10年間で194回の公演を数え、草笛光子さんがライフワークとおっしゃる二人芝居『新・6週間のダンスレッスン』が上演されます。68歳の未亡人とダンスインストラクターの青年(マイケル)の物語は、「まるで自分の人生を演じているような気がする」のだそうです。
舞台への思いや日々の健康法などについてお聞きしました。
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新しい出会いには自ら窓を開けていく
──4年ぶりの上演ですね。
草笛 はい。この舞台は見終わった方がたいていうらやましがるの。私もマイケルみたいな人が欲しいわぁって(笑)。今回のマイケル役は松岡(昌宏)さん。以前に舞台をご一緒した時にここにマイケルがいた! と思ったの(笑)。
今回は演出も音楽も変わるので新作みたいなもの。約10年間この作品に携わってきて染みついたものを払いのけながらの新しい挑戦なので、新作より難しい。でも、新しい方とお仕事する時に私は「光子の窓」ではないけれど、窓を開けるんです(笑)。気取ったりせず、飛び込んで行く。そうしないと、いつまでたっても距離は縮まらないと思うんです。
──そうやって、ずっと第一線でご活躍されてきたんですね。
草笛 いえいえ、第五線くらいですよ(笑)。長く女優として生きてきちゃったなぁとは思います。越路吹雪(こしじふぶき)さんが56歳で亡くなった時、越路さんが生きるはずだった年代を私は生きるかもしれないから、ずっと一緒に舞台に出ようねと彼女に誓ったんです。だからいまも舞台に出る前には"コーちゃん、(越路吹雪さんの愛称)行くわよ!"と言って出てゆきます。
自分をいさめてくれる人がいた方がいいわね
──週1回は必ずトレーニングをされていると伺いました。
草笛 バランスボールに乗ったり、筋トレや加圧もやります。トレーナーに家に来てもらっているんです。だから今回の舞台のお話と同じね(笑)。私はなまけんぼうだから、ジムに行ってとなると、暑いとか眠いとか理由をつけてきっと行かなくなるけれど、来てもらうとなると否応なしにやるでしょ?
トレーニングは、トレーナーの前で歯を食いしばってやることが大事なんです。最初の頃は、なぜこんなにつらいことをやらなくてはならないの? と思っていましたね。でも、やり終えた後や翌日に、あぁやってよかったと体がわかるのね。やった成果が出る。だからこれだけ続いているんです。毎回、トレーナーに怒られながらやっていますけれどね。この前できなかったところが今日もできなかったら負けだなぁと思えば、くやしいと思いながらやるの(笑)。
このお芝居のリリーとマイケルもそうだけど、喧嘩(けんか)しいしいというのが活力になっていいんですね。喧嘩と言っても憎みあっているわけではないですし。そういう刺激は年齢に関係なく必要だと思います。あと、自分をいさめてくれる人も必要。年上になると、あそこがおかしかったとか、いさめてくれる人がいなくなるの。やっぱり言われれば耳は痛い(笑)。でも、いさめてくれる人がいないとダメですね。
体を動かすとやる気も食欲も湧いてくる
──皆さんにぜひメッセージをお願いします。
草笛 メッセージなんて、何もないですね。色紙によく努力とか書くけれど、努力は当たり前のこと。年齢を重ねることは"おっくう"との闘いです。こうやってお化粧をして髪を結い、肌が見える服なども着て(笑)。そういうことも以前は平気でしたね。
でも最近は、一つ一つが"よいしょっ"という感じでおっくうになりました。でもそういう時には稽古場に行って、開脚をしたりスクワットをするんです。そうして汗をかくと、ようやくやる気が湧いてきます。血の循環が良くなってくるからか、体もいうことをきくし、食欲も湧いてきます。結局は血の巡りなんですね。だから、おっくうだなぁと感じた時ほど体を動かした方がいいんです。
うちは3階建てで、地下が稽古場なので実質4階建てなのね。友人たちに「エレベーターをつけたら?』と言われるけれど、つけたいとは思わないんです。この苦しいのがいいんだからと。ただ、疲れて帰ってきたり、少し酔った時にはとても大変。こんな家じゃない方がよかったと思うんですけれど(笑)。
取材・文/鹿住恭子