映画『夢幻紳士 人形地獄』公開記念インタビュー!
1981年に雑誌「マンガ少年」で連載を開始した「夢幻紳士」は、昭和初期の帝都東京を舞台に、探偵・夢幻魔実也が事件を解決する一話完結の怪奇ミステリー。
この高橋葉介氏による人気漫画の映画化に挑んだのは、原作の大ファンで長年映画化を夢見てきた海上ミサコ監督です。今回は、海上監督と出演キャストの紀那きりこさん、杉山文雄さん、SARUさん、企画・脚本を務めた佐東歩美さんに、映画化までの道のりや、それぞれのシーンをどのような気持ちで演じていたのか、そして、2015年の撮影開始から長い時間をかけてようやく公開を迎えた今のお気持ちを伺いました。さらに、動画インタビューでは、主人公・夢幻魔実也を好演された皆木正純さんの正体についても暴露!?していだきましたので、こちらも是非ご覧ください!!
皆木正純さんの正体を暴露!?「夢幻紳士の会」動画インタビュー
―― 完成した『夢幻紳士 人形地獄』をご自身で拝見されてどう感じているのか、まず監督から公開を控えた今のお気持ちをお聞かせください。
原作の大ファン!海上ミサコ監督
海上ミサコ監督
作り終わった時は「出来た!」という達成感!今、見直すと、やっぱり最初に作りたかった想いを、改めて自分の中で再確認出来ますね。女の子を助けたいという気持ち、SOSを呼びたい女の子の気持ちとか。そして、「そこがちゃんと描けているのか、伝わるようになっているのかな」って厳しく見ちゃうところと、「ちゃんと最初の想いは出来ている、大丈夫!」っていう自分自身に太鼓判を押す気持ちと(笑)、二つの気持ちがあります。
―― 連載されていた漫画の実写化は結構難しいと言われていますが、上手くいったところと苦労されたところと色々あったんじゃないでしょうか?
海上ミサコ監督
最初に原作者の高橋先生に交渉した時に、「海上さんなりの夢幻魔実也を作ればいいから。インディペンデントでやるんだったらやりたいようにやればいいじゃない」というお話をいただきましたので、やり難さというよりは、自分がやりたいことにどう近づけるかという作業を頑張りました(笑)
―― 公式HPには「痛い映画にならなければいい」というお言葉がありましたが、監督とともに作品のレベルを引き上げているのが、出演者の皆さんの演技だと思います。ということで、皆さんにお聞きしたいんですけども、最初に八重子役の紀那さんは徐々に微笑みを増していく表情をされていましたが、この表情をつくるのは難しかったのではないでしょうか?
八重子役の紀那きりこさん
紀那きりこさん
あのシーンは自分の中でも、最初の虚ろな顔でずっといるっていうのも、どういう風にどうなっているのかなって結構考えました。とにかく自分の一番見たかった夢が見られたんだっていうのと、ちょっと貪欲にその夢に突き進んでいくわけなので、本当に嬉しいというか、その気持ちが込み上がってきたらいいなって思いながら演じたような気がします(笑)
自分から夢の中にいることを選び取っていくというか、欲深いなと思いました(笑)
―― ベッドで寝ている時の顔と起き上がった時の顔が、全然違うなと感じて、ちょっと別人のように感じたぐらい、色んな表情を見せていただきました。続いて、十勝十蔵役の杉山さんは犬の鳴き声が凄かったですし、泥まみれになりながら肉を食べたりするじゃないですか。凄いなって、引き込まれました。
十勝十蔵役の杉山文雄さん
杉山文雄さん
この役をいただいた時に、内容が内容だったので、逆に振り切れちゃったというか。撮影中は多少やりすぎちゃって、肉を食うのも、撮影上十蔵が食べかけた肉を魔実也が拾って十蔵に差し出すというところで、肉の原型が分からないぐらい食べちゃいまして(笑)。
開き直って振り切って思い切り出来たので、自分としては結構楽しかったです。
―― そして、梅子役のSARUさんですが、雛子の側に居てあげたいという気持ちからすると、意外と梅子は友達思いで優しいのかなと思います。ただ、本当にいけないことなのかどうかの区別が、好き過ぎて分らなくなったのかなと。梅子についてはどういう女性だと思って演じられていたんですか?
梅子役のSARUさん
SARUさん
まず、最初に台本見て、梅子は自分の中でこういう人かなと思いながら、監督に聞いたら「原作は見なくていい」と言われて、そこで「ん?」と思ったんです。どういうことかな?って。そうしたら、実は梅子は原作にはそれほど関わってないけど、この脚本に関しては梅子を登場させる。そこで、「えっ、どんな人だろう?」ってちょっと悩んだんです。
稽古をしていく中で、とにかく「雛子を守りたいんだ」っていう一本筋だけで、そこから自分の中で役というかバックボーンを考えていきました。あとは、撮影しながら皆さんの流れというか、雰囲気で作り上げていきました。
―― 私も原作読んでなかったので分らなかったんですけど、非常に楽しく観させていただいたので、映画でも配信でも是非“シリーズ化”していただきたいです!
海上ミサコ監督
いいですね、是非とも!
杉山文雄さん
やるしかないですね!
―― 企画と脚本の佐東さんは、原作も含めてこの作品をどのように捉えて、色付けてしていこうと考えられたのですか?
佐東歩美さん
林海象監督の「探偵事務所 5」シリーズで、海上さんも私も監督をしていたことで仲良くなりました。2012年に監督に誘っていただいて、銀座の画廊で開催されていた高橋先生の原画展を一緒に見に行ったんです。その時に監督が「何とか映画化したい!」という熱い思いを語ってくれました。時代考証もあるので大変でしたけど、監督の熱い想いをどう具現化するかということで取り組んで、満を持して公開となりました。
―― 撮影期間はどれぐらいかかったんですか?
海上ミサコ監督
クランクインが2015年の9月の秋分の日で、アップが2017年の4月でした。月に4〜5日しか撮れない状態で撮り進めていったので、今月は診療所のシーンと、海辺の回想シーンだけ撮って終わりとか。撮っていくうちに皆さんが歳を取らないことをずっと願いながら撮っていました(笑)
―― ところで本作「人形地獄」について教えてください。“人形になりたい”という気持ちというのは、女の子なら誰しも持つ気持ちなのでしょうか?正直な話、私は人形になりたいと思ったことがなかったので(笑)
海上ミサコ監督
子どもの時に男の子だと、「僕は大きくなったら新幹線になる!」とかってあると思うんですけど、女の子は「お人形さんになりたい!」って。でも、この作品の場合においては、ちょっと違っていて。オブジェクトになりたい気持ちっていうのは人間性を失うんだけれども、なぜか自分が持っているピュアな部分だけを永遠に持ったままあり続けたいっていう思い、多分中二病の時しか思いつかない(笑)
自分の一番良い時を瞬間で封印して、誰かに愛されたい。でも、誰なのかはあまり気にしていない(笑)。そういう凄く抽象的な世界ですね(笑)
―― ありがとうございました。最後に映画ファンにメッセージをお願いします!
海上ミサコ監督
この映画は2015年から撮影をして、クラウドファンディングをして色んな方の協力を得て時間をかけて撮りました。今しか見られない風景、昭和初期のかろうじて残っている風景を捉えて、皆さんの心に残る映画に仕上げました。どうぞ、楽しみに観に来てください!
公式HP
mugenshinshi
キャスト
皆木正純
横尾かな
岡優美子
龍坐
紀那きりこ
杉山文雄
SARU
井上貴子
義 いち
山口美砂
森川陽月
山田歩
他
スタッフ
監督:海上ミサコ
原作:高橋葉介「夢幻紳士 人形地獄」より 早川書房刊
脚本:木家下一裕 、菅沼隆、佐東歩美、海上ミサコ
音楽:スズキケンタロー
撮影・照明:清井俊樹
録音・MA:田中秀樹
VFX・グレーディング:東海林毅
美術:郡司英雄
衣裳:立山功
ヘアメイク:松澤真弓(TTA)、たなかあきら(TTA)
模型製作:電気蜥蜴
編集:海上ミサコ
人形協力:アートマスターズスクール 他
プロデューサー:UNAPON
企画:佐東歩美
製作:ビーチウォーカーズコレクション
2018 年/⽇日本/90 分/Color and B&W/stereo/16:9
配給:ミカタ・エンタテインメント
Ⓒ高橋葉介・早川書房・ビーチウォーカーズコレクション
2021年6月22日(土) K’s cinema ほか全国順次ロードショー