ショートニングとは、お菓子作りやパン作りに使用される固形油脂だ。バターとは異なり、含まれているトランス脂肪酸に注目が集まっているようだが、摂取するとどのような影響があるのだろう。今回はショートニングとはどのような油なのかを詳しく紹介していこう。
1. ショートニングとは何か?
まず最初にお菓子作りやパン作りに使われるショートニングの特徴について解説しよう。
白くて無味無臭の固形油脂
ショートニングとは、固形油脂のことだ。白くて味も香りもないので、パン作りとお菓子作りに使われている。とくに生地に混ぜやすいのが特徴で、軽い食感を引き出すことができるため、サクサクとした食感を出したいときに使われることがある。原料は精製した動植物の油や菜種油・大豆油・魚油・鯨油など。これに10~20%の窒素ガスや炭酸ガス、乳化剤を混入し、半固形にしたものだ。パンにショートニングを入れると、コクが出てふんわりとやわらかに焼きあがる。ちなみにショートニング100gあたりのカロリーは889kcalだ(※1)。
2. ショートニングの使い方・使われ方とは?
ここではショートニングが使われている食品をピックアップして紹介しよう。ショートニングの使われ方とは?
パンやお菓子など
ショートニングを使う食品のひとつが食パンだ。1斤分の食パンを作るのに使用するショートニングの量は大さじ1強。ファストフードで提供されているドーナツやフレンチフライのオイルにもショートニングが使われている。ショートニングとは常温で固まる性質があり、油がにじまずカラッと揚がる。揚げたてでもサラリとしており、油が手に付がないのは業務用のショートニングだからだ。一般のものとは成分が少し違うので、家庭用のショートニングではカラッとしたフライはできない。
冷凍食品に含まれている場合もある
ショートニングはお菓子のみならず冷凍食品にも含まれている。たとえばフライドポテトのような揚げ物のほか、アイスクリーム、ピザ、パスタ、チャーハンなどだ。冷凍食品売り場に行く機会があれば、商品を手に取ってショートニングの記載があるかを確かめてみてはいかがだろうか。
3. ショートニングとマーガリンやバターとの違いとは?
ここではショートニングとマーガリン、バターとの違いを解説しよう。ショートニングとはどのような違いがあるのだろうか。
マーガリンとの違い
ショートニングはお菓子やパン作りにも使われることが多いが、ほかに揚げ油として使用されることがある。またマーガリンも同じように、お菓子やパン作りに使用されることがある。加えてどちらもトランス脂肪酸を含んでいる。ショートニングとはマーガリンに含まれる添加物と水分を除いたもので、マーガリンと違って無味無臭だ。
バターとの違い
植物油脂を原料としているショートニングとは違い、バターの原材料はミルクだ。バターに含まれる脂肪は乳脂肪で、消化がよいという特徴をもつ。
4. ショートニングとは体に悪い?
ショートニングは体に悪い油なのだろうか。ショートニングを摂取すると体にどういった影響を及ぼすのだろうか。
ショートニングが体に悪いといわれている理由
ショートニングの原料は、動物性や植物性の油が使用されている。悪い油といわれる理由とは、トランス脂肪酸が含まれているからだ。トランス脂肪酸を摂取しすぎると血液中のHDL(善玉)コレステロールが減少し、LDL(悪玉)コレステロールが増加すると示されている(※2)。
ただし多くのショートニングはJAS基準を満たしているという
ショートニングの原材料はほとんど油脂成分で、水分と乳成分を含んでいない。なお、農林水産省(※3)の資料によると、多くのショートニングがJASの基準を満たしており、品質に問題がないとわかる。
5. ショートニングに含まれるトランス脂肪酸とは?
ここではショートニングに含まれるトランス脂肪酸について解説する。トランス脂肪酸とはどういった特徴があるのだろうか。
そもそも脂肪とは
脂肪とは、炭水化物やたんぱく質とともに三大栄養素のひとつだ。1gで約9kcalのエネルギーを放出しており、エネルギー源として重要な働きがある。栄養学では脂肪を脂質と呼ぶ。食事することで体に入る脂質は、さまざまな形に変わって血液やリンパの流れにのり、体内をめぐっている。(※4)
脂肪酸とは
脂肪酸とは脂質の構成要素のひとつだ。特徴はほかのさまざまな形体の物質と結びついて脂質を形成している。肪肪酸は大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の42つだ。(※5)先述した脂肪酸には2種類あり、1つは飽和脂肪酸だ。飽和脂肪酸とは牛肉や豚肉のような肉類や、バターのような乳製品に主に含まれている脂肪酸だ。酸化しにくく、口に入れると甘みと旨みを感じるのが特徴だ。一方の不飽和脂肪酸はサラダ油やオリーブ油、青魚に含まれていることが多い。不飽和脂肪酸はさらに2種類に分類され、天然の不飽和脂肪酸はシス型に、さらにショートニングに含まれるトランス型に分類される。
トランス脂肪酸とは
農林水産省(※6、7)によるとショートニングに含まれるトランス脂肪酸は液体の油を固体にするため、水素を添加する過程で生成することがある。先述したようにトランス脂肪酸を過剰に摂ると、血中の悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減少させる可能性がある。つまり心臓病のリスクを上げる危険性があるのだ。(※6)
トランス脂肪酸は摂取量に注意が必要
農林水産省(※8)によると、WHOが2003年に健康維持のために、トランス脂肪酸の摂取低減目標量を公表した。内容は1日のトランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギーの1%以下に抑える必要があるのだ。しかし日本人は、トランス脂肪酸の平均的な摂取量は、総摂取エネルギーの0.44~0.47%ほどだ。通常の食生活では、とくに注意する必要はないと考えられる。しかし世界の中には、トランス脂肪酸の規制を見直している地域もあり、トランス脂肪酸の摂取量には注意すべきだろう。
6. ショートニングの代用になるものは?
最後にショートニングの代わりになる油やその特徴を解説しよう。
ラードで代用できる
ショートニングの代用になる油のひとつがラードだ。特徴は豚の脂肪を食用に精製したもので、豚脂(とんし)とも呼ばれている。ラードでパンを焼くとショートニングに近い焼き上がりになる。ラードと相性がいいのはクッキーだ。
オリーブオイルでも代用できる
ショートニングの代用になる油のひとつがオリーブオイルだ。パン作りに使うとショートニングほど膨らまないが、もっちりとした弾力のある食感が楽しめる。オリーブオイルと相性がいいのはフォカッチャやサブレだ。
バターなどでも代用が可能
ショートニングの代用になる油のひとつがバターだ。パン作りに使うと焼き上がりの膨らみが小さく、バター独特の風味が出る。ほかにショートニングの代用は、サラダ油やマーガリンでも可能だ。ただしマーガリンにはトランス脂肪酸が含まれているので、トランス脂肪酸の健康上の影響が気になるという人は避けよう。
結論
ショートニングとは先述したようにトランス脂肪酸を含む油だ。ただし体に影響を及ぼすのは摂取し過ぎたときだ。摂取を控え、多く摂り続けないことが大切である。普段から加工食品をよく食べる人は栄養表記を見てショートニングを避けるようにしよう。またお菓子を手づくりする際は、代用できる別のものを使うなど工夫しよう。(参考文献)
※1出典:文部科学省「油脂類/(その他)/ショートニング/家庭用」
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=14_14022_7
※2出典:農林水産省「脂質やトランス脂肪酸が健康に与える影響」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/
※3出典:農林水産省「ショートニングの日本農林規格」
https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/pdf/k0000100.pdf
※4出典:公益財団法人 日本食肉消費総合センター「脂肪ってなに? 体内でどんな働きをしている?」
http://www.jmi.or.jp/qanda/bunrui3/q_052.html
※5出典:消費者庁「脂質と脂肪酸のはなし」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/trans_fatty_acid/pdf/100910_3.pdf
※6出典:農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/
※7出典:農林水産省「脂質やトランス脂肪酸が健康に与える影響」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/#:~:text=%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8%E3%81%AE%E3%81%A8%E3%82%8A%E3%81%99%E3%81%8E,%E3%82%82%E7%A4%BA%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
※8出典:農林水産省「トランス脂肪酸に関する国際機関の取組」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kokusai/