コロナ禍の今、タイでは感染防止のために外国人の入国は駐在員や医療目的の少数に限られており、しかも入国後には2週間の隔離義務もあることから、一般の外国人観光客は入国できる状況にはありません。
タイは昨年の2019年、外国人観光客が3980万人も訪れていた観光立国です。
その外国人観光客が突然消えてなくなった事で、タイ国内でも景気は急激に悪化。
その不満は昨年から民主制に戻った現在の政権にも向けられており、各地で反政府抗議集会が頻発しています。そんなタイの変化の様子をお伝えします。
政府への抗議集会が頻発!
2020年7月18日、タイの首都バンコクでは人権派弁護士や学生などが大規模な抗議集会を実施しました。この集会では人権派弁護士が、軍政の流れを継ぐタイのプラユット現首相への退陣などを要求、さらにタイの立件君主制と憲法などを批判していました。
すると2020年8月8日、タイ警察はこの人権派弁護士と学生の中心人物の二人を逮捕。二人の逮捕容疑は抗議集会の際の非常事態宣言法違反容疑、及び扇動罪容疑でした。
これに激怒したタイの民衆は、バンコクをはじめタイの各地で抗議集会を実施し、抗議の声を上げました。抗議の声は大きく、現場は騒然とした雰囲気となりました。
8月8日のバンコクでの抗議集会の場所の一つは、日本人観光客も多く訪れるバンコクの高架鉄道BTSのサイアム駅近くのスカイウォーク。抗議集会の現場には警官隊などもかけつけて、外国人も訪れるような場所でも、騒然とした雰囲気となりました。
すると8月8日の午後5時頃、タイ警察は2名を保釈し釈放。これにより抗議集会は一時落ち着きを取り戻し、幸いにして警官隊などと大きな衝突をする事はありませんでした。
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観光地などではホームレスが急増、治安も悪化!
このような政府への批判が高まる背景には、タイ国内の経済問題が深刻化している事情もあります。
タイは外国人の入国を厳しく制限し、これによりコロナの国内感染は抑え込んでいますが、一方で年間約4千万人もいた外国人旅行者が突然消えた事で、特に外国人旅行者の需要の大きかった観光都市などでは経済問題が深刻化しています。
特に外国人旅行者が多かった観光都市のパタヤ。パタヤでは現地住民の収入のうち約8割は観光客に関連した収入と試算されています。
その観光客の大半を占める外国人観光客が突然喪失し、さらに外国人観光客がいつタイへの入国が再開されるのかも不明な現在、パタヤ市では多くの人が依然として収入を失い、ホームレスの人口が増加してしまっています。
タイではタイ版の「Go to トラベル」というべき施策により、タイ人の国内旅行の需要は出てきているのですが、この需要はタイ人に人気の一部の場所や内容に限られて限定的であり、外国人旅行者に依存していたパタヤのような街では多くの事業が厳しい状態が続いています。
そのためパタヤでは現在でも、大手のホテルやレストランでも約半数程度しか再開しておらず、このことからホームレスの数もさらに増加してしまっていると見られています。
現在、パタヤのローカルな通りであるブーカオ通り、サウスパタヤ通りなどでホームレスが増加。町中でも、お寺の隅などで眠るホームレスが多く見られます。
さらに、ローカルな通りにある、外国人旅行者が来なくなって放棄され、使われていないバービアなどでは、ホームレスとなった人々などが生活しています。
現地の行政当局が調査した所、ホームレスの一部は精神的な異常があるように見え、当局の調査官は別に逮捕しにきたわけではないと説明していても、慌てて逃亡したり、極めて非協力的である事が多くありました。また、ホームレスの一部は犯罪に走る事もあり、治安も悪化。人々は街中でもいつ犯罪に合うかわからなくなっており、社会問題となっています。
この増加するタイのパタヤのホームレスへの当局の調査の模様を、パタヤ現地メディアのThePattayaNewsが伝えている動画が以下のものです(以下はThePattayaNewsの日本語版を配信する公式パートナーのPJA NEWSが、You Tubeにアップして公開しています)。
このような経済問題から社会的に不満がたまりやすく、これが不安定化の一因となっていると見られています。
パタヤ:タイ人観光客で賑わうウォーキングストリートに!
パタヤでは、根本的には外国人旅行者の入国が禁止されている限り、大きな解決は難しいかもしれません。
しかしながら、パタヤで最大の繁華街のウォーキングストリートでは、外国人旅行者の入国が見込めない現在、タイ人の観光客への商売が加速しています。
ウォーキングストリートでも半数以上の店が閉鎖してしまっている中で、にぎやかな雰囲気を出すために、歩行者天国をやめて車やバイクを一方通行で走る事ができるようにし、飲んだ後も目の前でタクシーなどを拾えるように変えています。
そのウォーキングストリートの様子がこちら。歩行者天国のウォーキングストリートを知っている人からすると、驚かされる光景です。
これでも、閉鎖した店が多くて寂しい感じがするよりは、混雑して繁華街らしい方がいいという地元の事業者協会の要請により、車やバイクの侵入が許可されたものです。
このように、日本人にも人気の観光地のタイでも、コロナ禍の今は大きな変化が起きています。外国人旅行者の入国がいつになるか、今後のタイがどのように変化するか、日本からも注目が集まりそうです。(取材・文◎福留憲治【PJA NEWS】)