cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_79f90529923d_新型コロナウイルス、米国内で拡散されたデマと陰謀論 79f90529923d 79f90529923d 新型コロナウイルス、米国内で拡散されたデマと陰謀論 oa-rollingstone

新型コロナウイルス、米国内で拡散されたデマと陰謀論

新型コロナウイルスについて、真偽が明らかではない噂や偽情報の拡散が続いている。米シラキュース大学でミームやソーシャルメディアを専門とするコミュニケーション学のジェン・グリギエル助教授は言う。「心理状態がマックスに達して人々の不安が高まると、(間違った)情報を共有しやすくなるものです」と、ローリングストーン誌に語った。「米中関係が緊迫していることも、不安をさらにあおっています」

また中国政府当局に対しては、報道陣を拘束して武漢の病院の映像を削除するよう圧力をかけるなど、感染症に関する報道の検閲やジャーナリストの口封じが行われているとの非難が挙がっている。「信頼できる情報源がなく、政府によるメディア規制も多々見受けられます」とグリギエル助教授は言う。武漢の市当局は感染症に関する「噂」をソーシャルメディアに投稿して拡散したとして、8人を逮捕した。当然ながら、こうしたニュースによりソーシャルメディアでは、政府による公式発表への疑念も高まっている。と同時に、不安感と恐怖感が深くまで浸透し、偽情報が蔓延する環境を作り出している。以下、新型コロナウイルスの報道によって巷に出回ったもっとも多い噂やデマと、公衆衛生危機のさなかにこのような偽情報が広まった理由を挙げてみた。

1:2018年に政府がコロナウイルスを広め、ビル・ゲイツ氏も何らかの形で関与している。

1月21日、QアノンのYouTuberで風評のプロであるジョーダン・サザー氏は、イギリスに拠点を置くパーブライト研究所が2015年に申請したコロナウイルスの特許のリンクをツイートした。「この病気の発生は計画されていた?」と、サザー氏は投稿。「メディアは恐怖をあおるために利用されているのでは? 金に困った秘密結社が、巨大製薬会社の金に目をつけているのでは?」。この説はたちまち多くの陰謀論グループの支持を得た。Qアノンや反ワクチン派のFacebookグループは特許ページへのリンクを投稿し、コロナウイルスを広めたのは政府だ、おそらく将来ワクチンで金儲けを企んでいるに違いない、と仄めかした。

さらに煽るかのように、サザー氏はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が家畜の病気と免疫学に関する別の研究プロジェクトに資金提供を行なう、という2019年の記者発表をもとに、パーブライト研究所と同財団を結びつけた(いわゆる他の”エリート集団”と同じく、ビル・ゲイツもしばしばQアノンの陰謀の標的にされている)。ビル・ゲイツの名前が出てきたのはさして驚くことでもない、とスタンフォード・インターネット研究所のレネ・ディレスタ研究部長は言う。「ワクチン陰謀の角度からとらえた大流行の噂が出てくると、必ずゲイツ氏が絡んできます。この手のコンテンツはジカ熱の陰謀論とよく似ています」と、ローリングストーン誌に語った。

こうした憶測は、2018年にマサチューセッツ医学会と『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』が共催したイベントでビル・ゲイツ氏が行なったプレゼンテーションに関するBusiness Insiderの記事が広く取り沙汰された後、特に広まった。討論会でゲイツ氏はシミュレーションを提示し、1918年のようなインフルエンザ大流行が再び起これば、6カ月以内で5000万人が死亡する可能性があると示唆した。さらに、世界の公衆衛生業界はこうした事態の結果に対する備えが十分でないとも付け加えた。

ゲイツ氏のプレゼンテーションは、将来的な大流行に対抗するためには、政府はもっと民間企業と手を組んで技術開発を進めるべきだ、という広範な議論の中で行われた。「世界は戦争への備えと同じくらい、感染症にも備えるべきです」とゲイツ氏は述べた。理性的な人間であれば、同氏は感染症との闘いに備えよと主張しているのであって、将来起こりうる感染症を待ち望んでいるわけではないことはわかりそうなものだ――だが、ソーシャルメディアでは陰謀論者がこの記事を頻繁に引き合いに出し、世界主義者の大金持ちが、ひとえに個人的な利益のために、世界規模の災害の人為的発生を予言していたと主張した。


中国人の食習慣を揶揄したものも

2:政府は公表していないが、コロナウイルスのワクチンまたは治療法は実は存在する。

現在世に出回っている1月22日付のFacebookの投稿は、疾病管理予防センターが申請したコロナウイルスのワクチンと思われる特許のスクリーンショットつきで、ワクチンで製薬会社の懐を潤すために政府がウイルスを広めた、と主張している。パッと見ただけでナンセンスであるばかりか(名前の通り、新型コロナウイルスは新種なので、すでにワクチンが存在しているわけがない)、スクリーンショットされた特許は重症急性呼吸器症候群(SARS)のものだった。これはやはり中国で発生した別のタイプのコロナウイルスで、2002年から2003年にかけて数百人が死亡した。企業がn-Covのワクチン開発に資金援助を受けたという報道はあったものの、今のところ「(武漢の)ウイルスはおろか、どんなコロナウイルスのワクチンもありません」と、ジョン・ホプキンス大学の健康安全保障センターの上級研究者、アメッシュ・アダルジャ氏はPolitiFactに語った。

3:コロナウイルスの発生源は、こうもりを食べる中国人。

コロナウイルスの大半が哺乳類から発生していることと、現時点で2019-nCoVは武漢の家畜市場で発生したと推測されていることから、ソーシャルメディアでは大勢の人々が、こうもりを好んで食べる一部中国人の嗜好が世界の公衆衛生危機を引き起こした、という説に飛びついた。この推測は、こうもりやコウモリスープを食べている動画が多数拡散したことでさらに助長された。「ボウルの中にあるコレ、死そのものじゃない?」と中国語で書かれた投稿には、2000件以上のいいねがつけられた。動画はたちまちタブロイド紙や保守派のブログに取り上げられ、「客観的にみてもまずそうなスープがコロナウイルスの蔓延の原因か?」といったような、断定を避けた非西欧中心的な見出しとともに掲載された。ソーシャルメディアのユーザーも似たような反応を示し、動画に対する恐怖を口にした。「君たち中国人はこんなもの食べて健康になると思ってるのかい? 冗談はよせ」と、とあるツイートには書かれていた。

もちろん、こうもりのような小型哺乳類を食する文化が一部中国に存在しないわけではないが、それが当たり前というわけでもない。3億人以上の人口を抱える国でこれが普通だと言い切るのは、控え目に言っても極論が過ぎる。2016年の中国国内飲食店の調査データによると、こうもりが発生源とみられる2002~2003年のSARS大流行以降、変わった動物を食べる習慣はずいぶん少なくなったという(もっとも研究者らは、SARSウイルスはネコ科の大型動物であるジャコウネコを介して人間に伝染したと考えている)。さらに言えば、こうもりを食べたことでコロナウイルスにかかったという証拠もない。政府当局いわく、2019-nCoVの検査で陽性反応が出た人の多くは、感染前に生きた動物と接触していなかった。医学雑誌Journal of Medical Virologyの記事にも、ヘビが感染源ではないかと書かれている。

結論からいうと、2019-nCoVの原因や感染経路についてはまだはっきりわかっていない。だがひとつ言えることは、ウイルスを国全体の食習慣のせいだと決めつけるのは間違っているうえに、非常に無礼でもある。「単に、変わった動物を食べるだけではないんです」と、シドニー大学の世界衛生安全を専門とするアダム・カマレード-スコット助教授は、タイムス紙に語った。「文化的風習を取り上げたり、批判するときは注意が必要です」。変わった動物を食べる風習は、国全体に残る飢饉や食糧不足の記憶に由来していることからも、まったくその通りだ。政治経済学者の胡星豆氏もニュージーランドヘラルド紙にこう語っている。「中国の人々は、食べ物が最重要事項だと考えています。飢えが一番の脅威で、忘れられない記憶として国民に残っているからです」と胡氏。「今の時代、多くの中国人にとってお腹を満たすことは大問題ではなくなりました。とはいえ、奇妙な食材や、珍しい動物の肉や臓物、植物の一部を食べることを、アイデンティティの物差しにしている人もいるのです」

外部リンク

cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_fvqkr35vhjw2_電子音楽とデジタルアートのフェスティバル「MUTEK.JP 2021」、全貌を徹底解説 fvqkr35vhjw2 fvqkr35vhjw2 電子音楽とデジタルアートのフェスティバル「MUTEK.JP 2021」、全貌を徹底解説 oa-rollingstone

電子音楽とデジタルアートのフェスティバル「MUTEK.JP 2021」、全貌を徹底解説

電子音楽とデジタルアートのフェスティバル「MUTEK.JP」が12月8日〜12日の5日間、日本科学未来館ドームシアターとLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)、そして渋谷ストリームホールにて開催される。

MUTEKは2000年にモントリオールで始まり、現在では他にバルセロナ、ブエノス・アイレス、ドバイ、メキシコシティ、サンフランシスコ、東京の世界7都市で開催されていて、モントリオールでは約3万人を集めるイベントに成長している。フェスティバルでは、デジタル・クリエーション、電子音楽、オーディオ・ビジュアルアート等の先端的・創造的・実験的な表現が発表され、そこから次世代の表現に大きな影響を与えるようなアーティストやツールも生まれてきた。

関連記事:ZAIKOが考えるライブ配信の未来

「先端的・創造的・実験的」と聞くと、敷居が高いように感じたり、一部のコアな人向けのものと思ってしまったりする人もいるかもしれないが、例えば私たちの多くがスマートフォンやパソコンの成り立ちや原理をほとんど知らなくても、それを使いこなし、そこから何か新しい感覚やアイデアを得ることができるように、ここでもまずはただそのまま表現を感じることだけでも「新しい何か」を得られるだろう。実際、グルーヴィで身体的に響くダンス・ミュージック的な表現も多々発表されていて、知識を持っている人はもちろんだが、感覚的に参加しても安心して充分に楽しめるフェスである。MUTEKは「Music & Technology」の略と思われることが多いようだが、実際には「Mutating Technology」の略で、「このフェスティバルの全体的なアイデアと精神は、人間がテクノロジーとともにどのように突然変異していくのか、人間とテクノロジーの間のフィードバック・ループのようなもの」だという。そのように、発表される様々なプログラムを身をもって体験することで、多様な感情が生まれ、何か新しい可能性を手にすることができるフェスなのだ。



またMUTEKは、トップ・ダウンの人工的なフェスではなく、地元のコミュニティーとのつながりのあるプラットフォームとしてのフェスがアートの後押しには必要だという考えから、半分が海外アーティスト、半分は地元アーティストになるようにガイドラインが決められている。そして、たとえばCorneliusや常田大希のソロプロジェクトDTMP(Daiki Tsuneta Milleninium Parade)、真鍋大度(Rhizomatiks Research)のような著名な人も出演している一方で、無名ではあってもクリエイティブで強いアイデンティティを持ったアーティストも積極的に後押しし、国内のみならず世界に発信し続けている。そうした「ここでしか出会えない新しい刺激や発見」があるということも大きな特徴であり魅力のひとつと言えるだろう。

それでは、各開催日の内容を見てみよう。



12月8日(水)は日本科学未来館ドームシアターにて、最先端のデジタルアートに没入できる体験型イベント『A/Visions 1』が各回(2公演)限定50名にて開催される。1部公演では、カナダ・モントリオールに拠点を置くアートセンターSociety for Arts and Technology (SAT) のキュレーションしたオーディオビジュアル5作品が上映され、2部公演では、第22回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出された、Synichi Yamamoto + Seiichi Sega & Intercity-Expressによるオーディオビジュアル作品『Noesis』最新版(4K3D+8.1chサラウンド)の、3D映像によるスペシャルライブが行われる。

各方面で注目されている新進気鋭の音楽家、原摩利彦のライブ

12月9日(木)はLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて、芸術音楽と舞台芸術がシアター形式で体験できるイベント『A/Visions 2』を限定1000名で開催。新進気鋭の音楽家、原摩利彦のライブコンサートが行われる。

原摩利彦は、ダンサーに森山未來を迎えて京都の建仁寺両足院で撮影された2020年リリースのソロアルバム『PASSION』の表題曲のMVが話題となり、さらにその森山未來の東京五輪開会式でのパフォーマンスに楽曲提供したことでも大きな注目を集めた。他にも、野田秀樹演出の舞台『Q:A Night At The Kabuki』のサウンドデザイン、彫刻家・名和晃平によるプロジェクト『Vessel』での坂本龍一との劇伴の共作、日本を代表するアーティスト・コレクティブDumb Type(ダムタイプ)のメンバーとしての活動、サニーデイ・サービスの『さよならプールボーイ』のリミックス、桐谷健太の『香音-KANON-』の作編曲、AppleのCM『Macの向こうからー新海誠』への楽曲提供など多岐にわたって活躍しており、今非常に注目されているアーティストだ。



今回はピアノ、シンセサイザー、弦楽アンサンブルにペルシャの楽器サントゥールを加えた特別編成のライブで、映像はDumb Typeにも参加し、高谷史郎、池田亮司、名和晃平をはじめとした多くのアーティストの作品制作にも携わる白木良。さらに、ダンサー東野祥子と音楽家カジワラトシオが結成した京都拠点のパフォーマンス・アーティスト・コレクティブAntibodies Collective(アンチボディズ・コレクティブ)による舞台芸術作品『あらゆる人のための、誰のためでもない世界』が劇版として発表される。これには今年9月に「水曜日のカンパネラ」の脱退を発表したばかりのコムアイがダンサーとして参加。彼女の新たな展開のひとつとしても注目だ。




12月10日(金)、11日(土)、12日(日)の3日間は「渋谷ストリームホール」にて、オーディオビジュアル、サウンドインスタレーション、アンビエント/エクスペリメンタルミュージックのライブパフォーマンスを大音量&スタンディングで堪能できるイベント『Nocturne』が各日300名の限定人数で開催される。

10日の『Nocturne 1』は、アーティストのSaskiaが舞踏家のKana Kitty、Yumi Sagara、ライティングのHitoshi Satoとチームを組んだパフォーミングアート作品『ロウ』の初上演。また、ドイツやオランダのレーベルから作品をリリースし、ヨーロッパツアーも行っている栃木在住のプロデューサーLemnaと、2021年に作成したアニメーション映画『浮寝島』がローマ、ニューヨーク、ミュンヘンの三つの国際短編映画祭で最優秀アニメーション賞を受賞した映像作家Kaori Yasunagaのコラボによるオーディオビジュアルライブパフォーマンス、そして海外の主要クラブでも活躍しているWata Igarashiの、d & b Soundscapeを用いた没入型サウンド体験を生み出すスペシャルライブ『FLOW』が行われる。また、MUTEK.JPが実施した若手クリエイターが集うオープンコールから選出されたJACKSON kakiが、自作VRゲームをプレイしながら音楽を想像するという画期的なライブパフォーマンスを発表する。

11日の『Nocturne 2』では、気鋭の現代音楽家・日野浩志郎によるソロプロジェクトYPYのライブに加え、『美術手帖』が選ぶ「2020年代を切り開くニューカマー・アーティスト」に選出された才気溢れるミュージシャンNTsKiと、ビジュアルアーティストSaeko Eharaのコラボレーションライブが行われる。また、ビジュアルプログラミングのワークショップ/イベントを開催しているクリエイターコミュニティ、TDSW (Tokyo Developers Study Weekend) のキュレーションにより、Masayuki Azegami & komakinex、dhrma & Yuki Ishidaの2組がオーディオビジュアルライブで参加する。

最終日12日の『Nocturne 3』では、Ricardo Villalobos、Richie Hawtin,John Tejadaら、シーンを代表するDJ達から評価されてきたAiko Kiyamaの、広範なエレクトロニック・ミュージックを体現するプロジェクトAalko名義によるライブパフォーマンス、ワールドワイドに活躍しているアンビエント作家Chihei HatakeyamaとメディアアーティストSeiichi Segaのコラボレーションライブのほか、エレクトロニックダブの要素も取り入れたアルバム『Bird Ambience』を発表したヴィブラフォン/マリンバ奏者でありコンポーザーのMasayoshi Fujitaの複数の楽器を使ったライブパフォーマンスが行われる。そして、1979年Aunt Sally(アーント・サリー)でデビューし、その後のソロ活動で常に先鋭的な存在であり続け、今年10月にはMUTEから新作アルバム『New Decade』をリリースしたばかりのレジェンド、Phewがライブで出演する。


<開催概要(各プログラム)>

「MUTEK.JP 2021 [A/Visions 1](1部公演)」

2021年12月8日(水)東京・日本科学未来館ドームシアター
時間:START 18:30 / CLOSE 19:15終演
料金:前売 2000円 / 当日 3000円
上映作品:
Axel Helios [CA/QC] - Drichtel
Baron Lanteigne & Bobby Tank [CA+UK] - Anthologie
Desaxismundi & Terminal Wolf [CA/QC] - Inertia
Past Video & Deathvox [CZ+DK] - C0R3-C0LL4PS3
susy.technology [CA/QC] – Indivisible

「MUTEK.JP 2021 [A/Visions1](2部公演)」

2021年12月8日(水)東京・日本科学未来館ドームシアター
時間:START 20:15 / CLOSE 21:00
料金:前売 2000円 / 当日 3000円
出演:
Synichi Yamamoto + Seiichi Sega & Intercity-Express [JP] - Noesis (2021version) – LIVE

「MUTEK.JP 2021 [A/Visions 2]」

2021年12月9日(木)東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
時間:OPNE 17:30 / START 18:30 / CLOSE 20:30
料金:前売 4500円 / 当日5500円
出演:
Marihiko Hara & Ryo Shiraki [JP](Cb: Hiroki Chiba, Vn: Anzu Suhara, Vc: Masabumi Sekiguchi, Vc: Yumiko
Iwao, Santur: Kazune Iwasaki)
Antibodies Collective [JP] -『あらゆる人のための、誰のためでもない世界』

「MUTEK.JP 2021 [Nocturne 1」

2021年12月10日(金)東京・渋谷ストリームホール
時間:OPEN 18:00 / START 18:30
料金:前売 3500円 / 当日4500円
出演:
Saskia, Kana Kitty & Yumi Sagara, Hitoshi Sato [JP] - ロウ
Lemna & Kaori Yasunaga [JP]
Wata Igarashi [JP] – FLOW
JACKSON kaki [JP]

「MUTEK.JP 2021 [Nocturne 2」

2021年12月11日(土)東京・渋谷ストリームホール
時間:OPEN 18:00 / START 18:30
料金:前売 3500円 / 当日4500円
出演:
YPY [JP]
NTsKi & Saeko Ehara [JP]
Masayuki Azegami & komakinex [JP]
dhrma & Yuki Ishida [JP]

「MUTEK.JP 2021 [Nocturne 3]」

2021年12月12日(日)東京・渋谷ストリームホール
時間:OPEN 18:00 / START 18:30
料金:前売 3500円 / 当日4500円
出演:
Aalko aka Akiko Kiyama [JP]
Chihei Hatakeyama & Seiichi Sega [JP]
Masayoshi Fujita [JP]
Phew [JP]
※12月9日(木)~12日(日)までの公演すべてに入場いただけるパスポートチケット12000円(100枚限定)もございます。12月8日(水)の「日本科学未来館ドームシアター」にはご入場いただけません。
チケット購入URL:https://tokyo.mutek.org/jp/tickets

外部リンク

cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_7goxh77yfa55_KIRINJIが体現するポップスと社会の繋がり「もっとライトな感覚で歌ってもいい」 7goxh77yfa55 7goxh77yfa55 KIRINJIが体現するポップスと社会の繋がり「もっとライトな感覚で歌ってもいい」 oa-rollingstone

KIRINJIが体現するポップスと社会の繋がり「もっとライトな感覚で歌ってもいい」

2021年より堀込高樹のソロ・プロジェクトとなったKIRINJIが、今年4月の配信シングル「再会」、映画『鳩の撃退法』主題歌の「爆ぜる心臓 feat. Awich」を経て、この2曲も収録したニューアルバム『crepuscular』を完成させた。コロナ禍の社会が反映された本作には、抑制されたフィーリング、ささやかな希望に加えて、”陰謀論”や”闇落ち”といった言葉も歌詞に含まれている。かつてなく冒険的なアルバムの制作背景を尋ねた。

【画像を見る】堀込高樹 撮り下ろし写真(記事未掲載カットあり)


—スタッフの方からいただいたメールによると、「ギリギリまで完成形が見えないレコーディングでした」とのことですが。

堀込:そうなんですよ(苦笑)。

前回のインタビューでも、セミの喩えから苦戦してそうなのは伝わってました。

堀込:曲を書く時間はたくさんあったのですが、色々な仕事と並行しながら作っていくのが大変でした。それこそ映画『鳩の撃退法』のキャンペーンとか、ワンマンがあって(8月開催の「KIRINJI SPECIAL LIVE 2021 ~SAIKAI~」)。そうなると、(制作の)モードに入って、1回それがリセットされて、またモードに入って……となるので、ゾーンに入るまでに時間がかかってしまう。それもあって、なかなか思うように捗りませんでした。曲が出来上がっても、妙に気張ってるように感じたり。

―「なんか違う」みたいな?

堀込:それこそ、最初は「『cherish』の感じをもう少しやりたいな」と考えて、ダンサブルな曲をいくつか作ってみたんです。でも、これだと『cherish』と一緒になってしまいそうな気がしたんですよね。それもどうかなと。

―ということは、作ってみたけど未収録の曲もある?

堀込:そんなに多くはないですけどね、2〜3曲くらいかな。それらは面白味がないからナシにして、もうちょっと時代の空気やムードを反映させたものにしようと。この2年間における自分のテンションと言いますか。あとは、先に出した「再会」と「爆ぜる心臓」が両極端だから、その間を繋ぐものを揃えることも意識しましたね。そこで方針を定めるのにも時間がかかってしまいました。

Photo by Kana Tarumi

―そんな経緯もありつつ、『cherish』とはまた音楽的に異なるトライアルを実践しているように映りました。

堀込:「再会」のリバーブ感もそうだし、「爆ぜる心臓」も空間的な面白さがありますよね。どこか全体的にモヤがかかっている感じ。前回、「ソフトなサイケ感」について軽く話しましたよね。

―「ダンサブルでボトムがしっかりあるけど、ウワモノはサイケ感をもつポップス」ですよね。

堀込:そうそう。あの時は、「なんか言わなきゃ」と思って適当に言ったのですが(笑)。

―(笑)。

堀込:でも、そのあとに「あ、悪くないかもな」と思いだして。全体を通底するものとして、いいアイデアかもしれないなと。そこから「ただの風邪」では、デモテープを作りながら「サビで一気にリバービーな感じにしたら面白そう」とか、「気化猫」もスロウなファンクっぽいけど、上はフワフワにしたり。そういうサイケ感を念頭におきながら作っていきました。

―それは西村ツチカさんの作品を用いたジャケにも反映されていますよね。「ただの風邪」の歌詞にもある、”不思議な夢の中にいるような”サイケ感。

堀込:うん、そうですね。

『crepuscular』通常盤ジャケット

―近年のKIRINJIは、冒頭の1曲目がアルバム全体のモードを示してきた印象があって。今回は「ただの風邪」のミニマルなシンセがまさしく象徴的だと思いました。

堀込:あれはデモを踏まえて、(鍵盤奏者の)宮川純くんがProphet-6の実機を持ってきて、スタジオで「これどうですかね?」と弾いてくれたものです。僕のデモはもう少し打ち込みっぽかったのですが、スティーヴィー・ワンダー的なニュアンスと言うか、ファンクな感じが出てますよね。宮川くんは「サンダーキャットっぽいですよね」と話してましたが、そこは自分では意識してなかったので意外でした。もともとはベニー・シングスみたいな、スッキリしたポップスにしようと思って作り始めた曲だったので。

―あとはドリーミーな雰囲気。「曲調そのものはオーセンティックでも、音像が変わることで印象も違ってくるはず」と前回話していましたよね。「ただの風邪」も、サビのコーラスはキリンジみたいなのに、印象がまるで違う。

堀込:フレーズはいつもの感じですけど、音の処理というか響かせ方が全然違いますから。

―「時代の空気を反映させる」という話もありましたが、「ただの風邪」というタイトルや、歌詞の熱にうなされてる感じはどういった背景があるのでしょう?

堀込:僕自身はこの2年間で一度も風邪をひいていませんが、次男があるとき熱を出して。「やばい、コロナかも」ということで保健所や病院に電話したんです。それで診断してもらったら「お腹の風邪ですかね」とのことで、「ただの風邪でよかったね」という話を家庭内でしました。きっと、こういうやり取りがウチだけでなく、いろんなところであったと思うんです。もちろん、その一方で亡くなってしまった方もいらっしゃいますが……。

―ええ。

堀込:「ただの風邪」という曲名が発表されたとき、「コロナはただの風邪」と言い張る人を揶揄する歌だと思われたかもしれませんが、個人レベルでさっきのような会話があったはずで。そちらのほうを切り取った曲です。

コロナ時代の抑制されたフィーリング

―「曖昧me」でも『cherish』までのサウンドも継承しつつ、今までやってこなかったようなアプローチを見せていますよね。

堀込:現行ラテンポップのプレイリストを聴くと、どの曲も基本的にリズムパターンが一緒なのに、割と飽きずに聴けるんですよね。「なんなんだろう、これ」と思って。それで調べたら細かく色々やっているんですよ、パーカッションの種類が違うとか。そういうのを自分もやってみようと始めてみたら、どちらかというとブラジルっぽくなってしまった。カエターノ・ヴェローソとかMPBみたいな。どうしようかなと思ったけど、「まぁいいか」って(笑)。

―3年前の「時間がない」では”残り半分て短すぎるね”と歌っていましたが、「曖昧me」では”俺 今 いくつだっけ”と繰り返されている。

堀込:40歳を超えたくらいから、1つとか2つとかの境目がよくわからなくなって。「俺50歳だっけな、49歳だっけな、あれ?」みたいなことがあるんですよ。

―(笑)。もちろん、この曲で歌われているのはコロナ禍での曖昧な時間感覚ですよね。

堀込:ここ1、2年で、歳が1つ失われた感じがして。『cherish』は2年前に出したはずなのに、「去年出したよな?」と思ってしまうような感覚。自分の歳を勘定するときも「いや違う、もうあれから2年経ってる」みたいに混乱してしまうというか。そういう「失われた1年」が裏のテーマとしてあります。

Photo by Kana Tarumi

―アルバム全体に反映されたコロナ時代の空気を、高樹さんはどんなふうに受け止めていますか。「しんどい」みたいな感じ?

堀込:ライブがなくなったり思うように活動できなかったりして、「困ったな」とは思いましたが、「しんどい」というよりは……自分で自分を抑制する癖がつくみたいな。それが嫌だなって思いました。

―”心はリミッターがかかったまま”(「再会」)みたいな。

堀込:それに世の中も抑制的になったというか。お店を早く閉めないといけない、店に入る度に消毒しないといけない、どこに行くのもマスクを着けないといけない。どれも間違いではないけど、そうやって抑制を強いられるのが嫌だな、面倒だなって。これは誰しも感じてきたことだと思いますが。

―そういう抑制されたフィーリングが、アルバムの収録曲にも出ているような気がします。

堀込:思いっきりアガる曲がないですしね。グルーヴはあるけどウキウキした曲調ではない。たぶん、それを今やっても白々しいものになる気がします。だからこそ、明るいノリの曲を書こうと思えなかった部分もあって。

―最初の話にもあったように。

堀込:そう。コロナ禍で自分の置かれている状況、世の中のあり方や空気。そういうのが自分の思っていた以上に反映されているんだなって。アルバムを作り終えてから思いましたね。

「薄明」のささやかな希望

―アルバムタイトルの『crepuscular』は、シングル曲「薄明 feat. Maika Loubté」がモチーフになっているそうですね。まず、「薄明」というのはどこから出てきたんですか?

堀込:あの曲のサビに”雲の切れ間から降る光の帯を”という一節があるのですが、そういう状態をなんていうのかなと思って調べてみたんです。そしたら、「薄明光線」というのが出てきて。最初はこれにしようかなと思ったのですが、「誰か使ってるかな」と調べてみたら、この言葉を使ったアルバムや曲がちょこちょこ出てきて。(笑)。昔の曲だったら別にいいかなと思ったら、割とここ1、2年の曲ばかりだったんですよね。みんな、ちょっとした希望を求めているんだなって思いました。



―わかる気がします。

堀込:だから、狙いは悪くないんだろうけど「お前もか」って感じ(笑)。それで別の言葉を探そうとしたら、クレプスキュール(Les Disques Du Crépuscule)という昔のレーベルを思い出しまして。

―やはり、そうでしたか(笑)。

堀込:それで調べたら、英語では「crepuscular」と書くらしいと知って。光が降り注ぐという意味もあるしピッタリだなと。曲調も、狙ったつもりはなかったですが……。

―クレプスキュールも連想させるフレンチ・ポップス風ですよね。このサウンドはどこから持ち込まれたものなんですか?

堀込:この曲は、ヨーロッパっぽい感じのメロディーとかハーモニーが先に出来上がりました。あとはフレンチ・エレクトロのプレイリストをよく聴いていました。Paradisの「Toi Et Moi」という曲がすごく好きで。

―高樹さんが昨年作成したプレイリスト「killer tunes protect you」にも入ってましたね。

堀込:「ああいうのをやりたいな」って漠然と思っていました。そこからメロディーもヨーロッパっぽい雰囲気になったので、自分が歌うより他の人にお願いしたいなと考えたときに、Maikaさんをラジオで知って。フランス語が使えるというのもあってお願いしました。



―あとはアルバム全体の演奏面で、若く才能あふれるミュージシャンの貢献が目立ちます。

堀込:ベースの千ヶ崎(学)くん以外は初めての人ばっかりだったので。ドラムは今回3人も参加しているし(伊吹文裕、橋本現輝、石若駿)、角銅真実さんにマリンバを叩いてもらったりして。いろんな人に関わってもらいながら作ることができました。

―角銅さんが参加したインスト曲「ブロッコロロマネスコ」は、続く「爆ぜる心臓」への流れも含めて絶妙でした。

堀込:あの曲が出来たとき、音色をどうしようか悩んだんです。幾何学的なメロディーを人懐っこい感じで聴かせたくて、そこで浮かんだのがマリンバでした。ステレオラブとかフランク・ザッパみたいな匂いも少しあるから、中音のパーカッションでリズミカルな感じにするのがよさそうだなと。それで角銅さんにお願いしました。

Photo by Kana Tarumi

―ソロ・プロジェクトになったことは、今回のアルバムにどんな影響を与えたと思いますか?

堀込:それぞれ得意な人にやってもらっているので、録音が早いんですよね。それもあって、曲調そのものは落ち着いたものが多いですが、割とフレッシュで骨太な仕上がりになったと思います。

あとは、KIRINJIという名前を掲げてやることの意味ですよね。いろんな人に関わってもらいながら作っていくのは、堀込高樹という個人より、KIRINJIというプロジェクトの方がやりやすいなって思いました。今回、(フィーチャリングは)MaikaさんとAwichだけでしたけど、今後は他の方にメインヴォーカルもお願いして、自分は曲だけ作るというやり方もいいのかなとか。いろんな展望も見えてきています。

「もっと気軽に話せるといい」

―最後に聞かせてください。「first call」には”陰謀論”や”闇落ち”といった言葉が出てきますよね。「薄明」にも”スワイプ”や”セルフィ”と出てくるように、近年のKIRINJIは同時代的なワードチョイスも特徴的ですが、ここはみんな驚く部分だと思います。

堀込:陰謀論は……抗えないですもんね、ある意味ウイルスみたいなもので。YouTubeとかで「坂本竜馬に資金を提供したのは誰だ?」みたいなCMが出てくるじゃないですか。それで「なになに?」と気になってクリックすると、そういう本の紹介になったりして。「これは変だ」と早めに気づけばいいけど、うっかり興味本位で見ちゃったりすると、一気にそっち側のテリトリーへと引っ張られてしまうから恐ろしい。

―そういう言葉も用いつつ、”人は孤独な生き物 でも孤立してたらいけない”と歌っているところにグッときました。

堀込:結局、コミュニケーションが失われているから気づけないわけですしね。

Photo by Kana Tarumi

―今日の日本において、”陰謀論”みたいな言葉が歌詞に盛り込まれたり、こういう問題がポップミュージックで扱われたりする事例はほとんどないはずで。そこはバランスの取り方も難しそうですが、どんなことを意識しましたか?

堀込:深追いはしない、ということですね。例えば陰謀論に染まっている人を歌ったりするのは、さすがに追い込みすぎな気がして。「陰謀論って怖いよね」ぐらいに留めておくと、それによって喚起ができるし、もしそういうことに傾いてしまった人がいたら「あ、俺そうかな?」ってなるかもしれない。ポリティカルなことや倫理的なことに関しては、「だからダメなんだ」「これが最高なんだ」と押しつけるのではなく、断罪しない、白黒つけようとしないのが大事かなと。

世の中には絶対、いろんなトピックが溢れてるわけだから、そこへ触れずに恋愛の歌とか、自分の悩みとかばかり歌って済ませるというのも面白くない気がして。自分自身とそういう社会的な問題は常に繋がってるわけだから。割とライトな感覚でやってもいいんじゃないかなって思います。

―今の話で思い出しましたが、10月の衆議院選挙の前日に「明日は選挙、投票行きましょう」とツイートしてましたよね。「ミュージシャンは政治を語るな」という声もありますが、僕はすごく嬉しかったです。ミュージシャンというより個人としての発信だったとは思うんですけど。

堀込:あれは個人的なものですね。実際、僕は50代なので、人口のボリュームゾーンなんですよ。その世代の人たちが「世の中をこうしたい」と思って行動に出れば、結構そっちに傾くと思うんですよ。今回の投票率は約55%らしいから、国民のほぼ半分が行ってないわけですよね。そこで「行きましょう」と呼びかけるのは、世の中を自分が考えるいい方向に進めるために、微力ではあるけど有効なのかなと思ってツイートしました。

さっきも言ったように、こういうことが気軽に話せるようになるといいなって思います。「自分はこう考えてるよ」っていうのを、もっと軽い気持ちで言えるようになるといいですよね。

【関連記事】
KIRINJIが語るAwichや石若駿との共演、『鳩の撃退法』、過去曲の新しい解釈
KIRINJI・堀込高樹が語る、新体制への移行と「再会」に隠された物語


KIRINJI
『crepuscular』
2021年12月3日先行配信
2021年12月8日CD発売
リリース詳細:https://kirinji-official.com/contents/463547

初回限定盤(SHM-CD+DVD):¥4,070(tax in)

通常盤(SHM-CD):¥3,300(tax in)


「KIRINJI TOUR 2021」
【大阪公演】
12月7日(火)なんばHatch
OPEN 18:00 / START 19:00

【東京公演】
12月15日(水)Zepp DiverCity(TOKYO)
12月16日(木)Zepp DiverCity(TOKYO)
OPEN 18:00 / START 19:00 (両日とも)

■Member
堀込高樹(Vo/Gt/Key)
千ヶ崎学(Ba)
シンリズム(Gt)
橋本現輝(Dr)
岸田勇気(Key)
矢野博康(Perc/Manip)
MELRAW(Sax)

■チケット料金(全席指定席・税込・ドリンク代別)
・S席(前方席):9,900円
・A席(一般席):8,800円

ツアー詳細:https://www.kirinji-official.com/contents/463225

外部リンク

cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_4wmkyros74el_Rolling Stoneインドによる2020年版「BTSスペシャルムック」日本語完全翻訳版の発行が決定 4wmkyros74el 4wmkyros74el Rolling Stoneインドによる2020年版「BTSスペシャルムック」日本語完全翻訳版の発行が決定 oa-rollingstone

Rolling Stoneインドによる2020年版「BTSスペシャルムック」日本語完全翻訳版の発行が決定

Rolling Stoneが刊行しているアーティストブックシリーズで、インド版が2020年に発行した「BTSスペシャルムック」の日本語完全翻訳版の発行が決定した。『Rolling Stone India Collectors Edition: The Ultimate Guide to BTS 日本版』と題し、特別付録A2サイズのポスター付きで、2022年1月31日より発売する。

本誌は、アジアでも特にK-POPが人気の地域であるインドにて2020年11月に発売されたアーティストにフォーカスしたスペシャルムックで、アルバム「BE」からのエクスクルーシブな写真で構成されており、BTSメンバー自身が写真をキュレーションして制作した特別な一冊。「Billboard Hot 100」に初登場1位を獲得した時期に行われた、メンバー全員による独占インタビューは、この後世界に羽ばたいていくBTSの当時の心境が語られた貴重な記事として完全保存版の内容だ。その他、ローリングストーン インド版編集部によるBTSのヒストリーガイドや「100 GREATEST BTS SONGS」と題した楽曲ランキングなども掲載。当時も非常に多忙だったBTSとインド版編集部が2ヶ月に渡り作り上げた貴重な記事の全てを日本語翻訳しお届けする。

>>関連記事:Rolling Stone Japan BTS表紙ビジュアル解禁 インタビューノーカット翻訳掲載

Rolling Stone日本版編集部として、BTSを愛する日本のARMYの方々にも是非読んでいただきたいと思い、日本語版の発行を決定いたしました。
A2サイズのポスターも特典にした、完全保存版として、是非お手に取っていただければ幸いです。(Rolling Stone Japan)

2022年1月31日に発売されるが、本日12月2日より各書店、オンラインショップなどで予約注文を受付する。

Rolling Stone India Collectors Edition: The Ultimate Guide to BTS(2020年11月発行)表紙画像
※日本版の表紙は後日解禁。


【書誌情報】
タイトル:Rolling Stone India Collectors Edition: The Ultimate Guide to BTS 日本版
発売日:2022年1月31日(月)
価格:2,000円(税抜)
サイズ:天地297mm×左右232mm
ページ数:表回り+本文108P(6.75折)+巻末綴じ込みA2サイズポスター
発行:CCCミュージックラボ株式会社
発売:カルチュア・エンタテインメント株式会社

※Amazonリンクはこちら(先行予約受付中)

外部リンク

cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_vh91tqsmamac_Spotifyが2021年の年間ランキング発表 BTS、YOASOBI、オリヴィア・ロドリゴが躍進 vh91tqsmamac vh91tqsmamac Spotifyが2021年の年間ランキング発表 BTS、YOASOBI、オリヴィア・ロドリゴが躍進 oa-rollingstone

Spotifyが2021年の年間ランキング発表 BTS、YOASOBI、オリヴィア・ロドリゴが躍進

オーディオ・ストリーミングサービス「Spotify」が、今年のリスニングデータから2021年を振り返る各種ランキングを発表した。

世界で最も再生されたアーティストは2年連続でバッド・バニー。オリヴィア・ロドリゴは世界で最も聴かれた楽曲(「drivers license」)、世界で最も再生されたアルバム(『SOUR』)の二冠を達成している。

国内で最も聴かれた楽曲は、1位が優里の「ドライフラワー」、2位がBTS「Dynamite」(7位に「Butter」もランクイン)。3位〜5位はYOASOBIの「夜に駆ける」「怪物」 「群青」と続いた。国内で最も聴かれたアーティストは、1位がBTS、2位がYOASOBI。BTSはグローバルでも3位にランクインしている。国内で最も再生されたアルバムはYOASOBI『THE BOOK』。

国内で最も聴かれたポッドキャスト番組の1位は、人気アニメ『呪術廻戦』について声優陣がエピソードトークを繰り広げるSpotify番組「呪術廻戦 じゅじゅとーく」となった。

<2021年 Spotifyグローバルランキング>

世界で最も再生されたアーティスト
1. バッド・バニー
2. テイラー・スウィフト
3. BTS
4. ドレイク
5. ジャスティン・ビーバー

世界で最も再生された楽曲
1. drivers license / Olivia Rodrigo
2. MONTERO (Call Me By Your Name) / リル・ナズ・X
3. STAY (with Justin Bieber) / The Kid LAROI, ジャスティン・ビーバー
4. good 4 u / Olivia Rodrigo
5. Levitating (feat. DaBaby) / デュア・リパ, DaBaby

世界で最も再生されたアルバム
1. SOUR / Olivia Rodrigo
2. Future Nostalgia / デュア・リパ
3. Justice / ジャスティン・ビーバー
4. = / エド・シーラン
5. Planet Her / ドージャ・キャット


<2021年 Spotifyジャパンランキング>


国内で最も再生されたアーティスト
1. BTS
2. YOASOBI
3. Official髭男dism
4. 平井 大
5. back number
6. TWICE
7. 嵐
8. 優里
9. 米津玄師
10.あいみょん

Spotifyプレイリスト「Top Artists of 2021 Japan」
https://spotify.link/TopArtistsJP2021


国内で最も再生された楽曲
1. ドライフラワー / 優里
2. Dynamite / BTS
3. 夜に駆ける / YOASOBI
4. 怪物 / YOASOBI
5. 群青 / YOASOBI
6. 勿忘 / Awesome City Club
7. Butter / BTS
8. うっせぇわ / Ado
9. Stand by me, Stand by you. / 平井 大
10.炎 / LiSA

Spotifyプレイリスト「Top Tracks of 2021 Japan」
https://spotify.link/TopTracksJP2021


国内で最も再生されたアルバム
1. THE BOOK / YOASOBI
2. BE / BTS
3. strobo / Vaundy
4. Life Goes On / 平井 大
5. Love Yourself 結 Answer / BTS
6. STRAY SHEEP / 米津玄師
7. MAP OF THE SOUL : 7 / BTS
8. Traveler / Official髭男dism
9. アンコール / back number
10.hope / マカロニえんぴつ

Spotifyプレイリスト「Top Albums of 2021 Japan」
https://spotify.link/TopAlbumsJP2021


国内で最も人気のポッドキャスト番組
1. 呪術廻戦 じゅじゅとーく
2. 英語聞き流し | Sakura English/サクラ・イングリッシュ
3. 霜降り明星のオールナイトニッポン
4. kemioの耳そうじクラブ
5. ロバートpresents聴くコント番組~秋山第一ビルヂング~

「Best Podcast of 2021」
https://spotify.link/BestPodcastsJP2021

外部リンク

cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_11027ecef8e5_岡村靖幸『靖幸』、当時のプロモーターと岡村ワールドについて語る 11027ecef8e5 11027ecef8e5 岡村靖幸『靖幸』、当時のプロモーターと岡村ワールドについて語る oa-rollingstone

岡村靖幸『靖幸』、当時のプロモーターと岡村ワールドについて語る

日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出していく。2021年11月の特集は「J-POP LEGEND FORUM 再評価シリーズ第1弾 岡村靖幸」。2021年11月16日に初めてのアナログ盤『家庭教師』が発売された岡村靖幸のEPIC時代を辿る。11月第4週のパート4は、当時のプロモーター、現在はソニー・ミュージックダイレクト制作部部長・福田良昭と、元EPICソニー、現在は音楽制作事務所株式会社ニューカムの代表取締役・西岡明芳をゲストに3rdアルバム『靖幸』を再評価する。

田家秀樹:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」案内人・田家秀樹です。今流れているのは岡村靖幸さんの「どぉなっちゃってんだよ」。1990年11月16日に発売になった4枚目のアルバム『家庭教師』の1曲目、初めてのアナログ盤として先日発売になりました。今月の前テーマはこの曲です。今月2021年11月の特集は岡村靖幸。1986年デビュー。今年がデビュー35周年。去年35年目の新作アルバム『操』を発売したシンガーソングライター。作詞・作曲・編曲・プログラミングまで全部1人で仕上げてしまうマルチクリエイター。日本のブラックミュージックのパイオニアの1人でもあります。

関連記事:岡村靖幸が禁断のエロスに取り組んだ『DATE』、当時のプロモーターが振り返る



今月はあらためて岡村靖幸さんを聴き直してみようという1ヶ月。「J-POP LEGEND FORUM 再評価シリーズ第1弾」。岡村さんは1986年から2001年までEPICソニーに在籍して5枚のオリジナルアルバム、ベストアルバムとセレクションアルバムをそれぞれ1枚ずつ残しています。今月はその5枚のオリジナルアルバムを毎週1枚ずつ取り上げていこうという1ヶ月。今週は1989年7月に発売になった3枚目のアルバム「靖幸」のご紹介。ゲストは先週に引き続いて、当時岡村さんの担当プロモーター、現在は音楽制作会社株式会社ニューカムの代表取締役・西岡明芳さん。そして次の担当・福田良昭さん。現在ソニー・ミュージックダイレクトの部長さんで「家庭教師」の担当でもあります。こんばんは。

西岡明芳:こんばんはー。よろしくお願いします。

福田良昭:よろしくお願いいたします。

田家:3枚目になりましたー。

西岡:いよいよ。

福田:来ましたよ。

田家:来ましたか。そういうアルバムのタイトルが『靖幸』。

西岡:これびっくりしましたよね。

田家:アルバムのジャケットがピンクで。

西岡:「え! ピンク!?」って感じはあるかもしれないけど、岡村くんでピンクは何の違和感もないなって感じはあったと思いますけどね。

田家:アルバムのクレジットに「プロデュース、コンポーズ、アレンジ&パフォームby岡村靖幸」。名前だけ漢字になってましたけどね。

西岡:ここまでずっと自分がセルフプロデュースして、3枚目にしていよいよ岡村ワールド、やりたいことを全部彼がやるという意味合いでは最高のアルバムに仕上がっていると思います。

田家:これが僕なんだという自画像みたいな意味も込めて、そういうタイトルをつけたんでしょうね。どこが自画像なのか、今日はじっくりお話を伺っていこうと思いますが、西岡さんが選ばれた今日の1曲目、アルバムの1曲目でもあります、「Vegetable」。





田家:岡村靖幸さん3枚目のアルバム『靖幸』の1曲目「Vegetable」。

西岡:先程お話になっていたようにアレンジとか、よく聴くといろいろなものが綿密に絡まっていてトップにふさわしい曲。ここでいよいよ始まるぜ、お前らちょっと行くぜっていう感じのシュプレヒコールにも聴こえる曲ですね。

田家:所謂ファンクって感じじゃないですもんね。ラグタイムとかホンキートンクみたいなものとか入ってる。ロックンロールですもんね。〈愛犬ルー〉とか、〈パック売りの烏龍茶〉とか、〈ピーマン にんじん ナッツ 食べなくちゃ〉とか、このへんは自分のことなんでしょうかね。

西岡:うん、たぶん(笑)。どういう生活をしていたかはちょっと僕らにも分からないけども。あの頃を考えると、ちょうどバブルの頃ですかね。コンビニがあって、いろいろなものが意外と豊富に周りにある生活の中で彼も過ごしていたんじゃないかなと思うので。それを1つ1つ題材にしたのではないかなと思うんですけど。

田家:福田さんはこの曲をどう思いますか? 先週までは洋楽セクションでしたもんね。

福田:そうです。これでようやく洋楽からこっちに移ってきたんですけど、とにかくね、洋楽ですよ、言葉が。愛犬ルーもそうなんですけど〈うまい うまい うまい〉のフレーズとか、今ヘッドフォンで聴いていると歌詞は結構入ってくるんですけど、ラジカセとかで聴いていると語感が洋楽のフレーズに聴こえるんですね。要するに英語で歌っているような語感でなめらかに聴こえてくる。最近はこういう文字の置き方をする方がいっぱいらっしゃるんですけど。当時、桑田さんとか佐野さんとか、その後桜井さんとか、こういう置き方をしてなおかつ作品としてきちんと成立させる人たちが多いんですけども。

田家:まだ桜井さんデビューしてないですもんね。

福田:ええ。これはそのへんの方々と比べても「Vegetable」はそういう意味ではワードは洋楽かもねって。言葉の意味よりは言葉の響きというか。

田家:今週と来週はそういう話になるかなと思っていたのですが、今おっしゃった言葉のリズムとか、言葉のメロディの乗せ方とか、そういう意味では比較する対象があるとしたら桑田さんだけかもしれないなと思ったりもしてました。

西岡:佐野くんも近いところがすごくあると思うんだけども。

田家:岡村さんはもっとアナーキーなところがありますもんね。西岡さんが選ばれた2曲目はこれですね。アルバムの2曲目でもあります、「ラヴ・タンバリン」。





西岡:〈君が好きだよ〉、彼が男の子たちに自分の気持ちをちゃんと伝えなきゃだめなんだよってことを言っていると思うんですけども、彼のテーマになっているところをシンプルに出した。で、すごくメロディアスだし、ポップだし、すごく綺麗な曲だし。

田家:さっきの「Vegetable」の〈愛犬ルー〉は別に〈愛犬ルー〉じゃなくても、〈I canなんとか〉でもいいみたいな、英語日本語的な作り方があるとしたら、もう一方にちゃんと言葉を意識しながら書いている曲と両方あると。

西岡:そうですね。それは後者の方ですね。

田家:〈心に住んでる修学旅行が育つんだ〉。これは素晴らしいですね。

西岡:ほんと思いつかないですよね(笑)。そういうことがぽっぽ出てくる、天才としか言いようがないかもしれないですね。

田家:〈雨が降る日は 長靴の中に水たまりがありゃまだ10代〉。こういう青春、思春期の表現というのが。

西岡:1つ1つの映像が彼の中で残っていたのかもしれないですし。

田家:〈このバラ持ってTVの 男達の様に 告白タイム〉。これは『ねるとん』もあって。

西岡:『ねるとん』ですねー(笑)。いろいろなことを僕らも思い出せてくれますよね。

田家:そういう意味では当時の風俗とかテレビに流れている番組も反映されています。

西岡:そんな話をよくしました。当時で言うと、『オールナイト・フジ』の話とか、この女の子はかわいいとか、そんな他愛もない話を仕事の合間には話した覚えがありますね。

田家:アレンジもプログラミングも音は全部彼が入れている。コーラスだけチャカさんが参加している。そういう打ち込みみたいなものは先生がいたりしたんでしょうか。

西岡:先生がいた話は聞いたことないですし、全部自己流というか、スタジオの中でマニピュレーターの方とか、いろいろな方と出会ってその中で自分で学習していったのではないかなと思いますけども。

福田:これ以外の曲もそうなんですけど、『DATE』の時に「青春LP」というキーワードがあったんですけど、これぞ「青春LP」って感じがして、それっぽい曲に僕は思えます。

田家:「青春LP」でありながら、これは僕なんだという自画像的な。





田家:『靖幸』の4曲目「友人のふり」。西岡さんが選ばれた3曲目。この曲は?

西岡:岡村くんと言えばファンキーなナンバーもそうですけど、切ないバラードが必ずアルバムの中に何曲か入ってますが、このアルバムの中でも至極のバラードと言いますか。メロディアスであり、切ないとか、いろいろなものを感じさせる良いバラードだなと思いまして、好きな曲です。

田家:アルバムの中で1番素の感じがしますもんね。この曲もやっぱり歌詞に惹かれまして、〈でもいつでも僕 君の味方さ〉、〈岩場のデッキチェアーで 君のリボンに見とれてたら 僕の指を噛んだのは何故?〉。これ拍手ですよね。この一行。うわー色っぽいなと思って。

西岡:これは何からインスパイアされたのかな。

田家:岡村さんがビートルズと松田聖子とプリンスの三角形の中に僕がいるというのがヒントになって、あらためて聴いていたら、松本隆さんが作詞した松田聖子さんにこういうフレーズが結構ある。君のリボンに見とれてる。そしたら君が僕の指を噛んだ。僕の指を噛んだのがなぜ? これは松本隆ですよ(笑)。

西岡:その通りですね(笑)。 僕も松田聖子は担当していて、デビューから「赤いスイートピー」までが僕の担当だったんですけど。そういう意味では岡村くんが松田聖子を好きだというのは僕にとってもすごくうれしいことで、彼に影響がちょっとでもあったんだなと思って、当時うれしかったですね。

田家:この曲の中で〈あんまりもてなかった方だし 臆病で正直じゃないから〉。これは自画像なのかなと(笑)。

西岡:彼はなかなか自分で言い出せなかったり、告白できなかったり、思っていてもなかなか自分で言ったりできないところはあったみたいで。それをこういう新曲にして訴えていたんだと思います。

田家:綺麗なストリングスだなと思ったのですが、これは清水信之さんが手がけられていましたね。福田さんはこの曲についてどう思われました?

福田:繰り返しになっちゃうんですけど、彼のピュアな目線。もともと持っているピュアな感覚をそのまま表しているのと、まさに青春映画のワンシーンですよ。

田家:主演映画があったんですってね。

福田:『Peach』ですね。

田家:『Peach どんなことをしてほしいのぼくに』。このメインテーマが「友人のふり」だったと。この映画は今観ることはできますか?

福田:観れますけど、何年か前にDVD BOXを作って入れたんですけど、完売状態なんです。





田家:西岡さんが選ばれた4曲目、アルバムの5曲目「聖書 -バイブル-」。聖書と書いて、バイブル。

西岡:これは本当にじっくり聴いていただきたいけど、身体を動かしてもいいし。聴き応えもありますし、ちょっと詞は岡村ちゃん絶好調という詞になっていますので。

田家:〈Teenagerのあなたが なんで35の中年と恋してる〉っていう(笑)。

西岡:そうなんですよ。僕らも当時そのくらいの年齢だったので、何言ってんだって感じもあったんですけどね。それと中に出てくる〈Crazy×12-3=me〉。あの方程式は未だに解けてないよね。

福田:解けてないですね(笑)。

西岡:なんだろこれって思いながらもずっと30年くらい経っちゃったから。

田家:35の中年は妻帯者なわけで、Teenagerのあなたがあんな男と恋していいんですかという、そういう憤りが感じられたりもする(笑)。

西岡:世の中的に言うと、バブルなのでこういうところにいろいろな形で目が向けられるのはたぶんあったと思うので、そこは自然と岡村くんの中にもそういう情報が入った中でということがあると思いますけども。

田家:アルバムをずっと通していくと、岡村さんのある種の正義感みたいなものが必ず見えますね。

西岡:そうですね。やっぱりこうじゃなきゃいけないという感じ。でも、自分はそこにまだ到達していないから、でもそういうことに騙されちゃいけないんだよとか、ちゃんとしなきゃいけないんだよってことは道徳的な部分を訴えていますよね。

田家:だから強がったりとか、背伸びしたりとか、自分を悪ぶってみたりとか、いろいろな面があって。でも根底にあるのは正義感でしょうね。そんなことしていいの? みたいな。

西岡:ちゃんとしなきゃだめだよ、女の子とはってことですよね。ここの前も話しましたけども一歩、二歩も三歩も先に行っている岡村くんなのでこの先どこへ行くのかなという感じもありましたけど、プロモーションしがいのある曲だなと思っていました。

田家:福田さんの中でこの曲で思い出すことはありますか?

福田:ちょうど僕が来週いらっしゃる近藤さんの導きでDVD BOXを作ったことがあって、その打ち合わせの時にあったツアーだったと思うんですけど、「聖書 -バイブル-」のコンプリートバージョンと所謂コンパクトバージョンと2曲をライブでやったんですよ。シングルに立ったパフォーマンスとフルバージョンに立ったパフォーマンスと両方やっていて、これ一体何なんだろうな、でもどっちもかっこいいんですけど。こういうことって、結構ライブを観てるんですけど初めて。

田家:たしかに一回のライブで両方やる人はあまりいませんね。

福田:打ち合わせの時の食事の席で開口一番に本人に訊いた覚えがあるんですよ。その時は本人は答えは出してくれなかったんですけど、よく気づいたねみたいな(笑)。

西岡:当時、これ12インチシングルにして洋楽と一緒にディスコ回ってかけてくださいって言ってプロモーションした覚えがあるんですよね。

福田:欲しいですね、12インチ(笑)。

田家:それもやっぱり再発しないといけませんね(笑)。まだ掘り起こさなければいけないものがたくさんある。





田家:アルバムの6曲目「だいすき」。今日は当時のプロモーター・西岡明芳さん。そして2代目、バトンタッチしたプロモーター、現在の担当でもあります。福田良昭さんの2人にお越しいただいているのですが、今週も西岡さんがいろいろなお土産をお持ちくださいました。今日お持ちくださったのはハートマークのピンク色の。

西岡:このマークがこのアルバムからトレードマークというか。

田家:アイコンみたいなね。

西岡:これも未だに使われているやつかもしれないんですけど、彼っぽいでしょ(笑)。なかなか収納しにくいパッケージで、嫌がられるパッケージかもしれないけど岡村くんとして最高なものが出来上がったと思います。

田家:ピンクのCDですもんね。もう1つ番組表のようなものもあります。

西岡:これは当時EPICがちょうど10周年を迎えた年でもあって、いろいろなことをやろうかという意見がありまして。僕がやりたかったのがEPICのアーティストが全部、例えばラジオのパーソナリティになって、24時間それぞれが番組を持っていろいろな番組を作ったらおもしろいなという企画が通りまして。NACK5という放送局が開局するという情報とその試験電波が流れるタイミングがあったものですから。これに合わせて、番組を24時間分、佐野くんは佐野くんで、美里は美里でと、みんなパーソナリティになっていろいろな番組を作ろうと。その中に岡村くんの番組はどういうものをやろうかと言った時に「だいすき」っていう曲が出来上がるまでを番組にして。

田家:ドキュメンタリーみたいな?

西岡:ドキュメンタリーみたいな感じなんですけど、実は岡村くんのインタビューとスタジオに入って、最後にリミックスをして出てきたところで「どうだった?」ということをインタビューする番組を『レコーディング白書』と名付けました。

田家:次に発売になる岡村靖幸BOXにはそれも入るかもしれないですね(笑)。福田さんの中でこの曲で思い出すことはどんなことですか?

福田:あらためて聴いてみると、子どもたちのコーラスの使い方はここから始まるんですかね。そこからいくつかキッズのコーラスを使った曲があると思うんですけど、これが最初じゃないかなとなんとなく、間違っていたらごめんなさい。そこから始まるので、耳の覚えている感覚がすごくいい感じですね。気持ちいいというか。

西岡:本当にポップな曲だし、メロディアスだし、みんなで口ずさめる曲でもありますし、みんなに愛される曲だよね。

田家:「だいすき」の『レコーディング白書』、NACK5のドキュメンタリー残ってるかなあ(笑)。ちなみにNACK5は関東で私がレギュラーをやっている放送局でもあるので訊いてみようかなと思いましたが、『靖幸』の6曲目「だいすき」でした。





田家:流れているのはアルバムの8曲目「Boys」。ボイスパーカッションで始まっている。

西岡:ボイパですよね。この頃からボイパやっていたとしたら、本当にすごいなと思います。

田家:これを選ばれているのは?

西岡:出だしから一発でやられちゃったって感じの曲ですね。リズム隊も含めて。この印象にすごく残る「コンコンコン」ってものとか、1つ1つの言葉が耳に残って気持ちいいなって感じですよね。

田家:アレンジド&パフォームドby自分っていうのじゃないとなかなかこういうものはできないかもしれませんよね。さっきの「だいすき」を女の子のためにと歌っていましたが、これは男の子の歌ですもんね。当時の男の子の最先端、コンピューターゲーム。

西岡:そういう生活でしたよね。夜は彼も寝ないでやっていたのかもしれないですけど。

田家:この曲のテーマの1つが成長だろうと思ったんですね。〈大人になる前にまず、立派な子供になろうよ〉っていうのがいいなと思って(笑)。

西岡:いいですよね(笑)。僕らもあらためて見返すと、いろいろなことを教えてくれていますよね。

田家:恋愛とは何か、純情ということがもちろん彼の歌のテーマにはずっとなっているんでしょうけど、これは大人と子供という意味で象徴的な曲でもあるんだなと思ったんですよ。〈電車の中で漫画を読む親父ぐらいの人を あーダサイんじゃないのかなあ〉と言っている。

西岡:教育的指導ですよね(笑)。

田家:漫画が流行っていたりしたから、漫画を電車の中で読むのが物分りのいいお父さんだと見せたがるみたいな35歳の中年もいたのかもしれない(笑)。

西岡:でも当時の世相というか、そういうことがいろいろ僕らも今聴くと思い返されてしまって、その後、みんなファミコンを電車でやっちゃこれは目が悪くなるからだめよって感じになっていく。その前ぐらいなタイミングですよね。

田家:アルバムのタイトルの『靖幸』には自画像的な意味があるんだろうと思ったのですが、〈僕たちの生き方って正しいのかな?〉とか、〈子供を育てられるような立派な大人になれんのかなあ?〉 っていう。これも素直だなと思ったんですよ。

西岡:ここでそれまでの恋愛とか、青春とかっていうところから徐々にアルバムの中での変化というか、この曲で聴くことができるので。まあ、ちょっと驚きますけども。

田家:福田さんが前作の『DATE』をまさに青春そのものと言われましたけど、『DATE』の中の青春と『靖幸』の中の青春はちょっと違いますよね。

福田:違いますね。もちろん、真っ只中にはいるんですけどたしかに気持ち的とか、精神的な成長というのはこの中で既にあったり、この曲なんかそうなんですけど。それが『家庭教師』に移っていくんですよね。またさらに成長して。過程と言うと、ちょっと言葉は違うのかもしれないんですけど、岡村くんの気持ちというか、感情というか、言葉と言うというか。そういったもの、芯の部分が作品の中で成長していく。それを『DATE』、『靖幸』、『家庭教師』って繋げて聴いていくと、そのへんがよく分かるんじゃないかなと思いますね。

田家:成長三部作であり、青春三部作である。

福田:だと思いますね。

西岡:音楽的な部分でもそうだと思うんですよね。詞の世界観もそうだし、どんどん成長していることが垣間見える。すごいですねこの三部作は。

田家:アルバムの10曲目「Punch↑」には〈戦争なんか おきたらどーすんだよ〉って歌詞もありました。ちゃんとこの国はっていう批評的な世の中に対しての目がありますよね。

西岡:あるねー。本当にいろいろなことを見ていたし、いろいろなことを感じていて、すごいと思いますね。それしか言いようがないな。

岡村靖幸『靖幸』ジャケット写真

田家:西岡さんはこのアルバムで離れるんですよね?

西岡: EPIC内なんですけど、変わることになります。残念ではあったんですけど、そういうことで言うとこの三部作で福田くんにバトンタッチという感じだと思います。

田家:福田さんはバトンタッチされた時はどう思われたんですか?

福田:とてつもない才能の持ち主だし、『家庭教師』で申し上げたかもしれないんですけど、僕でいいのかなっていうのはまず最初の感情でしたね。僕みたいな人間が彼の音楽をプロモーションで伝えられるのかみたいな。申し訳ないかもしれないという思いがすごい強くて、必死になって彼についていこうと思ったような気がします。

田家:そういう意味で『DATE』、『靖幸』、『家庭教師』この3枚。『yellow』もそうですけど、EPIC時代の岡村靖幸さんがちゃんと世の中に評価されている感じはありますか?

西岡:評価ってその時代で評価されるものもあれば、後々評価されるものもあると思うんですけど、僕らはあの頃はEPICという中でこれからいろいろ何が起こるんだろうと、すごく楽しい気持ちもあるんだけど岡村くんの成長に僕らがどうやってついていくというか、そういう部分も非常にあったし。みなさんにその場で伝わったかどうかは僕らも分からないんですけど、今こういう形でまた岡村くんがちゃんと評価されている。やはり地道なものがこういう形で愛されていくという意味で言えば、すごくいいことを僕らも協力できたなと感じがしますね。彼自身の音楽にそれだけの力があるのは当たり前の話なんですけどね。

福田:正直言うと、僕の口からはきっとちゃんと伝えられていないというか。僕の時代はおそらくEPICからはきちんと伝えられるべきことが伝えられていない、広げられるところが広げられてないふうに反省しています。それを補って余りあるぐらい田家さんみたいな方とか、岡村くんをリスペクトするミュージシャンの方とか、クリエイターの方とかが遥かに的確な言葉で彼の音楽を今までずっと伝えてくれているんですよ。こういうアーティストって実はいそうなんだけど、本当に少なくて。どこかでその声が途切れたり、ちょっと曲がって伝わることがあるんですけど、彼の音楽の良さ、彼のアーティストの魅力がすごくいい言葉でずっと30年以上伝わっているのは彼の素晴らしさだと思いますね。

田家:来週は最終章になるのですが、福田さんは来週も登場いただきます。

福田:はい! お願いします。

田家:西岡さんありがとうございました。

西岡:ありがとうございました。





田家:流れているのはこの番組の後テーマ、竹内まりやさんの「静かな伝説」です。

『靖幸』の最後に「バスケットボール」という曲が入っているのですが、〈僕はまるで 誰もいない教室の 机に書いてある 意味のない落書きさ〉って歌詞があったんですね。どこか痛々しいなという一行でありまして。先週は1988年の話をしましたが、1989年というのは日本の株価が史上最高を記録した年なんですね。つまり、経済的に言うとバブルの絶頂期が1989年でそこから後退期に入っていくわけです。1988年、1989年というのはバブルに向かっていく日本が1番浮かれていた時代で。青春というのも、その中に巻き込まれていったわけですね。世の中が変わっていく中で若者たちの在り方もそれにつられて、激変していった。

あらためて岡村さんの80年代後半はバブルに翻弄された多感な才能という1つの例かもしれないなと思ったんですね。とても感受性の強い、才能のある、表現力のある、そしていろいろなことを学びたいと思っている若者が目の前の激変する風景、出来事、生活模様にいろいろなことに考えて、それを作品にしていって根幹にあったのが青春だった。『靖幸』の後に90年に4枚目のアルバム『家庭教師』が出るんですね。あらためて思うのがこの型破りさ。類型とか、前例がない、いろいろな音楽が全部ここに集まっていて自分の音楽になっている。当時の岡村さんのインタビューの中に「ちゃんと分かってもらえるのは10年後、20年も後だと思う」という発言がありました。『靖幸』そして『家庭教師』から30年が経ったわけです。来週は最終週をお送りします。

左から田家秀樹、福田良昭、西岡明芳


<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210

OFFICIAL WEBSITE : https://cocolo.jp/
OFFICIAL Twitter :@fmcocolo765
OFFICIAL Facebook : @FMCOCOLO
radikoなら、パソコン・スマートフォンでFM COCOLOが無料でクリアに聴けます! 
cocolo.jp/i/radiko

外部リンク

cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_ee01069aebbe_降幡 愛が語る、独りよがりなラブソングにならない理由 ee01069aebbe ee01069aebbe 降幡 愛が語る、独りよがりなラブソングにならない理由 oa-rollingstone

降幡 愛が語る、独りよがりなラブソングにならない理由

声優として活動する降幡 愛が、9月に発表した1stシングル「ハネムーン」に続いて2ndシングル「東から西へ」をリリースする。

映画『189』の主題歌でもある表題曲の他、カップリングの2曲を含め全曲降幡が作詞し、本間昭光がプロデュース・作編曲を手がける。降幡が好きなサウンドを追求するこのソロプロジェクト、気づけば80年代オマージュ云々とは別の次元で音を鳴らしていることが分かる充実の仕上がりだ。そんな降幡がRolling Stone Japan初登場。いろんな角度から話を聞いてみた。



—「降幡 愛 2nd Live Tour ”ATTENTION PLEASE!”」初日のZepp Hanedaを観させていただいたのですが、降幡さんのヴォーカルとプロデューサーの本間(昭光)さんのキーボードを中心とした楽器隊との一体感も心地よく、ソロデビューして1年とは思えない完成度の高さだと思いました。バンドを従えての歌唱はやはり気持ちいいですか?

降幡:1stツアーからご一緒しているベースのタケウチ(カズヒロ)さんに安心感を感じつつ、ドラムの髭白(健)さんとギターの高田(翼)さんは初めましてだったんですけど、バンマスのnishi-kenさんと本間さんを中心に、グループの一体感は初日のリハーサルの段階からすごくあって、空気感もよかったです。なのでバンドを従えるというよりは、みなさんと楽しくステージに立てている感覚で、贅沢だと思いながら初日を迎えました。

—本間さんもMCで話してましたけど、降幡さんのやりたいことが明確にあるからこそ、これだけのまとまりが生まれるのかなと。ご自身的にはどうですか?

降幡:アーティストとしてデビューする前の段階では、まだ明確に自分のやりたいことはなくて。以前から80年代の音楽は好きでしたけど、ここまで突き詰めてやるとは思ってなかったんです。ただ、本間さんがプロデューサーになって密にやっていくなかで、最初に歌詞を書いた「CITY」で本間さんも本気になってくださって。コンセプトがはっきりしているので、みなさんも面白がってくださるし、私も蓋を開けたらやりたいことだらけで。特に本間さんがアイデアマンで、サウンド含め、照明はもっとこういう感じがいいよとか、いろいろなお話をしてくださいます。本間さんがお仕事されてきた偉大なアーティストたちを考えると凄いことですし、今こうしてご一緒できているのがうれしいです。

—降幡さんが自分で曲を制作していることも皆のモチベーションになってるのかもしれないですね。

降幡:はい。やれと言われたことができないタイプなので、自分でストーリーや世界観をつくっているからこそ、できるものがあるのかなと思います。令和の時代に80年代のものをコテコテにやるってイロモノに捉えられがちですけど、本間さんやレーベルのチームと一緒にやっている本気さが、だんだん周りの方たちにも伝わっているのかなってことは、この1年アーティスト活動をしていて思います。周囲の評価もだんだん変わっていったのがうれしいです。


降幡が紡ぐ言葉のインプット源

—ライブの話に戻ると、例えば「ハネムーン」はライブでだとギアが一段上がる曲だなと感じました。音源とライブのアレンジの違いに関してはどうですか?

降幡:「ハネムーン」は初めて音源で聴いたときはキラキラしているリード曲ってイメージだったんですけど、ステージでやってみてライブ映えするんだって気づきました。ライブを通して本間さんのピアノも凄いなってあらためて思えたので。今回のツアーは本間さんとnishi-kenさんとご一緒してるんですけど(両者が別日でそれぞれキーボードを担当)、二人とも弾き方が全然違うので面白いです。あとはベースの音色がライブだと私のツボで、タケちゃんもいろいろ考えてくださっているんだなって。



—星が降ってくる演出は、本当は前のツアーでやりたかったとか。

降幡:1stツアーの最後のZepp DiverCity TOKYOで降らせる予定だったんですけど、無観客になってしまったので、今回は「AXIOM」って曲で星を降らせました。お客さんたちは何が起きたんだろうみたいな感じでびっくりしsていましたけど(笑)、あの光景を見られてよかったです。

—開演前〜冒頭の演出も、降幡さんのアイデアですか?

降幡:はい。空港でフライトを待っている感じを出したい……って話をして、ナレーションの声も新曲のレコーディングのタイミングで録りました。空港の中のざわざわした環境音も、音響スタッフの方がわざわざ空港まで行って、しかも本間さんの発案で国際線のターミナルの音を録ってきてくれたんです。ライブの世界観にどっぷりつかる雰囲気づくりをみなさんと一緒につくっていけて楽しかったです。

—今回は2ndシングル「東から西へ」の話を聞かせていただこうと思うんですけど、リリースのペースが早いですよね。

降幡:思いがけず(笑)。うれしいです。

—今回も収録曲3曲、「東から西へ」「サンセットに忍ばせて」「ネオ・イルミネーション」、すべて降幡さんの作詞です。日頃から歌詞のアイデアを書き溜めてるんですか?

降幡:はい。iPhoneのメモ機能に、この言葉使えそうだなって思ったフレーズを常日頃メモしていますね。曲をつくることになったら、テーマは事前にチームでお話しして決めます。そこから使いたいフレーズを、今まで書き溜めてたものから抜くこともありますし、あらためて違うインスピレーションで書くこともあります。

—降幡さんの言葉のインプット源は何ですか?

降幡:最近は、人と話しているときに気になったフレーズをiPhoneにメモしてるんですが、カフェでいろんな人が話している内容もアイデアの種になったりします。みなさんけっこう面白いこと喋ってるじゃないですか。そう考えると、人に興味があるんだと思います。自分のことはよくわかってないですけど、この方はこういう人なんだろうな、とか、分析するのが好きです。

—なるほど。

降幡:言葉の裏にあるものを知りたいんですよね。本当はそんなこと思ってないのに言ってしまったんだなとか。家族構成とか関係性とか、バックボーンを考えるのが好きです。


アーティストとしていろいろな発見があった「東から西へ」

—「東から西へ」の歌詞には”かなしみ”ってワードが繰り返し出てきますけど、最後の”つよく、つよく、生きるのだから”がとても心に残ります。

降幡:「東から西へ」は映画主題歌ってこともあったので、自分が書きたいものというよりはその作品に対するアプローチをうまく自分の中で表現できるかってことを大事にしました。今までは悲恋歌みたいなものは書いてたんですけど、そうじゃないアプローチで書かなきゃってことは、この「東から西へ」で特に思ってたことです。明日への希望の光みたいなものを、今までの作風じゃないところで書かなきゃなとは思ってました。



—歌詞を完成させるのは大変でしたか?

降幡:そうですね。最初は映画観終わった方たちにあなたはどう思いますか?って問う歌詞だったので。その歌詞を加門(幾生)監督にお渡ししたときに、もっと希望を与えられるような、あったかい歌詞がいいです、ってオーダーをいただいて今の形になったので、最初にできたものとは180度違う内容なんです。でも、映画の試写で初めて「東から西へ」を聴いたとき、これでよかったって思えました。映画にすごく溶け込んだ曲がつくれたなって。

—これまでの降幡さんの曲の中では、異色な感じですよね。

降幡:だいぶ異色です。羽田で初披露して、これまでの自分とはまた違った歌い方や表現ができて、ライブでこういう表現もできるんだって発見にもなりましたし、アーティストデビューから1年経ってのリリースで、いいタイミングでいろいろ気づかされた曲です。

—サウンドも弦楽器の響きが美しくて、ビートも柔らかい。

降幡:チェロも生楽器で、音の温かさは本間さんも追求していたと思います。これまでの曲でチェロは使っていなくて、今回は音数も少ないし、曲調もバラードで、自分の中では難関でした(笑)。

—これまでの曲とはアプローチが全然違うけど、80年代っぽさも何となくありますよね。

降幡:そうですね。80年代って括りで語るなら歌謡曲寄りというか。いろんなサウンドがあってもいいと思います。

—「サンセットに忍ばせて」の歌詞は降幡節で、この曲はどういうところから書いていったんですか?

降幡:今回のシングル収録曲は、まず「東から西へ」があって、次に「ネオ・イルミネーション」があって、この曲は最後につくった曲なんです。3曲通してどういうテーマにしようか考えたときに、日が昇って落ちるところまでは「東から西へ」「ネオ・イルミネーション」で書けたから、次は夕陽だと思って「サンセット」って言葉が思いついて、そこから書き始めました。夕焼けに自分の想いを乗せて、夕陽が沈む。自分っぽいものを書こうと思って、恋愛要素や強い女性、怒りをテーマに書いた感じです。怒りを静めるというか。

—冒頭の”心のバランスが崩れ”って掴みにハッとさせられるというか。曲のフックになってると感じたんですけど、そこには怒りが起因してるんですね。

降幡:コロナ禍になってみなさんいろんなストレスを抱えてると思うんです。発散できないやり場のない怒りは少なからず自分にもあると思うので、そういうものを書きました。大人の女性の怒りというか、静かに怒ってる。今だから書けるのかなって部分もちょっとあります。

—そういう話って本間さんに歌詞を渡すときに話したりするんですか?

降幡:歌詞の話はあまりしないですね。レコーディングのときにちょっとおしゃべるするタイミングで、会話の延長線上で話すくらい。歌詞の内容について熱弁することはないです。


「サンセットに忍ばせて」のリファレンスは和田加奈子「悲しいハートは燃えている」

—シンセの流麗なサウンドと、ちょっと尖った感じのギターサウンドが印象的で。

降幡:ああ! そうですね。ギターソロって意味で言うと、本間さんに怒りの曲です、ってことは言いましたけど、ギタリストの方にそんなに細かくは伝えてなかったと思います。

—ギターで怒りが表現されつつ、でもサウンドの空気感は80年代っぽい華やかさを纏っていて、そこが面白いなと思いました。

降幡:本間さんはもうわたしの好みを知ってるので。そういうのが多分、1年やってきて言わなくてもわかるようになったところはあるかもしれないです。

—本間さんにリファレンスを出することもあるんですか? こういう曲がいいです、みたいな。

降幡:「サンセットに忍ばせて」に関しては、和田加奈子さんの「悲しいハートは燃えている」っぽい感じがいいとお伝えしました。バンドっぽい強いサウンドというか。



—強いサウンドと強い言葉、ですね。歌詞は基本シンプルですよね。

降幡:長くなりすぎないようには気をつけてますね。サビも同じフレーズを繰り返していて、耳に残りやすいようにしてます。令和の曲って情景を一言一句書くところがあるじゃないですか。もちろんそれはそれで素敵なんですけど、そんなに説明っぽくならない歌詞にしようとは常に思ってますね。

—「ネオ・イルミネーション」は、最初からクリスマスソングにしようと決まってたんですか?

降幡:決まってました。シンプルなクリスマスソングをつくろうと思ったんですけど、結果ちょっとこじれた感じの女の子の主人公ができた感じです。

—ジングルが入ってて、これぞクリスマスソングって感じですよね。

降幡:チャラーンみたいな乾杯の音は入れてくださいってオーダーはしました。曲の中で何度も出てくるんですけど(笑)。

—思い描いていた通りの曲になりました?

降幡:思い描いていた以上の感じです。街中で流れてそうな王道なクリスマスソングであり、自分の詩の世界観が合わさって新しい一面も生まれた曲です。もちろん本間さんらしい部分も出てて、詩はそんなに80sに寄せてはないんですけど、サウンドとマッチしてる。すごく素敵なキラキラした曲ができたなって思います。

— ”買ってもらったワンピース脱ぎ捨てた/シャワーヘッドをマイクにリサイタル”って歌詞とか、昭和な感じだなと思いました。

降幡:(笑)そうですね、言われてみると。普通の恋愛ソングじゃない感じというか。クリスマスって恋人だけで過ごすわけでもないじゃないですか。自分の中のクリスマス像が王道じゃないんだなって再認識しました(笑)。


「共感は何一つできないと思います」

—降幡さんの曲って、今時の恋愛ソングとは全然違いますよね。ラブソングを聴いている気分にならないというか。

降幡:ははは(笑)。たしかにラブソングとして聴くものでもないですね。わたしの頭の中で描いているドラマを歌詞にしてるので、どこか俯瞰な部分ができるのかもしれないです。「あなた悲しいでしょ」みたいに、独りよがりっぽくないというか。「東から西へ」はまた別ですけど、希望に向かっていこうぜ!みたいな歌詞は書けないです(笑)。

—いい意味で、共感を誘う曲じゃないなって。

降幡:(笑)共感は何一つできないと思います。前にリスナーの方に「降幡さんの歌詞は共感する部分は一切ないんですけど、聴いてて楽しいです」って言われました。本当だ、と思いました(笑)。別に共感して欲しくて書いてるわけでもないので、その見方はちょっと盲点だったなと思ったんですけど(笑)。

—ソロでアーティスト活動を始めてみて、自分の中の新しい扉が開いた感じはありますか?

降幡:アーティストデビュー前はもっと役柄のイメージに沿った可愛らしい歌声だったところが、いざソロ活動してみたら大人っぽい感じの、今までの印象とは違うギャップが出せているので、そういう感覚はあるかもしれないです。いろんな自分を見せられる場ができてうれしいなって思います。

—アーティスト活動で得たものを、他のお仕事でもフィードバックできてるなと感じますか?

降幡:はい。声優のお仕事で台本を読むときに、人間関係だったり、キャラクターの違う一面ももっと考えなきゃと思うようになりましたし、これまでとは違うアプローチができるようになってきたかなって思います。

—今後やってみたいことは?

降幡:これまで他のアーティストの方と絡む機会がなかったので、自分の歌詞を誰かに提供するでもいいですし、別の方との相乗効果というか、コラボレーションみたいなことができたら面白いなとは、漠然とですけど思っています。

降幡 愛(Ai Furihata)
2月19日生まれ、長野県出身。 2015年に『ラブライブ!サンシャイン!!』の黒澤ルビィ役で本格声優デビュー。同作品のスクールアイドルグループ「Aqours」のメンバーとして活動し、2018年には東京ドーム2DAYSのライブにて、 国内外ライブビューイングを含め15 万人を動員。 同年末の第69回NHK紅白歌合戦に出演を果たした。 2020年9月23日にデビューミニアルバム『Moonrise』をリリースし、ソロアーティストデビュー。2021年には2度のライブツアーを開催した。

<INFORMATION>

「東から西へ」
降幡 愛
Purple One Star/バンダイナムコアーツ
12月1日発売

初回限定盤
価格:3080円(10%税込)/2800 円(税抜)
品番:LAPS-34007~8
仕様:CD1枚+Blu-ray1枚
20Pフォトブック、スリーブ付
初回生産特典:2022年2月開催・スペシャルライブ「Ai Furihata ”Trip to STAR”」チケット最速先行抽選申込券

通常盤
価格:1430 円(10%税込)/ 1300 円(税抜)
品番:LAPS-4007
仕様:CD1枚
初回生産特典:2022年2月開催・スペシャルライブ「Ai Furihata ”Trip to STAR”」 チケット最速先行抽選申込券

【CD】
01:東から西へ
02:サンセットに忍ばせて
03:ネオ・イルミネーション
04:東から西へ(Instrumental)
05:サンセットに忍ばせて(Instrumental)
06:ネオ・イルミネーション(Instrumental)

【Blu-ray】 ※初回限定盤のみ
・「東から西へ」Music Video
・Music Video Making

https://furihataai.jp/

外部リンク

cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_bef827223cae_ジョーダン・ラカイが実践したセルフケア 音楽家が「心の闇」を乗り越えるための制作論 bef827223cae bef827223cae ジョーダン・ラカイが実践したセルフケア 音楽家が「心の闇」を乗り越えるための制作論 oa-rollingstone

ジョーダン・ラカイが実践したセルフケア 音楽家が「心の闇」を乗り越えるための制作論

ジョーダン・ラカイの最新作『What We Call Life』は、これまでの作風からガラリと変わっている。端的に言って異色作だが、おそらく彼の評価をさらに引き上げることになるだろう。

『What We Call Life』のテーマは、セラピーで得たものをシェアすること。ここには彼のトラウマや、人種的な葛藤などについて吐露するような歌詞もある。つまり、本作はメンタルヘルスやセルフケアといったことがテーマだとも言える。そこまでなら似たようなコンセプトの作品は少なくないだろうが、そのコンセプトと音楽の制作プロセスや表現手法が強く結びついているところが、本作を唯一無二たらしめている。

トム・ミッシュ、ロイル・カーナー、コモンとのコラボでも知られるジョーダン・ラカイは、2015年にロンドンへ移住。翌年にNinja Tuneと契約し、世界的アーティストとして頭角を現していった。そんな彼が、ここでは過去の成功体験を一旦忘れて、完全に今までと異なる制作手法を用いている。そうして生まれたサウンドや歌詞の深みからは、『Cloak』『Wallflower』『Origin』の過去3作を経て、アーティストとして成熟したことがうかがえる。それに何より、作品からにじみ出ている人間としての成熟みたいなものが、このアルバムを特別なものにしているように思う。

自身の経験をさらけ出し、これまでとは異なるスキルが求められる歌にチャレンジし、その音楽のかなりの部分を共作者たちに委ねた。自分と向き合い、自分を認めながら、自分のエゴを捨て去った。ミュージシャンとしても、ひとりの人間としても大きく成長したジョーダン。キャリアの第2章が始まった。



―『What We Call Life』はどんなテーマで制作したのでしょうか?

ジョーダン:テーマは自己の内側を見つめて、なぜ自分が今の自分になったのか、これまでの人生の変遷を分析すること。そして僕はそれをセラピーによって学んだんだ。過去を発見して、子供時代を発見して、学生時代や、ロンドンへと移ったこと、そういったことについて色々と分かった。つまりこのアルバムには僕の人生が表れているんだ。

―セラピーで気付いた自分の内面の深い部分には、きっとネガティブなこともたくさんあったのでしょうし、それを表に出すというのは勇気が要ることではないかと想像します。なぜ、そのようなテーマに取り組もうと思ったのでしょうか?

ジョーダン:僕は常に人として向上したいし、成長したいと思っていてる。だから、自分の心の闇の部分に直面した時も、自分が成長するチャンスとして捉えるんだ。より良い人間になるためには闇を克服しなきゃいけないしね。

―このアルバムのテーマに、セラピーから得たものをシェアするというのがあります。ただ本作は聴き手を「癒す」ためのアルバムではないと思います。どちらかというとエンパシー(共感)だったり、聴き手が自分のことを見つめ直したり、他者についてより考えさせるようなアルバムかなと思ったのですが、いかがですか?

ジョーダン:まさにそうだと思う。自分が抱えている問題について語ったり、内省する行為によって、他の誰かが自分自身を掘り下げようとするきっかけになったらいいなと思ってる。そして、その誰かが自分の抱える問題、子供時代、人生、将来について考えてみようという気になったりね。心の健康に対する関心を高めよう、そこに光を当てようということだね。でも同時に、自分について語ってそれを吐き出すことそのものが良いことだと僕は思ってる。胸の内を曝け出すことにはカタルシス効果があって、これもセラピー的経験なんだ。同時にそれが誰かを刺激して、その人が自分のメンタルヘルスに注目してくれたら嬉しいよね。

―では、このアルバムではどんなことをシェアしているのでしょうか。

ジョーダン:たとえば「Illusion」は、すごく楽しくてハッピーな曲なんだけど、内容は自由意志について。僕らが自分の運命をどれだけコントロールできるかについてだったり……もしあらかじめ決められているとしたら、その運命に屈服するのか、あるいは自分で自分の運命を握って決断していくのかっていう話。僕がセラピーを通じて学んだのは大体今言ったようなことで、人生の新しい章で新たなレガシーを築いて、壁を打ち破るってことだね。



―あなたは2017年のアルバム『Wallflower』に関して、「不安に対処し、それを克服すること」についての作品だと語っていましたよね。そこには別れやすれ違いの歌、「May」のように喪失に関する歌もあった。同じように『What We Call Life』にも「不安や問題に向き合うことや対処すること」は含まれていると思います。どちらもパーソナルで内省的で、サウンドもアトモスフェリックだったりと共通点もある。一方で、サウンドや詞も全く異なるものでもある。それを踏まえたうえで、『What We Call Life』における内省の性質を説明してもらうことはできますか?

ジョーダン:いい質問だね。実は自分でも『What We Call Life』を『Wallflower』の兄貴のようなものとして考えているんだ。そして前作『Origin』が1stアルバム『Cloak』の兄貴。『Cloak』と『Origin』はソウルフルなのに対し、『Wallflower』と『What We Call Life』はすごくアトモスフェリックで、幽玄的だから。

でも内省の面は少し違っていて、『Wallflower』で僕は自分が不安を抱えていることに初めて気づいて、それについて語ることが自分にとっては新しいことだった。自分自身を見つめて、自分が何者なのかを考えたり、自分の不安を理解したり、シャイで内向的な性格である自分と向き合うといったことを始めたのがあのアルバム。一方の『What We Call Life』は似たようなコンセプトだけど、そこには不安だけではなく、自分のあらゆる要素が含まれている。僕の主体性や決意、新たな国に移り住んで、新たな旅を始めて、結婚して家庭を築こうとしていることも含まれている。今は人生の新たなステージにいるからね。

セラピーに学んだ「誰かに委ねること」

―あなたはこれまで自分でいくつもの楽器を奏で、ビートメイクも行って、更に編集やミックスも自ら行ってきたわけですよね。でも本作では、最初から最後までフルバンドと共作したと資料にあります。その制作のプロセスを教えてください。

ジョーダン:このアルバムを作る前に、僕は自分がクリエイティブな面でひとつの限界を迎えたと感じていたんだ。今回もし全部自分でやっていたら、またそれまでの自分のサウンドを作っていたと思う。だから、アーティストとして成長するためには、制作の最初から人を巻き込むのがいいんじゃないかと考えた。

そこで僕は、昔のプロデューサーのように自分はどっしりと構えて、みんなが演奏するのを聴きながら、それらすべてをパッケージとして考えるアプローチを取った。以前は自分でピアノを弾いて、次は自分でギターを弾いて……というやり方だった。たぶん昔は自分で考えることが多すぎたんだ。でも今回は、他の人たちの影響が曲に入り込むようにしたかったし、関わる人が多くなれば僕のサウンドは自然と変わるだろうと思った。そして外部のプロデューサーとしても成長できるんじゃないかと考えた。つまり自分はコントロールルームに座って、イエスとかノーを言うだけっていうオールドスクールなやり方だよね。おかげで、そういうコミュニケーションの取り方についてすごく多くを学んだよ。より広角なレンズで物事を見るということもね。

―そこでのプロデューサー像について、ロールモデルというか、自分の目標になった人はいますか?

ジョーダン:まず、リック・ルービンには大きな影響を受けた。それからレディオヘッドのプロデューサー、ナイジェル・ゴッドリッチ。彼はレディオヘッドのサウンドに大きく貢献しているわけだけど、ただ座ってそこにいる黒幕みたいな存在だよね。というわけで、僕も自分の内なるナイジェル・ゴッドリッチを降霊させようとしていたんだ(笑)。

Photo by Joesph Bishop

―これまでの作品ではビートとループ、そして歌が中心にある曲が多かった印象があります。それに対して『What We Call Life』では、もちろん歌は大きな要素としてありますが、中心がわからないし、出発点もわからない。作曲もアレンジも演奏、録音も編集も全てが平等で同時進行みたいに聴こえますね。

ジョーダン:これまでの僕は、ピアノの前に座って曲を全部作ってから、それに合わせてビートを作っていた。だから、これまでの曲には、より歌ベースのソウルフルなものが多かったんだ。でも今回は違うプロセスをとっていて、スタジオに滞在しながら、インストゥルメンタルだけを先にレコーディングしたんだ。そして帰ってきてから歌詞を書き始めた。だから自分の声は焦点やリードというよりは楽器に近い。僕の声は、単に曲の様々なパーツのひとつに過ぎなくて、そのほかの楽器にもしっかり役割を果たしてもらう音楽にしたんだ。『What We Call Life』の収録曲は、曲によってすごくハッピーで楽しくてファンキーで、かと思うとすごくダークでエレクトロニックで幽玄的。そこで音楽が声と同じくらいストーリーを物語るものにしたかった。ヴォーカル5割、音楽5割で、お互いにとって重要なものになってるんだよね。

―そういった特殊な制作プロセスや音楽性のインスピレーションになったアーティストは?

ジョーダン:以前の僕の音楽はマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダー、ディアンジェロの影響が強かったけど、今回はかなり違う。たとえばビョーク。もちろんレディオヘッド、それからボン・イヴェール。あとはトーク・トークという昔のバンドの要素も入っているかもしれない。特にアトモスフェリックな彼らの初期作品。それにポール・サイモンやフィル・コリンズなどの80年代初期の感じとかね。そっちは楽しい系の曲で、ダークな曲はビョークやレディオヘッドの感じ。



―優れたバンドメンバーが入っていることはアイデアの多様さからもよくわかります。曲の世界観にメンバーのアイデアや演奏もかなり影響を与えていますよね。

ジョーダン:影響は本当に大きかったよ。僕はあらゆる判断においてメンバー全員が同等の発言力を持つようにしたかったし、本物のコラボレーションにしたかったんだ。実際にドラマーのアイデアから「Unguarded」が始まっているしね。最初にパッドを使ってベースラインを弾いて、僕が「それすごくいいね。その路線でやってみよう」と言って、という感じ。多くのアイデアは全員によるもので、みんな同じくらいの割合だった。音楽的に多様になったのは、いろんな人のアイデアが入ってるからだよ。ある日はドラムから始まって、またある日はピアノから始まった。関わったすべての人が混ざっているんだ。

―そこまでアイデアがみんなから出たということは、基本的には参加したメンバー全員が作曲家みたいなところもあるんですかね。

ジョーダン:そう! みんなそれぞれアーティストだよ。実際プロデューサーやアーティストとコラボレーションする方が、優れた楽器奏者とやるよりもいいと思うんだ。彼らは自分のパートだけではなくて曲のことを考えてくれるし、その曲のなかで何がうまくいくかを考えてくれるから。だから今回はドラマーやベース奏者ではなく、最高峰のプロデューサーであり素晴らしいソングライターの集まりと言えるね。

―みんなのアイデアが平等に採用されていたり、他の人から別のアイデアが生まれるきっかけに繋がったりしながら、曲のあり方自体も変わっていく。そういう平等さや相互作用を重視した制作過程も、「セラピーで得たものをシェアすること」というコンセプトは繋がってる部分もあるのでしょうか?

ジョーダン:うん、あるんじゃないかな。レコーディング・セッションはセラピーのあとだったから。そもそもアルバムの曲を書き始める前、まだ何もレコーディングしていないうちから、今回はセラピーについてのアルバムにしたいっていうのは言っていたし、だからダークで幽玄でエモーショナルにする必要があるだろうと考えていたんだ。そういったコンセプトのいくつかをメンバーとも話したら、彼らも心を開いて僕の話をじっくり聞いてくれて、メンタルヘルスにまつわる自分の経験を教えてくれたりした。

今回、僕が他のミュージシャンを支配することを放棄して、影響を受けやすい状態でいたということは、ある意味セラピストに自分の感情を引き渡すのと同じだと思うんだ。僕にとって、曲がどこに向かうかを他のミュージシャンに任せるというのは、すごく大きな一歩だったんだよ。以前の僕はコントロール・フリークで、どのパートにも関わりたい、これも自分で演奏したい、この部分も自分で……っていう感じだった。でも今回、それを他の人にやってもらうことで、少しリラックスして、一歩下がって物事が見られた。だから間違いなく繋がっていると思うよ。

ジェフ・バックリィと「嘆き」の声

―歌い方や歌声の質感の加工に関しても、これまでにはやらなかったような表現がかなり入っていると思います。ファルセットにしても今までとは声の出し方が異なっているように思うし、それにより全く異なる情感が出ているとも思います。歌唱の変化についてはどうですか?

ジョーダン:今回は意識的に歌い方を変えようと思ってた。ダイナミックに、すごく力強かったり、すごく優しかったり、いろんなスタイルの歌い方を詰め込もうとしたよ。まず手始めに、僕の妻に聴いてもらった。というのも、僕は家にいる時に歌ってることが多くて、いろんな歌い方をしてるんだよ、ボーカルラインだったり……結構いつも歌ってて、そうすると妻が「アルバムでもそういう歌い方をした方がいいよ。あなたがそんな風に歌えるのを誰も知らないと思うから」とか言ってくれて。とにかく今回は抽象的なメロディを多く書いたから、ボーカル的にはチャレンジだったね。ボーカルとしての自分を追い込むということと、興味深いものにしたいということ、リスナーがこれまで聴いたことがないようなものを聴かせたいっていう思いがあった。

―参照したボーカリストは?

ジョーダン:ピーター・ガブリエル、それからスティングも明らかにそう。この二人の影響はかなり大きい。それにジェフ・バックリィもそうだと思う。これまでの僕のボーカルは、もっとディアンジェロだったりスティーヴィー・ワンダーだったり、よりリズミックでソウルフルなものだったけどね。今回はもっと……僕は「嘆き」と説明しているんだけど、スローな嘆きの歌というかね。

―ジェフ・バックリィが挙がるのはしっくりきますね。

ジョーダン:彼からの影響は一番大きいと思う。若い頃は、誰かの声に似ていると言われると、彼の真似をしてるように思われてるんじゃないかって自意識過剰になったりしてた。今は最大の賛辞として受け止めるようになったね。自分が一番好きなシンガーにちょっとだけでも近いと思われるなんてさ。



―このアルバムでは歌詞のもつ世界観やムードが、サウンドとかなり密接に結びついている印象です。アレンジと歌詞の関係についてはどうですか?

ジョーダン:スタジオで作った曲を聴きながら、この曲はどんな感情を掻き立てるのか、自分はこの音楽のムードのなか、歌詞で何を言いたいのかということを自分に問いかけながら書いたんだ。たとえば「Send My Love」はすごくハッピーでエネルギッシュでアップテンポな曲だから、歌詞もそのサウンドに合わせて少しポジティブなものにしたいと思った。一方で「Brace」は、かなりダークで幽玄で、ここでは存在論的なテーマを語りたいと思った。つまり音楽を聴いてから歌詞を書いたというのが、結びつきがうまくいった理由じゃないかな。

―「Family」の切実なハイトーンはまさしく、今までの作品ではあまり聞かれなかった歌唱だと思います。

ジョーダン:これはロンドンで1人で作った曲で、ベースを自分で弾いてドラムのプログラミングも全部やって、だから昔ながらの作曲方法で書いたもの。もう少しシンプルでパーソナルな曲が欲しくて、それで作ったんだ。この曲は、両親の離婚についてと、そのことが子供の頃の僕にどう影響したのか、大人になった自分が振り返っているというもの。でも、何があっても僕は2人が大好きだ、なぜなら2人は僕の家族だからだと両親に伝えようとしていて。サビの歌い方はすごくエモーショナルで、ここは泣き叫ぶというような意図がある。だから感情を込めて、自分を追い込んでいるんだよ。



―「Clouds」では人種間の分断について、あなたが自問自答しているような歌詞が綴られています。

ジョーダン:これも1人で作った曲。去年5月に起こった人種差別への抗議運動にインスパイアされた曲で、僕自身も人種が混ざっているんだけど、時々それを忘れてしまう。実際見るからに白いし、白人社会で育って、今もそういう社会に生きていて、自分のルーツを忘れそうになる。だから曲の前半はそれに対する罪悪感について、自分の無知だったり、自分のその側面を意識していないこと。曲の後半は、それについて何かするべきだ、より良い人間にならなければってことを歌ってる。いかにBLM運動が僕の人生に影響を与えたか、ということについての曲だね。



―「Runaway」では心の葛藤が歌われていて、主人公は最終的にはベッドの中で動かない。このムードやエモーションをどんなサウンドで描こうとしたのでしょうか。

ジョーダン:個人的には、この曲がアルバムのなかで一番好き。作っている時にやろうとしていたのは、なるべく余白を空けようということ。変な拍子を使っていて、ちょっとジャジーではあるんだけど、自分としてはシンプルで心が落ち着く曲だと思っている。ここでの僕はまるで独り言みたいに、過去を振り返りつつ新たな章を始めようってことを歌っている。病院のピーピーという音みたいなピアノで始まって、ダークでインダストリアルな感じがバラードと混ざり合っていて。実際は変なミックスなんだけど、いい感じに独特なサウンドになっているよね。



―さっきスティングの名前が出ましたが、彼の名曲「Englishman in New York」にかけると、あなたは「Australian in London」な訳ですよね。

ジョーダン:そうだね(笑)。

―国や出自についてもそうだし、どこか特定のシーンにコミットしている感じもしない。ずっと独特なポジションにいるようにも映るんですけど、それについて思うことはありますか?

ジョーダン:これもいい質問だね。実は自分でも結構よく考えるんだ。ニュージーランド人である自分がオーストラリアで育って、そしてロンドンに移り、今はロンドンが自分の故郷のように感じている。でも、ロンドンの人たちは、今でも僕のことをオーストラリア人だと言うし、一方オーストラリアの人は僕のことをイギリス人だと言い、僕は変なところで身動きが取れなくなっていて、どこにも属していない感じだから。

その一方で、ロンドンの良いところは、僕はいろんな人を知っていて、ジャズのコミュニティでも大体の人と一緒にやったことがあるし、ポップ・コミュニティもダンス・ミュージックの人たちも、というか全員知っているというか。だから誰かが必要な時はすぐに頼める。でも、自分が作っている音楽は他の人たちとは少し違うと思っていて、なぜなら僕は全部集めて、それを自分の音楽に取り入れてるから。この部分はすごくジャズっぽいけど、この部分はすごくポップだったり、ダンスだったりっていう。自分の音楽は、ロンドンで生まれるあらゆるサウンドの真の表象だと言っていいんじゃないかな。それは自分があらゆるアーティストや音楽から影響を受けていて、ここで暮らすことによって、それが自分のサウンドに入り込むからだと思う。

―『What We Call Life』が大好きなので、取材できて嬉しかったです。音楽と感情の結びつきがジェイムス・ブレイクの1stアルバムみたいだと思いました。

ジョーダン:ありがとう。僕もジェイムス・ブレイクの1stは大好きなんだ。彼にはすごく影響を受けているから、そう言ってもらえると嬉しいよ。


ジョーダン・ラカイ
『What We Call Life』
発売中
国内盤CDにはボーナストラック収録、歌詞対訳と解説が封入
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11939

外部リンク

cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_f9e718f7e74a_2021年を象徴する英単語に「NFT」選出 英 f9e718f7e74a f9e718f7e74a 2021年を象徴する英単語に「NFT」選出 英 oa-rollingstone

2021年を象徴する英単語に「NFT」選出 英

英英辞典等を出版するイギリスのコリンズ社による「今年の単語」にて、Non-fungible tokensの略称である「NFT」(非代替性トークン)という単語が、「Climate Anxiety」(気候不安症)を破って選ばれた。

コリンズ社の投稿によるとNFTは「唯一の電子証明書。ブロックチェーン上に記録され、芸術品や収集品といった対象物の所有権を証明するために用いられる」と定義されている。NFTが「今年の単語」に選ばれた理由として、同社は「その偏在性と、テクノロジー、アート、商業が混在するという性質が大衆の興味をかき立てる」と述べている。

関連記事:NFTアート作品がAIパートナーになる日も近い?

2021年を通して、NFTは仮想通貨コミュニティのニッチなものから、億万長者的大企業へと興味の対象を移してきた。伝統的な芸術の世界を嵐で席巻。ビープルとして知られるアーティストのある作品に関する権利が、歴史あるオークションハウスのクリスティーズにおいて6900万ドル(約78億円)で落札されたのが今年3月のことだった。また、音楽業界でもNFTに対する関心は高まっており、アーティストたちの新たな作品の公開場所として、あるいはファンたちとの交流の手段として、NFTの秘める可能性が注目されている。

その一方で、NFTが環境に対して与える影響も無視できないものとなっている。今年4月の調査結果では、イーサリアムブロックチェーン上でNFTを1つ生成し取引すると、アメリカにおける一般の家庭1つで1年半に消費される電力と同じだけのエネルギーが必要になるとされている。ただ、NFTの生成や取引には、いくつもの環境に配慮したオプションがあり、そうした場合にもたらされる悪影響は、様々な技術が環境に与える影響のうちの一つに過ぎないとも考えられる。

その他の候補に上がった言葉は新型コロナ関係のものが多く、「double-vaxxed」(ワクチン2度摂取完了)、「pingdemic」(イギリスのコロナウイルス追跡アプリの通知音とパンデミックを掛け合わせた造語)、「hybrid working」(リモートワークとオフィスワークのハイブリッドでの仕事)など。また、「metaverse」、「cheugy」、「neopronoun」、「regencycore」といった単語がリストアップされた。

From:NFT Beats Out Climate Anxiety for Dictionary Publisher Collins Word of the Year

外部リンク

cat_oa-rollingstone_issue_79f90529923d oa-rollingstone_0_db297c747bbc_ブライアン・アダムス、2度目のコロナ陽性に db297c747bbc db297c747bbc ブライアン・アダムス、2度目のコロナ陽性に oa-rollingstone

ブライアン・アダムス、2度目のコロナ陽性に

ブライアン・アダムスが2度目のコロナ陽性者となったことを明らかにした。アダムス自身が写真を撮影したタイヤメーカー・ピレリの2022年カレンダー公開ツアーでミラノを訪れた際、新型コロナウイルス検査で陽性反応を示したようだ。アダムスは先月にも陽性反応が検出されており、この1ヶ月の間で2度目となった。

アダムスはInstagramに「ミラノに着いたところだが、この1ヶ月で2度目のコロナウイルス陽性反応が出たよ。病院に行かなきゃいけない。みんなのサポートに感謝しているよ」と投稿。前回の陽性反応は先月末、クリーブランドでの演奏の前だった。ティナ・ターナーへのトリビュートをパフォーマンスする予定だったが、アダムスによると症状はないとのことだった。

関連記事:ブライアン・アダムスが語るエド・シーランやテイラーとの邂逅、武道館にまつわる思い出

アダムスは今月発表されたタイヤメーカーのピレリのカレンダーの写真を自ら撮影。選ばれた写真には、イギー・ポップ、カリ・ウチス、シェール、ジェニファー・ハドソン、サウィーティーやセイント・ヴィンセントら、計12人のミュージシャンが写されている。2021年のカレンダーでは別のテーマを計画していたようだが、そちらはパンデミックの影響で延期された。ピレリがアダムスに再オファーを行った際アダムスは、まるでツアーを行なっているかのような写真を選んでみたいと提案した。

アダムスはガーディアン紙に「明らかなのは、新型コロナウイルスの影響で誰もまともに仕事ができてなかったってことだ。ミュージシャンたちは誰もが基本的に世界中でのパフォーマンスを中止していたから、ピレリには今私たちができないことを写真にしてみたいと提案したんだ」と語っている。

From:Bryan Adams Test Positive for Covid for Second Time This Month

外部リンク