「結婚へは歩け。離婚へは走れ」。ユダヤ教に伝わる格言だという。身をもって納得できる人が現代でも多いからだろうか。女優・前田敦子さんの離婚協議が報じられると「スピード結婚だったから、スピード離婚になった」といった反応が多くみられた。
前田さんが俳優・勝地涼さんと結婚したのは2018年7月のこと。交際4カ月のスピード婚だったそうだが、その後の展開も早かった。2019年3月に長男が生まれ、翌年の春には別居、そして今年1月末、2人が離婚協議中であると報じられている。
前田さんに限らず、交際して間もなく結婚した場合、離婚に至るのが早いカップルは珍しくないようだ。私たちはなぜ結婚に向かって走ってはいけないのか。これまで数多くの夫婦の離婚事情を目撃し、結婚生活に悩む人たちから相談を受けている原口未緒弁護士に話を聞いた。
●「相手をあまり知らないうちに結婚してしまう」
ーー交際してまもない「スピート結婚」は「スピード離婚」につながりやすい、との声があります。原口弁護士はどのように捉えていますか。
否定はできないと考えています。
かくいう私も、スピード結婚、スピード離婚かと思います。2回目〜4回目の結婚は、いずれも交際1年未満での結婚(事実婚)、1年未満〜3年半での離婚(事実婚解消)となっています。
最近多いと感じるのが、結婚相談所での成婚のケースです。数カ月の交際期間で婚約や入籍をし、同居から数日もしくは数カ月で別居。その後、私たち弁護士が離婚協議をお手伝いするに至った方たちがいます。
やはり、一般的に言われるように、相手のことをあまり知らないうちに結婚してしまい、同居をするようになってから、相手のどうしても合わないところや許せないところなどが明らかになった、というケースが多いようです。
●結婚の前に「まずは、自分のことをよく知ること」
ーースピード結婚した場合、どのような注意をすれば、離婚を防ぐことはできるのでしょうか
私自身、スピード結婚、スピード離婚してしまっていますので、自戒の意味も込めて、ですが…(笑)。
まずは、自分のことをよく知っておくことです。
相手のことを知る前に、まずは、自分です。自分がどんなことを大切にしていて、優先順位をつけているのか。また、どんな価値観をもち、どんな夫婦像や家庭像を理想にしているのか。自分が理想としていることや、求めていることなどを明らかにしておきましょう。
ーーまず自分の価値観を整理してから結婚を考えよう、ということですね
そうです。日本はまだ「結婚はしなくてはいけない」というプレッシャーを感じやすいからでしょうか。相手を選ばず、結婚を焦ってしまうのかもしれません。
でも「その人と結婚したいから」ではなく、「婚期が迫っているから」「子どもを産むことのできる年齢が迫っている」「結婚して家から出たい「親を安心させたい」などの理由の場合、相手のことをよく知りもしないまま結婚してしまうことも少なくありません。
「条件がいいから」「優しそうだから」などの表面的な理由だけで、結婚相手を選んでも、結婚生活は24時間、人生を共にするものです。恋愛期間の一時的な、表面的な関係性だけでは、すぐにメッキが剥がれてしまうのではないでしょうか。
その結果として「なんか、違う」「おかしい」という違和感がだんだん濃厚になってきてしまいます。そうなる前に、ありのままの自分、本来の自分を見せて、相手の短所やあわない点を認めて受け入れられるかどうか、本当のパートナーシップを見つけたいものですね。
【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京弁護士会所属。心理カウンセリング・アカシックリーディングも併用しながら、こじらせない円満離婚の実現を目指します。著書『こじらせない離婚―「この結婚もうムリと思ったら読む本」(ダイヤモンド社)
事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所
事務所URL:http://mio-law.com