『イカ天』が放送されていたのは、1989年2月から、1990年12月末まで、わずか約2年間。その間に、「BEGIN」「JITTERIN’JINN」「BLANKEY JET CITY」をはじめ、28組のアマチュアバンドをメジャーに輩出し、「イカ天ブーム」と呼ばれるほどの人気を博した。
「朝まだ暗いうちに家を出て、帰ったら深夜3時という生活でした。だから制作なんかできない(笑)。バンドも6年めだったから、『ストックをきちんと録音する』という音楽活動をしていました。
「たま」は、バンド名の決め方からして規格外だった。
「『たま』を一緒にやる前に石川(浩司)さんが、ぼくも含め音楽仲間に声をかけて、変な名前の即席バンドで演奏するライブをやったんです。ぼくと石川さんと柳原(陽一郎)さんのは『かきあげ丼』、もうひとつは『ハンバーグ弁当』だったかな。
『イカ天』初登場からずっと注目を集めていた「たま」のビジュアル面の一体感は、じつは偶然の産物だった。
「ぼくは、そのときどきに自分が好きなスタイルを、今日までずっとやってきています。石川さんのランニングシャツに短パンは、夏にツアーをしたときに、暑くなって全部脱いじゃうから、ツアー後に『ランニングでいいんじゃないの?』と話したのがきっかけ(笑)。
「ぼくはそもそも受け身な性格で、自分から積極的にいかないんですよ。『たま』では、石川さんと柳原さんが、とにかく “カマす” 人たちで、漫才コンビみたいなものでした。