「プーチン大統領の娘が新型コロナウイルスのワクチンを接種して死亡した」という、根拠不明の情報が世界中で拡散している。
BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施したが、これは、根拠不明な情報だ。発端はカナダのサイトとみられているがその実態は不明で、注意が必要だ。
この情報は8月15日、「Toronto Today」と称するサイトに掲載された。
プーチン大統領の娘・カテリーナさんがロシアで開発された世界初の新型コロナウイルスワクチンを2回注射したのち、副作用により、モスクワで亡くなったとする記事だ。
この「Toronto Today」はカナダ・トロントに拠点を置く男性によって運営されているというが、サイトは今年7月8日にオープンしたばかりで、その実態は明らかではない。
また、記事上での情報源は「ロシアの内部の情報筋」とされている。当初(アーカイブ上では世界標準時8月16日午前8時39分時点)はそれ以外のソースは示されていなかったが、その後(アーカイブ上では世界標準時で8月16日午後7時59分時点)は、YouTubeにアップされていた、タロットカード占いの動画のリンクが加えられていた。
この動画はすでに削除されているが、タイトルは「プーチンの娘がワクチンで死亡」とされている。動画には免責事項として「提供する情報はすべてタロットで見たストーリーを通じたもので、正確な場合とそうでない場合がある」とも記されている。
いずれにせよ、公式な情報やニュースサイトでは、関連した情報は一切アップされておらず、信憑性が極めて低いものであるといえるだろう。
プーチン氏を支持する論調で知られるロシアのテレビ局「Tsargrad TV」は8月17日、この情報を「虚偽」と断じている。
動画も拡散しているが…
この情報は、世界中のSNSで大きく拡散。計測ツールBuzzSumoによると、TwitterやFacebookで3万7千以上シェアされている。
日本のSNSでも「これで習近平に復習しないといけないな」(原文ママ、4000以上リツイート)などいった指摘とともに、多く広がっている。
さらに5ちゃんねるに掲載されたものがまとめサイトに転載され、そうした記事が広がりを見せていることもわかる。
また、この情報に加えてプーチン大統領の娘が「ワクチンを打っている場面」とする動画(写真上)も拡散しているが、これも誤りだ。そもそもこれは、7月の臨床試験に参加したボランティアの様子を撮影したもの。
ネット上ではこれがプーチン大統領の娘だとして、「4日前は元気そうだった」などと広がっているが、ロシア・トゥデイが7月20日に報じていることからも、誤りであることは明確だ。
なお、BBCによると、プーチン大統領は自身の娘がワクチンを打ったことに以下のように言及している。
「最初の接種のあと、38度まで熱が上がったものの、翌日には37.5度になり、それだけだった。2度目の接種ではわずかに熱が上がったが、そのあとは平熱に戻った」
BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。
ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知し、そのレポートを参考にしました。
また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。
正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。UPDATE
一部誤字を修正しました。
2020/08/19 19:12
UPDATE
当初、当該記事のソースについて「YouTubeにアップされていた、タロットカード占いの動画が貼られていた」と記していましたが、アーカイブなどから当該記事の公開直後にはタロットカード占いの動画へのリンクは存在せず、後から加えられたものである可能性が高いことがわかりました。訂正いたします。
2020/08/20 09:36