TV番組でソファーの上に立ち上がって愛を叫んだり、できる限りグリーンバック(合成用スクリーン)を使わないことを出演の契約条件にしたり…といった話題に事欠かないトム・クルーズですが、それ以前の彼は「キング・オブ・クール」だったのです。
『卒業白書』(1983年)、『トップガン』(1986年)、『ハスラー2』(1986年)と立て続けに出演していた当時、なぜか彼のスタイリングはあまり話題になっていませんでした。
あらたまった席でスーツを着ること自体は、目新しいことではありません。が、クルーズの過去のスーツ姿を見てみると、単調なダークスーツをトラディショナルに着るのではなく、柄と色で実験的なスタイリングをしていたことがわかります。
今回、トム・クルーズが80年代に見せてくれたスタイリングをご紹介いたしましょう。
チャコールグレイスーツ姿
1985年、ショーン・ペンとマドンナがカリフォルニア州マリブの豪邸で挙げた結婚式に出席したクルーズは、かっちりとしたチャコールグレイのスーツに、イエローとゴールドのメダリオン柄のシャツ、そして『トップガン』でトレードマークとなったアビエーターサングラスを合わせたコーディネートを見せていました。
34年前に撮影されたこの写真は、フィルター加工したセルフィーよりもカッコよく見えます。同じく、このウェディングに駆けつけたハリー・ディーン・スタントンがマルチカラーのタイをつけ、クリストファー・ウォーケンはクイッフヘアであったりと、ただのノスタルジー以上に注目すべき点が満載でした。
柄生地のスーツ姿 #1
1986年には、ニューヨークで行われた『ハスラー2』のプレミアイベントで、クルーズはブルーの柄生地のスーツを着用。ポール・ニューマンやマーティン・スコセッシ監督の落ち着いたグレイスーツと対照的に、ポップな華やかさを放っていました。
24歳であったクルーズは、ハリウッドでのキャリアを確固たるものとし、自分の出演する映画も絞り込んでいきました。それと同時に、彼のファッションも自分らしい選択をするようになっていったようです。
後ろの満面の笑みの彼女は、このあと1987年に結婚するミミ・ロジャースでしょう。
柄生地のスーツ姿 #2
アビエーターサングラスはかけていなくとも、総柄のスーツにシルバーバックルのベルトでアクセントを入れてみたり、ピンストライプのスーツにウエスタン ボロタイ(ループタイ)を合わせるなど、いずれもひとひねりあるスタイリングで自身の個性を表現していました。
パーソナルスタイリストがつくことがまだ一般的ではなかった時代に、このようなスタイリングをしていたとなると、さらに驚きが高まります。有名人の専用スタイリストは1980年代の終わりごろから、やっと定着し始めたのでした。
ジョルジオ・アルマーニの広報を担当していたワンダ・マクダネル氏は『ヴァニティ・フェア』誌に、「もしチームにスタイリングの発言権のある人がいたとしたら、それはパブリシスト(広報担当)ですね。例えばトム・クルーズに対しても、パット・キングズレーは、『シングルよりダブルスーツのほうがいい』と助言するでしょうね」と語っています。
白のリネンジャケット姿
最初の妻ミミ・ロジャースと一緒に、マドンナと夕食をともにしたときのショットです。ここでは、クルーズは白のリネンジャケットをはおっていますが、このようなプライベートのときのほうが彼の好みが出ていると言えるでしょう。
最近では、多くのセレブがパブリックイメージを高めるため、普段の装いにも手を抜かずスタイリングをしているので、このようにプライベートなファッションが見られることは少なくなっています。
トム・クルーズがスターダムを駆け上がっていた当時の写真を見ると、過去の懐かしさとともに、画像が明るくなりすぎていなかった「良き時代」を感じます。
彼の刺激的なスーツスタイルは、90年代半ばには見ることもなくなり、レッドカーペットではよりクラシックなスタイルを好むようになりました。が、クルーズが着用していたブルーのスーツ姿を忘れることはないことでしょう。
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From Esquire UKTranslation / Keiko Tanaka
※この翻訳は抄訳です
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