※本記事は、ジョアンナ・エンジェル氏の寄稿をもとに構成されています。
私(筆者エンジェル氏)はポルノ女優であり、監督でもあります。
いわば、皆さんのスイッチを入れるのが私の仕事になります。信じる信じないはお任せしますが、私にとって、これはシリアスな仕事なのです。しかしながら、どれほど美しい人々が出演しようとも、最高のクオリティのポルノ映画でさえ、その制作費用は一般的な映画の予算の半分にもなりません。
だからこそ、テレビで流れる映画を見ると、その濡れ場のシーンのクオリティの低さを目の当たりにし、憤りを禁じえない状態にもなるのです。
……と前置きをしたうえで、どうしようもない、観ているこっちが気恥ずかしくなるような、思わず鳥肌が立つような(悪い意味で)、そんな濡れ場の数々を集めてみました。このような酷い作品を生み出した監督たちに、言い訳など許されるわけがありません。
ハリウッドよ、ちゃんと努力して見せてよ!
シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water,2017)
イライザという発話障害を持つ美しい女性(サリー・ホーキンス)と、えっと…あの両生類のような魚のような不気味な生物(ダグ・ジョーンズ)との関係を描き、オスカーを受賞したこの映画を理解しようと真剣に努めてみたのですが…。
でもごめんなさい。この半魚人に興奮を覚えるのは、私には無理…でした。
イライザとこの魚男との間に、なにか強烈な精神的なつながりが生まれたということまでは理解できるのですが、でも、「2人の関係はプラトニックのままであるべきだった」と、私は思うのです。
イライザ、海に潜ればもっといい魚がたくさんいるわよ(もしかしたら、あなたの閉ざされたバスルームにもね)。
セクレタリー(Secretary,2002)
こんなことを言うと、叩かれるかもしれませんね。
でも私は、この高慢な弁護士役のジェームス・スペイダーと、従順な秘書役のマギー・ジレンホールが、このカルト的人気を誇る2002年に公開された映画で演じているスパンキングのあのシーンが、ちっとも好きではありません。
確かに「BDSM(B=ボンデージ、D=ディシプリン、S=サディズム、M=マゾヒズム)」の打擲(ちょうちゃく)を描いた技巧的描写なのかもしれません。
でも、スペイダーのあの様子は、なかなかにぎこちなく、まるで壁に爪を突き立てているようじゃないですか。私はどちらかというと、もっと淫乱な感じの、ポルノ流の秘書のほうが好みですね。
ぴちぴちのシャツを着て、伊達メガネをかけ、意味もなくボスのデスクのうえに寝そべっちゃうみたいな…。
ショーガール(Showgirls,1995)
現代のアメリカは、実にさまざまな問題によって引き裂かれ、分断されてしまっています。
それでも、この映画『ショーガール』がとてつもなくひどい映画であるという点においては、そんな私たちでさえ、心をひとつにできるはずです。
ストリップダンスを踊るエリザベス・バークレーと、カイル・マクラクランのあのシーンの恥ずかしさと言ったらありません。そして、さらに悪名高いポールダンスのシーンの酷さと言えば、筆舌に尽くし難いほどです。
ポールより生まれ出た魔物といった感じの彼女が、まるで何かに取り憑かれたかのように踊り出す様子を目にすれば、もう笑いを堪えることなどできませんよね。
この暴力的な演技がなぜ生まれたかを想像するとすれば…、「バークレーがオーガズムを経験したことがないから…」としか言えません。だから、それを表現できないんです(きっとACスレーターのせいですね)。
BODY/ボディ(Body of Evidence,1993)
若かりし日のマドンナとロウソクという、私の愛する2つのものが1度に登場する濡れ場なのですが…「とてつもなく酷い」としか形容できないのは、痛いほどの悲しみでもあります。
とは言え、実際そうなのですから仕方ありません。
ウィレム・デフォーの精一杯の顔も、かなり気持ち悪いのです。が、彼のその体についたロウを舐めるマドンナには、エロさの欠片もありません。
ごめんね、マドンナ。あなたは私の愛を受け入れてくれるかもしれないけど、私はあなたの濡れ場を受け入れることができないみたいだわ…。
フィフティ・シェイズ・フリード(Fifty Shades Freed,2018)
このシーンでは、アナスタシア(ダコタ・ジョンソン)が深夜のおやつ、ベン・アンド・ジェリーズのバニラアイスをクリスチャン(ジェイミー・ドーナン)の体に“こぼして”しまいます。
するとお返しとばかりに、今度はクリスチャンがアナの脚にアイスを塗ってそれを舐め、それから2人は始めるのです。
これはおそらく、「バニラセックス(たんぱくでまったりとした、激しさを求めない、ゆるふわな草食系セックス)」を象徴するための演出だろうとは思います。ですが、私がこれまで目にしてきた、いかなるBDSMのセックスと比べても、なんだか実に奇妙極まりない行為に思えてなりません。
それよりもなによりも、冷蔵庫の中には、まだシナモンスワールとチャンキーモンキーが残ってるっていうのに、ベンジェリのただのバニラを選ぶなんて信じられません…。
ザ・ルーム(The Room,2003)
「史上最悪の濡れ場」と題された記事が、この迷作『ザ・ルーム』の、この伝説のシーンを抜きにして完成するわけがありません。
ジョニー(トミー・ウィソー)が、“未来の奥さん”であるリサ(ジュリエット・ダニエル)のおへそのあたりに突っ込んでいるようにしか見えない、ご存じのあのシーンですよ…。
プロからのアドバイス:ナイン・インチ・ネイルズの「Closer」をこのシーンに合わせてお楽しみください。味わったことのない面白さを体験できるはずです。
笑…いいえ、どういたしまして。
Translation / Kazuki Kimura
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