現在、タイのバンコクでは連日、若い人が中心となってタイの民主化のために憲法の改正、現在の議会の解散などを求める政治集会が大規模に行われています。
バンコクでの大規模な政治集会は2020年10月14日から連日行われており、10月21日も夕方から多くの人々が集まって、タイ首相府への行進が行われました。
この10月21日の段階ではタイ政府が非常事態宣言を出しており、バンコクでは5人以上の集会が禁止されていましたが、それにもかかわらず、多くのタイの人々が政治集会に参加していました。
10月21日の午後4時頃、民主派はバンコクの戦勝記念塔前に集まり、政治集会が行われました。その折の戦勝記念塔前の様子を撮影した写真が以下のものです。
プラユット首相は民主派に譲歩?
民主派は政治集会で、プラユット首相の辞任、タイの憲法の改正などを要求しました。
その後、午後5時40分頃から政治集会はタイの首相府に向かってデモ行進を行いました。デモ隊はプラユット首相に辞任を求める書面を提出するとし、この後は数時間にわたりタイ首相府へ向けて行進を行いました。
途中、体制派の弁護士による「公共の道路は、反体制のための活動に使う許可など一切ない」という主旨の主張を受けたり、治安当局が設置した有刺鉄線のバリケードなどを乗り越えるなどしながら、デモ隊はタイ首相府へ数時間をかけて向かっていきます。
その模様を伝えるTPN National Newsの写真が以下のものです。
デモ行進の最中の夜7時頃、タイのプラユット首相はテレビ演説で、このようなデモ行進を止めるように求め、政治集会が暴動などがなく平和的な方法のみで行われているなら、5人以上の集会を禁止する非常事態宣言は終了する意向を語り、政治集会側に譲歩する内容を伝えました。
しかしながら、プラユット首相の辞任については言及はありませんでした。
夜8時頃、デモ行進をする民主派の群衆は、先頭グループがタイの首相府に到着しました。
現場には、タイの警察など治安当局の各部隊や、治安維持用に使われる放水車両などが待機しており、さらにバリケードも設置され、デモ隊に侵入をしないように命令しました。
政治集会側は、既に放水車両などの対策をし、多くが防水の服などを着ていました。
しかし政治集会側は強硬策は行わず、プラユット首相の辞任を求める書面をタイ警察高官に提出し、プラユット首相の辞任が3日以内に行われた場合は、この政治集会を終了すると主張しました。
その主張の後の夜9時35分頃、この日の政治集会とデモ行進は終了が宣言されました。
このようにして、政治集会側との衝突は回避され、昨夜はスピーチとデモ行進のみで政治集会は終了しました。
その後の夜10時48分、タイ警察は政治集会の幹部を喫茶店で逮捕しました。政治集会側は逮捕は不当なものだと主張しています。
この翌日、2020年10月22日の正午に、タイのプラユット首相は政治集会側に妥協する形で、バンコクでの5人以上の集会を禁止する非常事態宣言を終了しました。これにより、22日からはバンコクでの政治集会は、非常事態宣言違反に問われる事は無くなっています(資料:タイ・バンコクの集会禁止の非常事態宣言を解除!https://pattayaja.com/2020/10/22/15340/)
参考記事:そもそも現在の軍事政権が選挙をしないから国民が怒っているのでは? タイ総選挙 集計不正の告発が相次ぎ、選挙結果は5月に!? 国内外から指摘される「不公正さ」 | TABLO
大規模な政治集会! しかし暴動などには発展せず
ここまで大規模な政治集会が首都バンコクで連日行われているタイ。この規模が伝わる上記のような写真や映像に、海外にも衝撃が広がっています。
しかしながら、このタイの民主派の政治集会で非常に特徴的な事は、徹底的に「非暴力」を貫いている点です。
この民主派の政治集会はタイ全土に広がっており、民主化を求める若いタイの学生などは、スピーチをしたり、デモ行進をしたりするだけです。
諸外国のように、たとえば混乱状態につけいって火事場泥棒のように商店を襲うとか、治安部隊の警官に暴行をするとか、そのような民主派の問題はこれまで全く報告されていません。
もちろん、治安部隊が強制排除をしようとし、それにより衝突をした事等はありますが、これまでの所、それは強制排除による局地的な動きでしかありません。
このように平和的な手段しか行わない事を徹底している事が、タイ国内で民主派への理解や支持が広がっている大きな要因に見えます。
これを受けてタイ政府側も、集会禁止の非常事態宣言を解除したり、報道機関への報道禁止命令を見直したり、民主化を求める若者たちの声に譲歩する姿勢も見せています。
このように非暴力が特色のタイの民主派の政治集会。
外国人としては、タイ国内で平和的な手段による建設的な議論によって、民主的な方法で、タイがより良い方向に向かって行ってほしいと願います。(取材・文◎福留憲治【PJA NEWS】)