男性器の包茎手術について、クリニック側がきちんと説明しなかったとして、関東地方在住の男性患者2人が2月7日、クリニックを運営する医療法人や医師を相手取り、損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。原告側弁護団が同日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて発表した。会見した原告の1人、20代男性は「信頼してお願いしたのに、裏切られたかたちで残念だ」と述べた。20代男性が訴えた東京上野クリニック側は弁護士ドットコムニュースの取材に「この件は弁護士に一任している。担当者も不在で回答できない」とした。
●それぞれ十分な説明を受けていなかった
訴状などによると、原告の20代男性は2015年3月、東京上野クリニックで施術を受けた。包茎手術だけでなく、ヒアルロン酸注入など複数の施術を受けて、現在まで約139万円を支払っている(契約金額:約237万円)。本来なら、保険適用の手術を受けられるタイプの包茎だったが、自由診療の高額手術を受けさせられた。病院側が保険適用の可否や効果について説明義務を尽くさなかったため、誤解して契約したと主張している。
もう1人の原告の40代男性は2014年3月、別のクリニックで、包茎手術とヒアルロン酸注入などの施術を受けて、現在まで約122万円を支払っている(契約金額:約192万円)。施術のあと、出血や亀頭部分に凹みが生じたという。ヒアルロン酸の効果は6か月〜1年程度であることなどから、医師が亀頭増大の効果や予後、施術の危険性について説明義務を尽くさなかったとしている。
●20代男性「あとから騙されたと思った」
会見に出席した20代男性は、次のように包茎手術やヒアルロン酸注入に至った経緯を説明した。
「私は以前から、冬になると乾燥から、陰茎の皮が裂けるなど傷ができることがよくあった。これは包茎が原因なのではないかと考えて、意を決して包茎手術を受けることにした。事前にホームページで、包茎手術は10万円でできると理解していた。
受診すると、医師でないスタッフから『ヒアルロン酸を注入すると、通気性がよくなって、治りが早くなるメリットがある』などと説明されて、包茎手術だけでなく、ヒアルロン酸も注入することにした。
医師は、陰茎の状態を確認しただけで、とくに何も説明してくれなかった。そのあと、包茎手術だけでなく、ヒアルロン酸注入など、ほかの施術もすすめられた。どのような手術をおこなうべきかわからなかったので、医師がすすめる施術が必要だろうと思った。あとから、(本来なら)保険適用される手術で済んだとわかり、騙されたと思った」
●弁護団、電話相談を実施
原告側代理人が所属する医療問題弁護団によると、包茎手術やそれに伴う男性器の施術は、センシティブな事柄であり、男性器のコンプレックスを感じている男性が対象となっている。そのため、クリニックからすすめられると、誤解して本来必要のない施術についても契約してしまう側面があるという。
また、実際に健康被害があったとしても、コンプレックスに関する相談であるため、なかなか声が上げづらいという性質もある。同弁護団が2016年に実施したホットライン(合計58件・うち対面相談者15人)も、被害の「氷山の一角にすぎない」と考えられるという。同弁護団は同じような相談について、窓口を設けて対応する(03-6909-7680/平日10時〜16時)。