アイリスオーヤマ 代表取締役社長
大山晃弘さん
1978年、宮城県仙台市出身。2003年、アイリスオーヤマ入社。IRIS USA INCチェアマンなどを経て2018年7月、現会長で実父、健太郎氏の跡を継ぎ現職。変化対応型企業のトップとして「常に身軽な経営者でありたい」と話す。
大山さんの提言!
(1)危機意識を高め、スピーディーに動き出せる体制づくりを
(2)ピンチはチャンス、顕在化した社会課題にヒントあり
(3)技術の進歩もふまえて、生産体制の見直しが必要
震災の経験から、いち早く必要とされるものづくりへ
アイリスオーヤマは本社が仙台にありますので、東日本大震災では生産設備、従業員が被災して大変なダメージを受けました。しかし生活に密着した商品を扱っている使命感もあり、いち早く生産体制を立て直した結果、多くのお客様に喜んでいただき、その自信が家電など新たな事業分野への進出、企業の成長につながりました。
今回はその経験を生かし、早い段階から非常事態モードに切り替えて、国内でのマスク生産設備の導入をはじめ、コロナ禍で必要とされるものづくりへと舵を切りました。弊社では毎週、経営陣、開発、営業が一体となって新商品について話し合う会議を設けています。そうした場があったことも、スピーディーに方針を決定して動き出せた理由のひとつだと思います。
コロナショックはリーマンショックを超える、戦後最大の危機です。日本だけでなくグローバルで今後、第2波、第3波が起こってくるでしょうから、企業としては厳しい見通しを持って対応しなければなりません。しかし一方でこの間、日本ではテレワークが一気に普及したように、この危機は顕在化した社会課題を見つめ、デジタルトランスフォーメーションなど、課題解決のための歩みを進めるチャンスであるとも考えます。
例えば少子高齢化による労働者不足を補うためには、AIによる自動化を避けては通れません。実は今多くの企業から注目をいただいている弊社のAIサーマルカメラも、そうした考えのもと進めていた、IoT製品への取り組みの中から誕生したものです。
ものづくりは地産地消へ。生産体制の見直しが急務
今回マスクの国内生産が実現できた背景にも、ロボットによる自動化や、カメラによるセンシング技術の導入により、少ない労働力で生産できる体制を整えられたことがあります。コロナショックによって自国保護主義やブロック経済圏化が進むということもありますが、技術の進歩もふまえて、生産体制の在り方を考え直す必要があります。今後のものづくりはこれまでのような中国の一極集中ではなく、地産地消という流れも生まれてくるでしょう。すでに我々のサーキュレーターは、アメリカ、ヨーロッパなどの先進国で生産・販売しています。一方で中国は依然として巨大なマーケットですから、今後は中国で作ったものは中国で売るというように、弊社自身も中国での経営の立ち位置を変えていく必要があると考えています。
6月末より宮城県角田工場でマスクを生産
中国での感染拡大を受け、ニーズの高まりにいち早く対応するため、国内にマスクの生産設備を導入。ロボットやセンシング技術も活用し、国内でも採算のとれる生産体制を整えた。
Withコロナに対応する注目商品も多数
■ サーキュレーターアイ
スパイラル気流で空気を循環・撹拌するサーキュレーター。コロナウイルス対策として室内換気のニーズの高まりを受け、ヒット商品に。
■ AIサーマルカメラ
AIを用いて労働力不足を補うIoT製品の開発に取り組む中、監視カメラのサーマル(体温検知)機能がWithコロナ時代のニーズに合致と判断。その機能を切り出す形で製品化した。
取材・文/太田百合子
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