愛犬が突然吐いた時や何度も繰り返す嘔吐は心配になってしまいます。嘔吐物の内容や色は、すぐに動物病院に連れて行くべきかの判断材料になります。犬の嘔吐には、様子を見て大丈夫な場合もありますが、命に関わる病気の可能性もあります。今回は愛犬の嘔吐物の色からわかる原因と対処法についてご紹介します。
犬が吐いた物の色別の原因と対応
犬が嘔吐した時は、何をいつから吐いたのか、繰り返して吐いているのか、何色なのか、嘔吐の他に異変はないかを観察することが大切です。犬が吐いた物の色の変化など、飼い主さんの気がついたことを獣医師に伝えることで原因を探ることができ、早期に適切な治療を行うことが可能です。
茶色の嘔吐物
茶色の嘔吐物は見極めが難しいので要注意です。その理由は、ドッグフードの色や消化の途中または未消化の食べ物が胃の中で混ざって茶色になり、その胃の茶色の内容物を吐いている場合と血液が混ざって吐いたものが茶色となっている場合があるからです。
嘔吐の量や繰り返す回数にもよりますが、ドッグフードや未消化だった胃の内容物を吐いた場合は、内容物を吐ききってしまうと茶色ではなくなるケースが多いです。嘔吐を繰り返している場合、嘔吐物が茶色いまたは茶色に近い色、赤黒い色と感じたら動物病院に相談することをおすすめします。
ピンク色、赤色の嘔吐物
吐いたものにピンク色、赤色が混ざっている場合には、口の中や食道、胃、腫瘍などからの出血の可能性もあるため注意が必要です。
血液が混ざった嘔吐は動物病院に行き、獣医師の診察を受けましょう。持参できるようであれば嘔吐物を持って行くか、写真を撮って先生に見てもらうと、症状が伝わりやすいです。
濃い赤色、赤黒い、黒い嘔吐物
真っ赤な鮮血の色や黒い嘔吐物は血液だと思ってほぼ間違いありません。胃潰瘍や腫瘍、胃の粘膜からの出血などが考えられます。特に大量に吐いた場合は緊急性が高いので、すぐに動物病院を受診しましょう。
黄色、緑色の嘔吐物
人間と同じく犬の胆汁は、黄色や緑色をしています。空腹によって胆汁が逆流した場合や、胃腸の働きが悪くなっていると黄色や緑色の液体や泡状の胆汁を嘔吐する場合があります。
空腹による胆汁の嘔吐の場合は、食事の時間の見直しや1回のご飯の量を減らして、回数を増やすと嘔吐がおさまります。
透明、白い色の嘔吐物
水、唾液、胃液は基本的に透明なので、吐いたものが透明や白い色だった場合は、お水の飲み過ぎや空腹、ストレス、胃酸過多、逆流性食道炎が考えられます。透明や白い液体だけでなく、白い泡状の嘔吐の場合もあります。
嘔吐と思っていても、絶えず透明の液体がダラダラと口から垂れている場合は、よだれです。愛犬がどこかに痛みを抱えているか、中毒の可能性もあるので注意して観察をし、様子によっては受診しましょう。
よくある犬が吐くケースと嘔吐物について
犬は比較的良く吐く動物ですので、吐いたからといってすぐに慌てる必要はありませんが、中には病気やストレス、中毒が原因で吐いている可能性もあります。犬が吐くタイミングや吐瀉物(としゃぶつ)をしっかり見極めて対処をする必要があります。
犬の嘔吐の対処方法は、基本的には半日くらい飲まず食わずで、安静に過ごさせましょう。愛犬の吐き気がおさまっているのであれば、水や消化の良い物から少しずつ与えてください。お腹が空いているだろうといきなりたくさん食べさせてしまうと、また吐いてしまう可能性があります。
また、子犬の激しい嘔吐の場合は、脱水を引き起こしやすくなります。月齢の若い子犬の脱水は命に関わるので、皮下点滴で栄養を補給する獣医師の処置も必要となるため、自己判断は禁物です。子犬、成犬、シニア犬に限らず、危険と思われる吐き方をした場合は、迷わず動物病院へ向かいましょう。
朝になると黄色い液体を吐く
愛犬が朝になると黄色を帯びた液体や泡状の物の吐くという症状は、多くの飼い主さんが抱えるお悩みかもしれません。黄色、緑色の嘔吐物には胆汁が含まれており、空腹時に胃液と混ざって嘔吐をしている可能性があります。
愛犬が元気でご飯をしっかり食べていて、便や尿に異常がなければあまり心配する必要はありません。しかし、毎朝繰り返すといった場合は、朝ごはんの時間を早くするか、夜ご飯の時間を遅めにする、食事の量を減らして回数を増やす、間食や少量の夜食を与えるといった対処方法で、黄色い液体の嘔吐がおさまることが多いです。
早食いが原因よる嘔吐
食べ物を一気に食べる癖のある犬は、ごはんをどんどん飲み込んでしまい、食後に嘔吐をすることがあります。
早食いによる嘔吐の場合には、粒の形状や大きさを混ぜて与える、食事の1回分の量を減らして、少量を1日数回に分けて与える、消化しやすいようにふやかして与えるのが一般的な対処法です。
その他にも食べるスピードを減らす工夫のあるような早食い防止対策の食器を利用して一気にごはんを食べないように抑制することも効果的です。
フードや食材が合わない
ある特定のフードや食材、サプリメントを与えた際にだけ、嘔吐をする場合があります。初めて与えたときだけでなく、これまでは問題なかった場合でも、加齢や体調によって、嘔吐が起きる場合あります。
食物アレルギーを引き起こす食材はさまざまで
・小麦などの穀物類
・乳・牛乳
・鶏肉や牛肉などの肉類
・大豆
・卵
・きゅうり、すいか、りんご、バナナ
などがあげられるうえ、アレルギーを起こす食材は1つとは限りません。
最近与えたフードや食材、サプリメントをメモしておき、疑いのある原料が含まれないご飯やおやつ選んで、6~8週間与えてみましょう。
その他にも、フードの粒の大きさが愛犬と合っていないことが原因で消化不良を起こしたり、早く消化しすぎたりすることによって、空腹時間が長くなり、嘔吐してしまうことも考えられます。
嘔吐の原因が食べ物の可能性が考えられる際に、このような対策を行っても改善がみられない場合には動物病院に相談することをおすすめします。
乗り物酔いが原因の場合
乗り物が苦手な犬は、緊張や不安のストレスで、車の移動の度に吐いてしまうので、飼い主さんの車内の吐瀉物のお掃除も大変です。車に乗る直前は食事を与えない、少し運動してストレスを発散させてから車に乗せる、ウンチとオシッコをさせてから車に乗せる、途中でこまめに休憩を入れながら走行することも対処方法になります。
乗り物酔いが原因だと明確に分かっているような場合には、事前に動物病院で相談して酔い止めの薬を処方を常備薬としてもらっておくと、嘔吐を予防できるので安心です。子犬の車酔いは、成犬になって胃やからだが大きくなると吐かなくなる犬もいます。
高齢の嘔吐の場合
愛犬が高齢になり、明らかな食欲不振などはないが、なんとなく食欲が落ちた、吐く回数が増えた、体重が減ってきたなど、少しでも気になることがあれば、病気の早期発見の為に、動物病院に相談してみると良いかもしれません。
危険な嘔吐 すぐに動物病院に行った方が良い場合
愛犬が急に吐いた時、飼い主さんは驚いてしまうでしょう。すぐに動物病院に連れていくべきなのか、落ち着くまで少し様子をみるべきなのかの判断は難しいです。
嘔吐の他に痙攣や震えを起こしている、ぐったりして意識がない、歯茎が白いといった明らかな異変がみられる場合はもちろん、どうしたら良いのかわからない場合は、一度動物病院に連絡をしてアドバイスをもらうことも、判断の1つです。開腹手術が必要な異物誤飲や胃拡張、胃捻転症候群といった緊急性の高い嘔吐の場合は、症状を伝えてから動物病院に向かうことで、病院に到着する間に手術の準備などを整えておいてもらえるかもしれません。
下痢を伴った嘔吐を繰り返す場合
愛犬が下痢を伴った嘔吐を繰り返す場合は、何らかの病気が関係している可能性があるので注意が必要です。原因としては、胃腸炎や大腸炎、膵炎といった内臓系の病気や、ウイルス性疾患などが挙げられます。
コロナウイルス性腸炎、レプトスピラ症、パルボウイルス腸炎はワクチン接種で予防できる感染症ですが、感染すると嘔吐の症状がみられることがあります。特に緊急性の高い下痢と嘔吐は「パルボウイルス腸炎」で、最悪なケースでは、1〜2日で死に至ることもある危険な病気です。ほとんどが子犬に多い病気ですが、ワクチン接種をしていない子犬で嘔吐やトマトケチャップの様なウンチが出たらすぐに動物病院に連絡を入れて下さい。
愛犬の元気がない、ぐったりしている
愛犬の元気がなく、明らかにぐったりしている場合は、緊急性が高い可能性があります。胃拡張、胃捻転症候群ではそのまま放置すると倒れて動けなくなり、内臓の壊死や多臓器不全で死に至る危険な病気です。
嘔吐を繰り返して元気や食欲がない場合は、発熱を伴っているケースもあります。いつも元気な犬がぐったりしている時はどこかに異常がある可能性が高いので、なるべく早く動物病院で診察を受けましょう。
多頭飼いをしている環境で、普段元気な犬が嘔吐をしてぐったりしている場合、同じ空間で飼育している犬達も同じ症状に見舞われる可能性もあります。こういった面からも獣医師の診断を早期に受けることをおすすめします。
中毒の可能性がある場合
ネギ類、チョコレート、タバコなどの中毒を起こすものを誤飲して吐いている場合は、すぐに吐き出させた方が良いこともあります。どれくらい食べたのかわからない場合や誤飲の量によっては一刻を争う危険な状況ですので、すぐに動物病院に連絡して指示に従いましょう。
吐いたものに血が混ざっている場合
吐いたものに明らかに血液(赤い血、赤黒い血)が混ざっている場合は緊急性が高いので、すぐに病院に行ったほうが良いでしょう。口の中や食道、胃、その他の内臓からの出血や腫瘍による出血などの可能性もあります。
水を飲んでも吐く場合
ごはんを食べても水を飲んでも吐く場合には、消化管が閉塞していたり、胃捻転の可能性もあります。命に関わる危険な状態であるので、一刻も早く獣医師による適切な処置が必要です。
胆嚢粘液嚢腫
嘔吐の原因が胆嚢粘液嚢腫によるケースも稀にあります。胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢内の胆汁が泥のような状態になって、胆嚢内部に張り付くことで、食欲不振や嘔吐、黄疸の症状が出ることがありますが、発見しにくく見逃されがちな病気です。
まとめ
愛犬が嘔吐をした時や頻繁に嘔吐を繰り返す場合、病気なのか病気でないのか、病院に行くか様子をみるかで悩んだときは、自己判断はせず、かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
犬の嘔吐は、状況によっては危険を伴うことも考えられ、今回紹介した他にも腎臓や肝臓、すい臓の病気で犬が吐くこともあります。いつもと様子が違う場合は早めに動物病院を受診しましょう。
いずれのケースも、愛犬の普段の食事が愛犬の健康のベースとなります。
いぬのきもちねこのきもちフードサポートなら、愛犬の健康状態に沿ったフード選びを獣医師に相談できるので、活用を検討してみてはいかがでしょうか。
いぬのきもちフードサポート
【獣医師が解説】犬が吐いた!症状や吐瀉物の色から原因を徹底解明!
【獣医師が解説】愛犬が下痢と嘔吐を併発?それぞれの原因や対処法
監修/いぬのきもち相談室獣医師
文/maki
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。