電車の先発・次発、関東では「こんど・つぎ」表記って本当? 定番の地域ネタ、真面目に検証してみた
日本も意外と広い。地域によって慣習が違うことはよくあるが、鉄道の世界にもある。
電車に乗る時、駅の発車標などで「こんど」と「つぎ」の表示を見るとどちらが早いかわからない、というもの。特に関西などその他の地域から関東に来るとこの「こんど・つぎ」がわかりにくい、という感想をしばしば目にする。例えばこんな声だ。
「つぎとこんどでつぎの電車に乗ってたら、こんどが先にでてなんでやねん!となった」「関西人からするとこんどもつぎも同じ意味に聞こえてしまうんよ」「関東方式の『つぎ』『こんど』はよう分からん、どっちが先やねん」
しかし、そもそも「こんど・つぎ」がそこまで関東の風習と言えるのか、関東が「こんど・つぎ」なら他の地域では何なのか、そこから調べてみることにした。
「犯人」は西武と営団?
関西では、「こんど・つぎ」ではなく「先発・次発」を使うという。確かに阪急・南海・近鉄・京阪などでは発車標で「先発・次発」を使っており、「こんど・つぎ」はほぼ皆無と言ってよい。3本・4本と列車を表示できる場合、しばしば「先発」「次発」「次々発」と表示する。
また名古屋の名鉄でも「先発・次発」を使うことがある。
しかし、東京で各社の駅を巡ってみると、JRや大手私鉄の発車案内は、そもそも最近のものは「こんど・つぎ」「先発・後発」のどちらも使わず、シンプルに時刻を表示するだけのものが多い。
時刻だけを発車順に表示しているのは、主にJR東日本・小田急・東急・京王・京急。「先発・次発」が、京成の一部の駅や東京メトロ・都営地下鉄での採用例がある。今では関東も「先発・次発」が主流なのではないか?との疑問が生まれる。
そんな中で、「こんど・つぎ」を貫いているのが東京と埼玉を走る西武鉄道である。
西武新宿駅や池袋駅の大きな発車標では今も「こんど・つぎ・そのつぎ・そのあと」で出発順の列車を案内している。「こんど・つぎ」ではあきたらず、3本目・4本目の列車を「そのつぎ・そのあと」としているのも言われてみれば分かるが、直感的には理解しにくい。
西武の「こんど・つぎ・そのつぎ・そのあと」のインパクトは強烈で、関東流の「こんど・つぎ」の代表例として本やネットでよく取り上げられていた。その影響で実情以上に「関東は『こんど・つぎ』」のイメージが拡散されてしまったのではあるまいか。
その西武でも、近年改修された発車標では他社のように時刻順だけのものにしたり、「先発」の表示が出せるものができたりと、いずれは「こんど・つぎ・そのつぎ・そのあと」も姿を消すかもしれない。
「こんど・つぎ」のもう1例を挙げるとすれば、かつての営団地下鉄だろうか。
筆者の記憶では、東京メトロでは10年以上前、営団地下鉄の時代には発車標は「こんど・つぎ」だった。しかし近年の発車標は「先発・次発/1st・2nd」のタイプにリニューアルされたり、「こんど・つぎ」を使わず時刻だけの表示にするケースもがほとんどである。
東京の地下鉄は東京人のみならず上京する人でも乗車機会がとても多い。上京して地下鉄に乗ると、慣れない「こんど・つぎ」の表示を目にして、それが記憶に残っている人も、少なくない様子だ。
現在の東京メトロでは「こんど・つぎ」を目にする機会はほぼない。関東では「こんどの電車」「つぎの電車」になるという説は、確かに一部の路線(西武・営団)でよく使われていたが、関東でも「先発・次発」が浸透しつつある、というのが現状だろう。
そこには「こんど・つぎ」だとやっぱりわかりにくい!という声も影響しているかもしれない。
Jタウンネット編集部・大宮 高史