cat_oa-rp16797_issue_35f0e54a053d oa-rp16797_0_35f0e54a053d_石黒エレナ、インタビュー(2) レースクイーンをめざす、あなたへ 35f0e54a053d 35f0e54a053d 石黒エレナ、インタビュー(2) レースクイーンをめざす、あなたへ oa-rp16797

石黒エレナ、インタビュー(2) レースクイーンをめざす、あなたへ

2018年9月23日 11:40 AUTOCAR JAPAN

もくじ


ー RQの責任、そしてその意味とは
ー レースチームの中におけるRQ
ー 2年間のレースクイーン経験で得たもの

RQの責任、そしてその意味とは

現在、モデル・キャスターなどタレントとして活躍している石黒エレナさんのインタビュー第2回目は、2013〜2014年の2年間に渡って活躍していたレースクイーン(以下、RQ)時代を振り返り、彼女自身が考えるRQの仕事と本質を語ってもらう。そこには表面的な華やかさとは異なった世界があったようだ。

スーパーGTの場合、キッズ・ピット・パドックウォーク、レース中においてもステージイベントや物販などあらゆる場面でRQの姿を見ることができる。

写真撮影に応じたり、お客さんにスマイルを振りまいたりと、なにかと「男臭い」サーキットを華やかに彩る彼女達だが、その華やかさや存在自体にも、もちろん意味がある。


その意味とRQの存在意義とは、石黒さん自身の言葉で語っていただこう。

「RQというお仕事自体はスポンサー様の名前を背負って、スポンサー様やチームと皆さん(お客さん)との懸け橋となり、RQを通してファンになってもらったり、名前や商品を広めるための存在だと思っています」

「初音ミクもレイブリックさんの時も、RQだからフワァーっと軽い感じで動いているのではなくて、RQそれぞれが個々で責任を背負って、スポンサー様やチームを周知してもらうために場面場面で動く。そういう意識が強い方に囲まれていたので、すごく大事なお仕事だなというのは、自分でも感じていました」

「たとえばステージイベントの『ギャル・オン・ステージ』では、レース好きの方はもちろん、週末にちょっとレースを見に行こうという感じで来たいただいたお客さんにも、チームを良く知ってもらうために事前に女の子同士でトークの内容を相談するんです」

「チーム名やゼッケン、監督や選手の名前などはもちろんですが、それ以上の魅力をどう伝えるかを考えていました」















レースチームの中におけるRQ

広告塔として、チームの中では直接お客さんに対することが多いRQという仕事。彼女が所属していたチームでは、イベントや物販、来客の対応などでレース期間中、ほとんど休憩の時間も取れないほどだったという。

「今思うと何をしてたのか細かく思い出せないほど、怒涛の2日間でしたね(笑)」

スポンサー・チームをアピールするために、主に外に向けて活動を行うRQ。では、チーム内での関係性はどんなものだったのだろうか?


「初音ミクの時は、ドライバーが谷口(信輝)さんと片岡(龍也)さんで、走るお笑い芸人って言われているくらいだったので、チーム全体が和気あいあいとして、仲が良かったですね。移動や空き時間には、いろいろな話もしましたし」

「ただ、レース中はシリアスな状態なので、ドライバーさんとは一切話しをしなかったですね、レース中は、ピットに入ることがあってもエンジニアさんの邪魔にもならないように。360°目を配って、かなり気を使っていました」


「エンジニアさんにちょっとでも『そこどいて』と言われるようなことがあったら、その子の非といいますか、そんなこと自体は起きてはいけないことだと思っていましたから」

「もちろんチームにもよりますけど、RQはアピールの方の仕事ですから、レースでは絶対に邪魔にはならないように心がけていました。そういう意味では、皆さんが思っているような、華やかなキラキラしたお仕事ではないですよね」

「RQ同士はひと見知りだったりとか、最初は壁を感じることもありましたが、1年間もありますし、自然と仲良くなってしまいますね。先ほど言ったスポンサー様/チームをアピールする役割ですから、ギスギスした関係では1年間やっていけませんし」

















2年間のレースクイーン経験で得たもの

楽しい思い出を語る際の笑顔とは異なり、真剣な表情で「RQとは?」という質問に答えてくれた彼女。その真剣な表情からは「仕事」に対する真摯な想いを知ることができた。

正面から仕事に取組み、チーム・スポンサーの広告塔として過ごしたRQの2年間。石黒さんにとって、何を得た2年間だったのだろうか。そしてその2年間で得た経験から伝えたいこととは?

「人生経験の中でためになった2年間でしたね。(RQをやらなければ)人生で絶対に触れないようなことなどを経験させていただき、身になったという感じ。華やかと思っていたRQの仕事はスポンサー様の名前を背負っている以上、実は責任重大な仕事なんだということも実感できましたし」


「これからRQを目指すなら。華やかな面だけではなくその仕事をしっかり理解したうえでそれでもやってみようという、そういう女の子が増えてくれればいいと思います。もし、スポンサー様などが何もいわなくても、彼女自身でそうして欲しいなと思いますね。チームの一員として。写真を撮られる時も、たとえばなぜコスチュームのここにRAYBRIGのロゴが入っているのかをわかったうえで頑張って欲しいですね」

石黒さんのRQとしての2年間のエピソードから感じられるのは、スポンサーなどの広告塔として外に向けてアピールするという、役割を全うするプロ意識の高さ。その経験は、現在の企業や商品をアピールするというモデルでの仕事でも役立っているという。

次回はRQの話題を離れて、現在の石黒さんの仕事に対する想い、そして自分自身について語ってもらうことにしよう。

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cat_oa-rp16797_issue_35f0e54a053d oa-rp16797_0_09ac3aac3965_【未来を勝ち取れ】ルイス・ハミルトン 頂点に立ち続けるモチベーションとは AUTOCARアワード2021 09ac3aac3965 09ac3aac3965 【未来を勝ち取れ】ルイス・ハミルトン 頂点に立ち続けるモチベーションとは AUTOCARアワード2021 oa-rp16797

【未来を勝ち取れ】ルイス・ハミルトン 頂点に立ち続けるモチベーションとは AUTOCARアワード2021

2021年6月14日 18:05 AUTOCAR JAPAN

グリッドに並ぶ唯一の黒人ドライバー

text:Mark Tisshaw(マーク・ティショー)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
Netflixの「Formula 1: 栄光のグランプリ」のシーズン3最後のエピソードでは、若きルイス・ハミルトンがインタビューを受ける様子が映っている。レポーターは、「ルイスが勝ち始めると、グリッド上で唯一の黒人であるという事実が問題になった」と言う。
【画像】サステイナブルな未来に向けて【メルセデス・ベンツのEV3選】 全109枚
ハミルトンは、自分の成功についてではなく、カート時代に経験した人種差別的な言動について語った。「過去数年間、人種差別的な名前の呼ばれ方をしたこともありましたが、最近は誰に何を言われても無視するようにしているんです」

映像は父親のアンソニーに切り替わる。「勝つかどうかとか、肌の色がどうとか、そういうことを気にする人たちとは関わらないんです。わたし達はコースに出て、ベストを尽くすのみです」

その映像は胸を打つ。F1に出て、いつかはワールドチャンピオンになるという夢を持ちながら、差別を受け、非難されつつも、好きなことをしている少年の姿がある。「カートをやってみてどうですか」という質問ではなく、「肌の色で罵倒されるのはどんな感じですか」と聞かれるのだ。

36歳のハミルトンは、この頃を振り返り、「わたしはまだ8歳でした」と語り出す。「幼い8歳の子供を見下して、人生で何も達成できないと言う人がいるとしたら、その人はよほどまずい状況にいるのでしょう」

昨年5月、ミネソタ州で46歳の黒人米国人ジョージ・フロイドが白人警官に殺害される事件が発生した。この衝撃的な映像は世界中に流れ、世界的な反レイシズム運動の先駆けとなったが、その中でも最も声高なリーダーの1人がルイス・ハミルトンだった。

「ジョージに起きたことは、多くの感情を呼び起こしました」と、ハミルトンはNetflixの番組で語っている。「わたしの人生でこれまで抑圧してきたものが、突然表面に現れたのです。もう黙っているわけにはいきません」

「世界中のすべての黒人の子供たちはいずれ、人種差別を経験するでしょう。それが事実なんです。差別的な呼ばれ方をしたり、Nワードが飛び交ったり、自分の国にいるのに自分の国に帰れと言われたり……。文字通り、何百万人もの人々が(わたしよりも)はるかにひどい経験をしているんです。この状況を変える必要があります」

成功を掴み、変化を起こす

フロイドに起きたことへの怒りに突き動かされ、7月にオーストリアで開催された2020年シーズンの第1戦のグリッドには、新しいルイス・ハミルトンが並んだ。レースに勝つための原動力は健在だが、それと同時に、活動家、反レイシズム運動家、そしてブラック・ライヴズ・マター(BLM)運動の事実上のリーダーの1人という側面もあった。

ハミルトンは、他のドライバーとともにレーススタート時に膝をつき、スポーツ界の人種差別に対する抗議の意思を示した。ムジェロでは「ブレオナ・テイラーを殺した警官を逮捕せよ」というTシャツを着て表彰台に登った。

「わたしにフィルターはありません。心に思ったことをそのまま口にするんです。誰かを怒らせても、それが変化をもたらすのであれば、あまり気にしません。今年(2020年)に示したのは、成功を手にしたとき、それで何をしようとしているのかということです。もし、わたしがすべてのチャンピオンシップに勝ち、あらゆる成功を手にしたとして、そこで何も変化を起こさないなんて絶対にありえません」

英AUTOCAR編集部の記者は、今年のエディターズ・アワードを受賞したハミルトンにインタビューする数週間前にNetflixの番組を観た。エディターズ・アワードは、優れた成功を収めた個人にAUTOCARから贈られる賞だ。

あのNetflixの映像を見て、ハミルトンへの質問の仕方が変わったのは確かだ。グランプリ終了後、マシンから降りてすぐマイクを顔に押し付けられ、チームメイトとのバトルやタイヤの感想を聞かれるのとは違い、映像内の数分間で彼は自分の原動力やモチベーションを明らかにしているのだ。

しかし、わたし達が知るべきルイス・ハミルトンはもう1人いる。彼は、内心で彼の存在を望んでいなかった人たちと戦いながら、地味なスタート地点から信じられないようなことを成し遂げてきた、興味深く、明瞭な人物なのだ。

ポルティマンで開催されたポルトガルGPを前に、ハミルトンに話を聞いた。15分という限られた時間を与えられ、オンライン・ミーティングの画面の向こう側に置かれた空の椅子を見つめながら、英国のスポーツ騎士が着席するのを待つ間、記者の緊張がほぐれることはなかった。

記者が最後にインタビューしたとき、彼は上手くいっておらず、とても気まずかった(すぐにその場を離れたがっていた)記憶がまだ頭に残っていて、どうにも落ち着かないのだ。しかし、「昨年の結果はこれまでのキャリアで最大の出来事でしたか」という質問に対して、ハミルトンは最初から温かく、親しみやすく、コース上で起こったことだけでなくコース外でのエピソードも含めて、じっくり考えながら答えてくれた。

「そうですね、間違いなく去年が一番大きかったと思います。わたしは、ある地点に到達することを夢見て人生を過ごしてきました。それを達成してから、自分の目的というものが見えてきました」

なぜ行動を起こせない人がいるのか

「わたしがここにいるのには何か理由があるはずだと、いつも感じていました。有色人種で同レベルのレースをしているのはわたしだけですが、それがどういうことなのか、よく理解できませんでした。昨年、そのことが明るみに出て、変化を起こせる可能性と土台、そして人々からの良い反応を得られたことをとても光栄に思っています」

このような社会的な問題に対して声を上げたいと思うことと、ハミルトンのように知名度の高い人物がそれを実行することは別である。スポーツ選手はイメージや支持を守らなければならないため、自分の言葉が影響を与える可能性のある問題について、意見を述べる人が少ないのだ。

では、ハミルトンがロールモデルとしての自覚を持つまでにどのくらいの時間がかかったのだろうか。また、社会問題について発言するスポーツ選手が少ないのはなぜだと考えているのだろうか。

「世間の注目を浴びて成長するのは、必ずしも容易なことではありません。そうなりたいかどうかに関わらず、自分はモデルであり、自分の行動や言葉は他の人に影響を与えるのです」

ハミルトンは言葉を慎重に選びながら、2つ目の質問に答えていく。

「これには2つの側面があります。1つは、語れるほどの知識がないと感じている人がいるということです。わたしも、下調べをしないと話せないことがあります。しかし、学ぶのに遅すぎるということはないのです」

「わたし達が若いときに、このようなことを教えてもらえなかったのが原因というわけではありません。ドキュメンタリーを見たり、本を読んだりして、自分で勉強している人もいるのです。もっと多くの人がそうする必要があると思います」

「一方で、危険だと感じて口にしない人もいます。国や仲間にどう見られるか、そんなことを考えるのです。まだまだ先は長いですね。昨年は声を上げたり、発言したりすることが目的でしたが、今年は本当に行動に移さなければなりません。でも、まだ口に出さない人もいますから、道のりは長いですよ」

F1は多様性に欠けている

その行動とは、F1の「We Race as One(我々は一丸となってレースを戦う)」キャンペーンを含むもので、今シーズンは多様性を奨励し、差別に取り組むために、より大きな土台を手に入れた。

レース前には、ドライバーたちがグリッドに集合し、希望者は膝をつくことができる。昨年の14人から今年は10人に減ったものの、昨年のような混沌とした状況ではなく、今年はより組織的で統一された方法で行われている。ハミルトンは今年の初戦バーレーンで、全員で膝をつくことが重要だとは思わないと語った。

「重要なのはバックグラウンドで何をするかであり、ポジティブな変化をもたらすことです。スポーツがもっとリードするように、どのように協力できるかを考えます」

ハミルトンは、この勢いを維持するために人種差別や不平等に反対する発言をしたいと考えており、それがこのスポーツを続ける最大のモチベーションとなっている。

「自分が成長していくにつれ、わたし達を取り巻く問題の大きさを理解するようになりました。何でもできるようになりたいし、人の役にも立ちたい。ですが、このスポーツは多様性に欠けていると思います」

「未だに責任を問われないチームや、問題がないと信じている人々もいます。過去にも現在にも、問題ではないと発言している指導者がいます。ですから、これは現在進行形の戦いであり、短期間では勝てないでしょう」

「幸運にも、わたしは自分の好きなこと、つまりレースをすることができるので、この問題に大きく関わっていますが、裏では多くのオンライン・ミーティングに出演し、不快な会話をしています」

「現在、メルセデスはチーム内の多様性を促進するためにさまざまな活動を行っており、わたしはそれをとても誇りに思っています。他のチームやスポーツ界でも、このようなことがもっと起こってほしいです。そのことに集中していますし、その上、自分の好きなことをできています。生きる理由を与えてくれているので、感謝しています」

勝利の鍵は「準備」にあり

では、ここからはレーサーのルイスへ尋ねよう。自分のF1での記録や統計をすべて把握しているかどうかを訊くと、彼は次のように答えた。

「正直なところ、わからないですね。唯一知っているのは、チャンピオンの数だけです」

インタビュー時点での彼の記録は、100回のポールポジション、98回の優勝、169回の表彰台、55回の最速ラップ、3879点のキャリアポイントに加えて、優勝が7回である。

統計的には、ハミルトンはF1史上最も偉大なドライバーである。しかし、史上最高のドライバーとは?今日はそのことを議論するつもりはない。記者が知りたいのは、ハミルトンがなぜ、毎回論争もなく、ほとんどミスもなく、クリーンに勝つことができるのか、ということだ。

「いや、そんなことはありませんよ!グラベルに突っ込むのを見たでしょう」

イモラでは、優勝を争うレッドブル・ホンダのライバル、マックス・フェルスタッペンを追い詰めるためにコースアウトしてしまったのだ。その後に起きたアクシデントによるセーフティーカー導入がなければ、ハミルトンが2位に返り咲くことは不可能だっただろう。

「わたし達全員にとっての夢は、未来の予知能力を手に入れることだと思います。しかし、誰もそんな能力は持ち合わせていません。では、次善の策は何か。できる限りの準備をすることです。週末に向けてどれだけ準備をするか、自分の長所と短所を理解することです」

「もちろん、その中には経験を必要とするものもありますが、適切なタイミングで適切な場所にいることは、10歳のときにオートスポーツ・アワードに参加したときから意識していました。たまたまロン(当時のマクラーレンCEO、デニス)が来ていて、彼の目に留まったんです。それがきっかけで、わたしの人生にはいろいろなことが起こりました」

デニスはその夜、若き日のハミルトンと握手を交わし、彼の成長を見守り、すぐにジュニアドライバーとして契約した。

「今でも、どう予選を通過するか、どうレースに参加するか、どうコースに出るかによって、良い結果が得られることもあれば、破滅的な結果になることもあります。経験を積みながら、それらのバランスの取り方を学んでいるところです」

F1に参加できただけでも大きな誇り

自身の統計を知らないというのは、最も成功したスポーツ選手に共通するテーマであり、彼らにとっては次の勝利が常に重要なのだ。しかし、最も過酷なスポーツの世界で15シーズンを過ごし、多くのレースで勝利してきたハミルトンにとって、グリッドにとどまることはどれほど難しいことなのだろうか。

「過程が大事なんです。今年は何に直面するかわかりません。もちろん、毎年信じられないほど難しくなることは予想できます。まだ21のレースが残っています。長いですね……。すでに1年の大半を過ごしたような気がします。でも、これからもっと激しく、もっともっと厳しいものになっていくでしょう」

「わたしにとっては、F1に出られたことだけでも大きなマイルストーンであり、常に誇りに思っていることの1つです。なぜなら、それは家族のおかげだからです。両親の献身は、わたしにとって想像を絶するものでした」

「今日の世界では、人々は新しいクルマ、新しい家、新しい服を買い、ショッピングで良いものを手に入れようとしていますが、わたしの両親は長い目で見て、わたしに自分たちよりも良い生活をさせるために、そのようなことをすべて諦めました」

ハミルトンの内面には、父親のソファで寝ながら育ち、黒人チャンピオンはおろか黒人選手が誕生したこともないスポーツを制覇するという夢を追い続けてきた、謙虚な生い立ちの人間性が残っていることは明らかだ。

ネガを自身の力に変える

ハミルトンはそのような状況を経て、同世代はもちろん、間違いなく他のどの世代よりも最高のレーサーとしての地位を確立した。彼は、スポーツや個人的な成功に付随する2つの要素、富とライフスタイルも手に入れた。

しかし、なぜか過去のどの英国人ワールドチャンピオンよりも、彼の名声、財力、外面的な特徴、ライフスタイルが本人にとって不利になっている。この違いは何なのだろう。コース外でのハミルトンの趣味(音楽やファッション、その他諸々)に人々が疑問を抱くのは、彼にとって今に始まったことではない。しかし、彼はそれに惑わされるのではなく、サーキットでの自分をさらに磨くための手段と考えてきた。

「すべての人に言えることではありませんが、クリエイティブなはけ口を持つことは重要です。今の時代、世界中でメンタルヘルスが問題になっています。だからこそ、ネガティブなエネルギーや感情をポジティブなものに変えて、何かを構築したり成長させたりする方法を見つけることは、プラスでしかありません」

「楽器やファッションを学び、自分の服をデザインするなど、何か新しいことを学ぶことで、集中して行動するための道標を見つけられます。わたしはそれをネガティブなことだとは思いません。わたしはずいぶん前から、このような(レース以外の)ことを始めました」

「何年も前は、気が散るとよく言われていましたが、実際にレースでは勝つことができました。今ではすっかり受け入れられています。昔は枠にはめられて1つのジャンルしかできませんでしたが、今は多面的であってもいい時代だと思います」

多面的。ルイス・ハミルトンは確かにそうだ。謙虚で、感謝の気持ちを忘れず、知的で、好奇心が強く、明瞭で、魅力的で、今では政治家のように運動をリードしている。また、優れたレーシングドライバーでもあり、あらゆる賞賛、栄誉、成功に値する人物でもある。ハミルトンがどこから来て、何を経験して頂点に立ったのかを考えると、その功績はより印象的なものとなる。

チャンピオンのガレージ

◇変化へのコミットメント

昨年、ハミルトンはロイヤル・アカデミー・オブ・エンジニアリング(王立工学アカデミー)と協力して、英国のモータースポーツにおける黒人の待遇改善を目的とした「ハミルトン・コミッション」を立ち上げた。彼は2019年末にメルセデスAMGのチーム写真を見て、モータースポーツ界全体における有色人種の数の少なさを反省したことがきっかけで、この活動を始めた。

「ハミルトン委員会には情熱を持って取り組んでいて、これまでに成し遂げてきたことを誇りに思っています。ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・エンジニアリングは、政府関係者や黒人コミュニティの関係者など、経験豊富な人たちで構成された素晴らしいコミッションのもと、全面的に協力して素晴らしい仕事をしています」

「研究は終わりに近づいていますが、わたし達の提言が変化をもたらすものだと信じています。このコミッションはこれまで教育的な段階にあったので、これからスポーツに参加しようとしている若い人たちにはまだ影響を与えていません。しかし、それこそが目標であり、結果が出るまで諦めることはできません。数か月後には提言が出されるはずで、とても楽しみにしています」

◇負けず嫌い

2000年、15歳のハミルトンは、英AUTOCAR編集部が主催したイベント「Autocar Sideways Challenge」への招待を受けた。それを覚えているかどうか尋ねると、「覚えていますよ」と迷わず答えた。

「M3でしたよね?M3のクーペかな?わたしは本当に記憶力が悪いのですが、その日のことは覚えています。名前は思い出せませんが、ラリードライバーと一緒に走って、彼がクルマをコントロールしているのを見て、とても感動したのを覚えていますよ」

「わたしは負けず嫌いなので、当時はクルマをスライドさせてコースを走ることができず、とても悔しい思いをしました。でも、本当に素晴らしい経験でした」

◇ハミルトンのガレージ

F1を7回制覇したチャンピオンは、どんなクルマでお店に行くのだろうか?

「小さなクルマのコレクションを持っているんです。正直に言うと、長い間どれも運転していません。つい最近、メルセデスAMG GTでロサンゼルスに行ってきたんですが、いまは生活のすべてをサステイナブルで地球に優しいものに変えようとしているんです」

「クルマで迎えに来てもらうときは、メルセデスのEQCにするようにしています。モナコの自宅では、EQCとスマート・ブラバスを使っています。マクラーレンとパガーニ・ゾンダもありますが、1年以上動いていないので、埃をかぶっているだけなんです」

「今でもEタイプのジャガーのような古いクルマが好きですし、(フェラーリの)F40を持つことをずっと夢見てきましたが、世界はよりサステイナブルな方向に向かっていますよね」

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cat_oa-rp16797_issue_35f0e54a053d oa-rp16797_0_6d421a71ae9d_【8月に正式発表】スバル、改良新型フォレスターを公開 新アイサイト搭載 6d421a71ae9d 6d421a71ae9d 【8月に正式発表】スバル、改良新型フォレスターを公開 新アイサイト搭載 oa-rp16797

【8月に正式発表】スバル、改良新型フォレスターを公開 新アイサイト搭載

2021年6月14日 12:10 AUTOCAR JAPAN

6月14日から先行受注

スバル・フォレスターの大幅改良モデル(日本仕様)の情報が公開された。
【画像】改良新型フォレスター【従来型と比べる】 全52枚
正式発表は8月を予定しており、本日より先行予約の受付けが開始される。

現行世代のフォレスターは5代目にあたり、同社が最量販モデルと位置づけるグローバル戦略車として2018年に登場。

日本市場では2020年4月~2021年3月の1年間で、インプレッサ(3万1594台)に次ぐ、2万3664台を販売している。

今回の大幅改良では、スバルのデザインコンセプト「BOLDER」表現を取り入れたフロントフェイスや新デザインのアルミホイールを採用。SUVらしい迫力のある姿を強調している。

走行性能では全グレードで、「しなやかさとスポーティさを高い次元で両立」するために足まわりに手を加えた。

さらに、アダプティブ変速制御「eアクティブシフトコントロール」を、eボクサー搭載車全グレードに拡大展開。

安全性能では、「新世代アイサイト」を搭載したのがトピックだ。ステレオカメラの広角化やソフトウェアの改良により、これまで以上に幅広いシーンで安全運転のサポートを目指す。

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cat_oa-rp16797_issue_35f0e54a053d oa-rp16797_0_4d788017b32a_【純EVへコンバージョン】エヴァラティ・ポルシェ964 シグネチャーへ試乗 RRで507ps 4d788017b32a 4d788017b32a 【純EVへコンバージョン】エヴァラティ・ポルシェ964 シグネチャーへ試乗 RRで507ps oa-rp16797

【純EVへコンバージョン】エヴァラティ・ポルシェ964 シグネチャーへ試乗 RRで507ps

2021年6月14日 08:25 AUTOCAR JAPAN

テスラ製ツインモーターで507ps

text:Mike Duff(マイク・ダフ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
 

ポルシェは当面、911を純EVにすることはない。でも1989年に発売された964型の911を、純EVにコンバージョン(エレクトロモッド)してくれる企業は存在する。フラット6とガソリンタンクを、駆動用モーターとバッテリーに置き換えたければ。
【画像】エヴァラティ・ポルシェ964 純EVされるクラシックとレストモッド版を写真で 全116枚
英国のエヴァラティ社は、様々なクラシックカーへエレクトロモッドの見通しを立てている。ワイドボディ化された964は、同社が可能とする内容と品質、得られるドライビング体験を提示することを目的に誕生した。

その仕上がりは素晴らしい。だが、努力相応の価値があると感じるかどうかは、空冷のポルシェ911や、電動化技術に対する考え方で変わってくるだろう。

今回試乗したエヴァラティ・ポルシェ964 シグネチャーには、テスラ由来のACインダクション・モーターが2基搭載されている。システム総合での最高出力は、507psに達する。

モーターが2基といっても四輪駆動ではなく、共有のシャフトを介して後輪のみを駆動する。途中、リミテッドスリップ・デフも挟まれる。モーターはリアアスクルの後ろにマウントされ、RRという駆動レイアウトは変わらない。

駆動用バッテリーの容量は53kWhで、搭載場所を964から探し出す作業は、難しいものだったという。ほとんどがエンジンルームに押し込まれているが、フロント側にも高圧ケーブルで結ばれて、分割されている。

バッテリーの性能を保つ上で温度管理は重要で、エヴァラティの964は水冷式になった。フロントバンパーの奥に、ラジエーターが載っている。

ボディはカーボン製 慣れない静かな車内

ドライブトレインの変更だけでなく、ボディはドアとボンネット、ルーフ、リアデッキをカーボンファイバー製に置換。インテリアも全面的に貼り直され、DIN規格のステレオ・ヘッドユニットが収まっている。

エレクトロモッドとしては珍しく、エヴァラティの964は急速充電器にも対応する。従来給油口だったリッドを開くと、CCSと呼ばれる充電ポートが付いている。高速なものにつなげば、最短40分で残量20%から80%へ充電できるという。

実際にドアを開いてエヴァラティの964を運転してみる。普段なら後ろから聞こえてくる、心地いいフラット6のサウンドがまったくない。1時間ほど運転したが、筆者は最後まで内燃エンジンの音がないことに慣れなかった。

かといって無音ではない。ブレーキサーボとパワーステアリング用のポンプが動くと、車内へノイズが届く。低速域では、しっかり聞こえる。力強い加速を求めると、駆動用モーターの唸りも響いてくる。

エヴァラティ社は、人工のエグゾーストノートも与えた。悪くはなかったが、筆者はそれが正解なのか判断できなかった。リアを見るとカタチだけ、2本のマフラーカッターが残っている。

動的性能は素晴らしい。最も強力だった仕様の964を超える能力が与えられている。

アクセルペダルを踏むと、少しの間をおいて強力な加速が始まる。ペダルを半分も踏めば、かなり鋭い。そのまま高速道路の巡航速度を超えるまで、加速度は衰えない。アクセルペダルの反応には、少しの遅れがあるようだった。

走りの印象はミドシップのケイマンに近い

フル加速を求めても、トラクションは良好。技術者によれば、テスラ社のトラクション・コントロールを流用したシステムで、タイヤのスリップを防いでいるという。とはいえ、ドライ路面では制御が入っていることがわからないほど。

コーナリング時の挙動にも、興味深い変化があった。フロントタイヤのグリップ力が増しているのに加えて、古い911らしい、リアエンジンとしての特性が抑えられている。

急加速時にフロントノーズが軽くなるような感覚や、わずかなアクセル操作でコーナリングラインを内側へ絞ったり、外側へ広げたり、というRRらしさは残っている。だが、全体的な印象はミドシップのケイマンに近い。

エンジンは電動化されたが、パワーステアリングは油圧式のまま。ステアリングの重さや感触の濃さなどを味わうと、正しい選択だったと実感する。

サスペンションは、トラックティブ社製のアダプティブダンパーが備わる。ソフトなモードを選ぶと、落ち着きのある姿勢制御と柔軟性が融合し、舗装の乱れた路面でも印象的なほど乗り心地がいい。

ブレーキは、アップグレードされたブレンボ社製のキャリパーに、大径ディスクが付く。しかしリアタイヤに強力な回生ブレーキの制御が入り、日常的な速度域ならブレーキングはほぼ不要。キャリパーが動くのは、完全に停止したい時くらいだ。

964の魅力はフラット6が生んでいた

エレクトロモッドされたエヴァラティ・ポルシェ964 シグネチャー。ベースとなる964型のポルシェ911とは別に、コンバージョン作業に25万ポンド(3850万円)が必要になる。恐らく、需要はかなり小さいだろう。

クラシカルなポルシェ911が好きで、ガソリンの自動車利用が禁止される前に電動化したいと考え、羨ましいほどの預貯金を持つ人。恐らくそんな人なら、多様な自動車コレクションを保有している。まったく異なるクルマが欲しいと考えても不思議ではない。

オリジナルの964より良いかどうか。実際に体験した筆者の意見としては、ノー。ポルシェ964の魅力の大部分は、リアタイヤの後ろに載ったフラット6が生んでいた、という事実を思い起こさせるものだった。

一方でエンジンオイルがガスケットから滲んだり、都心部でCO2の排出量が多いクルマにかけられる通行料が取られる心配はない。今後の使い勝手を考えると、エレクトロモッドさらたクラシック911の魅力も、充分に理解はできる。

エヴァラティ・ポルシェ964 シグネチャー(英国仕様)のスペック

英国価格:25万ポンド(3850万円)+ベース車両

全長:4245mm(標準964)

全幅:1660mm(標準964)

全高:1310mm(標準964)

最高速度:209km/h

0-100km/h加速:4.0秒

航続距離:−

CO2排出量:−

車両重量:1400kg

パワートレイン:ツインACモーター

バッテリー:50.0kWhリチウムイオン

最高出力:507ps

最大トルク:50.9kg-m

ギアボックス:−

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cat_oa-rp16797_issue_35f0e54a053d oa-rp16797_0_a84ae5e393a1_【車名引き継ぐ】マセラティ初のEV 公式画像初公開 グラントゥーリズモ後継モデル a84ae5e393a1 a84ae5e393a1 【車名引き継ぐ】マセラティ初のEV 公式画像初公開 グラントゥーリズモ後継モデル oa-rp16797

【車名引き継ぐ】マセラティ初のEV 公式画像初公開 グラントゥーリズモ後継モデル

2021年6月14日 06:05 AUTOCAR JAPAN

シルエットは変わらず

text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
マセラティは、同社初のEVとなる2代目グラントゥーリズモの公式画像を初めて公開した。
【画像】洗練された刺激的なラグジュアリー【マセラティ・グラントゥーリズモほか現行ラインナップ】 全191枚
まだ不明な部分は多いが、先代モデルの滑らかなシルエットと、その車名を継承することはわかっている。このモデルは、2016年に発表されたものの、いまだにデビューしていないコンセプトモデル「アルフィエリ」に似ている。

マセラティは昨年、グラントゥーリズモ後継モデルに搭載予定の電動パワートレインのサウンドを予告する映像を公開した。

技術的な詳細はまだ明かされていないが、後継モデルは、ガソリンエンジンを搭載した先代モデルよりも高い加速力が期待できる。

エンジンサウンドを再現か

マセラティによれば、この電動パワートレインは「伝統的な内燃機関を搭載するすべてのマセラティ車の特徴である、独特のサウンド」の実現を目指しているという。どのように実現するかはわからないが、V6やV8エンジンの音を人工的に再現する可能性は低いだろう。

車両テストは民間の施設や周辺道路で行われているため、カモフラージュされたプロトタイプが間もなく目撃され、新型車への期待感を高める手がかりとなるだろう。

マセラティは9月、トリノの生産施設を大幅にアップグレードし、一連の新モデルを発売すると発表した。最近では、ギブリとレヴァンテのマイルド・ハイブリッドが登場している。

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cat_oa-rp16797_issue_35f0e54a053d oa-rp16797_0_041122cb1a2b_【家族で乗れるクラシック】トライアンフ2000/2500/2.5 英国版クラシック・ガイド 後編 041122cb1a2b 041122cb1a2b 【家族で乗れるクラシック】トライアンフ2000/2500/2.5 英国版クラシック・ガイド 後編 oa-rp16797

【家族で乗れるクラシック】トライアンフ2000/2500/2.5 英国版クラシック・ガイド 後編

2021年6月13日 17:45 AUTOCAR JAPAN

エンジンもトランスミッションも堅牢

text:Malcolm Mckay(マルコム・マッケイ)
photo:James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
  

トライアンフ2000系に搭載される6気筒エンジンは丈夫。冷えていても温まっていても、一発始動が普通。しかし、始動性が悪かったりアイドリングが落ち着かないことが、PI(ペトロール・インジェクション)では弱点として知られていた。
【画像】トライアンフ2000/2500/2.5 サルーンとステーションワゴン 全36枚
当時は燃料インジェクションは新しい技術だったが、今では高効率に設定し走らせることができる。経験がすべてで、英国には知見豊かな専門ガレージが何軒もある。上手に設定すれば、PIでも楽しいオーナーライフを過ごせるはず。

クランクシャフトがエンジンとしては数少ない弱点。スラストベアリングは早めの交換が吉。悪化するとクランクシャフトだけでなく、エンジンブロックも傷めてしまう。それ以外、エンジン内部の摩耗やオーバーヒートなど、一般的な不具合には注意したい。

MTには全段にシンクロメッシュが付き堅牢。オプションでオーバードライブを3速とトップに付けられた。穏やかな高速クルージングも余裕でこなせる。ボルグワーナー社製のATも比較的長持ちする。リビルドもほかのユニットより安価に行える。

デフのフルード漏れやドライブシャフトは確認ポイント。特に高馬力のクルマでは、負荷が大きく振動が出る場合がある。ダットサンのドライブシャフトが流用できるようだ。ただし、普通に運転しているだけでは気づきにくい。

ブレーキは整備を怠らなければよく効く。フロントはディスク式で、リアは幅44mmのシューを備えるドラム式。

不具合を起こしやすいポイント

◇エンジン

直列6気筒エンジンは堅牢で信頼性は高い。ほかのモデルにも搭載されており、英国ではまだ部品も手に入る方。詰まったラジエターによるオーバーヒートや、排気バルブの不具合によるミスファイア、内部摩耗などが注意したいポイント。

クランクシャフトのエンドフロートは弱点の1つ。クランクシャフト・スラストワッシャーが摩耗しやすい。

Mk1ではヘッドガスケットが傷みやすい。ノッキング音や不自然な振動、オイル漏れなども想定できる。クラッチ操作に伴い、プーリーの動きに変化がないかも確かめたい。PIでは、燃料ポンプも見落とされがちな弱点だ。

◇駆動系統

ドライブシャフト端のスプラインから、異音や振動が出ることがある。摩耗で悪化するが、修理は可能。リアデフからのノイズやフルード漏れにも注意したい。

◇サスペンションとブレーキ

ブッシュ類は安価に交換できるものの、数は多い。漏れたオイルで痛みやすくなる。ブッシュ類がヘタると締りがなくなる。だがポリウレタン製は硬さが目立ってしまうだろう。

◇ボディ

サイドシルやアウトリガー、フロアパン、サスペンション・アーム周辺とスプリング、ホイールアーチ、すべてのピラー、ボディ前端と後端のパネル、ドアの下部、スカットル、ボンネットヒンジ付近など、錆びる部分は無数にある。

リアシートの下やトレーリングアーム・マウントの上などは、修理が難しい。注意深く各部を観察したい。

◇インテリア

ドアのウッドトリムは、太陽光や湿気で傷みやすい。ビニール製の内装は耐久性が高いが、後期のナイロン製は弱い。得にMk1の場合、メーター類やスイッチ類の交換部品は見つけにくい。

トライアンフ2000/2500/2.5のまとめ

スタイリッシュで実用性にも優れる、トライアンフのビッグサルーン、2000系。Mk1の2.5は特に人気が高いものの、比較的合理的な維持費で多くの見返りが得られるクラシック・モデルといえる。内容も、年式としては先進的だった。

ハンサムなMk1は、コンパクトな1300に似た雰囲気を漂わせている。Mk2でも、ほかのモデルラインとの共通性を高めるための、巧みなアップデートだった。

ボルグワーナー社製のATも悪くないが、オーバードライブ付きのMTは現代の交通事情にも問題なくついていける。ただし、サビの酷いクルマは選ばない方が良い。板金修理代の方が、クルマの価値よりも高くなってしまう可能性がある。

◇良いトコロ

メカニズムは全般的に弱点が少なく、部品の供給体制も英国では良好。実用性が高く将来の可能性も悪くない、魅力的なクラシック・サルーンだ。

◇良くないトコロ

サビが最大の難敵。底値状態だった時は大胆に修理されたり、純正以外の部品に交換される例も少なくなかった。そんなクルマをオリジナルの状態に戻す作業は、費用的にも工数的にも、多くを要することだろう。

トライアンフ2000/2500/2.5(1963〜1977年/英国仕様)のスペック

英国価格:1448〜1916ポンド(1970年時)

生産台数:31万6653台

全長:4425-4650mm

全幅:1650-1675mm

全高:1415-1430mm

最高速度:148-178km/h

0-97km/h加速:9.7〜15.2秒

燃費:7.4-11.3km/L

CO2排出量:−

車両重量:1141-1340kg

パワートレイン:直列6気筒1998cc/2498cc自然吸気

使用燃料:ガソリン

最高出力:91ps/5000rpm-134ps/5450rpm

最大トルク:16.1kg-m/2900rpm-21.1kg-m/2000rpm

ギアボックス:4速マニュアル/3速オートマティック

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cat_oa-rp16797_issue_35f0e54a053d oa-rp16797_0_85c4fed70588_【ワイルドカード:初代ディフェンダー】理想の3台を選出 AUTOCAR読者投票アワード2021(3) 85c4fed70588 85c4fed70588 【ワイルドカード:初代ディフェンダー】理想の3台を選出 AUTOCAR読者投票アワード2021(3) oa-rp16797

【ワイルドカード:初代ディフェンダー】理想の3台を選出 AUTOCAR読者投票アワード2021(3)

2021年6月13日 13:45 AUTOCAR JAPAN

クルマでの素晴らしい楽しみ方

text:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
 

ここまで、2021年のリーダーズ・チャンピオン(読者投票)・アワードとして、何より楽しいクルマ1台と、普段使いのクルマ1台が選ばれた。アルピーヌA110と、8代目フォルクスワーゲン・ゴルフGTIだ。
【画像】読者投票アワード2021 A110とゴルフ、初代ディフェンダー 僅差のGRヤリスも 全137枚
この2台があれば3台目が必要か、疑問を感じてしまう。でもクルマには、選出の2台ではカバーできない素晴らしい楽しみ方がある。手強いオフロードに立ち向かったり、ボンネットを開けて部品を交換してみたり、特定の趣味の道具を運んだり。

そこでガレージの3台目に設定したのが、ワイルドカード。新車でも中古車でも、好きなクルマを収められる余地を残した。お気に入りの個性派スター選手を選べるように。ただし、かけられるコストは2万ポンド(308万円)くらいまで。

当然のことながら、このカテゴリーに投票された車種は一番多岐に渡った。その中で強い説得力を備えていたのが、先代のランドローバー・ディフェンダーだった。

使い込まれたレストアが必要なディフェンダーから、軍用目的に使われた90 ウルフの払い下げまで、ここでは一括して初代ディフェンダーにまとめている。英国なら、2万ポンド(308万円)あれば幅広いディフェンダーが選べる。

今回はアワードの撮影用に、英国編集部の1人、マット・プライヤーが所有するディフェンダー90 Td5 XSに登場してもらった。彼は2005年に1万2000ポンドで購入したというが、現在でも似たような価格で取引されている。

優れた実力を持ち、お互いに補完し合う3台

設定金額よりかなり手頃だから、仮にゴルフGTIの値引き交渉がうまくいかなくても、予算が工面できる。無事に3台を理想のガレージに並べられる。

マット・プライヤーの乗り方は、ディフェンダーがワイルドカードとして適した1台だということを物語っている。彼は沢山の荷物を運んだり、乗馬用のトレーラーを牽引したり、緑の大地を走らせたり、使い込んでいる。

日常的に運転し、週末にはガレージに揃えた道具で整備もしている。A110やゴルフでは想像できない自動車の楽しみ方を、ディフェンダーなら実現できる。

リーダーズ・チャンピオン(読者投票)・アワードのワイルドカードは、初代ランドローバー・ディフェンダーだ。

今回選ばれた3台は、理想のガレージとしての本質を見事に突いているといえる。通常、現実的に所有できるクルマは1台だから、この3台からどれかを選びたいと考えるだろう。だが、今回は特に選びにくい。

それぞれが優れた実力を持ち、お互いを補完し合っている。究極の3台といえるガレージを完成させていると思う。

10万ポンド(1540万円)の予算を投じられるなら、この3台でクルマへの欲求と必要性を満たすことができるだろう。もっとも、お金の準備ができたとしても、3台分の駐車スペースを確保しなければならないけれど。

最後に、それぞれに投票されたクルマをご紹介してみたい。

リーダーズ・チャンピオン・アワードに投票されたクルマたち

◇何より楽しいクルマ

アルピーヌA110は、一部のライバルも存在したが、圧倒的な支持を集めた。投票が多かったクルマは、アリエル・アトムにアリエル・ノマド、ポルシェ・ケイマン、ポルシェ・ボクスター、ロータス・エリーゼ、テスラ・モデル3、トヨタGRヤリスなど。

フォルクスワーゲン・カリフォルニアにも、複数の投票があった。運転する以上の楽しさがある、とコメントをくれたオーナーもいた。純EVのヒュンダイ・アイオニック5への投票もあった。

一番の予想外だったのは、サンヨン・レクストン。アルピーヌA110と比較されることになるとは。

◇普段使いのクルマ

トヨタGRヤリスは、ここでも票を集めているが、ゴルフGTIに僅差で負けてしまった。スコダ・オクタビアvRSも実用的で有力候補に食い込んだほか、フォルクスワーゲンID.3も純EVとして注目を集める存在だった。

このほかにもマツダ・ロードスターを挙げた読者もいた。リアシートや大きなトランクは必要ないという理由も添えて。

◇ワイルドカード

カテゴリーとしての設定の幅が広く、投票された車種は多岐に渡った。納得の理論的な根拠を持つものも少なくなかった。メルセデス・ベンツ・ウニモグに投票する読者も。確かに実用主義で、オフロード・トラックとして素晴らしい選択肢かもしれない。

ほかにも、デロリアンDMC-12、ポンティアック・トランザム、メルセデス・ベンツGクラスのレストモッドなど、投票を得た車種は様々。ハマーH2という読者もいたが、燃費が心配だ。

本題から外れたところでは、KTM 1290スーパーデュークへの投票も1件あった。確かに英国価格1万2000ポンド(184万円)と予算内で、荷物用のボックスも追加できる。バイクだけれど。

もう1つは、空を飛ぶジェットパック。クルマ2台分のスペースしか用意できず、2台で目的はすべてカバーできる、というコメント付き。なるほど。

外部リンク

cat_oa-rp16797_issue_35f0e54a053d oa-rp16797_0_546a2a01f87c_【詳細データテスト】アウディe-トロン 速いが刺激はない 新技術は持ち腐れ 快適性と静粛性は上々 546a2a01f87c 546a2a01f87c 【詳細データテスト】アウディe-トロン 速いが刺激はない 新技術は持ち腐れ 快適性と静粛性は上々 oa-rp16797

【詳細データテスト】アウディe-トロン 速いが刺激はない 新技術は持ち腐れ 快適性と静粛性は上々

2021年6月13日 11:05 AUTOCAR JAPAN

はじめに

電動車には、これぞ福音と思うひとびとと同じくらい、懐疑的な目を向けるひとびとがいる。彼らを味方に引き込むのには、まだ時間がかかりそうだ。しかし、テクノロジーが進歩するにつれて、進展をみせている。
【画像】アウディe-トロンとライバル 全16枚
われわれがいま目にしているそれは、妥当な値付けのされた目を引くフルサイズのファミリーカーだったり、購買意欲をそそられるコンパクトカーや小型クロスオーバーだったり、高級サルーンだったりする。

また、ここ数年でパフォーマンスカーも急増し、ドライバーズカーと認められるようなEVもちらほら見つけられるようになってきた。

今回のテスト物件は、間違いなくそのパフォーマンス系EVだ。このe-トロン S クワトロで、はじめてアウディはEVにSバッジを与えた。30年近く前、100ベースのS4に用いて以来、インゴルシュタットの高性能モデルの証となっているプリフィックスだ。それ以降、コンパクトカーのA1からスポーツクーペのTT、果てはSUVのQ7まで、数多くのパフォーマンス4WDに与えられてきた。

今回のSモデルは、強力なRS Q8すら見劣りするほどのトルクを発揮し、この手のEVにはみられないようなモーターの使いかたをする。四輪独立モーター式のアシンメトリーなトルクベクタリングは、EVにとって、走りにうるさいドライバーを納得させるための切り札になるのは間違いない。

だが、今のところ、比較的安価な量販EVには採用例がない。実現しているのは、リマック・コンセプトワンやメルセデスAMG SLSエレクトリックドライブ、また登場が待たれるロータス・エヴァイヤといった、超エキゾティックなスーパーEVのみだ。

e-トロン S クワトロの型破りな3モーターレイアウトは、その現状を変えるものだ。はたして、その走りはいかなるものだろうか。

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

アウディ電動化の先駆者であるe−トロンの量産開始から、もう2年が過ぎた。その間にラインナップは拡大し、小さいながらもモデルレンジを構成するまでになった。ほかのクルマを買うときのように、価格や出力の異なるモデルから選択できるのだ。

また、一般的なクロスオーバーSUVか、スピード感あるルックスのスポーツバックという、ボディタイプの選択肢もある。ただし、メカニズム的にみればいずれも、バッテリー容量は86kWhほどで、モーターを少なくとも2基備える四輪駆動だ。

今回のe-トロン Sクワトロに至っては、モーターを3基搭載している。アルミ/スティール混成シャシーはそのままに、通常のe-トロンではリアに積まれる高出力の非同期モーターを、フロントに1基設置した。リアは逆に、e-トロンのフロントに用いていた小型モーターを2基投入している。各モーターごとにプラネタリーギアを備え、後輪の左右それぞれに最大22.4kg-mのトルクを送り込む。

3モーターでのシステム出力は最高503ps、トルクは最大99.3kg-mに達するが、これは8秒間しかもたないオーバーブースト使用時の数字だ。全長4.9m級の高級クロスオーバーSUV、その重量は公称2620kg、テスト車の実測2634kgで、1tあたり200ps/38kg-mを切ることになる。

しかし、リアモーターは左右独立稼働が可能で、パワフルな電動車ではすでに馴染みのある加速性能に磨きをかけるものだ。電子制御系はリアアクスルを、デフを備えているかのように使えるようプログラムされていて、左右のトルク差が22.4kg-mを超えることはない。全開時にはモーター1基のみで走行することは決してなく、左右それぞれが駆動力を発揮する。

これだけでは飽き足らず、アウディはフロントにもブレーキを用いたトルクベクタリングを装備。後輪左右間で行われるのと同様の制御を、前輪でも行うよう仕立てている。

電気モーターのトルク特性にシングルスピードのトランスミッションが組み合わされているため、最大トルクはほぼ発進と同時に発揮される。パワーが頂点に達するのは、65km/hほどに達した時点だが、145km/hを過ぎる前にピークから落ちはじめる。

アクティブのロール制御や四輪操舵を、アウディはこのクルマに与えなかった。アダプティブダンパーや3チェンバー式エアサスペンションシステムは、スタンダードなe-トロンと同じものだ。ただし、パフォーマンス志向の再チューンが施され、ホイールサイズ拡大に伴いトレッドも拡げられている。

内装 ★★★★★★★★★☆

Sバッジを戴くアウディに予想されるパフォーマンス志向の味付けは、e-トロン Sでもほぼ行われている。ただし、期待したほど派手に主張するものではないかもしれない。Sエンブレムは、サイドシルとステアリングホイールに入るほか、レザースポーツシートとギアセレクターに型押しされる。

500ps級のパフォーマンスモデルなのだから、もうちょっとスポーティなタッチにしてもいいのに、と思うだろう。しかしそれも、高級EVが最上級のスピードとレスポンスに、もっと曖昧な価値観であるスムースさや洗練性と、操作のシンプルさをいかに高いレベルで融合しているものか気付かされるまでのことだ。

それに、その手のスパイスを利かせようと思ったら、メーカーはいくらでも利かせることができる。このe-トロン Sのキャビンは、そのままでも効果的に速いクルマであることを主張すると同時に、社会的責任を果たす類の高級ファミリーカーであることも感じさせるものとなっている。

全体的な要素は、ほぼ最新の大型アウディのいずれにも当てはまるような内容だ。シートは快適でないわけでも、座りにくいわけでもない。前後とも、大人が楽に過ごせる広さで、とくに後席はかなりのゆとりがある。先進的なディスプレイ技術がふんだんに用いられ、トリムは歯切れのいいエッジの効いたデザインをみせる。

マテリアルは、おおむねアウディの典型的なセレクトで、サテンクロームの装飾とピアノブラックのパネルが多用されている。質感は、大部分はいいのだが、すべて満足とはいかない。

たとえばセンタークラスター周辺には、モールディングのややうねったところやトリムの尖ったエッジが見つけられる。しかし、テスト車の織り目が鮮やかなカーボンツイルアクセントは興味深く、テスターたちの想像力を刺激するアイテムだ。

荷室は、キャビンの広さと同じくらいすばらしい。リアモーターの増設が、荷室フロアの高さを底上げしてしまうことはなく、床下にはスペースセーバータイヤを収納できる余地さえある。

充電ケーブルは、ボンネット下に設けられた専用スペースにしまえる。出し入れはちょっとばかり面倒だが、買い物や旅行の荷物にケーブルが埋没してしまうことはない。

走り ★★★★★★★☆☆☆

すべてのEVが低速走行時に車外へ向けて発せざるをえない合成音を別にすれば、常にe-トロン Sは不気味なくらい静かに走る。アウディには、ポルシェ・タイカンのような、電子的なエンジン音を使おうという気配すらない。

電気モーターは、機械的にみれば極めて静かに動かせるので、ハードに走らせても、ゆったり流しても、音的に大きな差はない。手短に表現するなら、それが洗練度を高めているということになるのだが、ドライバーズカーとして考えるならよそよそしく、感覚的なエキサイティングさに欠けるともいえる。とはいえ、出来の悪い擬似エンジン音を鳴らすようなことがあれば、それに文句をつけていただろうが。

スロットルレスポンスは、触れただけで弾ける引き金のようなテスラとは異なる。発進は、盛大なホイールスピンで白煙を上げて飛び出していくものではない。とはいえ、以前テストした現行のランドローバー・ディスカバリーより100kgも重い割には、十分にハードなダッシュをみせる。

0−97km/hの実測タイムは4.2秒と、スーパーSUVのテリトリーに入る数字だ。2019年にテストしたe-トロン55に1.4秒もの差をつけていて、それは運転していてもしっかり体感できる速さだ。

しかし、まさにどのようにどこが速いのかが、このクルマの特性を明らかにする。低いスピードから加速していくと、即座にその力を発揮する。48−113km/hは、アストン・マーティンDBXをも上回る。

しかし、シングルスピードの電気モーターは、もっとも効率的な領域を越えると、背中を突き飛ばすような加速力はちょっとばかり弱まる。113-177km/hは8.3秒で、V8を積むDBXの6.9秒より、アウディのSQ7 TDIの9.0秒に近づく。

公道上で出しそうなどの速度域でも、これは速いクルマだが、常にエキサイティングというわけではない。その余力は高速道路よりもA級道路でのオーバーテイクでより物をいうように思えるし、きついコーナーやラウンドアバウトからは驚くような勢いで飛び出していくが、アウトバーンの追い越し車線をブッ飛ばすようなクルマではない。

電動式ブレーキシステムは、踏み込みが軽いときには作動ぶりがじつにいい。バイワイヤシステムとしてこれより人工的なものはほかにいくらでもあるし、効きが唐突なこともない。ところが、ハードに踏むほどに、摩擦ブレーキと回生ブレーキの協調がどんどん不自然になっていく。

制動力そのものは、大きすぎる自重を御するのに苦労するところがある。計測した制動距離は雨天により悪化しているが、本格的なパフォーマンスカーもウカウカしていられない実力の片鱗は垣間見えた。

使い勝手 ★★★★★★★☆☆☆

◇インフォテインメント

e-トロン Sの豪華な車内テクノロジーは、なかなかうまく機能しているところもある。しかし、すべてがそうだというわけではない。

デジタルのメーターパネルは非常にクリアで、容易に調整でき、この手のアヴァンギャルドなテクノロジーでアピールするクルマにはふさわしいものだ。

だが、MMIタッチレスポンスと銘打たれた2面ディスプレイのインフォテインメントシステムは、相変わらず直感的でないところがやや気になる。操作に慣れたテスター陣でさえそう感じるのだ。メインディスプレイの使い勝手は、右側にショートカットボタンを設置したことで改善された。しかし、メニューのレイアウトには疑問を覚える。

入力の際には、指先にフィードバックが来るまでかなり強く画面を押さなければならず、それが操作性を損ねており、運転に集中できない要因にもなっている。また、伸ばした腕を支えるために手をつきたいが、そのための場所がないのも不便だ。

下段ディスプレイは、設定の自由度がほとんどない。ほとんどの操作内容は、これまで実体スイッチで行っていた、走る上で優先度の低い機能に関するものだ。われわれとしては、物理的なスイッチや入力デバイスをもっと多く装備してもらいたい。

◇燈火類

マトリックスLEDは標準装備だが、ダイナミックインジケーターとアクティブビーム部ランキングは有償オプション。今回、ヘッドライトを試す機会はなかった。

◇ステアリングとペダル

ペダル配置はどのテスターでも快適に使えるものだったが、そのためにはペダルに近づいて座ることが必要だ。やや左寄りのブレーキは、左足での操作がしやすい。ステアリングコラムの調整幅は広い。

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

e-トロン Sは、安心感のある落ち着いたハンドリングを備える。多くのユーザーはそれを望むだろうが、革新的なところはまったくない。ただし特定の環境下では、このサイズと重量のクルマとしては特筆すべきものとなりうる。

しかし、日常使いで、社会的責任の範囲内で楽しもうと思ったら、その他大勢の速いSUVにみられるようなコーナリングバランスやハンドリング、一体感のある走りを超えることはできない。凝ったリアアクスルがハンドリングに及ぼす違いが現れるのは、グリップ限界を超えた場合のみ。それを体験できる状況は滅多にないはずだ。

走行モードはアウディでおなじみのメニューに、より悪路に適したオールロードとオフロードが加わった。地上高やスプリングレート、ダンパーが、各モードごとに自動調整される。中庸のセッティングなら、乗り心地はかなりしなやかでなめらかだ。たとえ、手のかかる道で飛ばすと、思っていたより波が長いボディの動きを許容するとしてもだ。

ダイナミックかエフィシエンシーのいずれかのモードを選択すると、車高が下がり、ボディコントロールのプライマリーライドは引き締まるが、衝撃吸収性は低くなり、鋭い入力に過敏で不安定なところを感じさせはじめる。郊外路では、中間域の快適性と運動性との妥協点が見出しにくいかもしれない。

バンプや荒れた路面を走るときに比べれば、コーナーではウェイトをうまく制御できている。旋回時にはロールはするものの、揺れ幅は小さく、極端なほどではないので、ナチュラルかつ正確に走行ラインをたどることができる。スピードの乗るコーナーでは、よくも悪くも、まさに大きく速いアウディはこうだろうと思う反応を返してくる。

しかし、タイトコーナーで、ダイナミックモードを選び、ESCの効きを弱めると、トルクベクタリングシステムがもっとも大胆に機能する。安定しつつもアンダーステアが顔を出し、限界に近づいていることをクルマが知らせてくるが、そのコーナリング姿勢をパワーの加減でニュートラルに近づけるのは簡単だ。

そのあとは、もちろん安全な状況であればだが、軽くステアリングを切ったままで、無茶な運転をしなくても、パワーオーバーステアを維持できる。2.6tを超えるアウディの電動SUVがドリフトするというのはなんとも斬新な話だが、自分で経験するとなればなおさらそう思える。

残念なのは、この秘密兵器を発動させるには、かなりハードに走らせなくてはいけないということだ。また、リアアクスルは日常使いのハンドリングを豊かなものにするためには機能してくれない。e-トロン Sは心地よく、安定して走ってくれるが、スリリングなところはめったに見せてくれない。

快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆

2年前にテストした通常のe-トロンは、別格の洗練性と静粛性を見せつけた。それより大径のホイールと硬いサスペンションを持つSは、そこが多少後退しているだろうと予想していたが、まったく損なわれていなかった。

ウェット路面での80km/h巡航では、室内騒音は62dB。これはe-トロン 55を1dB上回るが、フルサイズの高級車としては立派な数字だ。2017年に、もっと好条件でテストしたジャガーIペイスは、これより1dB大きかった。

乗り心地は、サスペンションのトラブルを大きく取れるモードであれば、尖ったエッジを乗り越える際にもクッションが効いている。路面が荒れ気味でも、おおむね穏やかだ。

ステアリングは、アウディのラグジュアリーモデルの典型からすればわずかに重く、おそらく操舵力の減衰も少ない。走り出してすぐにその手応えの重さを感じるはずだが、これは動かすべき重量が非常に大きいのが一因となっているのは間違いない。けれどもテスター陣は、もっとつながりを感じるフィールがほしいと感じた。

ドライビングポジションはそこそこ高め。背の高いドライバーは、乗り込む際に膝と腰をやや曲げなくてはならないが、よじ登るというほどの高さではない。視認性は全方位とも良好で、ドアミラーは大きく見やすい。カメラを用いたヴァーチャルドアミラーは、1250ポンド(約17.5万円)のオプションだ。

購入と維持 ★★★★★★★☆☆☆

以前テストしたe−トロン 55は、市街地と郊外をどちらも走っての現実的な航続距離が320kmを少々上回った。同じ容量のバッテリーを積む今回のe−トロン Sは、平均で300km弱だったが、巡航速度を80km/hほどに限定すると350km近くまで向上する。

既存のe-トロンのオーナーが乗り換えるのに、この数字は障害にはならないだろう。しかし、日常的に320km程度の移動を行うというのなら、これより安心して乗れるEVはほかにいくつか見つけられるはずだ。

よりスポーティに走らせたいときには、航続距離の確保と両立できないというのが、EVの解決しがたい問題だ。しかしアウディは、e-トロン Sを150kW急速充電対応とすることで、その悩みをいくらか和らげている。これは、ライバルたちでは太刀打ちできない部分だ。

装備内容は、9万ポンド(約1260万円)近い価格を考えれば、ちょっと物足りないと感じる。効率を高めるアダプティブクルーズコントロールや、スマートフォンアプリを用いたエアコンのリモート操作機能などが有償オプションなのだ。われわれとしては、それくらいは標準装備にしてもらいたいところだ。

スペック

◇レイアウト

高性能版のSモデルに用いられるe-トロンのシャシーは、モーターとギアボックスが追加され、フロント1基/リア2基の3モーターとなる。サスペンションは前後ともマルチリンクで、車高調整可能なエアスプリングとアダプティブダンパーを備える。

ステアリングとアンチロールのコントロールは一般的なもの。前後重量配分の実測値はほぼ50:50だが、各輪の荷重は多少の違いがある。

◇パワーユニット

駆動方式:フロント1基/リア2基・横置き四輪駆動

形式:非同期

駆動用バッテリー:水冷式リチウムイオンバッテリー、95kWh(グロス値)/86kWh(ネット値)

最高出力:435ps(オーバーブースト時:総合503ps/フロント204ps/リア188ps)

最大トルク:82.4kg-m(オーバーブースト時:99.3kg-m)

許容回転数:13500rpm

馬力荷重比:192ps/t

トルク荷重比:37.9kg-m/t

◇ボディ/シャシー

全長:4902mm

ホイールベース:2928mm

オーバーハング(前):928mm

オーバーハング(後):1045mm

全幅(ミラー含む):2190mm

全幅(両ドア開き):3950mm

全高:1629mm

全高:(テールゲート開き):2210mm

足元長さ(前):最大1090mm

足元長さ(後):最大970mm

座面~天井(前):最大800mm

座面~天井(後):最大960mm

積載容量:660~1725L

構造:アルミ/スティールモノコック

車両重量:2620kg(公称値)/2634kg(実測値)

抗力係数:0.28

ホイール前・後:10.0Jx21

タイヤ前・後:285/40 R21 109H

ブリヂストン・アレンザ001

スペアタイヤ:なし(パンク修理キット)

◇変速機

形式:遊星歯車式(各モーターごとに設置)

ギア比

最終減速比:9.2:1 

1000rpm時車速:15.6km/h

◇電力消費率

AUTOCAR実測値:消費率

総平均:3.4km/kWh

ツーリング:3.4km/kWh

動力性能計測時:1.6km/kWh

メーカー公表値:消費率

混合:3.5〜3.8km/kWh

公称航続距離:356km

テスト時平均航続距離:293km

80km/h巡航時航続距離:348km

113km/h巡航時航続距離:293km

CO2排出量:−g/km

◇サスペンション

前:マルチリンク/エアスプリング、スタビライザー

後:マルチリンク/エアスプリング、スタビライザー

◇ステアリング

形式:電動、ラック&ピニオン

ロック・トゥ・ロック:2.3回転

最小回転直径:12.2m

◇ブレーキ

前:400mm通気冷却式ディスク

後:350mmドラム

制御装置:ABS

ハンドブレーキ:電気式(センターコンソール右側にスイッチ配置)

◇静粛性

アイドリング:-dB

全開時:70dB(145km/h走行時)

48km/h走行時:59dB

80km/h走行時:62dB

113km/h走行時:66dB

◇安全装備

ABS/ESC/EDB/HBA/ヒルディセントコントロール

Euro N CAP:5つ星(2019年、55クワトロ)

乗員保護性能:成人91%/子供85%

歩行者保護性能:71%

安全補助装置性能:76%

◇発進加速

テスト条件:弱い降雨/気温10℃

0-30マイル/時(48km/h):1.8秒

0-40(64):2.5秒

0-50(80):3.3秒

0-60(97):4.2秒

0-70(113):5.4秒

0-80(129):6.8秒

0-90(145):8.5秒

0-100(161):10.8秒

0-110(177):13.7秒

0-120(193):17.6秒

0-402m発進加速:12.9秒(到達速度:173.0km/h)

0-1000m発進加速:24.0秒(到達速度:202.5km/h)

ライバルの発進加速
ライバルの発進加速

ジャガーIペイス EV400 S(2018年)

テスト条件:乾燥路面/気温21℃

0-30マイル/時(48km/h):2.1秒

0-40(64):2.8秒

0-50(80):3.6秒

0-60(97):4.5秒

0-70(113):5.6秒

0-80(129):7.0秒

0-90(145):8.8秒

0-100(161):11.0秒

0-110(177):13.7秒

0-120(193):17.3秒

0-402m発進加速:13.1秒(到達速度:174.0km/h)

0-1000m発進加速:−秒(到達速度:−km/h)

◇キックダウン加速

20-40mph(32-64km/h):1.2秒

30-50(48-80):1.4秒

40-60(64-97):1.8秒

50-70(80-113):2.1秒

60-80(97-129):2.6秒

70-90(113-145):3.1秒

80-100(129-161):4.1秒

90-110(145-177):5.2秒

100-120(161-193):6.8秒

◇制動距離

テスト条件:弱い降雨/気温10℃

30-0マイル/時(48km/h):10.1m

50-0マイル/時(64km/h):28.2m

70-0マイル/時(80km/h):56.3m

60-0マイル/時(97km/h)制動時間:3.40秒

ライバルの制動距離
ジャガーIペイス EV400 S(2018年)

テスト条件:乾燥路面/気温21℃

30-0マイル/時(48km/h):8.8m

50-0マイル/時(64km/h):24.4m

70-0マイル/時(80km/h):46.7m

結論 ★★★★★★★☆☆☆

e-トロン S クワトロは、電動車代表として走り志向のドライバーの支持を集めることはできそうもない。違う分野での完成度は高いかもしれないが、充電して走るクルマに期待されるであろうエンタテインメント性のレベルを大きく変えるものではなかったのだ。

むろん、アウディのSモデルがそうした変化をもたらす存在になることはめったにない。速いが滑らかで、扱いやすいスピードと、高速道路での安定感、高級感といった要素の合わせ技が売りのSモデルだが、エキサイティングなことはまれだ。このe-トロン Sも、その範疇から大きく飛び出すことはなかった。

けれども、このクルマで思い切り飛ばすことがなければ、エキサイティングでなくてもしかたないと思えるだろう。とはいえ、常識的なスピードからロケットのような加速ができるポテンシャルがあるとはいっても、そういうEVはほかにいくらでもある。

そして、その初期の強烈な加速以外に興味を引き続けるはずの策も功を奏していない。驚くべきことで、おもしろく、ありえないようにも思えるが、独自のトルクベクタリングデバイスを備えながら、使える領域が限定的すぎるのだ。

せっかくのテクノロジーも、日常的な走りの魅力を高めるのにはほとんど役に立っていない。これには期待していただけに、残念な結果となった。

◇担当テスターのアドバイス

マット・ソーンダース
水浸しのスキッドパッドでなら、e-トロン Sは80km/hで完璧な定常円ドリフトを思いのままに決められる。みごとなものだが、不自然にも思える。小さな一輪車に乗るサーカスの象を思い浮かべてしまう。

リチャード・レーン
荷室の床下に充電ケーブルを入れたまま荷物を満載して困ったことが何度あったか。だから、ボンネットのほうに収納スペースを用意するというアイデアはなかなか賢いと思う。しかし、それならばリモコンキーにボンネットを開ける機能をつけてもいいのではないだろうか。充電のたびに前席の足元にあるレバーを探さなければならないのは前時代的だ。

◇オプション追加のアドバイス

ボディカラーは明るめのメタリックがおすすめ。21インチホイールはデザインが選べる。750ポンド(約10.5万円)のアラスレッドのレザーインテリアと1895ポンド(約26.5万円)のコンフォート&サウンドパッケージ、1950ポンド(約27.3万円)のツアーパッケージはつけておきたい。

◇改善してほしいポイント

・転がり抵抗が増して航続距離が短くなっても、もっとハイグリップなタイヤがほしい。

・もっとリアアクスルのトルクベクタリングを大胆に使ってほしい。どうして、せっかくの技術があるのに、普通に乗っている限りはそれが備わらないクルマと変わらないのが残念だ。

・切り替え式の擬似エンジン音の導入を検討してもいいのではないだろうか。

外部リンク

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【アミとの幸せな暮らし】シトロエン・アミとの数週間 8psの電動マイクロカー 後編

2021年6月13日 09:45 AUTOCAR JAPAN

アミだけの開放感と賢明な構造

text:Jim Holder(ジム・ホルダー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
 

電動マイクロカー、シトロエン・アミの最高速度は45km/hだが、ロンドンのラッシュアワーの平均速度は19km/h程度。通勤時間なら、市街地でも困らないスピードを出せる。
【画像】シトロエン・アミとルノー・トゥイージー フランスのマイクロ純EV 全59枚
2シーターながらバッテリーがフロア下に敷かれ、車内空間は思いのほか広い。スーパーで買い物した食料品も、問題なく載せられる。

着座位置は高く、周囲は窓に包まれる。横の窓は、2CVから影響を受けたであろう、水平ヒンジで跳ね上がる。閉所恐怖症の人は慣れないかもしれないが、少なくとも視界はかなりイイ。小さな車体のおかげで驚くほど小回りが効き、機敏に混雑した道を縫って走れる。

大きなSUVなら、よりパワフルで安全。ドライバーは自宅のようにくつろげるかもしれない。でも小さなアミを運転して得られる開放感は、筆者が今まで乗ったどんなクルマでも味わえなかったものだ。目立つだけの個性派とは、明らかに違う。

クルマとしての賢さは間違いないだろう。加速力や車内空間、デザイン、電動という構造。コーナーを曲がらずとも感じ取れる。防音材や優れたサスペンションはないから、すべての場面で、というわけではないが。

スタイリングは好き嫌いがはっきりしそうだが、称賛に値する。ドアパネルは左右で共通。プラスティック然としたパネルでも、安っぽいという我慢はない。デザイナーのテレンス・コンランも、褒め称えるかもしれない。

悪びることなく従来の型を破っている

見た目は漫画チックながら、価格は充分に手頃。ハロッズの買い物客が興味を示したように、見事なプロダクトだといえる。

それでも、今の筆者は毎日運転したいとは思えない。でも32km/h制限のロンドン中心部に住んでいれば、乗りたいと思うだろう。ただしアミの数が増えれば良いのだが、最近は混雑が緩和され、大型SUVのドライバーに押しつぶされる可能性もなくはない。

条件次第では、筆者の生活にフィットするクルマになる。アミの能力は、わたしのニーズにも合致しそうだ。しかも、すこぶる安い。

シトロエン・アミはすべての人に勧められるクルマとはいえない。むしろ、乗る人を選ぶ。少なくとも筆者の娘は、恥ずかしいといって乗りたがらない。

理解できる人なら、開放的な運転を楽しめる。かわいらしく実用性もあり、悪びることなく従来の型を破っている。英国で正式に販売が開始されれば、筆者の考えが正解かどうかがわかるはず。

シトロエンやオーナーにとっては、目につくクルマとして走るメッセンジャー的な意味も持つと思う。シトロエンは、お金のかかるようなマーケティングを走ってもらうだけで展開できる。オーナーは、ライフスタイルに対する意識を表現できる。

目標へ向かうルートは1つではない。多くの人の好むルートが、特定の人にとってベストなルートとは限らない。シトロエンは、昔からそんなメーカーだった。アミは、それを思い出させてくれる。

アミはフランス以外でも成功できるか

シトロエン・アミが英国で成功を掴むには、市街地の特定のエリアを走行できるクルマの条件が、制限されることが必要だろう。現在はまだロンドンでも交通量は多く、アミは遅くか弱い。

しかし混雑した市街地の環境を守るために、クルマのサイズや馬力、速度などを制限することが、飛躍的な考えとはいえない時代だ。中国の企業は、アミと同様の考えの電動マイクロカーの開発を進めている。予算や法律も、力強く後押ししている。

アメリカのGMと共同で開発された五菱(ウーリン)・宏光(ホングアン)・ミニEVは、既に3200ポンド(48万円)相当の値段で中国では販売されている。こちらは4シーターで、160kmの航続距離に99km/hの最高速度を備えている。

ただし、欧州へやってくる高スペックのモデルは、ダーツ・ブランドとして売られ、9000ポンド(135万円)くらいになるようではある。

ウーリン・ホングアンは既に数十万台が売られており、コンバーチブルも追加となった。他にも多くの電動マイクロカーの開発が進行中で、世界のベストセラー純EVとしての記録を打ち破ろうとしている。

シトロエンはアミで、企業としての大志を表現した。ほかの電動マイクロカーも、英国で同様の見られ方をされるだろうか。ニッチな存在として、片付けられてしまうだろうか。

外部リンク

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【木製シャシーにBMW V8】モーガン・エアロ8 英国版中古車ガイド モデルライフ18年

2021年6月13日 08:25 AUTOCAR JAPAN

BMW社製のV8エンジンを搭載

text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
 

21世紀のモーガンとしてやや遅れて登場した、最新のプラス・シックス。軽量なアルミニウム製シャシーに、パワフルな直列6気筒ターボエンジンを載せ、独立懸架式のサスペンションを採用している。
【画像】モーガン・エアロ8 最新のプラス・シックスと比較 全71枚
英国マルバーンを拠点とするモーガンの設計思想を、正常進化させたモデルとはいいにくい。初代のモーガン・プラス・フォーとは大きく異なるクルマだが、それでもモーガンの魅力は備わっている。

一方で、2000年のジュネーブショーで発表されたのがモーガン・エアロ8。伝統主義を貫くという姿勢は、スポーツカーの成功を継続させるには不可欠な要素でもある。しかし、寄り目のニューモデルは、期待以上にモダナイズされていた。

エアロ8は、正真正銘のモーガンによる現代的なスポーツカーだ。BMW社製のV8エンジンを搭載し、0-100km/h加速は4.8秒と競争力も充分にある。

インボード・レイアウトのショックアブソーバーに、ダブルウイッシュボーン式のサスペンション、APレーシング社製の高性能ブレーキも獲得。動的な性能にも不足はない。

さらにエアコンやクルーズコントロール、ヒーター機能付きのフロントガラスなども獲得し、装備も充実。従来のモーガンとは別の次元のクルマに仕立てられていた。

ただし、モーガンらしさも健在。シャシーはセイヨウトネリコの木枠が主要構造をなし、左右非対称のダッシュボードは金属製。メーターやスイッチが盛大に並ぶ様子は、1960年代の飛行機のコクピットに見えなくもない。すべてが正常に動いていれば。

シリーズ4からは4.8Lへ排気量を拡大

2000年から2004年に生み出された、シリーズ1のエアロ8の台数は200台ほど。今でも英国の中古車サイトには、定期的に販売希望のクルマが出てくる。

その後シリーズ2へバトンタッチ。わずかな設計変更を受けアメリカの安全基準にも準拠し、車内空間も拡大された。エンジンもかなりのパワーアップを実現していたが、生産はわずか1年のみ。多くが個人のコレクションと化している。

シリーズ2を挟み、2005年にフェイスリフトを受けたシリーズ3が登場。それまでフォルクスワーゲン・ニュービートル用のヘッドライトを流用していたが、この代からミニのものへスイッチ。レトロな魅力を保ちつつ、現代化された雰囲気になっている。

メカニズム関係はシリーズ3までほとんど手つかずだったが、2007年、367psを発揮するBMW社製4.8L V8エンジンを搭載してシリーズ4が登場。この年からはロードスターも追加された。

BMWは、自社の搭載モデルが生産終了となっても、V8エンジンをモーガンのために製造し続けた。なんと親切な会社なのだろう。

シリーズ4では6速MTに加えて、6速ATも登場。スポーツモードも備え、MTより優れた直線加速性能をエアロ8へ与えている。

これ以外のモデルバリエーションとして、ボートテールを備えるエアロ・マックスやタルガトップのスーパースポーツなど、少量の高級モデルもモデル末期に登場した。

シリーズを通して進化や改良は限定的

モーガン・エアロ8の最後形として、シリーズ5が登場。2016年から2018年にかけて生産されている。有終の美を飾るべくエアロGTも投入されたが、生産台数は非常に限定的なものだった。

18年間のモデルライフを通じて作られ続けたエアロ8だが、進化や改良の範囲は限定的。どのシリーズを選択するべきかは、予算に応じて決める程度で構わないだろう。

初期のエアロ8の場合、英国のスターティングプライスは4万ポンド(616万円)くらいから。走行距離の短いシリーズ5や特別仕様車の場合、12万ポンド(1848万円)位の価格が英国では付いている。

専門家の意見を聞いてみる

メルビン・ラッター:メルビン・ラッター社代表

「市場規模は小さく、流通台数も多いとはいえません。モーガンが好きで乗っていて、運転して楽しんでいるケースが多いためでしょう」

「モーガンが難しい時代のモデルで、大きな利益を出せたとはいえませんでした。エアロ8を購入したドライバーの多くは、モーガンにこだわって登場を待った、強い意志を持つ人に限られたといえます」

「モーガン3ホイラーなどは、新しいユーザー層を広げることにつながっています。近年では、モーガン仲間も増える傾向にありますね」

不具合を起こしやすいポイント

◇エンジン

オプションのサイドエグゾーストは非常に貴重。2004年以前のモデルに限られ、迫力のあるノイズを楽しませてくれる。BMW由来のV8エンジンは個性があり堅牢。整備スケジュールは守り、純正部品を用いたい。

◇トランスミッション

BMWより防音性が低く、MTからのノイズは大きい。クイックシフターを取り付けることで、よりスムーズな変速が可能になる。

◇ボディとシャシー

シリーズ1と2は、ルーフまわりから雨漏りしがち。ガレージ保管が望ましい。シャシーは木質構造で、クラッシュ時の修理やメンテナンスは難しく、職人の技術が必要。モーガンのディーラーに任せた方が賢明だろう。

ボディパネルはシリーズによって異なる。特にトランクリッドは変化が大きく、交換時は気をつけたい。フロントスプリッターは位置が低く、飛び石キズをもらいやすい。

◇電気系統

フェンダー内のウインカー用コードなど、露出した配線が切れることがある。目視で確認したい。ニュービートル用のヘッドライトは、内部に水が侵入し曇ることがある。パワーステアリング・ポンプが弱点。交換部品は簡単に見つかる。

シリーズ1は、しばらく乗らないとスターターモーターが固着することがある。専用バッテリーの状態を保つため、専門ショップではコンディショナーを接続することが多い。

◇インテリア

後期型の方が車内はモダンだが、メンテナンスを怠ると摩耗や劣化は進む。モトリタ社製のステアリングホイールや、アルミニウム製のボスは人気の改造アイテム。アップデートされたステレオも、うれしい装備となるだろう。

知っておくべきこと

英国には現在、11のモーガン・ディーラーが存在する。各地にうまく分布しているから、メンテナンスのために長距離を移動するという悪夢は避けられる。しかし、すべてのディーラーでシャシー構造の修理が可能なわけではない。

ピッカーズリー・ロードのモーガン本社では、全面的なメンテナンスやレストアも請け負ってくれる。価格体系は固定で、わかりやすい。

英国ではいくら払うべき?

◇2万ポンド(308万円)〜3万9999ポンド(615万円)

傷んだシャシーやボディなど、リビルドの必要なエアロ8が中心。手を出すには勇気がいるはず。

◇4万ポンド(616万円)〜5万9999ポンド(923万円)

走り込んだシリーズ2のMT車などが英国では出てくる。執筆時に一番安かったのは、9万4900kmを走った2004年式だった。

◇6万ポンド(924万円)〜7万9999ポンド(1231万円)

状態の良いエアロ8が欧州全域で見つかる。走行距離の多いシリーズ3などもちらほら。

◇8万ポンド(1232万円)以上

シリーズ4か5が混ざってくる。執筆時は、2010年のスーパースポーツが11万9950ポンド(1847万円)で売りに出ていた。

英国で掘り出し物を発見

モーガン・エアロ8 シリーズ5 登録:2017年 走行:2414km 価格:8万7995ポンド(1355万円)

筆者が発見した、最も年式の新しいモーガン・エアロ8。2017年式で、ボディはポルシェと同じクリーム・ホワイトで塗装されている。タンで仕上げられたインテリアの状態も良く、ほとんど未使用状態。ボディカラーとのマッチングもいい。

走行距離は2500kmにも達していない。恐らくパワートレインやシャシーの状態も、非常に良いはずだ。

外部リンク