新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、もしも災害が発生したら…。
身の安全を守るため、避難をすることは重要だ。だが、同時に避難所は密集、密閉、密接した空間になりやすく、感染が広がってしまうリスクがある。
ウイルスの感染拡大を防ぎながら、身の安全を守るにはどのような対策が必要なのか。専門家に避難所運営のポイント、そして避難所へ避難する上でのポイントを聞いた。
鴨川市の避難所では対応も
千葉県鴨川市で4月13日午前、大雨によって土砂災害の危険性が高まったため34世帯80人に避難勧告が出された。
鴨川市危機管理課によると、避難所を開設する際、新型コロナウイルスの感染予防策として新たに以下の点を取り入れたという。
・手洗い、うがい、消毒、咳エチケットの呼びかけの徹底
・避難者一人あたりのスペースを十分確保する
・避難所をこまめに換気する
・避難所では保健師が常駐し、検温と問診による体調管理を行う
なお、NHKの報道によると今回、実際に避難所を利用した人はいなかった。
避難所運営、5つのポイント
公衆衛生の専門家、浜松医科大学の尾島俊之教授は「鴨川市では、重要なところをおさえながら対応されていると思いました」と評価する。
「一般的な避難所では咳、くしゃみ、会話などによる、つば飛沫が人から人に飛ぶことによる飛沫感染と被災者に配る食品や物品、共用の場所等にウイルスが付くことによる接触感染のリスクが大きいと考えます」
避難所の運営者が新型コロナウイルス感染を防止するために必要な対応策としては、以下の5点が重要だと尾島教授は説明する。
(1)ホテルや旅館等や、指定避難所以外で避難所として活用できる集会場や民間の施設などを含めて、可能な限り多くの避難所を開設して、避難者が密集せずに避難できるようにする。
(2)避難が必要な人の人数や、各避難所の過密状態等を把握して、調整を行う。
(3)避難所の中で、テープなどを使って、各避難者が使うスペースを分けて、避難者同士が一定の距離を保てるようにする。
(4)避難者の健康状態を、避難所に入る時点や、その後に定期的に把握する。症状がでた人は、個室や専用スペースにする。
(5)十分な換気、清掃、ドアノブなど多くの人が触れる場所の定期的な消毒など。
また、話をするときは互いにマスクをして距離を取る。食事や物の配布は時間を分けて、人が集まらないようにする。スタッフが物品を配る時や被災者に配る物品に触れる前には手を消毒する。マスクには触れない、触れるときにはその前後に手を消毒するといった対応を取ることも望ましい。
避難したとき、気をつけるべきポイントは?
どのような場合、避難所を利用するべきなのか。被災のリスクと感染のリスクとを天秤にかけ、判断をすることが避難をする人々にも求められる。
「避難所での避難には一定の感染リスクがあることから、ハザードマップなどを確認して、自分の家が実際に危険なエリアである場合、また住み続けることが困難な被害がある場合には避難をするのが良いでしょう」
尾島教授は避難所だけでなく「親戚や友人の家などで、比較的広さに余裕があるところに避難が可能な場合は、そうした場所へ避難するのも良い」とした。
また、避難をする際には持病の薬なども忘れずに持っていく必要がある。
「避難を行う際には持病の薬やお薬手帳、入れ歯、メガネ、補聴器など、自分専用のものでないといけないものは、持って行く必要があります。スリッパ、着替え、タオル、歯ブラシなども持って行くと良いでしょう」
「大きな規模の災害が発生した際には、水、食料、マスク、消毒液、ウエットティッシュなどを避難に差し支えない分量で持っていくこともあり得るでしょう」
同時に健康を損なわないための工夫も不可欠だ。
天気の良い日は外に出て、適宜距離を置きながら散歩や体操をする、心の状態にも気を付けて相談するといったことも重要だと尾島教授は強調した。
避難所、過密になるのを避けて
内閣府は4月1日に「避難所における新型コロナウイルス感染症への対応について」という通知を、4月7日には「避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について」という通知を出して避難所においても新型コロナウイルスへの対策を行うよう呼びかけている。
「避難所が過密になる状況を避けるという目的がある」と内閣府の担当者は語る。
そのために避難所そのものの数を増やすことや、親戚や友人宅等への避難の検討も行うよう呼びかけた。
どういった人であれば行政の避難所ではなく、親戚や友人宅に身を寄せることを考えた方が良いのか、「現段階で、その具体的な住み分けがなされているわけではない」。
だが、「親戚や友人宅が安全なのかどうかをまず確認し、そうした場所に避難することも検討していただきたい」と説明する。
「特にご高齢の方やお子さんをお持ちの方にとっては避難所の環境は快適なものであるとは言えません。少しでも快適な環境でお過ごしいただくためにも、こうした呼びかけをしています」
内閣府は今後、自治体に対してより具体的な対応策の周知を呼びかけていくことも検討している。