スマートフォンの設計者たちは、われわれの想像以上に苦行の連続です。しかも、それは終わりなき戦いでもあるでしょう。
現在における最高峰の性能を持つイメージセンサーとレンズを、ポケットに中に収まるサイズの端末の中に詰め込むことが最重要課題となるでしょう。ですが今の時代、「コンパクト」という物理的な問題解決だけではストロングポイントとはなりえない時代なのです。SNSからのシェア画像が当たり前となった今、その写真のクォリティにまでも、昨日以上の機能を求める続ける時代なのです(笑)。いかに「映え」する写真が撮れるのか?…それが最重要課題となってきているのではないでしょうか。
現在発売されているスマートフォンの多くは、各メーカーなりの賢いソフトウェアを搭載して、そのうえ高い計算処理能力を活用することによって、カメラではなくスマートフォンからの撮影なのに…驚くほどの出来栄え写真を撮影することが可能となっているのです。まさに現時点で、その苦行に対してひとつの成果を出したと言っていいのではないでしょうか。でも、ここで終わりでないことはもちろんですが…。
今でも、撮影の専門ツールである「カメラ」を愛する皆さんもたくさんいることでしょう。ですが、そんな「カメラ」愛好家たちをも唸るような写真を、今回の新型iPhone「iPhone XS」は生み出してくれるのです。この機種の登場によって、今後、スマートフォンで撮影できる写真の基準は、他社も含めて全体的にアップグレードされることとなるでしょう。いや、アップグレードしなければ太刀打ちできないとも言っていいほどかもしれません。
そんなわけでテックメディア「Popular Mechanics」の編集者アレキサンダー・ジョージ氏が最近行った「iPhone XS」のテストの際、彼は自身のオリンパス製ミラーレスカメラを「取り出すまでもないなぁ」と思ったそうですから…。
新型「iPhone」、サムスン 「Galaxy Note 9」、それにグーグルがこれから投入する新機種となるスマートフォンは、AI(人工知能)を搭載することによって、その写真編集のアレンジメントもアップグレードしていくとのこと。そして、そんなカメラ機能に特有のテクニックを駆使するためにも、ここでいま一度、昔からある写真撮影のノウハウに関して確認しておく必要があるでしょう。そのノウハウを再確認することでこそ、これらの素晴らしいスマートフォンカメラの機能およびAIとのシナジー効果で、最大限魅力的な写真が撮れるはずですので…。
細かい調節はスマートフォンに任せる
「iPhone XS Max」のカメラをテストしていたとき、私はあまり考えずに、本体を手すりの上にセットして手ぶれを防ごうとしました。しかし、私と一緒にいたプロのカメラマンが、「そんなことはしなくていい」と私に言ってくれました。
確認したところ、この新しいスマートフォンにはソフトウェアとセンサーをつかって手の揺れを予想し、画像を安定させる機能がついていたのです。なので、細かい調節はスマートフォンに任せて、皆さんは写真を撮ることに集中するだけでいいのです(ただし旧機種では、グリップのような装置がいまだに有効な場合もあります)。
それと同じことが、画面をタップして焦点を合わせるという操作にも当てはまります。大半の新しいスマートフォンは、皆さんが被写体にカメラを向けた瞬間に、視界の中にある対象物を分析して、焦点や露出を自動的に決定します。つまり、皆さんが画面上の特定のエリアをタップして、ホワイトバランスや明るさを調整することもできますが、「一般的にはスマートフォンに任せたほうが良い結果が得られる」ということなのです。
「自動HDR」をオンにする
HDR(ハイダイナミックレンジ)というのは、シャッターを切った時に、カメラが露出の異なる複数のバージョンの画像を合成し、よい部分だけを残したまま1枚の写真に仕上げる機能です。iPhoneでは、3枚の写真を撮影しその場で合成します。普通に撮影するのに比べて、肉眼で見るのに近い自然な写真に仕上げてくれるのです。写真を撮影するとき、目で見ている実際の景色よりも明るくなったり、逆に暗くなったりすることがありますが、これはカメラのレンズが捉えることのできる明暗差の範囲(ダイナミックレンジ)は人の肉眼のそれよりも狭いため、カメラが設定した露出によって写真が明るくなったり暗くなったりするわけなのです。まさにこの機能は複数の画像からシナジー効果によって、例外的に素晴らしい写真に合成してくれるのです。
たとえば、集合写真を撮影した際に、被写体の人たちの顔は正しい露出で撮影できたものの、背景の空の部分は白く飛んでしまったという例があります。このHDRなら、正しい露出で撮影した人の顔のフレームと素晴らしい青空が映ったフレームを組み合わせて、1枚の写真をつくることが可能となるのです。最新型のスマートフォンに関してはこの機能を際立たせていますので、皆さんが自分自身の力で完璧な露出を追い求めるというチャレンジの場でない限り、自動HDRをオンにしておけばいいのです。
プロからのアドバイス:
皆さんのスマートフォンに、「オリジナルの写真を残す」あるいは「通常の写真を残す」という設定がある場合はオフにしてください。そうしないと、撮影するすべての写真で、オリジナル画像とHDR画像が重複・保存されてしまい、スマートフォンのストレージ容量を大量に消費することになりますので。でも、「比較して今後のために役立てたい」という向上心旺盛の方は、このアドバイスを無視してくださって結構です。
音量ボタンでシャッターを切れるように本体を握る
スマートフォンで写真を撮る人は大抵、バランスに気を配りながら本体を片方の手で構え、そして、同じ側の手の親指を捻るか、もう片方の手の指を使って画面上のシャッターボタンを押して撮っていますね。
そのようにするのは、レンズの上に指が被さることへの心配から生じた習慣かと思います。でも、皆さんのスマートフォンのカメラレンズは背面の隅に配置されていることを思い出してください。とはいえ、それが間違いというわけではありません。通常の写真撮影では、とてもうまく機能することでしょう、ですが…名案とも言える、違う方法もあるのです。
「iPhone XS Max」のテスト中、私はプロカメラマンがスマートフォンを裏側から握り、親指(彼は左利きなので)でボリュームボタン(音量ボタン)を押して、写真を撮っている姿を目にしました。この撮り方だと、ランドスケープモードで撮影する際には少し手を捻る必要がありますが、しかし、それで得られる効果は変わりません。このほうがずっと簡単に被写体にカメラを向けることが可能で、また本体をしっかり握ることで、高価なスマートフォンを落とす可能性も最小限に食い止めることができるのです。
人物を仰角で撮ってみる
仰角撮影とは、平たく言えば「アオリ撮影」というものです。もっと簡単に言えば、下から見上げるように人物を撮影する方法で、この撮影方法ですと被写体となった人に顎のラインが加わるので、人物撮影の場合におすすめの撮影方法となります。顔をスマートでシャープに見せてくれるからです。
そしてさらに、ここでもソフトウェアからのサポートが加わります。iPhoneのポートレイト・モードは、被写体を魅力を損なわせるような歪みを自動で修整してくれるのです。上の写真のように…今後のポートレートは、この角度からの撮影がベストとなるのです。
グリッドを活用する
大抵のスマートフォンには写真撮影時のオプションとして、画面を縦横それぞれ3分割するグリッド(格子)表示の設定があります。これは「三分割法」のガイドとなるものです。
「三分割法」は画面の構図を決定するための昔からあるテクニックで、これらの線の交わるところに焦点を合わせると、上手に写真が撮れるというものです。例えば被写体の人物の目が上から3分の1あたりのところにあり、そして、被写体の頭部の上のほうがカットされているような構図の写真を皆さんが目にするのも、この「三分割法」のためです。
「三分割法」は必ず守らなくてはならないルールというわけではありませんが…何も考えずフレームの中央に合わせようとするのではなく、これらのグリッド線に焦点を合わせて撮影すれば、ほぼすべての写真の出来映えが見違えるように良くなるはずです。
シャッター音をオフにする
スマートフォンのカメラの擬似的なシャッター音は、人をイライラさせます。皆さんは、「スキューモーフィズム」と言う言葉をご存じでしょうか? 「スキューモーフィズム」とは、時代遅れになったもしくは無用になったユーザーインターフェイスを使って馴染みにあるものに見せかけることを指すテクノロジー関連の言葉になります。
例えば、黄色いリーガルパッドに似せてデザインされたメモ・アプリは、スキューモーフィズムの一例です。そしてスマートフォンのカメラで、シャッターを切った時にする偽のメカニカルなシャッター音も、やはりそれに当たるわけです。あのシャッター音は、スマートフォンのカメラが立てる音ではありません。
そこでアップルは、皆さんの脳がクリック音から写真撮影という行為を連想するという理由から、偽のシャッター音を鳴らすようにしています。私はあのシャッター音が嫌いですが、もし皆さんもそうでしたら、音がしないように設定を変えることができます。ただし、iPhoneの場合は本体左上部にあるマナーモードスイッチを切り替えて、「消音モード」に設定するしか方法はありませんが…。
By Alexander George on September 28, 2018
Photos by Courtesy of Apple, Alexander George and Getty Images
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。
編集者:山野井 俊
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