text:Ogawa Fumio(小川フミオ) photo:Hidenori Hanamura (花村英典)
もくじ
プロローグ
ー 2代目Q5/SQ5 10/2〜日本発売
試乗記
ー アウディSQ5試乗 エンジンはなめらか
ー ドライブモードは6つ それぞれに個性
外装
ー 2代目、初代よりも「やや大型化」
内装
ー 室内 心地よさが乗員つつむ
パワートレイン
ー 小さな積み重ねで軽量化にも寄与
装備
ー 安全装備と運転支援システム拡充へ
スペック
ー アウディQ5/SQ5のスペックを比較
プロローグ
2代目Q5/SQ5 10/2〜日本発売
アウディQ5およびSQ5がフルモデルチェンジ。2代目となった最新モデルが2017年10月2日から日本発売開始される。
Q5は2ℓ4気筒エンジン、SQ5は3ℓV型6気筒エンジンを搭載しているのが特徴。SQ5はQ5ラインナップにおける最上級モデルと位置づけられる。
アウディQ5は使い勝手のいいボディサイズで、人気の高いモデルだ。凝縮感のあるスタイリングで、スポーティさと適度なエレンガントさがミックスされている。それは新型も同様。
個人的にも(懐がそれなりに温かくて)ひとも乗せたい荷物も載せたいという目的でというとき、候補に入れたい1台だ。
新しいQ5とSQ5は、それゆえ注目している。なにしろ中身が完全に新しい。シャシーも新しければ、サスペンションも、エンジン(の一部)も、電子制御技術も刷新されている。
今回試乗したのは、Q5のトップモデル、SQ5である。さきに触れたように3ℓV6搭載。従来とはまったく違うエンジンだ。
新設計のV6の特徴はアウディいうところの「Bサイクル」採用にある。吸気バルブを通常のオットーサイクルエンジンより早めに閉じてエネルギー効率を高めるミラーサイクルエンジンだ。
ターボチャージャーなど圧縮比を下げる必要のある過給エンジンと相性のいいシステムである。新型V6には従来のスーパーチャージャーでなくツインスクロールターボチャージャーが装備されている。
このエンジンがかなりいいフィーリングだ。
試乗記
アウディSQ5試乗 エンジンはなめらか
トルクがたっぷりあって回転マナーはじつにスムーズ。余裕あるサイズのボディとも相性がよい。
SQ5は静止から時速100kmまでの加速が5.4秒しかかからないなど俊足ぶりが喧伝されている。しかしじつは印象として、落ち着いて乗れるおとなっぽさにもっとも好感がもてた。
1370rpmから51.0kg-mの最大トルクを発生するという設定だけあって、アクセルペダルの踏み込み量はごくわずかで事足りる。
街乗りとか東京都内の首都高速を流すていどなら、1500rpmも回っていれば十分。すこしとばすときも2000rpmを超えることはほとんどなかった。
アクセルペダルの開け閉めは最低限。これなら燃費が11%向上したというメーカーの説明にも納得できそうだ。
8段ティプトロニック(オートマティック)変速機は基本的に上のギアを使って燃費をかせぐ設定であり、同時にアクセルペダルから足を離すとフリーホイール機構が働く。
時速55kmから160kmの間では、アクセルペダルへの負荷がなくなると瞬時にトランスミッションとエンジンが切り離される。
エンジンをアイドル回転にすることで、さらに燃費低減をはかるのだ。運転していても、回転計に注意していないかぎり、それとはわからない。
SQ5には「オート」「エフィシエンシー」「コンフォート」「ダイナミック」「インディビデュアル」そして「オフロード」と6つのモードを持つドライブモードセレクターが備わる。詳しく見ていこう。
ドライブモードは6つ それぞれに個性
公道で「オフロード」を試すことはなかったが、少なくとも「ダイナミック」と「コンフォート」はあきらかにキャラクターが変わる。
ダッシュボードのスイッチ(やや使いにくいところにある)でスポーツモードである「ダイナミック」を選ぶと、高めのエンジン回転数を使いつつ後輪へのトルク配分が多めに行われる。
乗り心地はあきらかに硬めになりステアリングホイールを切ったときの車体の反応はするどさを増す。ひとりで高速やワインディングロードをとばそうというときに楽しめるモードだ。
個人的には、ふだん使いのときはその対極にあるともいえる「コンフォート」が好みだ。ダンピング設定はソフトになり車体の上下動が大きくなる。
ふわりふわりと表現すると誤解を呼ぶかもしれないけれど、脚の長いクロスカントリー型4WDに近い鷹揚な乗り味を体験できるのだ。
編集部の担当Uさんは「ちょっと落ち着かない」と表現していたが、それもわからないでもない。でもハンドリングがあいまいになることはない。
とりわけ高速から中速コーナーでは、ソフトとはいえ脚まわりはしっかり踏ん張るし、操舵感は正確だし、まったく違和感がない。上手な設定だ。
オールマイティといえるのが「オート」モードである。最大限のトラクションと、それとバランスしたハンドリングを追求したモード。このクルマのよさが端的に味わえる。
日本の自動車メーカーでSUVの開発を担当している技術者と話したとき、アウディの「オート」モードの話題が出たことがある。そのひとは「アウディの緻密な制御に感心している」と語っていた。
加速度や路面からの影響などでセッティングを細かく調整していくダンピングコントロール。おかげで硬くもなくソフトすぎもせず、まさにいい意味でほどよいのだ。
外装
2代目、初代よりも「やや大型化」
ボディサイズは従来型に対して全体にやや大型化。全長で34mm長く、全幅は同一、全高は6mm高くなっている。ホイールベースは12mm長い(すべて欧州値を参考)。
新型はアグレッシブでもある。シングルフレームとよばれるフロントグリルを中心に大きなエアダムが備わるのだ。
ボンネット前端が前にまわりこむデザインはセダンに準じるテーマで、グリルにまで届いている。そこに矩形のLEDヘッドランプ。
オプションで16個のLEDを使うマトリックスLEDのヘッドランプを選ぶことも出来るようだ。
車体側面には波うつキャラクターラインが入る。それで前後ホイールハウスの存在感が強調されるのはセダンなどと共通のテーマだ。
内装
室内 心地よさが乗員つつむ
ドライブしたときの印象を書いてきたが、機能面でもSQ5(Q5)はすぐれている。余裕ある室内空間にたっぷりした積載量だ。荷室は通常状態で550ℓもある。
コマンドポジションという高い目線の運転席は女性にとってSUVのメリットだ。遠くが見えると安心感も高い。
ファミリーユースにいいが、後席にビジネスパートナーを載せるような使い方にも向いている。身長180cmのおとなが2人、快適に乗っていられるからだ。
前席下への足入れもちゃんとできるし、座面が下がりすぎていて腿が浮いてしまうこともない。しっかりと気持ちよく乗員をホールドしてくれる。
操縦していると20インチタイヤの個性なのか、コンフォートモードでもややゴツゴツとした感触がステアリングホイールを通じて伝わってくる。しかし乗員は(自動車ジャーナリストでさえ)まったく気にならないそうだ。
パワートレイン
小さな積み重ねで軽量化にも寄与
いっぽうQ5は2ℓ4気筒エンジン搭載。このエンジンは従来より出力で32ps、トルク2.0kg-mアップされている。
シリンダーヘッドとエグゾーストマニフォルドが一体成形したコンパクトな設計である。排気側のバルブはリフト量可変で、ターボチャージャーのウェイストゲートは電動と、より高い効率を追求したのがパワーアップに結びついている。
Q5のトランスミッションはツインクラッチタイプの7段Sトロニック。トルクコンバーターを使わないため軽量化がメリットのひとつにあげられている。
そういえば電動パワーステアリングの長所にもオイルを使わないゆえの効率のよさを、アウディでは謳う。少しずつ削っていくことが総体として軽量化につながるということなのだ。
新しさには軽量化も含まれる。ボディはやや大きくなったいっぽう、軽量素材を多用。Q5で約60kg、SQ5で約70kgの減量に成功したそうだ。
「Q」はアウディのラインナップにおいてSUVを表すだけに、両モデルともフルタイム4WDシステムであるクワトロ搭載だ。
とりわけQ5のクワトロシステムは刷新されている。特徴はコンピューターネットワークとつながっているところ。速度や舵角とともにスリップ率の検知などがつねに行われる。
従来の4WDシステムはタイヤがスリップしてから(瞬時であるにせよ)トラクションコントロールを働かせていた。新世代のクワトロの特徴は予測にあるとアウディでは説明する。
たとえば「高い速度でのコーナリングにおいて内側前輪がグリップを失う0.5秒前を目標」(広報資料より)にすべてのタイヤに最適なグリップ力を与えるというのだ。
装備
安全装備と運転支援システム拡充へ
安全装備と運転支援システムについてアウディはパイオニア的な存在だ。アダプティブクルーズコントロールに加えて、渋滞時に先行車を追随して加減速、停止と発進、ステアリングホイール操作などを行う「トラフィックジャムアシスト」も備わる。
衝突回避および被害軽減システムも充実している。歩行者検知機能付き衝突軽減システム「アウディプレセンスシティ」や「アウディサイドアシスト」も。
降車時にドアを開けようとする際、接近する車両などがあったとき警告を発する「エグジットワーニング」(オプション)も、個人的には欲しい装備だ。
万能選手のQ5と、より運転を楽しみたいひと向けのSQ5。アウディのクルマづくりの結晶ともいえるSUVであるだけに、乗るとどんどん好きになっていくのはまちがいない。
スペック
アウディQ5/SQ5のスペックを比較
車名
アウディQ5 2.0 TFSI クワトロ
アウディSQ5
エンジン
直列4気筒1984ccターボ
V型6気筒2994ccターボ
ステアリング
ラック&ピニオン
全長
4680mm
4685mm
全幅
1900mm
全高
1665mm
1635mm
ホイールベース
2825mm
トレッド
1620mm(前)/1610mm(後)
車両重量
1820kg(17インチ仕様)
1930kg
最高出力
252ps/5000-6000rpm
354ps/5400-6400rpm
最大トルク
37.7kg-m/1600-4500rpm
51.0kg-m/1370-4500rpm
燃料タンク容量
70ℓ
公表燃費(JC08)
13.9km/ℓ
11.9km/ℓ
最小回転半径
5.5m