JR静岡駅前で衣服を脱いで下着姿になったとして、静岡県警は7月8日、公然わいせつの疑いで女性(43)を現行犯逮捕した。警察の取り調べに、女性は「暑かったから脱いだ」と供述しているという。
報道によると、女性は7月8日午後1時40分ごろ、JR静岡駅前の広場で突然、下着姿になった。ブラジャーとパンツだけを身に着けている姿を通行人が見つけて、警察に通報した。女性の足元には、ポロシャツとズボン、サンダルが脱ぎ捨てられていた。
スポーツ報知によると、県警は「このままではエスカレートする可能性があったので、逮捕という判断になった」と説明しているという。はたして、ブラジャーとパンツだけを身につけている姿になると、「公然わいせつ罪」になのだろうか。奥村徹弁護士に聞いた。
●下着姿になるだけでは「わいせつ」といいがたい
「公然わいせつ罪(刑法174条)の『わいせつ』とは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいいます。
しかし、抽象的な表現であり、具体的にどのような行為が『わいせつ』なのかは明確でありません。
ただ、刑法の注釈書では、乳房露出行為は『わいせつ』でないとするものが多く(ポケット注釈刑法、条解刑法)、それにしたがえば、今回のケースのように、下着姿になるだけでは、『わいせつ』とはいいがたいと思います」
そもそも、どんな場合に「公然わいせつ罪」にあたるのだろうか。
「典型例としては、ストリップ劇場でことさらに陰部を露出する行為や、性交または性交類似行為が挙げられます。最近では、オンラインチャットで、陰部露出したり、自慰行為したりする行為が検挙されています」
スポーツ報知によると、「このままではエスカレートする可能性があったので、逮捕という判断になった」ということだが、今回の警察の判断に問題はなかったのだろうか。
「下着姿では、公然わいせつ罪は成立しませんので、この罪での現行犯逮捕は結果的に失当だったと思います。『わいせつ』に至らない場合でも、次のような行為には罰則があります。
・公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者(軽犯罪法1条20号)
・公共の場所又は公共の乗物にいる人に対して、卑わいな言動をすること (静岡県迷惑行為等防止条例3条1項5号)
これらを適用すべきであり、特に逃走する様子がなければ、交番に任意同行すれば足りたと思います」
【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://www.okumura-tanaka-law.com/www/top.htm