「洗うときは優しく」「浸水が命」「炊けたらすぐ保存」……お米にまつわる新常識が満載!
1.米炊きは電気より直火
火力が強いとお米がしゃっきり、おいしく仕上がるので、炊くための道具としては炊飯器よりも土鍋、鉄鍋がおすすめ。もちろん炊飯器も最近は高機能な型が増え、毎日炊くうえでとても便利。ただ電力に制限があり、その範囲内でしか熱を伝えられないというネックも。その一方、直火だと短時間で沸騰し、早い段階から「蒸す」状態になるため、お米の「旨み成分」を最大限閉じ込めることが可能に。さらに対流を起こし熱が均等に伝わるため、芯までふっくら炊き上がる。
2. 洗い水はすぐ捨てよ
乾物であるお米は最初の水を一番吸収するので、1 回目の洗米にはで
きるだけきれいでおいしい「浄水」を使うことが大切。お米がかぶるくらい
まで水を入れたら素早くかき混ぜて、まずはすぐに水を捨てよう。長時間
洗い水に米を浸けたままでいると、汚れた水が米に戻り風味が損なわれる原因に。このとき水を張ったボウルにざるごとくぐらせて洗うと、一気に水を切れてスピーディーに作業できるので◎。ただしステンレス製のざるはお米に傷をつけ割れやすくしてしまうので、プラスチック製を使って。
3. 米は「研ぐ」ではなく「洗う」
お米は水が透明になるまでしっかり洗わなきゃ、と考える人も多いよう。で
もお米屋さんで使うような大きな精米機では、ほとんどのヌカを取り除ける
ため3 回ほど洗えば十分。洗うときは手先で優しく、お米同士をすり合わせながら「握って離す」を40 ~ 60 秒間繰り返して。力加減は指の表面で頭を軽くマッサージするくらいが理想。間違っても手のひらでグッと押しながら研がないように。力を入れ過ぎるとお米が割れて、旨みも一緒に流れてしまうので要注意を。
4. 水は軟水、量は米の1.1~1.2倍
お米を洗い終わったら鍋に入れ、好みの仕上がりに合わせて1.1~1.2
倍の水を加えよう。炊くときの水は軟水がベスト。硬水に比べて分子が細
かく、米粒に水が浸透しやすいことと、ミネラルや雑味が少ないため、お米本来の甘みや香りを損なわないというメリットがある。さらに浸水させることで、お米にムラなく熱を伝えることができ仕上がりもふっくら。ちなみに新米の場合は組織が軟らかいため、通常より少なめの水で炊くのがベター。
5. 面倒でも浸水ははしょるべからず!
米炊きで一番大事なのが浸水。それも冷たい水に浸けること。お米は冷水や氷水に浸水させることで、でんぷんを糖化するアミラーゼが活発になり、甘みや弾力がUPする。少なくとも夏は30 分、冬は1 時間、水に浸けた状態で、温度を低く保つため冷蔵庫に入れよう。実はお米は一定時間浸けると飽和状態になるため、極端な話、何時間浸けても問題なし。中には1日浸水させるなんていう飲食店もあるくらいだ。
6. 煮るも蒸らしも17分! ふたは決して開けてはならぬ
浸水まで完了したら、いよいよ炊飯。最近は粒感のあるごはん、外はしっかり中はふっくらな仕上がりがトレンドと言われている。まずはふたをして強火(鍋底にまんべんなく火が行き渡るくらい)で点火し、沸騰したら火を弱めて。土鍋の場合、火をつけてから消すまでトータル17分、 蒸らしも17 分がベストタイム。ちなみに熱を均等に巡らせようと、途中でお米をかき混ぜるといった行為はNG。ふたを開けると温度が急激に下がるため米がふっくらせず、味がぼやけてしまう。
7.米びつ、シンク下なんて論外! 保存は、冷たいところで空気を遮断
お米は精米した瞬間から酸化が始まって、においがし始め、品質がどんどん落ちていく。少しでも酸化のスピードを遅らせるためには、まず空気の遮断と、涼しく直射日光の当たらない環境が必須。また米粒は呼吸するために常にでんぷんを消費するため、空気に触れていると、どんどん甘みが逃げてしまう。呼吸をさせないためにも密封は重要であり、精米後の米は必ず食料保存袋やペットボトルに入れ冷蔵庫で保管しよう。
8. 仕上がりの決め手は熱伝導
米炊きで浸水と同じくらいケアしてほしいのが熱伝導。お米の芯までしっかり熱を与えることも、でんぷんをアルファー化させるうえで欠かせないフローのひとつ。熱伝導の具合は鍋の素材によっても大きく左右されるのでぜひ好みを見つけて。羽釜だとふっくら、土鍋はしゃっきり、鋳物は水分多めでもっちりな炊き上がりに。それぞれの特性を生かせるお米の品種やブレンド方法もあるので、ベストコンビ探しを楽しんでみては。
9. 炊けたら米はすぐ冷凍
実はお米は炊き上がった瞬間から劣化が始まる繊細な食べ物。ふっくら、モチモチの仕上がりをかなえる成分でんぷんは、炊き上がった後そのままにしておくと、糊こか化する前の状態に戻り、パサパサで固いごはんになってしまう。そんなでんぷんの老化を防ぐために、炊きたてのごはんは粗熱を取ったらすぐ、空気を含ませながらラップにくるんで冷凍しよう。冷めないうちに冷凍することで、おいしさや鮮度を閉じ込めた状態での保存がかなう。
10. 陰のヒーローはフライパン
今、話題になっているのが、フライパンを使った米炊き。浅いので圧力がかからずもっちりし過ぎないことや、径が大きいため直火でまんべんなく熱を通してくれるといった利点がある。10 分強で炊き上がるので、調理の時短にも効果的。ただし炊くときは鍋と同じくふたを忘れずに。蒸発しやすいので水はやや多めに入れるのが、おいしく炊き上げるポイント。
教えてくれたのは
小池理雄さん(三代目 小池精米店)
東京・原宿で80 年以上の歴史を誇る「小池精米店」の3 代目。五ツ星お米マイスターの資格をもち、様々な角度からお米の楽しみ方をサポートする。新刊『お米の世界へようこそ!』(経法ビジネス新書)が発売中。
illustration Stomachache.
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