全国の女子大で、トランスジェンダーの学生を受け入れる動きが広がっている。
宮城学院女子大(仙台市)は9月10日、2021年度から、戸籍上は男性であっても、性自認(自分で認識している性別)が女性であるトランスジェンダーの学生を受け入れると発表した。
NHKによると、宮城学院女子大は、とくに医師の診断書などは必要とせず、「本人が自分は女性である、女性として生きたいという認識があればよい」と説明しているという。
お茶の水女子大(東京・文京区)や奈良女子大(奈良市)は、2020年度から受け入れるとしている。女子大でも受け入れの検討がすすめられているが、宮城学院女子大は私大では初めてのことになるという。
今回のような動きの広がりについてどう考えるか。憲法にくわしい作花知志弁護士に聞いた。
●「ひとしく教育を受ける権利」が保障されている
「憲法は『すべて国民は・・・ひとしく教育を受ける権利を有する』と規定しています(憲法26条1項)。
したがって、そもそも『女性だけの入学を認める』という区別が、憲法上許されるのか、という問題があります(憲法は、私人間にも私法法規を通して、間接的に適用されると解釈されています)。
一方で、現在では、短大を含めると、男性と女性の大学進学率は、ほぼ同じくらいとなっています。
女子大が設立された当時から現在に至るまで、女性の大学進学率の向上を考慮すると、女性しか入学が許されないとする大学を設立できるのか、そういう大学を運営しつづけて良いのか、という問題があります」
●性別は「歴史的な区別」にすぎない
「仮に、女性だけしか入学できない女子大の設立・運営そのものが許されたとしても、『心の性が女性』である人の入学を認めることは、憲法の趣旨に合致していると考えるべきです。
もともと、『男」』『女』という『性別』は、人が歴史的におこなってきた区別(評価)であり、身体は男性であるけれども、『心の性は女性である』という場合など、性の多様性が指摘されています。
いわば現在の社会制度が、その『性の多様性』に合致していないのであれば、その『人の認識の遅れ』を現在存在している社会制度の運用を改善することによって、合致させる試みは、まさに求められるところです。
今回のような動きは、『すべて国民は・・・ひとしく教育を受ける教育を有する』と規定した憲法の理念にも合致していると思います」
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/