cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_47b2435c9666_川崎市の知財マッチング、クリエーターが解放特許の活用アイデアを紹介 47b2435c9666 47b2435c9666 川崎市の知財マッチング、クリエーターが解放特許の活用アイデアを紹介 oa-newswitch

川崎市の知財マッチング、クリエーターが解放特許の活用アイデアを紹介

 川崎市や川崎信用金庫(同市川崎区)などが、地域中小企業に大手企業の開放特許を紹介して製品開発を後押しする「知財マッチング」を加速している。定期開催している交流会で、新たにクリエーターがプレゼンターとして参加。クリエーターが製品化アイデアを紹介し、特許の活用の仕方が浮かばず悩む中小企業を手助けする取り組みだ。今後、市は他の自治体でも交流会を開く予定で、各地域の経済活性化にもつながりそうだ。

 「特許選びの際は、各社の強みを生かせるものにするのが良い」―。川崎市や川崎信用金庫が9月に市内で開いた「かわしん知財マッチング交流会」の冒頭、同市産業振興財団の西谷亨知的財産コーディネータはこう強調した。当日は市内外の中小企業関係者約50人が参加した。

 会では大手企業の富士通、富士通セミコンダクター(横浜市港北区)が特許技術についてプレゼンテーションを実施。書類を挟み、ひとまとまりのタスクとして内容を無線で遠隔管理できる「スマートクリップ」技術などを富士通が紹介したほか、富士通セミコンダクターは電子タグを用いた「迷子検知システム」などを説明した。

 今回は特許紹介に加え、全国8万人のクリエーターが登録するクリーク・アンド・リバー社(C&R社)も主催者側で参加。クリエーター5人が特許の活用アイデアを提案した。このうちエージェントゲート(東京都千代田区)社長室の祖上仁氏は、富士通のスマートクリップ技術を活用した主婦向けの家事管理ツール「タスクリップ」というアイデアを提案した。子どもが学校でもらってきたプリント類などを挟み、スマートフォンで期限を管理しアラームも出せるという案を紹介。「さまざまなタスクを抱えるものの会社と違い、手伝ってくれる同僚がいない主婦の助けになる」と説明した。

 参加した中小企業経営者の反応も良かったようだ。川崎信用金庫の担当者は「終了後のアンケートでは、『特許の製品化に自社も取り組めると思った』など前向きな声が多く寄せられた」と手応えを得た。「事業化を具体的にイメージできるよう工夫したのが良かったのだと思う」と話す。

 今後、川崎市やC&R社による同様の知財交流会を2018年度内に3回行う。同市の取り組みに関心を持つ静岡県富士宮市などで開く予定だ。川崎市イノベーション推進室の木村佳司創業・知財戦略担当課長は「大手企業の特許で中小企業を盛り上げる川崎市の手法を広めることで、各地に特許の活用事例が増え、川崎市内中小企業と市外企業のマッチング機会増加にもつながるだろう」と期待する。
(文=大原翔)

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_f3a2250a6db2_「ノーベル賞」発表迫る!コロナ関連もある、有力候補者と研究成果をまるっと紹介 f3a2250a6db2 f3a2250a6db2 「ノーベル賞」発表迫る!コロナ関連もある、有力候補者と研究成果をまるっと紹介 oa-newswitch

「ノーベル賞」発表迫る!コロナ関連もある、有力候補者と研究成果をまるっと紹介

ノーベル賞の発表が来週に迫った。自然科学3賞は10月4日に生理学医学賞、5日に物理学賞、6日に化学賞が発表される。20年は日本人の受賞が期待されたが、叶わなかった。世界に誇れる成果をあげた研究者は日本に数多く存在し、2年ぶりの日本人の受賞に期待が持たれる。また本年は、パンデミック(世界的大流行)となった新型コロナウイルス感染症収束の足がかりとなるワクチンや治療薬の要素技術も注目される。有力候補者とその研究成果を紹介する。(飯田真美子、山谷逸平、小寺貴之)


【生理学医学賞】カリコ氏/「mRNAワクチン」成功

21年のノーベル賞は新型コロナウイルス感染症関連での受賞に期待が持たれる。生理学医学分野では、新型コロナ感染症の重症化を防ぐと期待される「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」の開発に必要な要素技術を構築した米ペンシルベニア大学医学部客員教授のカタリン・カリコ博士が最有力だ。






遺伝物質の一つである「mRNA(リボ核酸)」は、体内で分解し炎症を引き起こしやすい。カリコ氏はmRNAを構成する一つの物質を別の物質に置き換えると炎症反応が抑えられることを発見し、mRNAがワクチンに応用できるようになった。新型コロナの収束の先駆けとなったmRNAワクチンの要素技術にノーベル賞が贈られる可能性は高い。


岸本氏・平野氏/リウマチ薬が効果



岸本氏




平野氏


新型コロナ感染症治療薬の候補になっている医薬品「アクテムラ」の開発に貢献した、大阪大学の岸本忠三特任教授と量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長にも注目だ。


両氏は体の免疫応答や炎症反応に関わる重要なたんぱく質「インターロイキン6(IL―6)」が関節リウマチ患者の関節液中に高濃度存在することを発見し、IL―6の産生異常が関節リウマチの発症や病態に関与している可能性を明らかにした。


その後の研究で関節リウマチの治療薬の開発などを後押しした。こうした基礎研究は製薬企業などによるIL―6阻害抗体医薬の開発への道を切り開くとともに、新型コロナの治療薬候補の開発に寄与することとなった。


両氏は「ノーベル賞の登竜門」とされる「クラリベイト引用栄誉賞2021」の生理学・医学分野で受賞者に選ばれている。


松村氏/抗がん剤治療前進



松村氏



生理学医学賞は最近の傾向として、治療や創薬につながる研究が受賞対象となることが多い。有力候補はがん組織だけに効率的に作用する治療法の開発に貢献した、国立がん研究センター研究所の松村保広客員研究員だ。


がん細胞周辺の血管壁にはすき間があり、大きな分子化合物がそこを通り抜けてがん細胞に集積する「EPR効果」を解明。抗がん剤をがん組織だけに作用させる薬物送達システム(DDS)の礎になる発見として注目され、抗がん剤治療の進歩に寄与した。






京都大学の森和俊教授も有力候補の一人として名を連ねる。たんぱく質を作る細胞小器官「小胞体」内の変性したたんぱく質の検出と修復の仕組みを発見した。仕組みを応用し糖尿病やがんの解明、治療法の研究が進んでいる。


【物理学賞】十倉氏/高温超電導体設計を容易に


十倉氏



物理学賞は、19年と20年の2年連続で宇宙分野の研究者が受賞していたが、21年は物性などの応用分野で受賞の可能性がありそうだ。日本人が得意とする分野であり、候補者も多く挙がっているため期待が高まる。


東京大学の十倉好紀卓越教授(理化学研究所創発物性科学研究センター長)が有力候補の一人だ。電気を通さない「絶縁体」に電子を入れて高温超伝導体を作る「電子型」を発見。誰でも高温超伝導体を設計できる「十倉規則」を確立した。低消費で大容量の記憶デバイスなどへの応用が見込まれる。


宮坂氏/次世代太陽電池「ペロブスカイト」


ペロブスカイト太陽電池


次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」を開発した桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授も候補に挙がる。印刷技術を使って製作するため従来の太陽電池よりもコストを抑えられる。薄く曲がりやすいことから、さまざまな用途に活用できるのが特徴だ。


ネオジム磁石を開発したNDFEB(京都市西京区)の佐川眞人社長も注目だ。開発から30年以上が経過するがネオジム磁石よりも強力な磁石はまだ生み出されておらず、20世紀の大発明の一つと言われる。


この他にも電気を通すセメントや鉄を主成分とする高温超伝導体、酸化物半導体「IGZO(イグゾー)」の三つを発見した東京工業大学の細野秀雄栄誉教授や、300億年に1秒のズレしかない「光格子時計」を開発した東大の香取秀俊教授らも有力視されている。


【化学賞】山本氏/不斉合成の応用進める



山本氏



化学賞は01年からの20年間で12回が生体分子の分析化学や生化学分野から選ばれ、創薬や生命科学のための化学が評価される傾向となっている。約5年おきに有機化学が受賞していることも注目だ。前回、有機化学が受賞したのは16年の分子機械。21年が“5年周期”に当たるなら、有機合成で創薬などに貢献した研究が有力となりそうだ。


この条件に合致するのが中部大学の山本尚教授・名古屋大学特別教授・シカゴ大学名誉教授だ。山本教授はルイス酸触媒を用いた不斉合成反応を確立した。触媒の立体構造を利用し、右手と左手のように鏡像関係にある不斉分子を作り分けた。現在は不斉合成の知見を発展させてペプチド合成に挑戦している。ペプチドの製造コストを1万分の1に下げ、ペプチド創薬の革新を目指す。




三菱ケミカルや東大などが参画する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の光触媒水素製造プロジェクト


化合物を合成する研究は何度も受賞対象となったが、それを支えた研究も重要だ。この観点では、らせん高分子の岡本佳男名大特別教授・ハルビン工程大学特聘教授が挙げられる。らせん高分子は不斉分子の精製に使われる。不斉合成の研究者は、らせん高分子のおかげで合成の成功を証明でき、ノーベル賞も生まれた。医薬品製造にも不可欠な技術だ。


また、スウェーデンを含め、欧州では脱炭素の風が吹いている。そのためエネルギー化学の分野から選ばれる可能性も高い。光触媒の藤嶋昭東大特別栄誉教授・東京理科大学栄誉教授が有力候補だ。足元では東大などのチームが光触媒パネルを作製し、100平方メートル規模の水素製造システムを構築した。太陽光と水から水素や有機化合物を生産する社会へ着実に近づいている。


海外の有力候補/ブラックホール・素粒子観測…
約120年の歴史があるノーベル賞は生理学医学と物理学、化学の3賞以外に、文学と平和、経済学の6分野に与えられる。一つの賞で最大3人が受賞でき、賞金は1賞につき1000万スウェーデンクローナ(約1億2790万円)。自然科学分野は融合分野での受賞が増えており、化学賞は生理学医学と物理学で候補に挙がった研究者が受賞することも多い。日本人受賞者は米国に次いで2位。2年ぶりに日本人受賞者を輩出し、科学技術立国の底力を見せられるか。




南極にある素粒子観測所「アイスキューブ」(F. Pedreros, IceCube/NSF提供)


日本だけでなく海外にも有力なテーマが多い。物理学賞には、巨大ブラックホールの影の撮影に成功した国際研究グループが候補になっている。また、南極にある素粒子観測装置「アイスキューブ」を使い、素粒子の一種である「反ニュートリノ」の観測に初めて成功した国際研究グループの名前も挙がる。どちらも日本人研究者が研究に関わっている。


新型コロナの影響で例年12月にスウェーデン・ストックホルムで行うノーベル賞の晩さん会は中止する。授賞式は各受賞者が自国でメダルと賞状を受け取る。受賞者の発表は10月4日から始まる。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_4d13b2d50997_出社率の低下に柔軟に対応 「社食のクラウド化」サービスとは 4d13b2d50997 4d13b2d50997 出社率の低下に柔軟に対応 「社食のクラウド化」サービスとは oa-newswitch

出社率の低下に柔軟に対応 「社食のクラウド化」サービスとは

コロナ禍以降、テレワークの普及により社員食堂などの運用を見直す企業が増えている。健康経営の一環や、人材定着のための従業員へのベネフィットとしても食事補助の注目が高まっている。食事補助の新しい姿を追った。(取材・昆梓紗)


柔軟に変化できる「クラウド化」
「テレワークの普及により社食の『クラウド化』を検討する企業が増加している」―置き配型の総菜などを提供する「オフィスおかん」を運営するOKAN(東京都豊島区)の沢木恵太CEOはこう話す。従来の場所や提供内容が固定化された社食ではなく、社員の働き方の変化に合わせてサービス内容を柔軟に変更できる食事補助の形が求められている。

 同サービスは、1つ100円の総菜が置かれた冷蔵庫をオフィスに設置し、社員が好きな時に好きな数を購入できる。サービス開始当初は中小規模やスタートアップ企業の導入が多かったが、最近では大企業や製造業での導入も増えてきた。

 さらに、在宅勤務者へも食事補助を広げるべく、総菜を従業員の自宅に届けるサービス「オフィスおかん仕送り便」を2020年9月より開始。「『在宅勤務で増加した自宅での食事準備の補助になる』と好評で、要望が多く順次サービスを提供している状況」(沢木CEO)だという。



オフィスおかん仕送り便


 コロナ禍ではレクリエーションやアクティビティ関連の福利厚生の提供が難しくなったこともあり、それを代替するサービスとしてオフィスおかんの導入を検討する動きもある。

同じようにコロナ禍でオファーが増えているのが、食品や菓子などを扱う自動販売機「自販機コンビニ」。ファミリーマートは約2000カ所に2400台を設置している。「20年度も問い合わせはあったが、21年度になってさらに増加した。コロナ禍の長期化で社食などを見直す動きが本格化したようだ」と同社ライン・法人室ニューマーケット開発グループの太田裕資マネジャーは話す。出社率の低下とともに社食など従来の食事補助の維持が難しくなっている一方で、出社している社員へのサービスは継続したいと考える企業が、無人で販売できる自販機コンビニに注目する例が多い。無人販売は人との接触リスクも低減できることや、設置場所を分散させることも容易なため蜜を避けられるメリットもある。



自販機コンビニ


 自販機コンビニでは、同社が取り扱う商品のうちの約3000アイテムを導入企業のニーズに合わせて自販機にセットし販売している。1台あたり40~50アイテムを設置できる。売れ筋は総菜パンやおにぎり、弁当などだが、和菓子などスイーツ系も人気だという。


実感できる補助
コロナ禍以前から続く人材不足を解消するための施策としても、食事補助は注目されている。特にエッセンシャルワーカーを抱える現場では、より一層人材定着が急務で、目に見える補助として実利を感じてもらいやすい食事補助の導入が広がっている。

 オフィスおかんでは小規模事業所でも始めやすいメリットを生かし、特に医療・介護の現場での導入が進んでいる。同様に人材確保が求められる地方企業や拠点でも問い合わせが増えている。これに対応するため、OKANでは21年2月にセールスパートナーモデルを新設。従来産業給食を提供していた企業が既存ルートを活かしオフィスおかんを販売する、といった例が見られるという。

 一方、コンビニ自販機は販売している商品の賞味期限が短く、毎日補充作業が必要だ。「オファーは増えているが、出社率などを勘案し一定の利益が見込める場合のみ設置しており、設置条件はコロナ前より厳しくなっている」(太田マネジャー)。この条件に合致し、特にオファーが増えているのが物流センターだ。ECの利用が増加したことで大型の物流センターが次々に建設されている。物流センターが設置される場所は周囲に飲食店がないことも多く、また人材不足から従業員への福利厚生に力を入れている。コロナ禍でも出勤率が高く、24時間稼働していることからも、自販機コンビニサービスとの親和性が高い。

健康経営の一手に
食事補助は、人材定着のための施策だけでなく、従業員の健康支援にもつながる。オフィスおかんの総菜は厳しく栄養管理され、健康に配慮されたメニューが揃う。健康でおいしい、といったポジティブな商品を通して、人材を大切にしているというメッセージを伝えられる。



オフィスおかんメニュー例。魚や副菜が人気


 自販機コンビニでも、従業員の健康サポートにつながる商品を設置してほしい、という声は多い。導入先のニーズに合わせてアイテムを選べるメリットを生かし、サラダ類やヨーグルトを中心に健康に配慮した品揃えをするといった販売対応もあったという。「コロナ禍では時差出勤も増加したため、『従業員に朝食をしっかり食べてもらいたい』と自販機を導入するケースもあった」(太田マネジャー)。

コロナ禍における勤務形態変化への対応だけでなく、人材定着や健康経営を実践する一手としても、食事補助の見直しや新規導入は引き続き注目されそうだ。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_d3d307859278_日本企業の技術力を支えるデータ流通基盤をどう作るか。東芝・富士通などの声 d3d307859278 d3d307859278 日本企業の技術力を支えるデータ流通基盤をどう作るか。東芝・富士通などの声 oa-newswitch

日本企業の技術力を支えるデータ流通基盤をどう作るか。東芝・富士通などの声

日刊工業新聞が実施した研究開発(R&D)アンケート(8月10日付掲載)から研究開発のデジタル変革(DX)への期待の高さが鮮明になった。DXに伴い、産学連携も次の段階に進もうとする。カギはデータ流通だ。販売時点情報管理(POS)と天候データなど、産業界は事業領域で連携してきた実績がある。日本企業の技術力を支える基盤をいかに作っていくか、アンケート回答各社の声を紹介する。(小寺貴之)


【旗振り役望む】

「産学官の垣根を越えたデータ流通のために、データプラットフォーム整備などによるデータ連携推進を要望したい。人工知能(AI)技術や医療分野などで各研究機関、医療機関の保有するビッグデータ(大量データ)の利活用推進の仕組みづくりや産学官連携、人材流動の活性化を要望したい」―。


東芝の政府に対する要望に日本の課題が濃縮される。産学官でデータ流通のためのインフラを整え、医療などの公的部門が事業を担う分野でデータ連携の成功事例を積み上げるというものだ。民間企業にとって研究データは虎の子だ。簡単には社外に出せない。データを共有する際のデータ品質や信頼性と機密管理、データ秘匿性の担保が必要だ。そこで公的部門に対し、データ連携の旗振り役を期待している。






ある製薬大手は「日本は個別の研究室と共同研究するまで、どんなデータが蓄積されているか分からない。米国では公的研究費の配分、アカデミアでのデータ取得、企業へのデータ提供と二次利用、企業からの非競争的な解析結果の返却を関連付けた仕組みがある」と、日本でも同様の仕組みの構築を求めた。


【共有に消極的】

しかし単にデータがあればいいのではない。富士通は「データを介して複数組織が連携すれば、データの真正性や加工の履歴、リネージュ(血統)などの保証・管理が重要だ。これらが十分可能で、かつ簡便に連携できるデータ活用基盤の実現が大きな課題」と説明する。ただ、これは難しくはあるが技術で解決可能だ。


より難しいのは利害調整と合意形成だ。東洋エンジニアリングは「データ共有でAIデータ解析に十分な量のデータ確保を期待するが、データは各社の知財、競争力の側面が大きいため、各社が提供、共有に消極的にならざるを得ない」と指摘する。このため、業界を挙げてのコンセンサスづくりや秘匿性担保、情報提供した企業へのメリット付与などが有効だとしている。各社とも、合意形成の土台となるルールづくりとインセンティブ設計への要望は強い。


【競争力強化も】

一方、データ共有で業界の競争力強化を予見する企業もある。オムロンは「センサーは日本が競争力のある領域。データ活用基盤で必要なセンシングデータのプロファイル情報やセンシングデータ品質の基準(ガイドライン)を世界に先駆けて提案することは、国際競争上でも重要。ぜひ推進していただきたい」と要望する。


公的部門などの旗振り役と、勝つための戦略が明確になれば、政府の政策としても支援しやすいはずだ。


さらにデータを扱える人材育成も急務。「データサイエンティストや、データアナリストが不足している。まずは人材面での支援の充実を」(ユニチカ)と分野に限らず、データ人材への要望が各社とも強い。直近では日本でもデータやAI関連の教育や研究を後押してきたが、産業界に充足感はない。人材育成は時間がかかるものの着実に効果がある。施策の強化が必要だ。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_aedcaca68804_特許庁が解説動画を公開。「IPランドスケープ」とは? aedcaca68804 aedcaca68804 特許庁が解説動画を公開。「IPランドスケープ」とは? oa-newswitch

特許庁が解説動画を公開。「IPランドスケープ」とは?

特許庁は特許などの知的財産を企業の経営戦略に役立てる手法「IPランドスケープ(IPL)」の基礎を理解するための解説動画を公開した。国内企業にIPLが浸透していない現状を踏まえ、IPLの“教科書”として、専門家によるセミナー形式の動画を作成。工業所有権情報・研修館のホームページで動画を閲覧できる。新規事業などの企業戦略に知財を生かす取り組みを後押しする。


特許庁はシクロ・ハイジア(東京都港区)の小林誠最高経営責任者(CEO)に依頼し、セミナー形式によるIPLの解説動画を作成し、公開した。さらにIPLに関するセミナーをオンライン形式で10月下旬に配信する予定だ。


IPLとは企業が目指す目標や事業に対し、市場やビジネスの公開情報や社内情報から仮説を立て、知財情報の分析から現状を俯瞰し将来予測を“見える化”し、経営者の意思決定などに生かす試みを指す。例えば「コロナ禍で企業の今後の経営をどうするか」という経営上の課題に対し、実現したい目標から現在のやるべきことを逆算する「バックキャスト」思考で、自社の特許の活用だけでなく他社が持つ特許の買い取りなどを含めた経営戦略に生かす。


こうした取り組みは海外では実施されているが、国内企業での浸透度は低い。3月に特許庁がまとめた知財担当者向けアンケートでは回答した1500者のうちの8割がIPLの「言葉を知っている」と答えたものの、「理解している」「必要」との回答が3割。さらに「十分に実施している」と回答したのは全体のわずか1割だった。民間からは「IPLの言葉は知っているが、何をやっていいか分からない」と企業の知財担当者からの声が挙がっていた。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_130691f1e0c5_半導体不足の影響、自動車メーカーの生産損失額は23兆円に 130691f1e0c5 130691f1e0c5 半導体不足の影響、自動車メーカーの生産損失額は23兆円に oa-newswitch

半導体不足の影響、自動車メーカーの生産損失額は23兆円に

コンサルティング会社の米アリックスパートナーズは、半導体不足による世界の自動車メーカーの生産損失額が2021年に2100億ドル(約23兆円)になるとの予測を公表した。5月時点では損失額を1110億ドル(約12兆円)と見積もっていた。マレーシアでのロックダウン(都市封鎖)など、新型コロナウイルス感染拡大の影響が各国に広がり、状況が悪化している点を反映した。


21年の世界の自動車生産台数は7690万台にとどまると予測した。1月時点での想定台数である8460万台から、770万台減となる。5月時点では減少幅を、390万台と見込んでいた。


日系自動車メーカーにも、半導体などの部品供給不足の影響が広がっている。トヨタ自動車の10月のグローバル生産台数は、8月時点の計画と比べ33万台減となる見通しだ。ホンダは、国内工場生産稼働率が8―9月は計画比6割減、10月上旬は同3割減になると見込んでいる。


アリックスパートナーズ自動車・製造業プラクティス日本リーダーの鈴木智之氏は「自動車業界にとって半導体不足が最大のリスクとなった」とした上で、「戦略的な在庫保有の検討や、長期的視点でのサプライチェーン(供給網)の再構築など、調達においてより能動的なアクションを取れるよう対策を講じる必要がある」と指摘している。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_aa2f221b34b0_2025年に「空飛ぶクルマ」運行開始。丸紅が英社と業務提携 aa2f221b34b0 aa2f221b34b0 2025年に「空飛ぶクルマ」運行開始。丸紅が英社と業務提携 oa-newswitch

2025年に「空飛ぶクルマ」運行開始。丸紅が英社と業務提携

丸紅は電動垂直離着陸機(eVTOL)を手がける英バーティカルエアロスペースと業務提携契約を結んだ。「空飛ぶクルマ」に代表されるエアモビリティー分野の新規事業創出を目指し、国内市場や機体認証、離発着に必要なインフラなどを調査する。両社共同で日本におけるエアモビリティーの活用を推進し、2025年頃の運航開始を目指す。


バーティカルは英国政府の支援を受けeVTOLを開発する。開発中の機体は操縦士を含め5人乗り。航続距離は約161キロメートル以上、最大速度は時速約325キロメートルで、東京駅と成田空港間を約14分で移動できるという。


エアモビリティーは次世代の移動手段として注目されており、将来的な運航機数は約10万機(従来の旅客機は19年末時点で約2万4000機)に達すると見込まれている。中でもeVTOLは電動で温室効果ガスの排出が従来の航空機より少なく、気候変動対策にも寄与すると期待されている。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_fdd57da71d5e_スパコンが見出した「全固体電池」の最大の課題を克服するヒント fdd57da71d5e fdd57da71d5e スパコンが見出した「全固体電池」の最大の課題を克服するヒント oa-newswitch

スパコンが見出した「全固体電池」の最大の課題を克服するヒント

課題山積み

蓄電池の代表格であるリチウムイオン電池は、社会のスマート化に大きく寄与してきた。しかしカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現には、エネルギー密度や安全性、コストなどの課題がまだ山積している。産学官で精力的な研究開発が行われ、国際的な開発競争も激化しているが、蓄電池内で起こっている電子・イオンの振る舞いについてはまだ不明な点が多く、試行錯誤のアプローチが続いている。この状況を打破するには、蓄電池材料内の現象理解に基づいた設計が必要だ。


新描像提案

我々は電子・イオン挙動に関して予言性の高い、量子力学に基づく第一原理計算を用いて、この現象解明に取り組んできた。しかし蓄電池内の複雑な現象に対する第一原理計算は計算コストが非常に高く、通常のスーパーコンピューターでは取り扱いが難しい。そこで、我々は世界一の実績を持つスーパーコンピューター「京」「富岳」を最大限に活用可能な計算プログラムを構築し、さまざまな課題に関するメカニズムを明らかにしてきた。


蓄電池の安全性に大きな影響を及ぼす、負極と電解液の界面に形成されるSEI膜については、膜の形成メカニズムやリチウムイオンのダイナミクス(イオンの流れ)を「京」を用いて計算した。その結果、従来の理論とは異なるメカニズムが明らかになった。また、次世代蓄電池の電解液として有望な濃厚電解液の安定性については陰イオンが分解することで良質の膜につながることが示唆された。これも従来理論の予測とは異なる結果だ。


さらに実現性の高い次世代蓄電池として注目される全固体電池については、その最大の課題を克服するヒントが得られた。界面原子構造探索手法を新たに開発し、電極と固体電解質の界面におけるイオン伝導の抵抗増加について原因メカニズムと、それを避けるためのコート層の役割を理論的に明らかにした。このように、第一原理計算と「京」の組み合わせによる研究は、世界的に見ても先駆的で、さまざまな新しい描像の提案につながっている。


競争力強化

現在、物質・材料研究機構(NIMS)は文部科学省プログラム「富岳電池課題」の代表機関として「富岳」を利用し、さらなる高度計算による蓄電池材料の微視的メカニズムの解明を進め、新材料・新界面設計まで踏み込んだ研究を行っている。一方では産学官の計算研究連携の促進や、大量生成する計算データのデータベース化などにも注力している。今後も日本の蓄電池技術の競争力強化に貢献していきたい。








【関連記事】「全固体電池」市場で勝ち残る電子部品メーカーはどこだ!?

文=物質・材料研究機構(NIMS)エネルギー・環境材料研究拠点 副拠点長 館山佳尚。1998年東京大学大学院博士課程(物理学専攻)修了、博士(理学)。同年金属材料技術研究所(現NIMS)入所。2021年から現職。現在、京都大学・早稲田大学・東京工業大学の客員教授として若手育成にも従事。

外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_16e62e615d7c_マクセルが持ち株会社制解消で創出狙う「内」なるシナジー 16e62e615d7c 16e62e615d7c マクセルが持ち株会社制解消で創出狙う「内」なるシナジー oa-newswitch

マクセルが持ち株会社制解消で創出狙う「内」なるシナジー

マクセルホールディングス(HD)は10月1日付で持ち株会社制を解消する。マクセルHDを存続会社として事業会社のマクセルを吸収合併し、その上で社名をマクセルに変更。中核事業会社としてグループをけん引する。M&A(合併・買収)で取得した会社をHD傘下に置き拡大路線を進めてきたが、「グループ内でのシナジー創出が重要な段階に入った」(中村啓次社長)ため体制を見直す。事業部やグループ会社の枠組みを超えた取り組みで、「次」につながる製品や技術を育てようとしている。


マクセルHDが持ち株会社制に移行したのは2017年。「外部の企業や事業を取り込み、規模や保有技術の拡大を図るため」(中村社長)、迅速な意思決定ができるメリットを重視し持ち株会社制を選んだ。実際、18年度には家電・電設工具の泉精器製作所(現マクセルイズミ)など5社を合計約340億円で買収。日立のリチウムイオン電池事業の取得で車載用電池への参入も果たした。


一方、買収による急速な規模拡大は「組織の枠を超えたシナジーが発揮しにくい」(同)事態も招いた。各グループ企業が違う方向を向いた、一体感を欠いた組織が固定化しないためにも「これからは『内』のシナジーを発揮し、成長の種を自分たちで育てていく必要がある」(同)とし、主力事業である電池や磁気テープの製造販売を営むマクセルがグループ企業を束ね、進むべき方向性を鮮明に打ち出していく。


既にマクセルでは、事業部ごとに分かれていた営業・マーケティング機能を集約したり、全固体電池など大型の開発テーマを全社で一元管理したりするなどの取り組みを4月に始めた。情報を全社で共有できれば、よりスケールの大きなビジネスや将来を見越した開発につながる可能性が高まる。


開発では全固体電池の課題に電池以外の部門の技術者が提案する場面が見られるなど、「少しずつだが一体感が生まれている」と中村社長は手応えを感じている。



外部リンク

cat_oa-newswitch_issue_47b2435c9666 oa-newswitch_0_2dcbc8c4f960_マツダ・トヨタなど自動車5社が新組織、「モデルベース開発」普及の狙い 2dcbc8c4f960 2dcbc8c4f960 マツダ・トヨタなど自動車5社が新組織、「モデルベース開発」普及の狙い oa-newswitch

マツダ・トヨタなど自動車5社が新組織、「モデルベース開発」普及の狙い

マツダやトヨタ自動車など国内自動車メーカー5社は、部品メーカーと連携してシミュレーション技術を活用した自動車開発手法「モデルベース開発(MBD)」を普及させるため、新組織を設立した。コンピューター上で再現した部品を開発する際のルールを共通化することで、開発工数や時間の大幅な削減につなげる。車業界では脱炭素や電動化など次世代技術への対応で開発領域が拡大。同手法で開発を効率化し、競争力を引き上げる。


新組織「MBD推進センター」を7月9日に発足し、24日に公表した。マツダ、トヨタのほか、日産自動車、ホンダ、SUBARU(スバル)、アイシン、ジヤトコ、デンソー、パナソニック、三菱電機、日本自動車研究所の10社・1団体が運営に携わる。


運営を指揮する「ステアリングコミッティ」委員長にはマツダの人見光夫シニアイノベーションフェローが就いた。


MBDはコンピューターシミュレーション上で実物と同じ挙動を示すように作り込んだ「モデル」を活用し、部品を開発する手法。モデルでは作動油の流れなど現象を含めて数式化する。これまでシミュレーションを用いて開発する際のルールが自動車メーカーごとに異なっていたため、部品メーカーには負担となっていた。


MBD推進センターでは、車メーカー間で差がない部分のルールの共通化などを推進。人見フェローは、MBDで車や部品メーカーが同じ基盤で開発できれば「あたかも同じ会社で一緒に開発しているような効能」が期待できると述べた。

外部リンク