cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_43f08422c6c8_揺さぶるイスに匂い装置も、VR体験をよりリアルにする技術の数々 43f08422c6c8

揺さぶるイスに匂い装置も、VR体験をよりリアルにする技術の数々

 広島市立大学の脇田航助教らは、VR(仮想現実)コンテンツ用に搭乗者を揺さぶる駆動いすを開発した。球面と受け皿でいすを支える構造をもち、球面を滑らせることで前後左右に回転する。ジェットコースターやトロッコなどの座席が動く乗り物系VRコンテンツに提案していく。

 半球と受け皿でいすを支え、2本のシリンダーでいすをつり上げるように駆動する。搭乗者といすの重心が低いため、起き上がり小法師のように搭乗者を揺さぶる。身体全体を持ち上げて揺するよりも小さな力で済む。

 いすの回転角度は前後左右いずれも25度で、振れ幅は50度。搭乗者が揺らされると身体がしなるため、頭部の振れ幅は90度近くなる。新たにいすとシリンダーの接続部に回転継ぎ手を採用して、動きの表現を広げた。

 現在は半球を切削加工で製作しているが、金型を用意すれば製造コストを抑えられるという。50万円程度での製品化を目指す。VRアミューズメント施設などに提案。耐久性試験を経て2月を目標に同大発ベンチャーのランバス(広島市中区)で受注生産を始める。
日刊工業新聞2019年1月23日

歩行できる装置も開発
 広島市立大学の脇田航助教は、仮想現実(VR)ゲーム用の360度方向の歩行入力装置を開発した。腰を囲むドーナツ状のクッションの中に荷重センサーを配置し、移動方向を検出する。歩くように脚を上げた動きを計測して歩行や走行としてVRゲームに入力する。直径1メートル程度の装置の中で無限に歩き続けるようなVR体験ができる。

 VRゲームでは全身の動きを狭いスペースで計測し、コンテンツに反映させることが課題になっている。本当に歩いたり走ったりすると広いスペースが必要になり、ヘッドマウントディスプレー(HMD)などの配線の取り扱いが問題になってくる。

 そのため乗馬やサーフィンのような乗り物に乗せて下半身の動きを制限するコンテンツがアミューズメント施設では主流だった。

 今回、脇田助教は、クッションで腰を囲い、脚を動かしても実際には移動しない計測装置を開発した。クッション内部には腰の高さに荷重センサーが配置され、装置に体重をかけるとその力を検出する。さらに膝の上げ下げを、膝の付け根の高さのセンサーで計測する。膝の角度の計測分解能は5―15度程度。膝を上げ下げする速度を移動速度に反映できる。

 検出システムの部品原価2万円で構成できる。研究用試作ではドーナツ状のクッションや架台が高価になっているが、構造自体はシンプルなため量産機ではコストを抑えられると見込んでいる。

 ベンチャーを立ち上げて事業化する計画。まずは施設用のVRアトラクションに提案する。将来は家庭用の歩行入力システムに展開したい考えだ。

日刊工業新聞2019年12月26日
東工大は香りで演出
 東京工業大学の加藤真悟大学院生と中本高道教授らは、消臭機能付き嗅覚提示ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)を開発した。部屋ににおいが充満しにくく、匂い情報を切り替えやすい。VR(仮想現実)コンテンツに香りを加えてよりリアルな体験を演出できる。

 HMDに後付けする形で、芳香部と消臭部を鼻を挟むように配置した。芳香部では香料を吐出すると弾性表面波素子に液滴がのり、高周波振動で霧状になって漂う。消臭部では霧を吸い込み、活性炭で吸着する。4種の香料をセットできる。

 1度に吐出する液滴は3ナノ―10ナノリットル(ナノは10億分の1)。においの強さは滴下量で調整する。香料1ミリリットルで10万回滴下できる。香料を混ぜることで幅広い香りを表現できる。

 HMD上で芳香・消臭することで部屋全体ににおいがこもりにくくなる。残り香が混ざらず、VRコンテンツ中のシーンの切り替えがしやすくなる。

 VR映画館のように同時に複数の人がVRコンテンツを鑑賞する場合でも、鑑賞者全員でのにおいの時刻同期が要らない。HMDなどの装着から鑑賞終了まで一人ひとり運用できるため、セットアップの人員を抑えられる。鼻の周辺にだけ香料が漂うため、空間全体に香りをまく例に比べて香料を減らせると期待される。HMDのVRコンテンツでは第一人称視点の作品が多く、鑑賞者が目を向けないと状況が伝わらないことがあった。においで視覚を補完することができる。

日刊工業新聞2019年1月16日

【ファシリテーターのコメント】
東映が映画館で公開したVR映画を以前、体験したのですが、音の迫力によって没入感がこんなにも違うのかと感じました。上記紹介した技術によって没入感がどの程度変わるのか、ぜひ体験してみたいです。
葭本 隆太

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_1ae4153d52cb_「超音波エコーを一家に1台」 診断データで知識のグラデーションつくる 1ae4153d52cb

「超音波エコーを一家に1台」 診断データで知識のグラデーションつくる

 「10年後は超音波エコーが一家に1台ある時代に」―。そんな未来を語る河村哲。レキオ・パワー・テクノロジー(LPT、那覇市)の社長だ。安価なエコー装置を開発し、アフリカなど途上国、そして日本で普及を進める。医療機器としての用途だけではなく、新たな市場の開拓も狙う。

 LPTの超音波エコーは医療機関で使われる大型装置とは少し違う。手に持って体に当てる部分をプローブといい、装置はこれだけだ。ノートパソコンにUSB端子でつないで利用する。価格は20万円ほど。国産部品にこだわるが、特許切れ技術で開発費を抑えたジェネリック機器だ。

 河村は「デバイス(装置)はセンサー(検知器)でしかない」と言い切る。真意は二つ。一つは、エコーは医師の道具という固定観念からの解放。二つ目は、デバイス販売よりその先にあるデータ活用の重視だ。

 LPTはエコーを医療用と教育・一般用の両面で展開する。医療機器としては現代医療が届かない地域に行きわたらせる考え。河村は先進医療を頂点にしたピラミッドで世界の環境を説明する。上部には医療があるが「その下はゼロ」。ギャップは大きく、底部では呪術にすがっており、安価な機器なら利用者は広がる。人材育成とともに浸透を目指す。

 装置と両輪になるシステムは診断データをクラウドで共有するため、データベース化すれば全世界での医療のノウハウを蓄積できる。欧州からアフリカの医師へ助言するようなことも可能だ。情報のやりとりが生まれると、ピラミッドに「知識のグラデーションができる」と想定する。

 河村は海外展開で苦い経験もした。実証実験をしたスーダンで大臣から大量納入の約束を取り付けた。だが大統領選で失脚し姿は消え、契約も泡に消えた。以来、海外展開と同時に日本向け事業を本格化した。「もくろみ通りではないが、それが良かったかもしれない」と振り返る。

 日本では一般の電気機器として取り扱う。医療行為には使えない。だが用途開発により可能性は広がる。医療の文脈から切り離し、法解釈やガイドラインの整備で需要を創出していく。

 例えば妊婦自ら胎児を見るシステム。リアルタイムでエコー画像を見られれば、家族と一緒に愛着感を共有しやすくする。産前産後うつの解消にもつながると期待する。地域の助産師との連携モデルも築くことで、「産後ケアの社会インフラとしての、助産師の活用につながる」とみる。

 ヘルスケア分野でも潜在需要を見据える。装置とセットになるアプリケーションの開発を進め、健康管理に役立つサービスを展開したい意向だ。レンタル事業による定額制サービス(サブスクリプション)を見込む。利用者のデータ蓄積が進めば、ここでもデータ活用による新ビジネスの扉が開くと期待する。徐々にだが、サービス事業者としての足場が固まってきた。

「デバイスは安くたくさん作れる人が作ればいい」と、メーカーからの卒業にこだわりはない。2023年度には新規株式公開を見据える。世界へエコーを届けながら、社会を変えるための“反響”を探り続ける。
(敬称略)
(文=西部支社・三苫能徳)

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_4a0a6ab09b64_リチウム電池の開発者、吉野氏が明かすもう一つの「EV社会実現」シナリオ 4a0a6ab09b64

リチウム電池の開発者、吉野氏が明かすもう一つの「EV社会実現」シナリオ

 電動車シフトが進む一方、電気自動車(EV)は高価で、航続距離などに課題も多い。EV社会は本当に到来するのか。リチウムイオン電池を開発し、今も研究の最前線に立つ旭化成の吉野彰名誉フェローは、クルマ社会をつくり変える“シナリオ2”の存在を指摘する。従来の、電池を高性能かつ普及価格帯とするアプローチ以外も考えていく必要がある。

 EVの低価格化と航続距離延長によってEVが普及するシナリオ1に対し、吉野名誉フェローの言及する“シナリオ2”は、自動運転を担う人工知能(AI)を搭載した「AIEV」が主要モビリティーとなるというものだ。人は自動車を運転も保有もせず、必要な時に無人運転のAIEVを呼び出して乗る。マイカー所有に比べ個人の負担は7分の1を見込んでいる。2025年以降にAIEVに漸次置き換わると予想する。

 AIEVを提案する理由は、EVだけで二酸化炭素(CO2)排出量の削減をはじめとした環境負荷低減を達成するのは難しいからだ。「自動車とエネルギー源を連動して考えなければ、ゼロ・エミッションとはならない」(吉野名誉フェロー)。EVを巨大蓄電システムとして利用し、変動の大きい再生可能エネルギーで発電した電気を利用する。

 いつどこで充電するかは、何台ものAIEVと再生エネ発電の状況を見ながら管理システムが判断し、自動で充電する。「エネルギー補給も自動化が必須。EVで無人運転でなければ成り立たない」(同)と強調する。

 電池への要求も変わる。シナリオ1では1回の充電当たり500キロメートル走行できることや、ガソリン車並みの大幅なコスト低減が必要だが、シナリオ2ではシェアリングに対応できる長期耐久性が求められる。

 電池や車が高価なままでも、シェアリングで個人負担を減らせる。電池材料開発の方向を変える必要はないが、エネルギー密度とコスト、耐久性のバランスを取る際に耐久性を重視する必要がある。

 自動車の保有から所有へ価値観の大転換が前提となり、現時点で既存の自動車メーカーは簡単には受け入れられないだろう。だが、「いずれ誰かがシナリオ2を打ち出す時になれば、反対することはできない」(同)と予想する。

 こうした既存構造の転換を打ち出すのはIT大手が得意とするが、「本来は自動車メーカーが主導権を持ってほしい。少なくとも対等でなければ、IT企業の下請けになる」(同)と警鐘を鳴らす。100年に一度の自動車業界の大変革を前に、日本の自動車メーカーの変革を期待する。
(文=梶原洵子)

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化学業界の「野武士」旭化成、開発力の秘密を探る

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_2fc18ebe4bef_病院の理髪店、客足が絶えない理由 2fc18ebe4bef

病院の理髪店、客足が絶えない理由

 勤めを休んでの病気入院も、症状が治まって経過観察となれば退屈する時も出てくる。ふと思いついて、病院の地下で見つけた床屋を試してみることにした。

 看護師さんを通じて予約すると、時間少し前に病室に理容師さんが現れ、パイプ椅子を広げて「さあ、どうぞ」。聞けば仕事の半分以上は“出前散髪”なのだとか。「店で待っていても暇なんで始めました」とのことで、移動制限のある患者には嬉しいサービスだ。

 寝たきりや鼻からチューブを入れたままの患者、意識のない患者を家族に頼まれてカットすることもある。「うまくできるとは限りません。ただ生きていれば髪は伸びますしね」。

 洗髪とひげ剃りをセットで予約した客は、地下の店で散髪する。他にも通院と同日で予約し、散髪していく外来患者の客が何人かいるという。からかい気味に「ファンなんですかね?」と聞いて「ケガで髪が部分的に生えない人や、頭の形が変わってしまった人は、普通の店には行きにくいらしいです」と返された時には言葉に詰まった。

 出前の200円を加えた代金は、街角のカット専門店よりずっと高い。ただその仕事ぶりには、ニッチでも確かな顧客ニーズと、いくらかの愛情を感じた。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_81e52b9e0b9a_若き投資家が語る、アフリカが期待する日本のイノベーション 81e52b9e0b9a

若き投資家が語る、アフリカが期待する日本のイノベーション

 デジタル革命によって変貌を遂げるアフリカビジネス。そんな現地に根を下ろし、スタートアップ育成に力を注ぐ若き日本人投資家がいる。アフリカに特化したベンチャーキャピタル(VC)として2018年に設立された「サムライインキュベートアフリカ」社長の寺久保拓摩氏。「日本とアフリカをつなぐ架け橋となりたい」と語る寺久保氏の目に映るアフリカのスタートアップシーンの最新事情、そして日本にもたらす可能性とはー。

ともに成長遂げる
 当社は2018年5月にサムライインキュベートの子会社として設立されました。ルワンダ、ケニアなど東アフリカを中心に、シードステージ向け投資を始めています。現在のファンド規模は3億4000万円、スタートアップ40社程度に1社あたり約500万円から最大1500万円程度の出資を計画しており、すでに14社に出資しました。

 アフリカには、ケニアだけでも約1300社、南アフリカには約1000社ものスタートアップが生まれています。こうしたアフリカ中のスタートアップを集めたインキュベーション拠点を今秋、南アフリカにオープンする計画もあります。

 実はこの6月に社名変更したのですが、旧社名「リープフロッグベンチャーズ」は、新興国の発展において段階的な進化を踏むことなく、一気に最先端に到達する「リープフロッグ現象」に由来します。

 それは同時に「先進国」「新興国」の垣根も飛び越えようとしています。日本は先進国としてアフリカを支援する立場が色濃かったように思いますが、これからは逆にアフリカのイノベーションから学ぶべきところが少なくないはず。

 世界中がアフリカ発のイノベーションを取り込み、ともに成長を遂げるー。そんな思いが込められています。もちろん社名が変わってもその信念が揺らぐことはありません。

 アフリカに対し、貧しい地域とのイメージを持つ人はいまなお多いのですが、課題が深刻なほどイノベーションの余地は大きく、現状に対する飢餓感を抱いているからこそ破壊的なイノベーションにつながるのです。

 携帯電話を通じて「仮想住所」を発行し、郵便物を届けるサービスは、住所を持たない層が存在するアフリカならではのビジネスのように見えるかも知れませんが、テクノロジーが進展する中で果たして今までのように特定の「場所」に届ける必要があるのかといった根本的な疑問を突きつけます。

 日本でも宅配便の再配達問題が浮上しているように、利用者が「受け取りたい場所」に届けることが物流の最適化という「革新」につながるのです。

バリューチェーンを作り出す
 アフリカのスタートアップエコシステムは1周目にあるといえます。起業数や投資件数の増加だけでなく、今後は、それぞれの質が伴っていくフェーズに入るとみています。欧米のVCやインキュベーターの本格参入も相次ぐでしょう。だからこそ、今のうちに地歩を固めたいと思っています。

 数あるVCの中で、僕らが特にこだわるのは、ひとつの企業を支援するのではなく、スタートアップ同士を連携させ、ひとつの産業としてともに成長させる視点です。

 例えば、生産、販売から決済、物流といった一連のバリューチェーンを、投資先同士をつなげることで作り出すのです。また日本をはじめとする先進国企業と現地のスタートアップとの橋渡しも重視しています。

 設備や装置の導入は、スタートアップが自ら手がけるより、先進国の事業会社のノウハウを活用した方がはるかに効率的だからです。こうしたことからみても、もはやアフリカは支援対象ではなく、ともにビジネスを作っていくパートナーなのです。

価値創造の相手求めている
 アフリカのスタートアップは「スマートマネー」を求めています。ただの事業資金なら要らない。自社の事業展開をさらに加速させるためのノウハウやプラスアルファの価値を提供してくれる相手と組みたいと。とりわけ、日本製品の品質や技術力には絶大な信頼を寄せています。

 だからこそ、進出する日本側も、生産や販売だけに事業の軸足を置くのではなく、技術や製品を通じて、現地の生活が豊かになっていく発展過程を自社のビジネス戦略と結びつけてほしい。これからのアフリカビジネスに求められる姿だと思います。

 欧米の起業家や投資家に比べ、日本人はアフリカマーケットに対する意識はまだまだ薄いのが実情です。しかし、市場規模やITの進展度合いをからしても、開拓の余地は大きく、イノベーションも生まれやすい。積極的に進出するべきと考えます。(談)

【ファシリテーターのコメント】
METIジャーナルのアフリカ特集、次回はアフリカビジネスに特化したコンサルティング企業「アフリカビジネスパートナーズ」の梅本優香里代表パートナーが語る「アフリカビジネスの要諦」を掲載します。
神崎 明子

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_d4c62da69c7e_クルマの中でネット使い放題、ドコモの新サービスの値段 d4c62da69c7e

クルマの中でネット使い放題、ドコモの新サービスの値段

 NTTドコモは、Wi―Fi(ワイファイ)を用いた高速データ通信を定額・使い放題で利用できる自動車の車内向けインターネット接続サービス「ドコモ・イン・カー・コネクト」を9月10日に始める。当初は今秋発売する日産自動車の新型「スカイライン」と、パイオニアの車用電気機器で利用できる。対応機器を順次拡大しコネクテッドカー(つながる車)の普及につなげる。

 友人とドライブする際などに動画や音楽、オンラインゲームを手軽に車内で楽しむことができる。ドコモの回線契約がなくても、ドコモのポイント会員基盤「dアカウント」があれば専用サイトの登録で利用可能。全国のLTEエリアで利用できる。1日(24時間)、30日、365日の三つの利用期間から選べ、消費税抜き料金はそれぞれ500円、1500円、1万2000円。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_4d7741f29a23_いまどき新入社員は転勤したくない 4d7741f29a23

いまどき新入社員は転勤したくない

 産業能率大学がまとめた「2019年度新入社員の会社生活調査」で、会社に副業ができる制度があった場合の利用意向を聞いたところ「利用したい」「どちらかといえば利用したい」の合計が前年度に比べ7.4ポイント増の64.0%となった。同様にテレワークと時差出勤について尋ねると、それぞれ利用意向は同0.5ポイント増の66.3%、同3.5ポイント増の83.4%となった。働き方改革が叫ばれる中、新入社員の帰属意識も着実に変わっている。

 転勤について聞くと、「一度も転勤せずに同じ場所で働き続けたい」が同9.4ポイント増の36.4%と急伸して最多に。順位が逆転し「転居を伴う場合でも期間が限定されていれば転勤してもよい」が同5.1ポイント減の23.7%で続いた。

 働き方に対するニーズ多様化の側面として、私生活重視の安定志向が浮き彫りになった。

 また許容できる残業時間(月間)は「11―20時間」が同0.3ポイント増の27.5%で最多となり、「21―30時間」が同1.5ポイント減の27.0%。1位と2位が入れ替わったうえに、「1―10時間」が同5.9ポイント増の18.3%と3位に浮上しており、ここでも私生活重視の傾向が目立っている。

 この調査は産能大が開催する「新入社員セミナー」に参加した104社442人を対象に3月28日―4月10日、書面アンケートによる回答選択肢方式で実施。そのうち429人から有効回答を得た。

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_86515a5a8139_AIの力で“やわらかいロボ”が動きだす 86515a5a8139

AIの力で“やわらかいロボ”が動きだす

 人工知能(AI)にロボットを操縦させる研究が加速している。移動やピッキングなどの簡単な動作をディープラーニング(深層学習)にかけてロボット制御する試みだ。より複雑な作業を獲得させようと、ロボットに適したAIモデルが提案されている。同時にAIモデルからロボットの制御モデルを抽出する研究も進む。動作獲得と制御抽出が交われば、制御すら難しかったロボットが働けるようになる。(文=小寺貴之)

人のまねから
 早稲田大学の尾形哲也教授と日立製作所の伊藤洋研究員らは、組み立て作業の基本となるペグ挿入をAIに習得させた。AIに6関節アームを操縦させ、直径8ミリメートルの穴に7ミリメートルの突起を差し込ませる。まず人間がアームを操作して穴を探り、挿入する動作を数回教える。その動作スキルをAIが学習して習得する。尾形教授は「人の作業のまねから始めるとAIの学習回数を100から1000分の1に抑えられる」と胸を張る。

 関節角だけを学習するAIと関節角とモーターの電流値を学習するAIを用意した。関節角だけでは成功率は25%に留まるが、電流値も学習させると成功率が87・5%に向上した。電流値からモーター負荷を読み取り力覚センサーを代替した。

 電流値のようなノイズの多いデータを学習するために、早大は「S―CTRNN」というAIモデルを開発した。尾形教授は「ノイズ分散を予測し、分散の大きさで誤差を割る。これでAIが学習しやすい構造を優先的に学習できる」と説明する。

ソフトロボ制御
 九州工業大学の池本周平准教授と大阪大学の細田耕教授らは、ロボットの動きを学習したAIモデルから、ロボット制御に使う数式(制御モデル)を抽出している。もともと深層学習などのAIモデルは大量の線形応答関数の塊といえる。この数式をすべて合わせれば制御モデルが得られる。通常の硬いロボットは数式で表しやすいが、軟らかい「ソフトロボット」は数式で表すことが難しい。ソフトロボは安全性の高さなどからロボットの応用可能性を広げる新たな領域として期待されている。

 池本准教授らはソフトロボをグニャグニャと動かして入力とロボの動きをAIに学習させた。一つのモーター駆動の関節と11個の軟らかい関節を持つアームを動かして学習させ、AIモデルから制御モデルを抽出した。するとAIは2―3個の関節を持つアームとして12関節アームを認識していた。

2つを融合 
 制御モデルの抽出では、やみくもにロボをグニャグニャと動かしただけではAIはロボを制御できないと判断してしまう。これはアームが取り得るすべての状態のデータをとれないためだ。

 例えば12関節アームでは5000億以上のデータが要る。そこでデータがとれる部分と、とれない部分を「カルマンの正準分解」という手法で分けた。これでAIは制御可能なアームとして学習し、制御モデルが抽出できるようになった。

 池本准教授は「ソフトロボの身体は連続的に曲がるように変形し、無数の関節があるようにふるまう」と説明する。AIを経由することでソフトロボを制御しやすくなる。硬いロボの動作獲得とソフトロボの制御に深層学習が貢献している。この二つが融合すれば制御すら難しかったソフトロボにも仕事ができるようになるかもしれない。
日刊工業新聞2019年7月12日

【ファシリテーターのコメント】
 深層学習は12関節のソフトロボを2-3関節のロボとみていました。ただ、2-3関節の位置は決まっているのではなく、各時刻で関節を2-3のグループに分けてみています。関節の位置は変わるけど、だいたい2-3個ありそうというのがわかりやすい表現かと思います。このソフトなアームにモノを持たせると関節の位置も数も変わることになります。そしてソフトロボは人と触れあい一緒に働くという活用シーンが想定されています。たぶん触られる場所はデザイン次第で限定できるはずです。把持重量や接触、外力を含めてシミュレーションして、この状況ではこの制御モデルとライブラリーを作っておくと便利だと思います。一度、学習済みモデルを作っておくと、他の機体に転移学習でフィットさせて、その機体の制御モデルを簡単に抽出できるかもしれません。ソフトロボに限らず、柔らかい素材を扱う食品加工分野や軟体生物の遠隔操作、流体設計にも広げられると思います。
小寺 貴之

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_4e24a85b2c8a_【今週のリケジョ】“一から創造”にやりがい 4e24a85b2c8a

【今週のリケジョ】“一から創造”にやりがい

 神鋼エンジニアリング&メンテナンスの川崎美里さん(31)は、電気制御技術者として製鉄所内の電気工事設計や施工監理を手がける。電気回路の知識習得に加え、現場での実戦経験を日々積んでいる。「付加価値を高められるよう思案しながら一から創造できる」ことにやりがいを感じている。

最終仕上げ、完工に達成感
 出身の松江工業高等専門学校では電子制御工学を専攻しました。女性の卒業生が神鋼エンジニアリング&メンテナンスに就職し、設備の新設・更新などスケールの大きな仕事で活躍している姿に憧れて入社を決めました。12年目の現在は、神鋼グループ以外の製鉄所で電気工事を担当しています。現場の作業者と細やかにコミュニケーションを取りながら信頼関係を結んでいます。

 電気工事は製鉄所建設で土木工事や機械の据え付けを経た最終工程に当たり、夜遅くまで現場で施工や検査をこなしたこともあります。納期に間に合うか不安になったこともありましたが、先輩から「終わらない工事はない」と励ましを受け、自信を持って取り組めるようになりました。完工した時の達成感は何物にも代えがたいです。

 18年に同業種で勤務する夫と結婚しました。仕事の悩みを打ち明けるとアドバイスしてくれる大切なパートナーです。結婚を機に上司と相談し、出張は近隣地区になるよう調整してもらえました。ライフイベントを迎えると長時間にわたる現場作業が困難になります。今後は事務所に軸足を置き、担当者の状況を把握しながら各人の負担を和らげる仕組みづくりに貢献したいと考えています。

 自宅がある姫路市は皮革産業が活発で、休日はレザークラフト製作で息抜きします。偶然趣味が同じ同僚がいるので、日々の会話も弾みます。(文=神戸・中野恵美子、写真=冨家邦裕)

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cat_oa-newswitch_issue_43f08422c6c8 oa-newswitch_0_e7f493cd63cd_「人生100年時代」、日本の最悪シナリオ e7f493cd63cd

「人生100年時代」、日本の最悪シナリオ

 現役の1・5人が高齢者1人を支える時代が2040年にやってくる。政府はこれまで、「団塊の世代」が75歳となる25年を念頭に社会保障と税の一体改革を進めてきたが、さらに高い峠が見えてきた。一方、金融庁の「公的年金だけでは2000万円足りない」とした報告書をめぐって、野党などの非難が殺到している。政府は明確な説明責任を果たすべきだ。

 40年は、どのような社会になるのだろうか。最悪のシナリオは、世代間と地域の格差が極限まで拡大。相互扶助を基本としてきた日本の社会構造が根幹から崩れることである。

 総務省の推計では、40年にはわが国の人口は1億人程度に落ち込み、1971―74年生まれの「団塊ジュニア世代」が65歳以上の高齢者となる。その時点で高齢化率は36・8%に達し、85歳以上人口も高齢人口の3割近くになる計算だ。

 それだけではない。就職氷河期に就職活動をした現在35―44歳の世代の高齢化も進む。これらの世代は安定的な職を得られなかったため結婚や子育てができなかったケースが多く、単独所帯の割合が高い。社会保障費上振れの要因だ。

 政府も危機感を強める。厚生労働省は5月末、「40年を展望した社会保障・働き方に関するあり方」をまとめた。その中で、「人手不足の中での絶好の機会」として現役世代を増やすため就職氷河期世代の就労支援を盛り込んだ。これらの施策を閣議決定した経済財政の基本指針「骨太の方針」や予算などに反映させる方針だが、中年の域に達している人材をスキルアップさせるのは難しい。

 一方で、年金制度改革の必要性を強調する。5年ぶりとなる今年の年金制度改革に向け、公的年金不足を埋めるため私的個人年金や民間金融商品の活用など「自助努力」を求めている。

 しかし、資産運用経験がない高齢者にもリスクがある金融商品の運用を勧めるのはあまりにも危険だ。政府・与党は、「人生100年時代」に向けた新たな社会保障制度のあり方を国民に問うべきだ。

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