローファー、ダークベージュのコートにブラックのタートルネックなど、彼女が映る数々の写真で、バリエーション豊かな着こなしを見ることができる。
この90年代スタイルに新鮮な空気を吹き込みたいなら、バーバリー(BURBERRY)を参考にしてみよう。リカルド・ティッシのデビューとなった2019年春夏コレクションは、伝統的なトレンチからコーヒー色のスカートスーツまで、この黄金の配色パターンをめいっぱい楽しめるアイテムがラインアップされている。
6. ヘアアクセとしてのスカーフ
義母であるジャクリーン・ケネディが、カプリ島での休暇の際にシルクスカーフで髪を緩くまとめていたように、キャロリンもまたスカーフ愛用者だった。彼女が選んだのは、ブロックカラーのバンダナ。ジーンズにタンクトップ、ロングラインのブレザーという超普遍的な着こなしも、バンダナがプラスされただけで究極のモダンスタイルへと進化するから面白い。キュートなパステルカラーのスカーフならエミリア・ウィックステッド(EMILIA WICKSTEAD)、クラシックなブラックならトム フォード(TOM FORD)がおすすめだ。
7. フローラルなミディドレス
キャロリンは、ややもするとカジュアルすぎるサマーフロックを、どう着ればシックなデイリーウェアに昇華できるか熟知していた。ブラックのスティレットと無造作なヘア、プラダ(PRADA)のパテントバッグを合わせるだけで、品と洗練のナチュラルスタイルの完成だ。今季、キャロリン風のフローラル・ミディドレスを探している人は、まずはルージュ(ROUJE)をチェックして見て。あるいは、リフォーメーション(REFORMATION)やリアリゼーション パー(RÉALISATION PAR)にも揃っているはず。もう少しエッジを効かせたいときには、キラキラの輝くアクセサリーを添えよう。
Text: Radhika Seth