東京都医師会の尾崎治夫会長が8月24日夜、自身のFacebookを更新し、新型コロナウイルス対応をめぐって臨時国会が召集されないことに対して「国は動く気配がありません」と苦言を呈した。
また「国に頼ることは、もう諦めようと思います」とも吐露。尾崎会長はこれまでも新型コロナ対策のために臨時国会を開くよう強く求めてきていたこともあり、失望感が滲み出ている。
そもそも尾崎会長は7月29日の記者会見で「言いたいことを言わせてもらう」として、新型コロナウイルス対策には「新型インフルエンザ等対策特別措置法」などの法改正が必要と強く訴えていた。
この際の会見では、「いまのやり方では限界がある」として、エピセンター(震源地)から感染が拡大していくなか、休業をお願いするだけでは「日本全体がどんどん感染の火だるまに陥っていく」と述べていた。
そのうえで、法的拘束力のある休業要請と休業補償をセットにし、それをエピセンター化している地域に限定し、適用することができるような柔軟な特措法改正が必要とも指摘。
休業中に地域に保健所や自治体の能力を集中させ、一斉のPCR検査を実施することで感染拡大を防ぐ必要があるとして、感染症法改正の必要性にも言及した。
そのうえで、「日本全国に広がる火種を消していく唯一の方法」であるとも述べ、以下のように強いトーンで国会の召集を呼びかけていた。
「東京都医師会から本当にお願いしたい。いますぐに国会を召集して、法改正を検討していただきたい」
「ここ何日間の流れを見てますと、人口比でいえば東京をはるかに上回る感染確認者が愛知や大阪、福岡あるいは沖縄でも出ていますので、いま夏休み中だからどうこうではなく、ぜひ国会を開いて議論していただきたい」
「私はいまが、感染拡大の最後のチャンスではないかと思っています。いまが2波だとすれば、この2波を抑えるにはそういったことが本当に必要なのではないかと、真剣に思っています」
臨時国会はいつ召集されるのか?
臨時国会の召集をめぐっては、新型コロナ対策などの議論のため、立憲民主党などの野党が7月31日に、「臨時国会召集要求書」という書面(写真上)を衆議院議長に提出している。
要求書は131人の議員名が連名で記されており、憲法53条(下記)で記されている内閣の臨時国会の召集を定めた条文の用件を満たしていることになる。内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。 いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。しかし現状、政府与党は召集の要望に応じていない。安倍晋三首相も「臨時国会についてはコロナ対策を含め諸課題を整理した上で与党としっかり相談をした上で対応していきたい」と述べるに留まっている。
例年9月下旬ごろには臨時国会が召集されている。しかし、内閣改造や自民党役員人事も重なることもあって、「10月以降」とする報道もある。さらに安倍首相自身の「健康不安説」も流れている。
なお、共同通信が8月22〜23日に実施した全国電話世論調査では、臨時国会を「速やかに開くべきだ」が70.8%に達し、「速やかに開く必要はない」の22.6%を大きく上回っている。
尾崎会長「状況は悲観的」
慶応大病院を出る安倍晋三首相(8月24日)
こうした状況を鑑みてか、尾崎会長は8月25日夜、Facebookに自らの思いを公開投稿。安倍首相の体調に言及しながら、「国会を開くことには、さらに消極的になったような気がします」などと述べた。
そのうえで、「私が、記者会見でアピールしたことで殻を閉じてしまい、むしろ事態は、後退してしまったのでしょうか」とも指摘。こう思いを綴っている。今のコロナ危機を考えると首相代行を立ててでも厚労大臣やコロナ担当大臣が協力すれば、法改正の議論はできるはずなので、是非、国会を開いてほしいと思います。
そして、個人攻撃はやめて、与野党一致して、改正すべき法案を速やかに提出し、いがみ合うことなく法案を成立させてほしい。そう思っています。しかし「状況は悲観的」であるとして、「国に頼ることは、もう諦めようと思います」とも吐露。
「コロナは待ってくれない」として、東京都医師会としては都と協力しながら、「秋冬の、インフルエンザに重なるさらなる流行に備えて、現行法の中でできる対策を考え、都民のために頑張ることに重点をおこうと思います」と記している。