悪夢のように忙しい1週間を過ごした後は、ゆっくり腰を下ろしてグラスワインでも楽しみたいものです。
そんなときはワインを…。
適量のワインは、心も体も心地よくしてくれるのは確かです。そして研究によれば、ワインは心臓や脳、筋肉にも良い影響を与えることが期待できるという研究結果も出ています。さらには、赤ワインに関して…そこに含まれている成分に抗がん作用があることを示唆する研究結果もあります。
しかしながら、赤ワインに関してのこういった触れ込みは、あまりにも大げさではないでしょうか!? と、ときに不安も生じるのが正直なところ…。
そこで、「毎晩一杯の赤ワインが本当に体にいいのか?」ということについて、専門家に意見を聞いてみました。今回は、赤ワイン健康説の根拠や実際に赤ワインが健康に与える影響についてのプロからの意見となります。
赤ワインは、他のお酒に比べてどう体にいいのか?
赤ワインについては常々、「ポリフェノール」を豊富に含むことが健康に良いとされてきました。
この「ポリフェノール」の中でも、特に健康上のメリットがあるとされるのが、「レスベラトロール」と呼ばれる抗酸化物質です。それはブドウの皮に含まれているものになります。このような抗酸化物質には、一般に心臓病の進行の一因とされる体内の炎症を沈静化する効果が大いに期待できると言います。
しかし、ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院で疫学および、栄養学の教授を務めるエリック・リム氏はこうも言います。
「赤ワインの健康へのメリットが、ビールやさまざまな蒸留酒など他のアルコールを適量飲む場合のメリットと、大きな違いがあるわけではありません」と…。
確かに「ポリフェノール」は、心臓の機能の活性化に期待できるとされています。しかしリム氏によれば、赤ワインから摂取できるポリフェノールの量は、フルーツや野菜を5〜9つ食べることで摂取できるポリフェノール量に比べ、はるかに少ないとのことなのです。
さらに実際は、医学誌『JAMAインターナショナル・メディシン』に掲載された研究によれば、「レスベラトロールと心臓疾患やガンなどの罹患率の関連性は発見できなかった」との発表もされています。
「レスベラトロール」の効果を研究したこれまでの研究では、動物実験で高用量の「レスベラトロール」を投与して結果を出したものが、ほとんどだったそうです。そのため、人間が自然な量を摂取した際に健康にどのような影響があるかについては、研究者たちも明確には分かっていないようなのです。
「(赤ワインに関する)こういった議論が始まった理由は、赤ワインからポリフェノールを取り出して、マウスに投与する研究が数多くあったからです。一部の研究では、すばらしい効果が現れました。問題は人間がこの効果を得るためには、毎晩8〜10本の赤ワインを飲まなければいけないということです」と、リム氏は話します。
より可能性が高いのは、必ずしも「ポリフェノール」だけというわけではなく、ワインに含まれる「アルコール」も健康に対していい影響を与えている可能性があるということです。
「ショットグラスのジン、150mlのグラス赤ワイン、350mlのビール缶は、いずれも同じ量のアルコールを含んでいます」と、リム氏。
彼によれば、「アルコール」摂取についての対照研究の中では、適度な量のアルコールを飲む人は、アルコールの種類に関わらず健康的な血液マーカーを示す傾向があったと言います。
現在の米国食事ガイドラインでは、「適度な量」について、男性で一日2杯までの飲酒と定義しています。
なお、「米疾病管理予防センター(CDC)」によれば、1杯の量についてはビールで350ml、モルトリカーで240ml、ワインで150ml、アルコール度数40%の蒸留酒で45ml」となっています。
「適度な量のアルコールを飲んだ場合、善玉HDLコレストロールが増加し、血栓形成のリスクが下がり、インスリンやグルコースを感知する体の機能が向上する可能性があります」と、リム氏は説明を加えています。
実際、適度な飲酒が、心臓発作のリスクを下げることを示唆する研究は100以上あると言うこと…。
しかし、ここで忘れてはならないのは、「適度」という言葉です。推奨される量以上のお酒を飲めば、健康への影響は期待できなくなってしまうでしょう。
赤ワインを飲むことに健康上のリスクはあるのか?
エリック・リム氏によれば、米国民のおよそ8〜10%は飲酒問題を抱えていると言います。
「こういった人々について言えば、最も健康なのはアルコールは飲まないことでしょう」と彼は語ります。
また、「米疾病管理予防センター(CDC)」は一週間に15杯以上、または一度に5杯以上の飲酒を「大量飲酒」とも定義しています。
こういった定義があるのは、「アルコール」依存症には一晩でなるのではなく、依存症の症状があるすべての人が最初は適度な飲酒から始めるからなのです。「アルコール」依存症になる人を予想するのは、ほぼ不可能なので…。
ですがリム氏によれば、家族の病歴からある程度は予想できるという研究もあるそうです。
CDCはこうも言っています。「飲み過ぎは肝臓病や種々のガンなど、他の様々な健康問題とも紐づけられてきた」と…。こういったことを踏まえたうえで、ワインや飲酒全般を責任ある態度で楽しむにはどうすればいいでしょうか。
赤ワインを飲むベストな方法は?
「ワインについて聞かれたときに最初に言うのは、飲み物のタイプで何かが大きく変わることはないと言うことです」と、リム氏は話します。
赤ワインは、ランチに食べたチーズバーガーやフライドポテトを帳消しにしてくれる魔法の薬ではありません。どちらかと言えば、健康のための食事の補助的な役割をはたすものでしょう。
「脂肪分の少ないタンパク質や健康的な脂肪、野菜など(いずれも心臓に良い地中海風の食事)を中心とした食生活をおくれば、赤ワインは確かにこれらの栄養豊富な食事を補うメリットをもたらすでしょう」と、リム氏は説明します。
しかし、ファストフードばかり食べるような食生活をおくっていればどうでしょうか。
「ワインは飲まないほうが賢明でしょう」と、ニュートリシャスライフ社の創業者であるケリ・グラスマン氏は語ります。
すでに多くのカロリーを摂っている人が、『他の食べ物より健康にいいから』という理由で赤ワインを飲んだとしても、カロリーの取り過ぎになるだけだからです。150mlのグラス赤ワインを飲めば、125キロカロリーを摂ることになりますので。
「チョコレートと同じです。確かにチョコレートは健康に一定のメリットがありますが、私は普段から甘いものを食べない人にチョコレートを食べ始めるようすすめるようなことはありません。抗酸化物質の摂取量を増やしたいなら、緑の葉物野菜やブルーベリー、グリーンアップル、ブロッコリー、ナッツや種子類を食べる量を増やすことから始めるべきです」と、グラスマン氏は話します。
これらの食べ物は、食物繊維やタンパク質など他の栄養分も豊富です。
結論は…
お酒が人々に与える異なる影響については、さらなる研究が必要です。
これまでの研究では、赤ワインあるいは「アルコール」全般が適量であれば、健康に良い影響を与える可能性が強く示唆されています。もちろん、「アルコール」依存症の病歴がなく、普段から健康的な食事をしていればの話ですが…。
覚えておいていただきたいのは、ワインにできることは栄養豊富な食事をサポートすることであり、ワイン自体が健康を促進するものではないということです。
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From Men's HealthTranslation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。