現代の避妊方法
初期の避妊方法の1つである、 外出しは、あなたにもなじみがあるかもしれない。「最も古くから伝わる避妊方法の1つは、実際には聖書の中で膣外射精として説明されているペニスを抜去する避妊法でした」と、メアリー・ジェーン・ミンキン博士はBuzzFeed Healthに語った。ミンキン博士はイェール大学医学部で産婦人科および生殖科学の教鞭をとる臨床学教授だ。
しかし、現代人と同じように、私たちの祖先は射精前にペニスを抜き出す方法だけに頼りたくなかった。そこで、妊娠を避けるための他のアイディアを思いついた。こうした昔の避妊方法の一部は常軌を逸しているように見えていても、多くは子宮頚部を遮断する、精子を殺す、排卵を妨げるといった、私たちが現在使用している避妊方法と同じ論理に基づいていた。
そこで、今回は最も常軌を逸した昔の避妊方法を紹介しよう。覚えていてほしい。どれも絶対に試してみてはならないことを……。これらの避妊方法は理由があって過去に葬り去られたのだ。
真面目な話、この記事で説明する時代遅れの避妊法はどれも使用しないことをお勧めする。効果的な避妊計画については、常に医師や信頼されている医療従事者に相談すること。
ワニの糞で子宮頚部を遮断する。
はるか昔、紀元前1850年、 エジプトの女性たちは、性行為の前ワニの糞を持ってきて子宮頚部のそばまで挿入することで精子の進入を防いだ。通常はワニの糞にハチミツを混ぜて使用した。なぜなら、ハチミツには抗菌特性があることが知られており、またワニの糞が子宮頚部のそばに付着するのに役立ったからだ。
この方法にどのくらいの効果があるか分からないが、何千もの間、歴史的記録として文書に残されてきたという事実は、この方法には恐らく問題がなかった、あるいは少なくともかなり人気がある方法だったことを示唆している。そうは言っても、性行為の前にワニの糞を自分の膣に突っ込むと、50通りの感染症を招きそうな気がする。
ハチミツ「タンポン」を挿入する。
古代エジプトの女性たちは、最古のバリア方法のような手段も利用していた。ハチミツで作られた膣坐剤のことだ。これらの方法は、紀元前1550年頃に世界最古の医療テキストであるパピルス古文書の中で説明されている。
女性たちはハチミツとアカシアの葉を混ぜ、それを膣管の内側に塗りたくり、殺精子剤として機能させたり、毛糸や糸くずを(あたかも古代のタンポンのように)束ね、子宮頚部のそばに置いた。ワニの糞を使った方法とは異なり、少なくともこの方法はずっといいにおいがする(そしておいしい)だろう。
石や青銅の欠片を膣に埋め込む。
膣用坐薬は基本的には膣に挿入して子宮頚部を遮断したり、精子を殺すための物体、装置、あるいは坐薬だ。ペッサリーや子宮頚管キャップと似ているが、紀元前200年頃のローマ帝国では、それが石や青銅といった固いもので作られていたのだ(上の膣用坐薬のように)。
ギリシャの医師、ディオスコリデスは著作である伝説的医学書、 『薬物論』(Materia Medica) の中で膣用坐薬について記し、膣用坐薬をペパーミント・オイルに浸すことで麻酔効果が得られる可能性があると女性たちに教えた。なぜなら、膣用坐薬に効果があったとして、恐らく女性にとって性交中の痛みはかなりのものだからだ。
性行為の後に水銀をグッと飲む。
古代中国では、売春婦や愛妾は性行為の後に、妊娠しないように排卵を妨げる 液体水銀 を飲むか、錠剤の水銀を服用するよう勧められていたと信じられている。水銀が避妊に効果的かどうかは疑わしいが、金属水銀の摂取による、腫瘍、頭痛、腎不全、死亡…といった副作用を考えると、おそらく人気の避妊方法としては長続きしなかったことが想像できる。
スクワットとくしゃみで精子を押し出す。
古代ローマの婦人科医、ソラノスは膣外射精の責任は女性たちが持つべきだと考えていた。その方法とは、パートナーが射精していると思ったときに女性が息を止め、それから性行為後にすぐに立ち上がり、スクワットとくしゃみを繰り返し、自分の膣を洗浄するというものだった。
ヤギの膀胱でペニスを包む。
紀元前700年頃から、古代ローマ人はヤギやヒツジ、その他の動物の膀胱でペニスを包んで性交していた。どうやら、古代ローマ人は公衆衛生という概念に投資しており、「女性たちを保護」し、梅毒のような性感染症の感染を防止するためにこの方法を考案した。
ヤギの膀胱から作られたコンドームは本来、性感染症から身を守るためのものだったが、結局のところかなり効果的な避妊方法であることが分かり、中世期に入ってもこの方法が使用されていた。
膣にシダーとフランキンセンスの精油をこすりつける。
精油といえばポプリや芳香剤のように聞こえるが、このナチュラルな軟膏混合物は、4世紀頃の古代ギリシャでは人気の避妊方法だった。女性たちはシダー油とフランキンセンス油、そして時には鉛を混ぜたものを自分の膣や子宮頚管の近くにこすりつけて妊娠しないようにした。この精油の混合物が殺精子剤の機能を果たすと信じられており、アリストテレスの初期の医学書でも実際に推薦されていた。
ペニスにシルクペーパーで作った帽子をかぶせる。
12世紀頃、中国人は「陰茎亀頭コンドーム」というものを使用していた。これは最初のコンドームができるずっと前にあったもので、基本的にはペニスの尖端(陰茎亀頭)部分だけを覆うものだ。
中国の人々は、絹織物や紙の製造技術を生かしてシルクペーパーでコンドームを作り、それを潤滑効果と殺精子目的で油に浸した。それを性行為中にペニスの尖端にかぶせることで精子をキャッチし、子宮内への進入を防いだのだ。「こうした円錐状の油紙は、子宮頚管キャップのような機能も果たしました」と、ミンキン博士は語る。
カメの甲羅をペニスにかぶせる。これ本当の話。
世界中の他のコンドームの前身となった方法とは異なり、13世紀の日本で使用されていたこの方法はやや……柔軟性に欠けた。日本人は カメの甲羅 で作った硬いコンドームをペニスにつけて、女性の子宮に精子が入るのを防いだ。この方法はクリエイティブな避妊方法としては優秀賞がもらえるが、何とも……イタイ。
麻製のコンドームを小さなリボンで固定する。
私たちが知っている現在のコンドームという意味では、コンドームを初めて説明したのは、14世紀後半に活躍したイタリア人の解剖学者、ガブリエレ・ファロッピオ だ。初めて卵管(彼の名をとり、ファロピウス管と呼ばれている)を説明したことで最もよく知られている。
ファロッピオは、当時依然としてヨーロッパを荒廃させていた梅毒の蔓延を防ぐのに役立つこのアイディアを考え出した。彼の考案したコンドームは、基本的には麻でできた鞘をペニスの尖端に装着し、根元の部分でリボンを使ってしっかり結ぶ、というものだった。ちっちゃな「お帽子」のような形、ちょっとかわいいでしょ?
酢で洗浄する。
16世紀頃のエリザベス朝イングランドでは、女性たちは性器を洗い、酢で膣洗浄するよう勧められていた。ちょうど私たちが掃除に酢を使うのと同じように。
「女性たちは、性行為前に膣にその他の強い収斂剤を入れることもありました。それにより精子を殺傷できると信じていたからです」と、ミンキン博士は言う。酢に浸したスポンジは、どうやらエリザベス朝の売春婦の間では人気の選択肢だったらしい。
半分に切って搾ったレモンを膣に押し込む。
レモンを半分に切って搾ったレモンの外皮が小さなキャップになると想像してみよう。17世紀中頃から、女性たちは性行為前に自分の膣にこれを挿入し始めた。精子が子宮頚部を通じて子宮に入るのをレモンの外皮が防ぎ、酸性の果汁も精子を殺傷してくれる、と考えられていた。
「子宮頚管を遮断するという、レモンの子宮頚管キャップのメカニズムは、1927年に発明されて以来、現在でも殺精子剤と合わせて 避妊方法として使用されているゴム製の子宮頚管キャップと同じ概念に基づいています」と、ミンキン博士は語る。
「カサノヴァは、この方法を大勢の愛人たちに使用していたことで実際に知られています」と、ミンキン博士は言う。ジャコモ・カサノヴァは半搾りにした半切りレモンを用いることについて、自身の有名な18世紀の回顧録に記している。レモンの果汁で膣がメチャメチャひりひりするかどうかについては、まあ、過去の歴史に葬り去りたいものだろう。
動物の腸。
そう、動物の腸というと、特に性的な文脈では、気色が悪いもののように聞こえるかもしれないーーが、動物の腸は実際に現代のコンドームの前身なんだよ、諸君。これが使われるようになったのは、ルネッサンス時代のヨーロッパで、性感染症の防止と王族で非嫡出子が誕生するのを防ぐために使用された。「19世紀にゴム革命が起こる前は、人々は魚や羊の腸をペニスの周りに巻いて精子をキャッチしていたのです」と、ミンキン博士は語る。
ペニスを動物の内臓で包むという発想はセクシーとはとても言えないが、この方法の背後にある論理は、21世紀の現在私たちが依然として頼りにしているコンドームの誕生につながった。それに加え、人々はより自然な、ラテックスを使用してないコンドームの選択肢として、ラムスキン・コンドームを今でも使用している(が、ラムスキン・コンドームは性感染症を防止しない)。
こうしてみると、避妊方法はずいぶんと進歩してきた。
大勢のアメリカ人は、近代的な避妊方法(コンドーム、ペッサリー、およびピル)の使用が処罰対象となる犯罪だったため、1950年代になっても代替法や時代遅れの避妊法を使用しなければならなかったことには言及しておかねばなるまい。実際、ほぼ1世紀前の1873年に成立した コムストック法の下では、アメリカ国内において受胎調節は違法だった。
「受胎調節は1965年にグリスウォルド対コネチカット州事件で『既婚夫婦の受胎調節使用を政府が禁止することは憲法に違反する』という判決を最高裁判所が下すまで、正式には合法ではありませんでした」と、ミンキン博士は語る。つまり正確には、安全で効果的な避妊方法を私たちが手に入れてからまだ50年そこらしか経っていないということなのだ。
この記事は英語から翻訳・編集しました。