「いだてん」第22話「ヴィーナスの誕生」が放送されました。
これまでの「いだてん」振り返り記事はこちら。
前回のラストで女学生たちのスポーツ意欲に火をつけた四三は、「パパ」と呼ばれ慕われる存在に。
なかでもひときわスポーツの才能を見せたのが、黒島結菜さん演じる村田富江です。北香那さん演じる梶原とともにテニスで活躍し、また陸上の大会では数種目で優勝するなど、めざましい成長が見られました。もともとの才能もあったのでしょうね。
村田富江のモデル・田村富美子
実は「村田富江」という人が実在したわけではなく、ある人物がモデルになっていると思われます。それが軟式テニスのペアで活躍した田村富美子。同じく梶原のモデルと思われる梶川久子とペアを組んでいました。
Free-PhotosによるPixabayからの画像
ドラマでも魅力的に描かれた「村田梶原式ユニフォーム」というのは、実際には「田村・梶川式ユニフォーム」でした。ドラマと同じように百貨店(三越)で売り出され、大会で優勝した二人は一躍スターになりました。ちなみにそのテニスウェアは、当時世界ナンバー1女子テニスプレーヤーであったフランスのスザンヌ・ランランのものを参考にしてデザインしたのだとか。
ちなみに、素足でスパイクを履いて走ったというのも本当のこと。女子スポーツ界をけん引する革新的な存在として注目を集め、数々の雑誌や新聞に写真が掲載されました。まさにアイドルのような存在だったわけです。
金栗四三との出会い
富美子はドラマと同様、医師の父を持っていました。父と同じく医者である祖父に養育されましたが、ドラマと違うのはスポーツをすることを反対されなかった、ということでしょうか。むしろ祖父は丈夫に育ってほしいと積極的にスポーツをさせたようです。
富美子がテニスと出会ったのは小学6年生のとき。金栗との出会いよりも先にスポーツの楽しさを知っていたのです。富美子は東京女子高等師範学校附属高等女学校に進み、軟式テニスに明け暮れました。
金栗と出会ったのは大正9年のこと。当時竹早で教師をしていた金栗が、富美子のいるお茶の水女子高師附高女にスポーツ好きの女学生数人を連れて行ったときのことでした。ドラマのようにがっつりと先生・生徒という関係ではなかったようです。
ただ、金栗が女学生たちから「パパ」と呼ばれていたのは史実だそうですよ。
女子として初!国際テニス大会へ出場
特筆すべきは、富美子は女子として初めて国際テニス大会に出場し、優勝しているということでしょう。大正12年、日本・フィリピン・中華民国の3か国を主な参加国とする「極東選手権競技大会」に、富美子はテニス選手として参加したのです。
ただ、この大会に女子選手が参加するというのは前例にないことで、社会では随分議論されたようです。一時は富美子とペアの久子の参加も危ぶまれましたが、紆余曲折を経て参加。そして華々しく優勝したのでした。シングルスでも日本の金田咲子が優勝しています。
これだけ日本女子テニスの、そして日本女子スポーツの先駆者として活躍した富美子ですが、オリンピックに出場することになる人見絹江に比べると知名度は高くないようです。ドラマで村田富江が注目を浴びたことで、こういう女性もいたのだ、と広く認知されたのはいいことですね。
さて、この後の富美子の人生についてはドラマで追うとして……大正12年というと避けて通れないのが関東大震災です。予告編を見る限り、次回震災がじっくり描かれるようです。
関東大震災は四三たちにどのような影響を及ぼすのでしょうか?