cat_oa-bengo4com_issue_9a1800b026e4 oa-bengo4com_0_9a1800b026e4_「鬼滅の刃」キャラの羽織柄が商標出願、ファン困惑「伝統的な着物の柄なのに…」 9a1800b026e4 9a1800b026e4 「鬼滅の刃」キャラの羽織柄が商標出願、ファン困惑「伝統的な着物の柄なのに…」 oa-bengo4com

「鬼滅の刃」キャラの羽織柄が商標出願、ファン困惑「伝統的な着物の柄なのに…」

人気作品『鬼滅の刃』のキャラクターが着ている羽織の柄が、商標出願されていたことがわかり、ネット上で困惑が広がっている。

出願されたのは、竈門炭治郎(かまどたんじろう)、竈門禰豆子(かまどねずこ)、我妻善逸(あがつまぜんいつ)、冨岡義勇(とみおかぎゆう)、胡蝶しのぶ(こちょうしのぶ)、煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)ら、6人のキャラクターが着ている羽織の柄だ。

いずれも、版元の集英社が6月24日、商標出願していた。

特に、炭治郎の羽織の柄である市松模様や、禰豆子の羽織の柄である麻の葉模様は、一般的な着物にも使われる日本の伝統的な模様であることから、「着物では珍しくない古典的な柄なので困る」「コスプレやグッズを手作りできなくなるのでは」といった声があがった。

これらの柄を商標登録することは可能なのだろうか。また登録された場合、ファンにどのような影響があるのだろうか。岩永利彦弁護士に聞いた



●「柄」でも商標登録はできる

――こうした「柄」だけの商標登録は可能なのでしょうか?

たとえば、有名なデパート「伊勢丹」の紙袋などの「柄」を思い浮かべることができると思いますが、実は商標登録されています(第5241411号)。ですので、実例のように「柄」だけの商標でも登録できるのです。

――市松模様や麻の葉模様などの伝統的な柄でも登録可能なのでしょうか?

商標制度は、特許制度と異なり、従前から存在するものであっても登録できるようになっています。

これは商標制度が「新しいものをどんどん創作していきましょう」という特許制度とは異なり、ある商標を自身の商売で継続使用することによって、売り手の信用が溜まっていき、その信用を維持することによって、商標を目印にしてやってきた買い手までも保護しようとする制度だからです。

ですので、従前から存在する伝統的な柄であっても、その伝統的な柄を商標として使用したことによって売り手の信用が相当に高まっているような場合、つまり、その柄を見ただけで「あそこのあの商品だ!」と誰もがわかるような場合には、登録できるのです。

もちろん、伝統的な柄の場合は、柄の周知度合いにくらべて、柄と売り手との結びつきの度合いが問題となってきますから、どの程度売り手の信用が高まっているか、そこをきちんと吟味しなければならないので、商標登録のハードルが当然高くなります。



●「布地」は出願されていない

――もしもこれらの柄が登録された場合、これらの柄の布を作って販売することや、これらの柄の布を使ってファンがコスプレをしたり、グッズを作成したりすることは難しくなるのでしょうか?

特許もそうですが、産業財産権は、特許庁で「出願(申請)→審査→登録」というプロセスを経て権利が発生します。ですので、出願だけでいまだ登録されていないものについては、さほど注意しなくてもいいと思います。

では、仮に将来、登録された場合の話ですが、まずは何が権利範囲になるかが重要となってきます。出願情報を見ると、いずれも指定商品は次のようなものです

第9類:スマートフォン用カバーやコンピュータソフトウェア用アプリケーションなどの機械器具類

第14類:貴金属など

第16類:事務用品など

第18類:財布や傘や革製品など

第25類:被服・履物関係

第28類:おもちゃ関係など

商標制度は、すでに述べたとおり、商売における商標の使用による信用を保護する制度ですので、どの商品やサービスに商標を使用して商売するか、自己申告しておかないといけない制度なのです。

ですので、これらの指定商品を中心として、商標権の権利範囲が定まるのです。

そうすると、注目すべきは、第24類の織物(布地)などには出願していないことがわかります。一方、第25類の被服などには出願されています(布地と服は異なるものです。)。

ですので、出願人である集英社に直接聞いたわけではないので、わかりませんが、たとえば、布地を買ってきて自作のコスプレにするような場合には権利を及ぼすつもりはあまりないのでは?と思います。

しかし、それを超えて、自作したコスプレ衣装を売りに出したり、スマホケースなどにあつらえて売ったりすると、それはもはや商売と言え、商標権の範囲内となりうるので、そのような行為は難しくなると思います。



●登録まで時間がかかる

――ほかに注目すべきポイントはありますか?

話が戻りますが、今回のケースでは、漫画やアニメ内でのキャラが使用する羽織等の柄として、それぞれが有名となっていると思いますが、上記の指定商品、たとえば、第9類のスマートフォン用カバーなどとしてまで有名になっているとはとても思えません。

つまり、『鬼滅の刃』のあの衣装のデザインだとわかっても、集英社のスマホカバーだとなるほどの信用はいまだ高まっていないと思われます。

ですので、個人的には、現状では登録できないのではないかと思います。また、仮に登録できたとしても、審査での紆余曲折が予想されるため、相当先の話になるでしょう。ちなみに、「伊勢丹」の柄が登録されるまで、出願から2年以上の時間を要しております。

【取材協力弁護士】
岩永 利彦(いわなが・としひこ)弁護士
ネット等のIT系・ソフトウエアやモノ作り系の技術法務、知的財産権の問題に詳しい。メーカーでのエンジニア、法務・知財部での弁理士を経て、弁護士登録した理系弁護士。著書「知財実務のセオリー 増補版」及び「エンジニア・知財担当者のための 特許の取り方・守り方・活かし方 (Business Law Handbook)」好評発売中。
事務所名:岩永総合法律事務所
事務所URL:https://www.iwanagalaw.jp/

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オンライン授業中、アダルトサイトが画面共有されて騒然…うっかりでも罪になる?

駒澤大学は6月16日、担当講師がオンライン授業中に不適切なウェブサイトを学生らと画面共有したとして謝罪した。6月15日にツイッターでアダルトサイトの画面共有が話題となっており、同一のものとみられる。

ツイートでは、「生徒に問題解かせてる間に教授がAV見てるのずっと共有されてた」と書かれた文章とともに、オンライン授業中に性的な画像の写ったウェブサイトが画面共有されていた様子をとらえた画像がアップロードされていた。

閲覧していたウェブサイトの画像にはモザイクがかかっていないように見え、かなり性的な内容がそのまま表示されていた。なお、このツイートはすでに削除されている。

同大は公式ホームページで、不適切なウェブサイトの共有が事実であると確認したことを明らかにし謝罪。今後の授業については代講措置をとり、講師については、事実確認の上、学内の諸規程に基づき、厳正に処分するとしている。

大学側は「不適切なウェブサイト」との表現にとどまっているが、もし、大学のオンライン授業中に性的な画像の写ったウェブサイトを画面共有してしまった場合、何か罪になってしまうのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。



●画面共有が「うっかり」なら罪にならず

——オンライン授業中に性的な画像の写ったウェブサイトを画面共有したら、何か罪になるのでしょうか。

まず、講師が故意に、すなわち意図的にそのような行為を行ったということが前提となりますが、このような場合、わいせつ物頒布等罪(刑法175条)が成立する可能性があります。

わいせつ物頒布等罪は、わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体などを公然と陳列することによって成立します。

「図画」とは絵画、映画、写真などをいい、「電磁的記録に係る記録媒体」とはわいせつな画像データを記憶・蔵置させたハードディスク、USB、SDカードなどをいいます。「公然陳列」とは不特定または多数の者が観覧できる状態に置くことをいいます。

オンライン授業中に性的な画像の写ったウェブサイトを学生に共有した場合、わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を不特定または多数の者が観覧できる状態に置いたといえるので、わいせつ物頒布等罪が成立します。

——わざとではなく、うっかり画面共有したという場合はどうでしょうか。

わいせつ物頒布等罪は「故意犯」であり、「過失犯」は処罰されません。したがって、過失でうっかり画面共有してしまった場合には罪にはなりません。



●「公然わいせつ罪」と「わいせつ物頒布等罪」の違い

——仮に故意があった場合、公然わいせつ罪(刑法174条)にはならないのでしょうか。

「公然わいせつ罪」と「わいせつ物頒布等罪」の限界事例として、わいせつ行為をインターネットで生中継で配信した場合にどちらの罪が成立するのかという問題があります。

刑法175条の客体は、さきほど説明したとおり、文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体などの「物」です。これに対して、人の身体そのものは「物」ではありません。

したがって、わいせつ行為をインターネットで生中継で配信した場合には刑法175条「わいせつ物頒布等罪」ではなく、公然とわいせつの行為をしたものとして刑法174条「公然わいせつ罪」が成立します。

類似事案の裁判例(岡山地裁平成12年6月30日判決)でも「わいせつ物頒布等罪」ではなく「公然わいせつ罪」が成立すると判断されています。

これに対して、わいせつ行為をハードディスク等に録画したものをインターネットで配信した場合には、わいせつな「電磁的記録に係る記録媒体」(つまり「物」です)を公然と陳列したことになるので「わいせつ物頒布等罪」が成立します。

——配信される客体が「人」か「物」かで、成立する犯罪が異なるのですね。

「公然わいせつ罪」は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金等ですが、「わいせつ物頒布等罪」はそれより重く、2年以下の懲役または250万円以下の罰金等とされています。

この法定刑の差は、「公然わいせつ罪」はその場一回限りの法益侵害であるのに対して、「わいせつ物頒布等罪」は繰り返し再生して法益侵害することができるからであると説明されています。

【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官の資格も有する。現在、朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/

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cat_oa-bengo4com_issue_9a1800b026e4 oa-bengo4com_0_d2643484b151_万引きがやめられない男性、逮捕を恐れて「これから全てが壊れていく」震え止まらず d2643484b151 d2643484b151 万引きがやめられない男性、逮捕を恐れて「これから全てが壊れていく」震え止まらず oa-bengo4com

万引きがやめられない男性、逮捕を恐れて「これから全てが壊れていく」震え止まらず

万引きがやめられない50代男性から「警察に通報されたがどうすれば良いか」とい う相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

男性は2年前にCDを万引きして現行犯逮捕され、その後不起訴となりました。しかし、その 後すぐにまた万引きを始めてしまい、盗んではフリマサイトで転売する行為を何度も繰り返しました。

ある日、いつもと同じようにコンビニで万引きし店を出たあと、警察官2人が店の方に向か って来ているのに気づきました。呼び止められずに帰宅した男性でしたが、「私に気づいた店員が警察に通報し駆け付けた」ものと考えています。

どこで何を盗んだか全く分からないものの、フリマサイトを見れば履歴は明らか。「これか ら全てが壊れていくことを改めて実感し、震えが止まらない」と途方に暮れています。

男性は「裁きを受ける覚悟はあります」としつつ、子どもや会社、近所の人には知られない よう解決したいと考えています。はたして可能なのでしょうか。吉田要介弁護士に聞きまし た。



●逮捕を避けることが一番

——何か犯罪を犯した場合、子どもや会社、近所の人に知られないよう解決することは可能ですか?

社会的な関心事のある重大犯罪でなければ、犯罪を犯した段階で、いまだ逮捕されていない事件を警察がマスコミに発表するケースはあまりないと思いますので、まず、逮捕を避けることが一番だと考えます。

特に、逮捕されその後勾留された場合は、最大23日間外に出られないため、その理由を説明できないことで、会社や子どもに知らせざるを得ないこともあります。

——どのようにして逮捕を避けるのでしょうか。

逮捕を避けるためには、罪証隠滅をしたり、逃亡したりする危険性がないことを捜査機関 に理解してもらうことが必要です。

被害者と示談したり、被害弁償した場合は、そのような危険性がないと判断されると思います。

もっとも、示談や被害弁償の申し出の態様によっては、被害者への働きかけが罪証隠滅と誤解されるおそれもありますので、事案によっては、弁護士に依頼することも検討する必要があります。

——示談や被害弁償が難しい場合は?

示談や被害弁償がすぐには難しい場合は、弁護士に依頼するなどして、罪証隠滅や逃亡をせず、捜査に協力することを約束する本人の誓約書や、本人を監督すること等を約束する配偶者や両親等の身元引受書を作成し、警察に提出することも考えられます。

逮捕されない場合は、在宅で捜査が進み、示談や被害弁償ができていれば、不起訴になる こともあり、その場合は、子どもや会社、近所の人に知られないよう解決できるかもしれま せん。

また、起訴されても、マスコミに取り上げられることがなければ、公開の法廷で公判は開かれますが、傍聴人に子どもや会社、近所の人やその知り合いがいなければ、それらの人に知られることはなく、審理が進み、判決が出ることになろうかと思います。



●警察からの呼び出しには応じよう

——今回のケースはどう考えられますか。   転売する行為を何度も繰り返したというものであり、件数によってはそれなりに話題性のある事件だと思います。

示談や被害弁償によって、窃盗の被害届が取り下げられない限り、逮捕されたり起訴される可能性が高く、マスコミに取り上げられ、それを子どもや会社、近所の人が見た場合には、それらの人に知られてしまうことになります。

なお、逮捕される前に店に被害弁償した場合、被害店舗が被害届を取り下げ、刑事処罰を求 めない意向であれば、警察としてもあえて事件化する必要はないと考え、警察の呼び出しを 回避することができることもありますが、事件や余罪との兼ね合いで呼出しを回避できない こともあります。

とはいえ、呼び出しの段階で、子どもや会社、近所の人に知られることはありませんし、呼び出しに応じないことで、罪証隠滅や逃亡を疑われ逮捕されることもありますので、呼び出しには素直に応じた方がよく、心配であれば弁護士に相談すべきと思います。

【取材協力弁護士】
吉田 要介(よしだ・ようすけ)弁護士
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。
事務所名:ときわ綜合法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-lawoffice.com

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cat_oa-bengo4com_issue_9a1800b026e4 oa-bengo4com_0_3057aaaff492_「Z世代だからとか、関係ない」 入管法改正の抗議活動、その中心にいた若者の本音 3057aaaff492 3057aaaff492 「Z世代だからとか、関係ない」 入管法改正の抗議活動、その中心にいた若者の本音 oa-bengo4com

「Z世代だからとか、関係ない」 入管法改正の抗議活動、その中心にいた若者の本音

外国人の収容や送還のルールを見直す「入管法改正案」は、政府が5月中旬、今国会での成立を断念して、事実上の廃案となった。

この案は、難民の手続き中であっても、3回目以降の申請だったら、強制送還できてしまうことや、拒否すれば刑事罰を受けてしまうことが、法律家や支援者から批判された。

また、名古屋入管で収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマさんが死亡した事件もあり、その死の真相究明と廃案を求める人たちの抗議活動が連日、国会前で繰り広げられた。



●「ずっといろいろな社会問題と向き合ってきた」

この抗議活動には、難民申請の当事者やその支援者だけではなく、たくさんの人たちが集まっていたが、中でも目立ったのが、10代、20代の若者、いわゆる「Z世代」だ。

彼、彼女たちは座り込みに参加するだけではなく、「移民のために声をあげないと」などとスピーチして訴えて、複数のメディアは「若者が運動に関心を持った」と取り上げた。

だが、その中心にいた福井周さん(23)は、「自分たちは急に関心を持ったわけではなく、ずっといろいろな社会問題と向き合ってきた」と否定する。

福井さんは、高校生のころに反ヘイトスピーチの抗議活動(カウンター)に参加し、以来「ときどきフェイドアウトしながら、今日まで続けてきた」。

入管問題に興味を持ったのは、有志の団体「FREEUSHIKU」に友人の母親、長島結さんが参加していたことが大きいという。

「すべての運動は繋がっていて、世代は関係ない」。そう語る福井さんと長島さんに聞いた。(ライター・碓氷連太郎)



●一度フェードアウトして、再び社会運動に

――福井さんは高校生のころから、社会運動に参加していたそうですね。

福井:高校生だった2013年ごろ、在特会などによるヘイトスピーチデモに対するカウンターに参加していました。国際基督教大学(ICU)入学後は、共謀罪や森友学園問題などをテーマに政治への疑問を議論する団体「未来のための公共」の立ち上げに加わりました。

でも、自分が前面に出て運動に参加することに違和感があって。同時に入っていたダンスサークルが忙しくなったのもあり、一度フェードアウトしてしまったんです。

ただ、ずっと申し訳なさを感じていたし、社会問題への関心は失われなくて、2020年に大学を卒業したあと、一般社団法人「VOICE UP JAPAN」に参加しました。

――VOICE UP JAPANは2019年、『週刊SPA!』の「ヤレる女子大学生RANKING」に抗議の署名を始めた団体です。ジェンダー格差や性暴力などの問題に取り組んでいますが、なぜ参加されたんですか?

福井:卒業したあと、医学部に入り直そうと思って勉強を始めたんですが、通っていた予備校が合わなくて、1年間はギャップイヤー(卒業後、就職するまでに留学やボランティアなど、社会体験活動をおこなう期間)のように過ごそうと思っていました。そんなとき、ナインティナインの岡村隆史氏による「コロナ明けたら、美人さんがお嬢(風俗嬢)やります」発言がありました。

VOICE UP JAPANが抗議署名を集めていたのですが、個人としては「もっとこうすればいいのに」と思ってしまう点がいくつかありました。でも、運動をしていない自分が、誰かのやり方を批判するのはやりすぎだと思ったし、もう一度、地に足を付けて社会運動を始めてみたかったので、以前から知り合いだったVUJ代表の山本和奈に連絡をとって参加することにしました。運動を通して自分がシスジェンダー男性であることにも、向き合う必要があると思ったんです。

――入管問題に興味を持ったのも、このころですか?

福井:まだ、そこまでではなく、このころは高校の恩師に会って、路上生活者の支援をしている人を紹介されたりしていました。

VOICE UP JAPANでは、アドボカシー(権利擁護や啓発活動)の担当となり、差別禁止法制定のグループに参加したのですが、扱うテーマがとても広くて、どうやってかたちにしようかと思ったときに、反差別カウンターの先輩で、友人の母親だった長島さんを思い出しました。僕はホモソーシャル(男性優位なつながり)が苦手。ジェンダーが女性のほうが話しやすいのもあったので、長島さんに連絡したんです。

――入管問題に興味を持ったのは、何がきっかけですか?

福井:一番大きかったのは、高校生のときから横浜の寿町での炊き出しに参加していることです。昨年末は池袋の炊き出しに、年末年始の6日間ボランティア参加していたら「ほかの炊き出しの現場に、仮放免の外国人の人がたくさん来てる」という話を聞きました。

仮放免の人たちは仕事ができないから生活にも困っているし、健康保険に入れないから病気になっても病院にも行けない。そんな話をずっと聞いていたのですが、今年2月に入管法改正案が閣議決定されて、その直後にウィシュマさんが亡くなるなど、入管絡みのことが立て続けに起きたので、何かできないかと考えるようになりました。

――それで長島さんのところに連絡があったんですか?

長島:最初は「FREEUSHIKUとVOICE UP JAPANで何かコラボできないか」という相談を受けたのですが、3月に会ったときにはもう、完全に入管法改正に反対する姿勢になっていました。そのときに「まず勉強会を、とか言ってる場合じゃない!」と言っていたのを今でも覚えています。

福井:名古屋入管に収容中のウィシュマさんが今年3月、適切な医療を受けられずに亡くなった事件が、とても大きかったです。彼女の場合、元交際相手からDVを受けたことが、収容されるきっかけになっていると報じられています。入管問題はジェンダー問題でもあると、代表の山本とも話して、「何かやるしかない」となりました。




●入管問題には伝わりにくさがある

――FREEUSHIKUとコラボしたいと思ったのは、なぜですか?

福井:入管問題に関しては、僕たちの中で積み上げてきたものがなかったのと、FREEUSHIKUのウェブサイトがとても充実していて、デザインされているコンテンツがめちゃくちゃわかりやすかったのが大きいです。

VOICE UP JAPANは、大学生世代がメインで、ヘイトスピーチ問題を知らない若い世代に向けて、社会運動について発信できるのが長所だからこそ、専門的に取り組んできた団体と連携するのが筋だろうとも思ったんです。

――地域を破壊するヘイトスピーチは社会問題になり、法律もできました。一方の入管問題は、対象となっている人たちのことを知る機会が少ないからなのか、問題を伝えるのが、より難しい気がします。VOICE UP JAPANではどうでしたか?

福井:たしかにVOICE UP JAPANの中でも伝わりにくかったところはあります。日本語が母語ではないメンバーが多いゆえに説明が難しいのと、メンバーの多くがジェンダーとかセクシャリティが日常生活の中でどう表象されているかといった問題に興味を持っている人が多かったことです。

制度の中で生まれる差別問題というマクロなテーマをわかりやすく説明するのは時間がかかるし、複雑になるしで、伝えにくさはありました。VOICE UP JAPANは約200名のメンバーがいますが、月1回の全体ミーティングで「入管問題を説明するから、興味がある人は残って聞いていって」と言ったら、そのときは10人ぐらい残ってくれて。その後手伝ってくれたのは、5、6人程度でしたが、SNSで声をあげるメンバーがいたり、インスタ(Instagram)担当のメンバーが自主的に入管問題を取り上げていました。

――気おくれして、社会運動に参加できないという人も多くいます。そのあたりはどうでしたか?

福井:中学生のころから炊き出しのボランティアに参加したり、ヘイトスピーチのカウンターや他のデモにも行っていたので、何かあったら手伝うみたいな考えは、当たり前にありました。

長島:途中で離れたり、戻ったりしながら、一本道ではない関わり方をしているところがすごいと思っていました。でも、同級生のお母さんがメンバーの団体に声をかけるのは、やりにくかったんじゃない?

福井:僕は大学のサークルもそうですけど、すっと入って、やってくうちに何となくいる人みたいな感じになるのが得意なんです(笑)。



●若者はずっと社会問題に取り組んできた

――長島さんは国会前でのシットインや抗議などに最初から関わっていましたね。

長島:入管法「改正」案は、今国会で突然提出されたわけではなく、昨年から改定案が出されるのでは、と言われていました。そのあたりで、ほかの支援団体に声をかけられて、一緒にやっていく動きになっていきました。

国会前スタンディング初日(4月15日)は、FREEUSHIKUとVOICE UP JAPANの有志が個人参加というかたちで開催したのですが、その後、廃案になるまでのシットインは、協力団体として共に参加しました。

福井:VOICE UP JAPANは、僕を入れて最終的には10人ぐらい集まったのですが、少ないですよね。

長島:いやいや、社会運動に若者が10人集まるって、すごいことだと思います。

――国会前でのスピーチには、若い人の姿が目立ちました。

福井:若者推しのメディアも実際にありました。でも、2013年から僕はカウンターに参加して来たし、その年末には特定機密保護法に反対する学生団体「SASPL」が、2015年には後継団体の「SEALDs」が生まれて、VOICE UP JAPANも、先行して声をあげていた人たちと繋がっています。

だから、ことさら「若者が政治に参加している!」と取り上げる必要はないと思いますし、同時に、さまざまな世代の、ずっと闘ってきた人と新たに関心を持った人が、互いを尊重しながら連帯できればと思っています。

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cat_oa-bengo4com_issue_9a1800b026e4 oa-bengo4com_0_0d68cff56eea_「父親を奪われて精神的苦痛」子どもは不倫相手の女性に慰謝料請求できる? 0d68cff56eea 0d68cff56eea 「父親を奪われて精神的苦痛」子どもは不倫相手の女性に慰謝料請求できる? oa-bengo4com

「父親を奪われて精神的苦痛」子どもは不倫相手の女性に慰謝料請求できる?

誰かが不倫をした時、配偶者だけでなく子どもにも傷を残してしまうことがあります。夫が不倫したという女性が「子どもたちから相手に慰謝料を請求することはできないのでしょうか」と、弁護士ドットコムに相談を寄せました。

相談者は、15歳と6歳の2人の子どもがいます。不倫発覚後、相談者の夫は家を出ており、相談者は不貞相手に慰謝料請求をしているといいます。これに加えて、「父親を奪われ精神的苦痛を負った」として、子どもたちからも請求したいと考えているようです。

法的にそのようなことは可能なのでしょうか。岡本陽平弁護士に聞きました。



●最高裁の判例は?

今回のような事案について参考になると思われる最高裁の判例(最高裁昭和54年3月30日判決)があります。

この事案は、今回の相談者と同じように、不貞をされた妻だけでなく、子どもも不貞相手の女性に損害賠償を請求したものです。

最高裁は、「妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持った女性が妻子のもとを去った右男性と同棲するに至った結果、その子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなったとしても、その女性が害意をもって父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は未成年の子に対して不法行為を構成するものではないと解するのが相当である」と判断しました。

仮に不倫があったとしても、父が子に対して愛情を注ぎ、監護、教育を行うことは自らの意思によって行うことができる。そのため、子が父からの愛情、監護、教育を受けられずに不利益を被ったとしても、相手女性の行為と、その不利益との間には相当因果関係はないというのがその主な理由です。

「相当因果関係」というのは難しい法律用語ですが、簡単にいうと、社会通念上、ある行為からその結果が発生するのが通常だといえるような関係という意味です。

最高裁は、相手女性が父と不貞し、同棲をはじめるという「行為」から、父が子に愛情を注がなくなるという「結果」が生じることは社会通念上、通常とはいえないと判断したわけです。



●「請求が認められるハードルは相当高いといわざるを得ない」

ーー原則として、子どもからの慰謝料請求はできない、ということでしょうか

法律的には子どもの不貞相手に対する請求が認められるハードルは相当高いといわざるを得ないのが現実です。

しかし、最高裁の判断は、子どもの不貞相手に対する請求は、すべて認められないとしているものではありません。

主張を認めてもらうためには、単に「父」が、不貞相手と不貞関係にあるというだけではなく、相手女性が、父の子に対する監護を害意をもって積極的に妨害しているといったような「特段の事情」まで主張立証する必要があるということになります。

なお、最高裁は、不貞されたのが夫であった事案での子どもから不貞相手(母の不倫相手)に対する請求についても同趣旨の判断をしています。不貞をしたのが夫と妻のどちらであれ、結論に違いはないと思われます。

ちなみに、子どもが損害賠償を請求するためには、相談者だけではなく、その子どもも原 告となる必要があります。

その場合、当初から、相談者と子どもが一緒に請求することもできますし、別々の手続で請求をすることもできます。なお、相談者の訴訟の進行状況等にもよりますが、別々に請求をしたとしても、併合審理となる場合も多いのではないかと思います。

【取材協力弁護士】
岡本 陽平(おかもと・ようへい)弁護士
弁護士になる前は、裁判官として、一般民事、家事事件等を取扱っていたほか、東京地裁商事部、保全部などの専門部での勤務経験も有する。また、カンボジア王国で、法整備支援プロジェクトにも従事したこともある。
事務所名:岡本陽平法律事務所
事務所URL:https://ok-lawfirm.com/

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cat_oa-bengo4com_issue_9a1800b026e4 oa-bengo4com_0_ee49490fefef_免許証のコピーを落としてしまった…悪用される? どうすればいい? ee49490fefef ee49490fefef 免許証のコピーを落としてしまった…悪用される? どうすればいい? oa-bengo4com

免許証のコピーを落としてしまった…悪用される? どうすればいい?

免許証のコピーを誰かに悪用されてしまわないか——。弁護士ドットコムには免許証のコピーを置き忘れたり誰かに提出したりした人からの相談が複数寄せられています。

ある相談者は、友人に「免許証のコピーを渡してほしい」と頼まれ渡しました。しかし、落ち着いて考えると、そのコピーを利用して相談者名義のカードなどを作れてしまうのではないかと不安になりました。

また別の相談者は、コンビニで免許証を2枚コピーしましたが、1枚をどこかに落としてしまいました。「免許証のコピーを偽造してクレジットカードをつくる人がいるとテレビでみた」と悪用される可能性を考えています。

免許証のコピーで考えられる悪用は、どういうものがあるのでしょうか。櫻井俊宏弁護士に聞きました。



●クレカは作れる?

——免許証コピーが第三者の手にわたることで、どのようなリスクが考えられますか。

リスクとしては、クレジットカードの作成や銀行のオンライン口座開設、キャッシング、携帯電話の新規契約などが挙げられます。

ただ、クレジットカードや口座開設については、2020年4月1日の「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)」の改正により、本人特定事項の確認が厳格化され、運転免許証のコピーに加えて、保険証やパスポートのコピーなど本人確認資料がさらにもう1点必要となりました。

さらに、発行されたクレジットカードは、免許証記載の住所に送られることになります。カード受取時には写真付き公的証明書による本人確認をおこなうため、悪用者が使えるようになることは考えにくいでしょう。

ただ、特殊な事情から、クレジットカードが悪用者の手に渡り、そのクレジットカードを使って物品を購入されてしまうと、悪用者の不払いがあった場合などに、訴訟を提起されてしまうこともあり、時間や精神、弁護士を依頼する費用等の負担がかかってしまいます。

——紛失した場合、何かできる手立てはありますか。

免許証のコピーを紛失した場合には、「株式会社日本信用情報機構(JICC)」、「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」、「全国銀行個人信用情報センター」に報告する手続きがあるので、すぐに報告しましょう。

これらは国民の借入能力等に関する情報を統括し、貸金業者やカード会社がいつでもアクセスできる機関なので、カード会社もクレジットカードの審査の際に、その情報を得て、クレジットカードを発行しなくなる可能性が高まります。

また、警察にも紛失したことを届けておけば、その後トラブルがあった場合に、届けをしていたという事実をもって、民事的・刑事的に対抗しやすくなるでしょう。

いずれにしろ、住所と顔写真という重要なプライバシーが、例えばインターネットなどでさらされる危険性は払拭することができません。また、銀行口座を作成されて、振込詐欺に利用されることによって、犯罪に巻き込まれる可能性もあります。

そこで、原本はもちろんのこと、コピーといえども免許証の扱いは厳重に気をつけるべきです。

【取材協力弁護士】
櫻井 俊宏(さくらい・としひろ)弁護士
交通事故、離婚・男女問題等を得意としている新宿・青梅・三郷の弁護士法人アズバーズ代表弁護士。応援団出身であり、中央大学の学内顧問弁護士(法実務カウンセル)を担当している。「弁護士 ラーメン」と検索すると自身のラーメンブログが一番上に出てくる程のラーメン好き。
事務所名:弁護士法人アズバーズ青梅事務所
事務所URL:http://as-birds.com

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バカッター・リターン、繰り返されるバイトテロの歴史…破産した蕎麦屋、検挙された少年たち

バイト従業員による勤務先での悪質なイタズラを撮影し、インターネット(SNS)に投稿して炎上する「バイトテロ」が大きな問題となっている。

「バカッター」と呼ばれることもあるこの行為によって、企業は壊滅的なイメージダウンを避けられない。しかし、関係した本人も個人情報が特定されるなど社会的制裁を受けるほか、法的にも損害賠償を請求されるなど、タダでは済まない。

これまでのバイトテロの歴史を振り返り、いっそうの警戒を怠らないようにしたい。



●冷蔵庫や食洗機に入るバイトたち

数多くのバイトテロのなかでも、特に大きなニュースとなった事例を振り返ってみよう。

2013年、東京都のステーキ店「ブロンコビリー」で、バイト従業員が店の冷蔵庫に入る写真をツイッターに投稿。

問題の発覚をうけて、運営会社は店を一時的に閉めて、清掃・消毒などにあたると同時に、該当の従業員を解雇した。

しかし、再開に向けた動きもむなしく、批判を受けた従業員がネット上で反論したことなどから、問題は瞬く間に大炎上。結局のところ、運営会社は閉店決定にまで追い込まれた。

この2013年には、後述の「蕎麦店食洗機騒動」など数々の失態が発生・報告され、この年のネット流行語大賞に「バカッター」がランクインすることとなった。



●セブンイレブン、おでん吐き出し事件

大手コンビニ「セブンイレブン」は2019年2月、横浜市のフランチャイズ店舗で、バイト従業員らが鍋のおでん(しらたき)を口に含み、吐き出す動画を撮影、投稿していたことを発表した。

ツイッターに投稿された動画が、「汚い」など批判されていた。同社はバイト従業員の解雇を発表した。



●くら寿司のバイトは刑事事件で家裁送致

2019年1月、回転すしチェーン「くら寿司」(大阪府守口市)の厨房で、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻す様子を撮影して調理しようとするバイト従業員の動画がインスタグラムに投稿された。動画は一度削除されたものの、知人の手によって後日再投稿されたという。

運営会社は、刑事・民事で法的措置をとる意向を発表するとともに、撮影に関わった2人の従業員の退職処分を決めた。

その後、読売新聞(同年6月28日付)によれば、大阪府警が同5月、当事者の従業員と、動画を再び投稿した知人の少年3人を偽計業務妨害の罪で書類送検した。

地検は同6月、17歳の少年2人を偽計業務妨害の非行事実で、19歳の少年(=まな板に戻した少年)を偽計業務妨害ほう助の非行事実で家裁に送致した。



●集合住宅の受水槽で泳いだ

バイトではないが、大和ハウス工業が建設した賃貸住宅の受水槽の点検を請け負った設備工事業の20代男性らが2018年9月、受水槽で泳いで遊ぶ様子を撮影し、TikTokに投稿した。翌年になって、その動画がツイッターなどで拡散し、問題が発覚したことで、大和ハウスは不適切行為として発表した。

「不衛生」などと批判が殺到し、管理会社が水を抜いて清掃することになった。



●ココイチの不衛生な動画

記憶に新しいところでは、2021年6月に起きたカレー店「CoCo壱番屋」のバイトテロは世間に衝撃をあたえた。九州のフランチャイズ店舗のバイト従業員が、休憩室で食事をしていたところ、衣服のなかに手を突っ込むと、その手からまかないに何かをふりかける動作をおこなった。

従業員がその様子を撮影した動画を自身のインスタグラム(鍵付きアカウント)のストーリーズに投稿し、ツイッターなどで拡散された。店舗は清掃・消毒のため1日の営業停止をよぎなくされた。

運営の壱番屋はリリース(6月14日付)で謝罪した。また、従業員に対しては「規定に則って厳正な対応を行う」考えを公表した。



●「閉店」に追い込まれるも…和解金わずか200万円

2013年、都内の蕎麦店「泰尚」のバイト従業員らが食洗機に入る様子をツイッターにアップした。週刊誌報道によれば、批判が殺到し、店は投稿からわずか3カ月後に閉店に追い込まれることに。約3300万円の負債を抱えて破産したという。店側はバイトの大学生らに計1385万円の損害賠償をもとめる裁判を起こしたが、約200万円で和解したと報じられた。

個人経営の飲食店がバイトテロの炎上に巻き込まれると、ひとたまりもない。飲食店を運営する企業も、店にスマホを持ち込まないなどのルールを設けたり、バカッターの事例などを伝える研修を実施しているが、リスクをゼロにおさえこむことはできていないのが実情だ。

一方、この蕎麦店のケースも含めて、ほとんどのバイトテロにおいては、投稿にかかわった当事者の氏名や所属大学などの個人情報もあばかれ、ネット上に残り続ける。就職にも影響があると考えられ、まったくの無傷ではいられない。

「友人限定」の投稿であれば問題ないと考えている若者も少なくないようだが、実際にはCoCo壱番屋の件のように、鍵付きのアカウントで期限限定投稿であっても、拡散するケースは多い。どんなSNSでも、投稿は全世界で閲覧されると肝にめいじておくべきだろう。

さらに、これまで説明してきたとおり、解雇されたり、損害賠償を請求されることもあることは忘れてはいけない。

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cat_oa-bengo4com_issue_9a1800b026e4 oa-bengo4com_0_2e8ecd76d6b5_LGBT法案見送りに当事者らが遺憾表明「この国のどこに希望をもって生きればいいのか」 2e8ecd76d6b5 2e8ecd76d6b5 LGBT法案見送りに当事者らが遺憾表明「この国のどこに希望をもって生きればいいのか」 oa-bengo4com

LGBT法案見送りに当事者らが遺憾表明「この国のどこに希望をもって生きればいいのか」

自民党が今国会での「LGBT理解増進法案」の提出を見送ったことを受け、東京五輪・パラリンピックを契機に法案成立を求める国際キャンペーンをおこなってきた当事者団体や支援団体などは6月18日、文科省で会見し、「非常に残念だ」と遺憾の意を表明した。



●自民党保守派の異論で見送りに

同法案は、性的指向や性自認を理由とした差別は許されないなどと明文化したもので、与野党で合意されていたが、自民党保守派から「差別だと訴える訴訟が増える」などの異論があり、今国会での成立に至らなかった。

フェンシング元日本女子代表で、トランスジェンダーであることを公表している杉山文野さんは「本当に残念でなりません。根深い差別と偏見を感じています。こういう国のどこに希望をもって、当事者として生きていけばよいのか、言葉もありません」と語った。

五輪憲章では、性的指向による差別を禁止しているほか、G7でも日本以外の6カ国で性的マイノリティに関する差別を禁止する法律が整備されており、五輪開催を前に同法案の成立が望まれていた。



●「安心して学校に行き、仕事に行ける日常生活を」

会見で、同法案成立を支援してきた国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗弁護士は「五輪憲章の中でには、性的指向による差別禁止が明記されていますが、五輪が始まる直前にもかかわらず、この法案を成立させられなかった日本に対し、国際社会は失望と驚きを感じているというのが現実です」と指摘した。

「LGBTの差別を禁止する法律は世界80カ国以上にあります。しかし、日本の今回の法案は差別禁止法ですらなかった。世界の中でも、きわめて薄い法律でありながら、それさえも通せなかった日本に対し、一刻も早い差別禁止法の成立が国際社会からも望まれていると思います」と語った。

また、同法案の今国会提出を求める緊急声明に賛同する弁護士・法学者の署名も1285筆となった。呼びかけ人の一人で、同性婚訴訟弁護団のメンバーでもある寺原真希弁護士は、当事者から相談を受ける立場から、次のように語った。

「これまで、性自認や性的指向によって差別され、解雇された方や、いじめにあったりしたお子さんなど、具体的な被害を目の当たりにしてきました。偏見が根深い日本社会の中で、今この瞬間も苦しみながら、必死で生きている方々がいらっしゃいます。

彼らが求めているのは特別扱いではなく、ただ安心して学校に行き、仕事に生き、日常生活を送ることです。そのために必要なのは、差別を許さないことが社会に認知されることであり、法律の存在意義は非常に大きいと考えています」

当事者団体や支援団体などは今後も法律の制定を求めていくという。

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cat_oa-bengo4com_issue_9a1800b026e4 oa-bengo4com_0_2b6fa15191f7_大阪「表現の不自由展」弁護士常駐の目的は? 実行委員会は「注意、警告、抑止効果になれば」 2b6fa15191f7 2b6fa15191f7 大阪「表現の不自由展」弁護士常駐の目的は? 実行委員会は「注意、警告、抑止効果になれば」 oa-bengo4com

大阪「表現の不自由展」弁護士常駐の目的は? 実行委員会は「注意、警告、抑止効果になれば」

「あいちトリエンナーレ2019」で抗議が殺到し、中断された企画展の作品の展覧会「表現の不自由展かんさい」が、7月16~18日に大阪市内で開かれる。整理券を配布するほか、妨害行為への対策として、弁護士2名が会場に常駐することになった。

「表現の不自由展かんさい」実行委員会は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、弁護士が常駐する目的は「妨害行為などに法的な問題があったとき、その場で注意・警告してもらうため」だと話す。

「妨害などがあった際に、法律の専門家に注意してもらうとともに、法的な問題を明らかにしてもらうことで、警察への通報などもスムーズになるのではないかと期待しています。

また、弁護士が常駐していることを今回あらかじめ公表することで、妨害しようと思う人たちに対する抑止効果にもなるのではないかと考えています」(実行委員会)

東京都内で6月25日から開催する同様の展覧会をめぐっては、当初予定していた会場に妨害電話やメールが届いたり、中止を求める街宣活動などがおこなわれ、会場変更を余儀なくされた。

そこで、期間中は有志の弁護士が複数でシフトを組み、少なくとも2名の弁護士が会場に常駐する体制にする予定だという。

実行委員会は、「我々が一番大切にしているのは、(来場者に)ちゃんとゆっくりと作品を鑑賞してもらうこと」と話す。委員会内のメンバーにも弁護士がおり、開催準備にあたって、「法的なアドバイスをもらいながら進めている」という。

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cat_oa-bengo4com_issue_9a1800b026e4 oa-bengo4com_0_f172176bbec9_伊是名夏子さん語る「乗車拒否問題」後の中傷の嵐、それでも目指す「誰もが生きやすい世界」 f172176bbec9 f172176bbec9 伊是名夏子さん語る「乗車拒否問題」後の中傷の嵐、それでも目指す「誰もが生きやすい世界」 oa-bengo4com

伊是名夏子さん語る「乗車拒否問題」後の中傷の嵐、それでも目指す「誰もが生きやすい世界」

電動車イスを利用するコラムニスト・伊是名夏子さんが、本人のブログで4月4日に「JRで車いすは乗車拒否されました」と発信してから、2カ月以上が経過した。

階段しかない無人駅(静岡県熱海市の来宮駅)での降車の介助を駅員から拒否され、合理的配慮を求めたとする内容だ。

この問題は、障害を持つ人の移動の権利について議論を進めるきっかけとなりえたが、「議論の場」よりも、それを覆い尽くすような誹謗中傷が巻き起こった。

ネット上の悪意に満ちた言葉を浴び続けたこの2カ月を振り返り、伊是名さんが、改めて目指す「移動の権利」を語った。(聞き手:編集部・塚田賢慎)



●1日2〜3回、感情を吐き出し、どうにか冷静に

――ブログでの発信から2カ月たちました(インタビューは6月4日に実施)。バリアフリーや合理的配慮の話がメインテーマとなるよりも、伊是名さんへの中傷が目につきます

あのときは、誹謗中傷でぐちゃぐちゃにされて、夜も眠れず、つらい毎日を送ることなど予想していませんでした。

合理的配慮を広めたいという思いからの発信が、別の問題にすりかえられてしまいました。

今回のこととは全く関係のない、過去の行動や、家族のことを調べられ、拡散されました。今はネットを触ることすら怖いです。


電話やオンラインで話を聞き合うグループのメンバーに向かって、泣いたり感情を吐き出したりすることで、どうにか毎日の生活を送れています。

1日2〜3回は利用しているでしょうか。そうでもしなければ、私のブログの書き方が悪かったのかもしれないとか、過去のブログで冗談めいたことを書いた私が悪かったと、自分をどんどん責めてしまいます。

話を聞いてもらっているおかげで、自分が責められることではなく、誹謗中傷であると気づくことができています。



●中傷する者の思惑にまんまと乗ってしまった

――ブログ記事や様々なメディアでの発言等が掘り起こされ、炎上しました

私を含めて、結婚や子育てを反対される障害者が少なくなかったことから、障害者の生活を可視化することを目指して、子どもを妊娠した約10年前から、今までの経験の発信を始めました。

また、右も左もわからない大学生だった2004年からブログを始めたときは、友だち向けの発信がメインで冗談のような内容や、写真をたくさん載せていました。それらが今回すべて裏目に出て、揚げ足をとられることになっています。

言及されていることのほとんどがデマや私の人格を非難するための印象操作です。デマの事例としては、たとえば、「ヘルパー制度利用による不正受給」を指摘されましたが、していません。一部だけを切り取って「不正受給である」と言うデマが拡散されています。

また印象操作としては、私が過去に子ども食堂を利用したことも炎上しました。

〈我が家も、こども食堂使用してます!ママ友ができたり、子ども同士もたのしそうで、なにより夕食の準備、片付け、しなくていいから幸せーーー。広まれ!〉(ツイッターの引用)

助けを求める子どもほど可視化されにくく、自分だけが特別扱いされることを避けがちになります。誰でも利用できる楽しい場所として開放されることで、子ども食堂に行きやすくなり、子どもはSOSを出しやすくなります。私の住むエリアの食堂には、ママ友同士や、大人一人でも、誰でも来てください、と明記されています。

中傷する人は「片付けしなくていい」に反応したのかしれません。でも、共働きで余裕がない時に、片付けが楽だから、ママ友同士で楽しいからと言う理由でも、利用する人が増えたらいいと思います。

そうすることで、問題を抱えている人も入りやすくなり、解決のきっかけになるかもしれません。

ほかにも、ネット上の動画の一部を切り出して、ヘルパー体験に来たボランティアの人にケチをつけていると書かれたりしました。

私は完璧な人間ではないので、間違ったことや、批判を浴びるようなことをした過去もあります。しかし、この2カ月、私を悪く見せるため、次から次に情報が切り取られ、事実とまったく異なる情報がどんどん広がり、怖くなって、どのように対処してよいのかわからなくなりました。

SNSの炎上が起こる背景について調べてみると、荒らしや嫌がらせ行為をする人たちの目的は、中傷のターゲットを孤立させ、SNSやネット上から追い出すことにあるようです。私も何も発信できなくなり、ツイッターで人と繋がることができず、自分は消えた方がいいと思ってしまうこともよくあります。



●私を擁護すると炎上に巻き込まれるから、まわりも発言できない

――攻撃を受けて、どのように孤立していったのでしょうか

周囲の人からの誹謗中傷を止めるような発信を期待するのですが、私を擁護するとアンチに絡まれるので声をあげにくいようです。

孤立したままの私は、それこそ中傷してくる人たちの狙いにまんまと乗ってしまっています。しかし、解決方法がわかりません。

相手は匿名で、話し合うこともむずかしい。どうしたら、炎上の後に巻き起こる誹謗中傷の嵐に対処するべきか。この2カ月、今でも悩んでいて、どうすればいいかわからない状態です。



●仕事のつながりも絶たれて、生き方まですべて否定された気分

――実生活でどんな被害が出ていますか

何をされるか不安なので外出がほとんどできなくなり、買い物をしながらでも誰かに見られているのではないか、子どもを叱ったら虐待と通報されるのではないかと常に不安です。

2カ月の間に、私は今まで通り新聞や雑誌などにも仕事で寄稿しています。私のコラムをツイッターで紹介することで、新しいつながりができ、別の媒体の編集者のかたから、仕事を依頼されることもありました。それがいま、一切できなくなりました。

先日発売されたばかりの「支援」(生活書院)という雑誌に、私のコラムが載っています(記事=「感染リスクが高い中で生き抜く、総勢10人のヘルパーとの生活を通して」)。

15年前に「生活書院」の本を読んで、修論を書いたこともあり、憧れの専門誌への寄稿は本当にうれしいです。でも、それすらつぶやけません。仕事のつながりも絶たれて、生き方まですべて否定された気分です。

――中傷を続けるアカウントを特定し、損害賠償を求めるなど、法的手続きをとるのでしょうか

あまりに広まっている誹謗中傷に対処するため、弁護士さんにも相談しています。どんな対応をしていくか未定ですが、命を奪うサイバーハラスメントを見過ごすのではなく、何らかの対応を求めていきたいと考えています。



●健常者による障害者への誤解は、外国人による日本人への誤解に似ている

――誹謗中傷を受けて、新たに気づいたことは

私がコラムや講演会などで伝え続けていた「障害者の生活」は、多くの人にとってまだまだ想像のつきにくいものだということに気づきました。

車イス利用者が電車に乗るには、歩ける人と比べて2〜3倍の時間がかかります。

車イスに乗っていると、今回のように「ご案内できません」と言われることが時々あり、案内されないことは乗れないことと同じで、車イス利用者同士では「乗車拒否」と表すことがあります。しかし、障害のない人にとって、電車に乗れないなんて想像がしにくく、「乗車拒否」という言葉はきつく感じてしまうと初めて知りました。

ヘルパー制度についてもそうです。私の障害は体調次第で、普段はできることが、できなくなることがあり、それを見越してヘルパー制度の申請をします。

時には、親切心からではありますが、障害のある人の置かれている状況をあまり知らずに「タクシーがありますよ」と教えてくれる人もいます。

今回の炎上でも、「タクシーやバスを使えばいいじゃないか」「ヘルパーに車イスを運ばせればいいじゃないか」「どうして軽い手動車イスで旅行をしないのか」とアドバイスのようなことを言われました。

しかし、電動車イス利用者が乗れるタクシーは限られていて、使いたいと思ってすぐに乗れるケースはほとんどありません。ノンステップバスの台数も限られていて、障害者の毎日は、選択肢が少ないのです。

障害のない人が障害のある人の状況を想像できないことは、日本のことをよく知らないアメリカ人の認識と似ていると思うことがあります。

アメリカ留学中、現地の人から質問され、私が驚いたことなのですが、「日本人って、寿司を毎日食べてるんでしょ」と時々聞かれたのです。

「毎日食べないよ。毎日食べてたら栄養的にもわるいじゃん」と答えても、「ミソスープが体にいいんでしょ」と返されてしまう。よくわかっていないこと、時にはデマともいえることを信じて、まるで常識のことであり、アドバイスのように言ってくるこの状況は、私の炎上と似ているとも思いました。

障害者の生活があまりに知られていないからこそ誤解や思い込みが生みだされ、批判も起こってしまう。この誤解を解くために、毎回細かく説明をしないとはいけないと思いますが、とてもつらく、疲れることです。



●あまりに中傷が多く、建設的意見がもはや耳に入らない

――賛成・反対問わず、少数でも建設的な意見はありましたか

大変申し訳ないことに、ネットをあまり見ることができていません。

「声をあげてくれてありがとう」「あなたは間違っていない」「バリアフリーは進んでなくて、後退しているね」と直接言ってくれるかたや、擁護する記事を書いてくれるかたもいます。

同時に、声のあげ方はどうかと思う、文章の書き方がどうかと思うという意見もあります。私も声のあげ方には他の方法もあったのかもしれない、もっと丁寧に、いろいろな配慮が必要だったかもしれないと省みることもあります。私もこれからもっと学び続けないといけません。しかし、誹謗中傷がとにかく多い今、あまり考えられず、批判を聞くのがつらい時もあります。

元「SEALDs」の福田和香子さんがネット上の投稿者を特定し、損害賠償が認められた裁判の判決が最近ありました。記事のヤフコメ(ヤフーニュースのコメント欄)のほとんどが「誹謗中傷はよくないのはわかる。でもあなたのやり方はおかしい」と書かれていました。「バリアフリー化は進むべき。でもあなたのやり方は間違っている」という私への批判とそっくりでした。

声を上げた内容ではなく、言い方ややり方を批判するトーンポリシングが散見されます。




●「味方」とは、「一緒に社会をよくしていくような仲間」のこと

――反響のあったブログで、伊是名さんが「味方を増やし」と書きました。ここでいう「味方」とはどういう意味ですか

「味方」という言葉の反対には、「敵」というイメージがあって、私をわざと戦わせるような構図につなげてしまった可能性があるかもしれません。

しかし、ここでの「味方」とは、「アライ」と呼ばれる障害者の理解者のことです。アライになるのは時にはつらいこともあります。たとえば、歩ける人は、自由に電車に乗れる特権を持っていますが、普段はそれに気づきません。

しかし、私のような車イス利用者は、介助をしてくださる駅員さんの人数や、駅を使う車イス利用者の数で、乗車まで待たされる時間が変わってきます。

車イス利用者から見ると、歩いている人には特権があるのです。その特権に気づくと同時に、差別の構造や、自分が誰かを差別していたと気づくわけですが、それはとてもつらいことだと思います。

一方でけがをしたり、子育てをしたりするときに、特権を失うこともあります。高齢者になれば、元気だった自分はいかに特権を持っていたことかと気づくでしょう。だから、いろいろな人にとって生きやすい社会を、一緒に目指したいのです。

そして特権を持っているか、持っていないかは、いろいろな場面、視点からみることができ、とても複雑です。私自身も、電車に乗る特権は持っていませんが、学歴から見ると特権を持っていて、差別に加担していることがあるので、特権を持っていない人に寄り添いたいと思っています。

想像力を働かせ、いろいろな人が生きやすい社会を築くため、お互いに支え合いたい、という意味の「味方をふやしたい」と言う意味です。決して、敵と味方と分けるつもりでは使っていません。



●労働環境や政策の問題と混ぜてしまうから、ややこしくなる

――5月28日に障害者差別解消法の改正法案が国会で成立しました。3年以内に施行される と、民間の事業者による合理的配慮の提供が「義務」づけられます

改正法が施行されて、実際にどれだけ事業者に拘束力があり、どれだけ事業者が本気で取り組むのか。改善を願っています。

私が批判を受けているような、「電車に乗る時に車イスなら待たされても仕方ない。事前連絡も当然だ。我慢するべきだ。わきまえたほうがよい」などの考えは、本人が頑張って障害を克服しようという古い考え方(医学モデル)がもとになっています。

しかし、日本が批准している障害者権利条約では、障害は個人ではなく、社会の側にあるという「社会モデル」と言う考え方に基づくものです。整っていない社会を変えていくことで障害を取り除けるという「社会モデル」の考えです。

よって車イスの人が階段しかない駅や無人駅で電車に乗れないことは、条約批准国の日本では差別だと言えます。

バリアフリーが整ったことが前提で、さらに障害者からの申し出をうけて、事業者側がより個人に合わせて提供するのが、合理的配慮です。しかし日本では社会モデルの考え方や、バリアフリーそのものといった、合理的配慮をする前の土台が整っていない現状があります。

個人の申し出に対応する駅員さんの負担が重い場合もあることはよくわかっています。私は駅員さんを責めているわけではありません。

しかし、交通の現場からの意見として、経費削減、人員削減がおこっている現状では、バリアフリーが整っていないことは仕方ない、合理的配慮の提供が難しいことがあっても仕方ない、というのは問題のすり替えではないでしょうか。

頑張っている従業員に負担させられないとか、バリアフリー対応にお金がかかるという意見がありますが、それは障害者の問題ではなく、労働環境や政策の問題です。駅員さんの働きやすさのためにも労働環境や政策が整えられることを切に願います。

一方でバリアフリー化をすすめて、みんなが便利な社会にしようという思いは、誰しも共通しているはずです。難しくする必要は全くないのに、労働環境や政策の問題と障害者が置かれている状況を混ぜ、時には問題をすり替えてしまうから、ややこしくなってしまうのではないでしょうか。



●心のバリアフリーだけではなく、移動の権利がほしい

――国交省では、駅の無人化におけるガイドラインの策定が、障害者当事者団体とJR東日本も含む鉄道事業者の話し合いによって進められています。どのような展開を期待していますか

全体の流れとしては、合理的配慮についてよい方向に進んでいます。

国交省から4月14日、各鉄道会社宛に、来宮駅での介助を求めた利用者に対して、乗車拒否として受け取られる事象が起こったことへの改善を求める注意喚起の通達が出されました。

私は障害者の代表ではなく、ひとりの当事者として声をあげています。障害者の生活の理解を広めて、いろいろな人が生きやすい社会を目指すのが理想です。

しかし同時に、今日は理解のある駅員さんにあたったから、特別に電車に乗れた、今日は駅員さんの人数が少なくて乗れなかった、という不安定な現状をなくしていきたいのです。障害のない人による障害者への理解次第で乗車できるかどうかが決まる現状を、変えていきたいのです。理解を促し、心のバリアフリーを広め、アライを増やすのと同時に、障害のある人の移動の権利がより守られることを願います。




●JR東日本は障害当事者の意見も参考としていく

以上が伊是名さんの一問一答のインタビューだ。

ちなみに、国交省では「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関するガイドライン」が取りまとめられる予定だ。ガイドライン策定に向けて、JR東日本社内で、どのような取り組みがなされているのか聞いたので、最後に紹介したい。

〈国土交通省主催の「駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関する障害当事者団体・鉄道事業者・国土交通省の意見交換会」に当社も参加しており、同意見交換会の中で国土交通省が示した指針策定に向けたスケジュール案については承知しています。

これまでも、お客さまのご利用状況も踏まえながら駅の運営体制を検討し、無人駅における障害者の介助については可能な限りの対応に努めてきたところですが、事業者の置かれた環境もご理解いただきつつ、障害をお持ちのお客さまにご利用いただくために事業者として努力できることについて、現実的対話、建設的対話を行っていきたいと考えております。

これまでも、マニュアルなどを用いた社員教育を継続的に行うとともに、通年で「声かけ・サポート」運動等を実施しています。

また、介助技術やホスピタリティマインド、心のバリアフリーを学習するサービス介助士の資格取得を2005年より推進しており、2019年度から全系統の新入社員に取得講座を受講させています。その中で合理的配慮の提供についても触れており、障害当事者から直接話を聞くプログラムも実施しています。

今後も共生社会の実現に向け、引き続き障害当事者の意見も参考とし、ソフト面では障害者差別解消法の改正もふまえ、「合理的配慮の提供」の理解促進などに取り組み、より快適で安心してご利用できる公共交通機関を実現してまいりたいと考えています〉

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