※2019年の間は無料公開予定です
はじめましての人も、既にお知り合いの方もこんにちは。
普段Twitterで「日本人全員が財務諸表を読める世界をつくる」を目標に、#会計クイズを発信している大手町のランダムウォーカーです。
大手町のランダムウォーカー (@OTE_WALK) | TwitterThe latest Tweets from 大手町のランダムウォーカー (@OTE_WALK). 【日本人全員が財務諸表twitter.com
年内最後の分析記事です。
今回はソニーについてです。
赤字体質が続いたソニーですが、近年大復活を遂げました。
そんなソニーの復活劇を、過去の適時開示、有価証券報告書、中期経営計画などのIR資料を元に将来に向かって検証していきます。
スライド枚数は約80枚
遡った決算は約10年
すべて読むのに3~5分ぐらいかかると思います。
ぜひぜひ読んで頂けると幸いです(^^)
1.はじめに:ソニーってどんな会社?
エレクトロニクスや金融のイメージが強いですが、
そもそもソニーってどんな会社?
ということで簡単に紹介しようと思います。
根本にある企業理念は「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」という理念のもと、すべての事業が「感動」を生み出すものとして構成されています
そんなソニーですが、2000年代後半からエレキ関連で稼げなくなりました。
赤字が続き業績低迷しているイメージのある方も多いと思います。
売上高も2000年後半は急な下落はありましたが、近年は落ち着いた推移で動いています
ところが、営業利益を見てみると直近2年は過去最高益を更新しているように絶好調です
利益率もついに大台の10%に到達しました
【そんな絶好調のソニーを支える事業部紹介】
①ホームエンターテイメント
ソニーのエレキの1つです!テレビやビデオが中心です
②モバイルコミュニケーション事業
ソニーのスマートフォン事業です!
Xperiaが有名ですね!
※僕はXperiaのCM好きです。音楽が好きです
③ゲーム
みんな大好きプレイステーション!!!
オンライン対戦が熱いですね!ゲーマの血が騒ぎます!
今年に入って何やらVRの特許も取っていましたね
④映画事業
説明会でスパイダーマンを流したらしいですね笑
制作から配給まで行います!
3,500以上の映画で全50,000エピソードも有しているようです!
⑤音楽
ソニーミュージックが有名ですね!
全400万曲以上を管理し配信しています!
⑥金融事業
ソニーの金融です!ソニー損保、ソニー銀行等が有名ですね
⑦半導体事業
2015年頃には単独のセグメントとしてわけられていませんでしたが、2017年頃より単独セグメントに昇格!
ソニーのエレキやイメージソリューションなどと関連性も高い成長事業です
⑧イメージングプロダクツソリューション
50年近くプロフェッショナル向けの放送用業務機器を手掛けています
さて、以上を踏まえて
絶好調ソニーの営業利益の大半をたたき出す事業は選択肢のうちどれでしょう?
成長率も非常に高いですね!
解答はこの下
↓
それでは正解の発表です。
正解は③のゲーム!
エレキや金融のイメージの強いソニーですが、今はゲームが一番の稼ぎ頭となっています。
それではソニーのセグメント別営業利益のうちわけを見ていきます。
直近の決算では、ソニー全体の営業利益のうち全体の30%近くをゲーム事業が生み出しています。
次が音楽の24%。エンターテイメント関係の事業が約半分を占めています
(一部赤字事業があるため円グラフは歪に表示されています)
ゲーム事業は売上は2兆円規模にもかかわらず、10%を超える高い利益率を叩き出すのが特徴です。そんなに儲かってるんですね。
それでは、元々エレキや金融のイメージの強いソニーですが、いつからエンタメで稼ぐ会社になったのでしょうか?
直近のソニーの当期純利益の推移です。
ポイントは過去最高益を2年連続更新中というところでしょうか。
そもそも僕がソニーを分析する前にこの推移を見た感想は「金融で稼いでいた会社で、こんなに急激に利益が増加するのか!?」でした。
多くの人が持つソニーのイメージは、2009年〜2015年の赤字時代、ここで止まっている方が多いのではないでしょうか?
今回はソニーの平井社長政権の構造改革から、その後の吉田CFOへのバトンタッチまでの流れを追い、その中でソニーがいかにして高収益企業に立て直したかを追っていきます。
2.ソニーの社長交代:平井体制のはじまり
2000代後半より、慢性的な赤字体質になってしまったソニー
2012年4月よりコンテンツ出身の平井社長に交代します
【当時のソニーのセグメントデータ】
多くの人の持っている「金融で稼ぐ会社」のイメージはまさにこの時代のソニーでした。
エレキが完全に赤字体質となり、他の事業の収益性も低く、唯一の希望が金融のみ。
そんな状態からの、平井氏への社長交代でした。
3.平井体制1年目-表面的な止血
【平井体制1年目】
2012年4月
平井氏は早速改革のための中期経営計画を発表します。
10年近く赤字のテレビ事業の再建や
事業ポートフォリオの組み換えが記載されていました
【整合性の取れていない中期経営計画】
しかし、この中期経営計画から当時のソニーの統制が取れていない状況が読み取れます。
テレビ事業は利益重視の再建案を出しているのに、全社戦略は販売拡大で規模を追っているという不整合。
事業ポートフォリオも明確な目的なく、利益をだすための売却が中心でした
結果、一時的に最終利益は黒字化するも、
止血をせずに物凄い勢いで資産を売却し利益を創出だけ。
その場しのぎの問題の先送りで終わった1年目でした。
4.キープレイヤーの就任
【平井体制2~3年目:構造改革本格スタート】
このあと、改革のキープレイヤーである、のちに平井社長の後を引き継ぐ吉田氏がソニーに復帰します。
しかし、平井社長と吉田氏の出会いは対立から始まりました。
当時、吉田氏はソニーの関連会社のソネットの社長をしていました。
ソネットは上場企業であり、幅広い事業を手掛けながらベンチャー支援なども行なっていました。
しかし、2012年にいきなり株式公開買い付けにより、ソニーの100%子会社になります。
これによりソネットは上場から非上場化します。
目的は、色々あったようですが、中でもソネットの保有する含み益を多く含んだDeNAやエムスリー株の売却による益出し目的というのもありました。
結果、上場企業の社長という座も奪われ、自身が目をかけた有望投資先の株も売られてしまい、吉田氏はかなり傷心したようです。
この公開買い付けをキッカケに、吉田氏のリポートラインが平井社長になり定期的に直接やりとりする機会が増えることになります。
当時のソニーには平井社長に意見を言う人もいない中、吉田氏は率直な経営に対する意見を投げ、これが平井社長の心に響き、吉田氏が改革に必要な人材であることを確信したようです。
その後、ソニー再建の想いを平井社長から吉田氏に伝え、吉田氏を口説き落とします。
これ想いが吉田氏に伝わり、ソネットからソニーに復帰することになります。
5.構造改革開始
【バイオ事業の売却】
その後、平井社長と吉田氏は矢継ぎ早に改革を実行していきます。
まずはソニーのテレビで有名なVAIOの売却。
ソニーの創業理念を再定義し、その定義に合致しなかったらため、売却を決意したようです。
【不都合な内容でも堂々と開示】
「問題を覆い隠すとアクションが一手遅れる」と言い、不都合な内容でも堂々と開示し、市場とのコミュニケーションを取るようになります。
これも財務畑出身の吉田氏のアイデアで、IRの重要性からでたアクションです。
【上場来初の無配へ:問題の先送りをしない文化へ】
モバイル事業の減損も早期に受け入れ、上場来初の無配も実施します。
これも問題の先送りをしない文化を作るため率先してトップが動いたアクションとのことだったようです。
【テレビ事業11年ぶりに悲願の黒字】
そしてついにエレキ低迷の象徴であったテレビ事業の黒字化に成功します。
従来の販売量を追う戦略を質に転換することで、高単価の付加価値の高い商品をしっかり売るということを徹底します。
平井社長就任から3年で、構造改革をやりきるというスローガンを掲げ、見事に利益をだす土台が整いました。
6.高収益体質企業へ
【平井体制4年目:高収益企業へと転換する中期経営計画】
利益が出る土台が完成したら成長戦略を描くのが王道です。
ソニーは創業以来初の「高収益企業」という単語を用いるのですが、これは吉田氏の側近の十時氏が草案時に「利益が出ないと関係者にガッカリさせることになるため、収益力にはこだわるべきだ」といいこの文言にこだわったようです
ソニーの成長戦略は各事業を3つの領域に分け、それぞれ異なる方針で戦略を立てることでした。
それぞれの領域ごとの戦略と財務数値の動きを見ていきます
【成長牽引領域】
ソニーの成長領域!
売上、利益を追求し、資源も集中的に投下します
この結果、15年〜19年にわたり、この領域のほとんどの事業で
売上と共に利益率も向上させることに成功します
【安定収益領域】
規模は追求せず、収益性を高める分野。
2つの事業は、15年〜19年の期間で売上規模は縮小するものの、収益力は向上し、安定収益事業に転換します!
【事業変動リスクコントロール領域】
この領域の最優先は赤字の縮小、および、早期の黒字化。
Xperiaを有するモバイルは売上高が一気に縮小するも、赤字は幾分回復します。
このように、領域ごとに配分や力の入れ方に差をつけ、戦略を明確にします。
【高収益体質に生まれ変わったソニー】
そして高収益体質に生まれ変わったソニーの直近の営業利益率は10%
完全に一時の赤字体質は消え、高収益企業に変身します
【ソニーの直近のセグメント別営業利益の稼得割合】
2019年のソニーのセグメント別稼得利益をみてみます。
利益を叩き出すのはゲーム事業、音楽、金融、半導体と、成長牽引領域の事業3つで占めています
【ソニーを支えるゲーム事業】
なかでも一番利益を稼ぐゲーム事業をみてみます。
売上は2兆規模にもかかわらず、10%を超える高い利益率を叩き出します。
【販売と継続課金で囲い込むハイブリッドモデル】
プレイステーションなどのハードは、従来は販売して終わりでしたが、現在のビジネスモデルは販売では終わりません。
プレイステーションを購入しても月額課金サービスに加入しなければ、100%楽しむことができないモデルになっているため、ハードの販売のも継続して収益を生むビジネスモデルが高い収益力の基礎に存在します。
月額課金サービスの有料会員数は3,640万人!
1人当たり1年間に8,970円課金している計算になります。
【各セグメントのキャッシュフローの比較】
ゲーム事業のキャッシュ創出能力も非常に高いです。
非常に高い営業キャッシュフローに対し、投資キャッシュフローはそこまで必要無く、差額のフリーキャッシュフロー(可処分キャッシュ)は全部門トップです
ゲーム事業のROICは54.9%利益額は年々向上する一方、投資額は前期に比べて減少しているということは、これから本格的な回収期間に入ることが読み取れます。
<補足:ROIC>
ソニー:ゲーム事業のROIC
サブスクビジネスが安定し、回収フェーズへ突入
【ソニーを支える音楽事業】
次にソニーを支える音楽事業です。
売上は1兆に及ばない程度ですが、利益率は30%近くあります
【年々拡大するストリーミング収入】
これを牽引するのは年々拡大するストリーミング配信収入
SpotifyやApple Musicで曲を流すとソニーに権利収入が入る仕組みになっています。
直近のソニーは音楽版権に多額の投資をしています。
ストリーミング収入で安定的に収益を得るためには楽曲ラインナップが必須のため、いかに権利を保有できるかが重要になってきます。
このように、財務基盤と組織文化を整え、収益の出る体質にしてからの、事業別に力の入れ方に強弱を付けるという教科書通りの復活戦略でした。
【2019年6月 平井氏退任へ】
平井社長の改革は見事に成功し、「構造改革をやりきる」という目標は達成しました。
その後、2019年6月、後継を右腕であった吉田氏に譲りソニーを勇退します。
以上、ソニー復活までのまとめでした。
今回は過去の適時開示、中期経営計画などを将来に向かってなぞり検証していくという方法をとりましたが、僕自身とても学びがありました!
長々とお付き合い頂きありがとうございます!
今回の分析内容は、会計クイズの勉強コミュニティ「ファイナンスラボ」にて8月に行った勉強会の内容をまとめたものでした。
イベントが無い場合、毎週このような分析を発信しているので、興味のある方ぜひ気軽にお越しください(^-^)
IRが読めるようになるファイナンスラボcommunity.camp-fire.jp
【会計クイズ期末テストのお知らせ】
最後に告知です!!!
オンラインコミュニティ「ファイナンスラボ」にて
12月22日(土曜日)より、「会計クイズ2019年期末テスト」を実施しています。
※30日まで!!!!!!!!
財務諸表の読み方や企業戦略について勉強した方、ぜひご参加いただけますと幸いです!
※中間テストは6月に実施しました。
一言でいうと、オンラインで、会計クイズを解きまくるイベントです!
タイミングは一週間のうち、どこでもいいので、気軽にご参加いただけると幸いです!
参加者特典として、問題の解答解説PDFをお配りしようかと思っています!
(普通にPDF200枚ぐらいあります)
ファイナンスラボってなあに?という方
毎月業種やテーマを絞って、その内容のクイズを毎週発信しています。
(内容レベルについては今回のアパレル企業の分析レベル)
また、月1勉強会も実施しており、オンラインの配信も行っています。
ちなみに来月はクラウドやSaaS関連企業を扱います。
1月12日に勉強会も予定しています(^^)
(勉強会はファイナンスラボメンバーは無料で参加できます)
実況中継!IR資料の読み方!内容:財務諸表はいつも会計クイズに参加していて理解したけど、いざ自分で財務分析するにはどうしたらいいの?ということで、決算peatix.com
ご興味ある方ぜひ気軽にご参加くださいー(^^)
IRが読めるようになるファイナンスラボcommunity.camp-fire.jp
今回もお付き合い頂きありがとうございました!!
ぜひ感想や他のソニーの知識を共有頂けると幸いです!!!!!
Twitterも気軽にフォローよろしくお願いします(^-^)
大手町のランダムウォーカー (@OTE_WALK) | TwitterThe latest Tweets from 大手町のランダムウォーカー (@OTE_WALK). 【日本人全員が財務諸表twitter.com
インスタも絶賛更新中です(^^)
【会計クイズ】大手町のランダムウォーカー(@ote_walk) • Instagram写真と動画フォロワー11千人、投稿25件。【日本人全員が財務諸表を読める世界を創る】 企業のビジネスモデルや財務数値が読めるようになwww.instagram.com
おしまい