革新的なクルマとして先駆者的存在であり1975年、1976年と続いてWCRを制覇するなど、70年代のラリーブームを牽引したランチア「ストラトス」のベースとなったコンセプトカーが、この「ストラトス・ゼロ」です。
コンセプトカーと言えども、「ストラトス・ゼロ」は正常に運転することのできるフルワーキングで仕上げられています。三角形のエンジンカバーの下には、115馬力を繰り出すランチアの小型乗用車「フルヴィア 1.6HF」の1.6リットルV型4気筒エンジンを搭載しています。
…とはいえ、ここではスピードではなく、その走りの革新性にフォーカスしましょう。
Courtesy of youtube@19BOZZY92
この「ストラトス・ゼロ」が、どのようにしてランチアの工場から抜け出したのか? そんな背景を聞くだけでも、とても興味深いことだと思います。ですが、それを聞いても、実際にこのクルマがどれほど低い車高であるかを想像するのは難しいでしょう。
それが「どのくらいか?」と言うと、座席はほぼ水平。長い台形のフロントガラスからは、空を眺めることさえできるのです。その低さを保持するために、乗り心地の優先順位はかなり下げられたと思ってもいいでしょう。実際、乗っている様子を見れば、さらに強く心に刻まれるはずです。
5月下旬、ラグジュアリーな避暑地としても知られるコモ湖の湖畔にある高級ホテル「ヴィラ・デステ」で開催されたイベント、「Concorso d'Eleganza Villa d'Este(コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ) 2018」に「ストラトス・ゼロ」は参加したのでした。
それではここで、ランチア「ストラトス・ゼロ」のデザイン性を改めて確認しながら、そのイベントの様子を覗いてみましょう。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿01
コンセプトカーである「ストラトス・ゼロ」が発表されたのは1970年のトリノモーターショー、ここで彗星のごとく現れたのでした。
コンセプトカーではありましたが、この「ストラトス・ゼロ」は単なるショー用のモックではありませんでした。そこには、もちろんエンジンも搭載されていましたが…それよりも重く熱い世界ラリー選手権制覇という野望をもったコンセプトモデルだったのです。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿02
このクルマのデザインを担当したのは、カロッツェリア・ベルトーネ(ベルトーネ社のボディ制作部門)の元チーフデザイナーであり、スーパーカー・ブームのほぼ主役のポジションを担ったランボルギーニ「カウンタック」を創出したマルチェロ・ガンディー二氏です。
そしてこの「ストラトス・ゼロ」ののちに、WRCで大活躍という目標を達成したランチア「ストラトス」も作り上げたのです。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿03
そんなカーデザインの神的存在の彼が1970年に生み出し、隠れた名車としていまもなおファンを虜にしているこのランチア「ストラトス・ゼロ」。このクルマは彼がつくり出したクルマの中でも傑作中の傑作であり、1912年創業のベルトーネ社の歴史においても、最高のヒット作品と言えるでしょう。
デザインは、1970年代のトレンドを随所に盛り込んだスタイリングに仕上がっています。70年代といえば、ロータス「エスプリ」やランボルギーニ「カウンタック」など、近未来的でスタイリッシュなデザインが流行していた時代。また、低い車高とワイドなボディがトレンドであり、この「ストラトス・ゼロ」はまさにその先駆的な存在だったのです。
83cm…とてつもなく低い車高に全長は3.58m。フロントからリアへと一直線のラインで描かれており、空気の流れを邪魔しないデザインが採用されています。乗り降りはフロントウィンドウが上方向へと開くことで可能となり、座り心地はまるで戦闘機のコックピットのようです。
リアへ回れば、三角形のパーツはエンジンカバーになります。これを外すと、1.4リットルV4エンジンがお目見え。大きなエキゾーストパイプが2本並ぶバックスタイルは、まさに未来のクルマを感じさせるデザインです。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿04
Courtesy of Instagram@theoutlierman
それでは、2018年5月下旬に開催されたイベントの様子をご紹介しましょう。
このイベント名「Concorso d'Eleganza(コンコルソ・デレガンツァ)」。英語で言えば「コンペティション・オブ・エレガンス」です。つまり、エレガントさを競うイベントではありますが、この「ストラトス・ゼロ」の登場によって、会場の温度を幾分上昇させてしまったようです。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿05
Courtesy of Instagram@formulaonecar
ホテルの庭園内を走れば、そのあとを大勢のオーディエンスがカメラ(もしくはスマホ)を構えながら追い掛ける光景が…。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿06
Courtesy of Instagram@theoutlierman
フロントガラスは上向きに開きます。写真の三角形の部分がエンジンカバーになります。これを横に開けば、エンジンのお目見えです。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿07
Courtesy of Instagram@nostracarmus
ここで皆さんは、疑問に思うことでしょう…「乗降場所は?」と。でも、この写真で気づいた人も多いかもしれません。それはなんとフロントガラスから…。乗り込む様子は、最終ページの動画06:38あたりのところで確かめることができるでしょう。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿08
Courtesy of Instagram@theoutlierman
さらに、ホテルから出て公道を走っているときには、すでに待ち構えていたマニアも多数。しかも、これをチャンスにと、その車高の低さを強調した絵が欲しいという欲求から、地べたに寝そべりながら待ち構え、そしてベストのタイミングでシャッターを切る強者たちもいました。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿09
Courtesy of Instagram@henkholsheimer
低速走行だったゆえに、進むほどにカメラに追われる状況。その姿はまるでスターのようでした。イベントことを知らず、このタイミングでコモ湖に訪れていた人には、かなりの幸運だったことでしょう。
ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿10
Courtesy of Instagram@lovecars
このイベントとは関係なしに、この街に訪れたような…いわば偶然の旅行者たちも、この「ストラトス・ゼロ」の走行に対し、二度見どころか凝視するぐらいの勢いです。
【動画】ランチア「ストラトス・ゼロ」の雄姿11
それでは今回のイベント、「Concorso d'Eleganza Villa d'Este 2018」」でのランチア「ストラトス・ゼロ」の様子を追った貴重なYoutubeを発見しました。こちらでその革新性をぜひとも実感してください。
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ランチア「ストラトス HF」
Road and Track(原文:English)
BY MÁTÉ PETRÁNYMAY 29, 2018
Courtesy of youtube@19BOZZY92
Courtesy of Instagram@theoutlierman, formulaonecar, theoutlierman, nostracarmus, henkholsheimer, lovecars
Translation / Mirei Uchihori
※この翻訳は抄訳です。
Edit / Kaz OGAWA,Mirei Uchihori