夜中に突然ふくらはぎがつって痛みで目覚めることはありませんか? 一般的にこむら返りと呼ばれていますが、正式には「腓腹筋けいれん」といいます。今回は、東京有明医療大学 保健医療学部鍼灸学科 教授 川嶋 朗先生に「こむら返り」の対処法について教えていただきました。
最も効果があるのは体を温めることです!
こむら返りの原因はいろいろありますが、日頃からできる最大の予防法は"温活"です。
「体を温めて血液循環をよくすると、筋肉のセンサーも誤作動を起こしにくくなります。温かい血液が巡ることで副交感神経も優位になるので、筋肉や血管の緊張もほぐれます」と川嶋先生。
全身を効率よく温める方法はお風呂です。
38度~40度のぬるめのお湯に10分以上浸かると、体の中も温まり、副交感神経も優位になります。
40度を超える熱いお湯は、交感神経を優位にして、血圧を急上昇させるなど体に悪影響を及ぼすので避けましょう。
特に高血圧の人は、熱いお湯の入浴は控えた方が無難。
また、心臓病を抱える人は、全身浴では水圧で心臓に負荷をかけることになるため、半身浴を心掛けるようにしましょう。
ぬるめのお湯でゆったり過ごすのがポイントです。
「日中、いすで過ごすようなときにも、湯たんぽを使うとよいでしょう。特に全身の約4分の1を占める太ももの筋肉を温めることで、体温を上げやすくなります」と川嶋先生はアドバイスします。
立ち仕事などで足がむくんでしまったときには、足首までお湯につける足湯が効果的。
足湯のときには、全身浴よりも少し熱めの41度のお湯に15分程度つけていると、血管が広がって血の巡りがよくなり、むくみも解消できます。
温められた血液が全身に巡るため、体の冷えにも効果的です。
「ふくらはぎのマッサージや筋肉のマッサージもおすすめです。また、筋肉量を増やすための運動習慣も大切です。1日20分のウォーキングから始めるようにしましょう」と川嶋先生は話します。
運動は苦手という人も、安全に歩くことができる機会には、いつもより少し多めに歩いてみてはいかがでしょうか。
運動で筋肉量が増えて血の巡りがよくなることは、動脈硬化、糖尿病、高血圧など生活習慣病の予防・改善にも役立ちます。
「こむら返り」になったときの対処法&遠ざける生活習慣
《もしなってしまったら》
→けいれんを起こしている筋肉をゆっくり引っ張る
手で引っ張る
ひざを伸ばして座り、足の指をすねの方へ曲げて、ふくらはぎの筋肉を伸ばします。ゆっくり行うのがコツです。
タオルで引っ張る
つま先に手が届かないときには、タオルを足の裏に引っ掛けてゆっくり引っ張りましょう。手で伸ばすより効果的。
座りポーズで伸ばす
痛む足の方を立てひざにして座り、両手を床につけて、ゆっくりとつま先の方へ体重をかけて筋肉を伸ばします。
《遠ざける生活習慣》
●6つのポイントを覚えて体を温めよう!
首、二の腕、手首、腰からお尻、おなか、太ももを日中も湯たんぽで温めるようにするのがコツです。
●タオルで温まるふるふるマッサージ
【お尻】お尻の肉の下にタオルを当てて、タオルの両端を持ち左右交互に引っ張って軽くゆすります。
【腰】腰まわりにタオルを当てて左右交互に引っ張り、腰まわりの肉を軽くゆするようにします。
●内側から体を温めてくれる食材
体を温める食べ物は、ねぎ、にら、かぶ、りんご、かぼちゃなどの野菜や果物、納豆、黒ゴマなど。寝る前の温かい飲み物による水分補給も忘れずに。
●芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)を服用する
こむら返りの漢方薬として知られる芍薬甘草湯。痛みがあったときに服用すると効果的。就寝時は枕元に。
達人のツボ:足以外にも「つる」ことがある!
こむら返りは筋肉がけいれんした状態なので、ふくらはぎ以外にも起こります。例えば、背中の「広背筋」という大きな筋肉や、脇の下の「腹斜筋」でも、伸びをした瞬間に起こることがあるのでご用心。つったときには筋肉を伸ばすストレッチを行うようにしましょう。
取材・文/安達純子
東京有明医療大学 保健医療学部鍼灸学科 教授
川嶋 朗(かわしま・あきら)先生
一般財団法人東洋医学研究所附属クリニック自然医療部門担当。日本予防医学会理事。北海道大学医学部卒。東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長などを経て2014年から現職。