狂い始める結婚生活の歯車
結婚生活において、歯車が狂い始めているアラフォー男性たちが多いように思う。結婚生活をうまくやっていくために、妻をキレさせない秘訣とはあるのだろうか?アラフォー既婚男性数人と話していると、ひとりがうんざりしたように言った。
「女性ってどうして急にキレるんですかね」
他の男性たちも、深く頷いている。
「結婚して4年経つんですが、このところ妻がいきなり不機嫌になることがあって……。どうしたのと聞いても『別に』と言うだけ。ただ、お皿をガチャンと音を立てて置いたり、ドアをバタンと閉めたり、ものに当たっているんですよね。何か問題があるなら言ってくれればいいのに」
それを受けて、もうひとりの既婚男性はこう言った。
「うちのは、急にお茶碗を投げたことがありますよ」
男性たち、顔面蒼白である。
気持ちの「すれ違い」が始まっている
「食事をしながら、突然お茶碗を投げたんですよ、僕に向かって。当たらないようにはしたみたいだけど、驚きましたよね。その日はなんとなく機嫌が悪いなとは思っていた。でも理由も言わずにものを投げるってひどいでしょ。だから怒ったんです。そうしたら、『もうイヤ、何もかもイヤ』と」
なだめて少しずつ理由を聞くと、4歳の子どもが幼稚園でうまく塗り絵がぬれなかった。周りの子と比べて成長が遅いのではないかと思い悩んでいた。
「僕が帰るなり、確かに妻はそんなようなことを言っていました。だけど、そんなのどうってことじゃないと思ったから、ふうんって流したらしいんですよね。それが妻の怒りに火をつけた」
その晩、妻は泣きながら、「あなたは子どもに関心がなさすぎる」と文句を言い続けた。
「妻の言う“関心”は、子どもの英才教育のこと。僕はまだ4歳なんだから、元気ならそれでいいと思っている。子どもに関してはそういうすれ違いがずっとあるんですが、だからといってお茶碗を投げなくても」
子どもの教育だけではなく、おそらくこの妻は日頃からのストレスがたまっているのだろう。家庭生活を営んでいく上で、夫と協力しあえているという実感がないのかもしれない。
「自分だけが損をしている」「自分だけ割に合わないことをしている」そういう思いがたまると女性はキレることが多い。夫からの感謝や愛情の言葉が不足していることも大きな原因だろう。
話しやすい環境を作る
男性にとっては「突然キレる」から「わけが分からない」のだが、女性は長い間、我慢しているものなのだ。
女性たちの心の中には、「自分が我慢すれば何もかもうまくいく」という刷り込みがある。親たちのそういう結婚生活を見てきているからだ。だからぎりぎりまで我慢して、あるときブチ切れる。夫にはそれまでの我慢が伝わっていないから、突然のように見えるだけだ。
「無理してないか?」
「何か心配事があるんじゃない?」
「いつもありがとう」
そんな夫の一言で、どれだけ妻が救われるだろう。
だが、こういうことは強制して言ってもらったところで、まったくうれしくはない。だから妻たちは要求せず、ひとり黙って我慢するのだ。
「いや、うちの妻は我慢なんてしてない。いつも文句ばかり言ってる」
そう言った男性もいる。だが、いつも文句ばかり言ってるということは、「突然キレた」にはならないわけだ。
「確かにそう。でも、毎日のように文句を言われる身にもなってくださいよ」
夫に言いたいことが言える状況は幸せなのだが、言われている夫は気の毒ではある。
不機嫌な妻に怯える男たち
「とにかく家に帰ったとき、すでに妻が不機嫌というのがいちばん怖い。困る。どうしたら良いか分からない」
夫たちはそんな声を上げている。最初のうちは、妻をなだめたりすかしたりする。だが、妻の不機嫌が続くと、夫たちは恐怖のあまり妻との接触を避けるようになるかもしれない。帰宅時間を遅くしたり、わざわざ休日出勤をしたり。そして夫婦の心は離れていく。
大人であることの重要な条件のひとつは、いつも機嫌よくいるために、言いたいことがあるなら適切な言葉を使って、きちんと相手に伝えることだと個人的には思っている。感情的にならず、今の自分の気持ちをちゃんと伝え、相手がどう思っているかにも耳を傾けること。ただ、多忙な日常においては、夫婦でそういった話ができていないことが多いだろう。
夫からでも妻からでも良い。きちんと向き合って話す時間を作り出したほうがいい。
さきほどの子どもの塗り絵の話の例で言えば、妻は切り出すタイミングを間違えている。帰宅するなり言われても、夫はすんなり受け止められない。食事をして、のんびり風呂にでも入ったあとで話をし、「どう思う?」と意見を求めれば、夫も違う反応を見せたのではないだろうか。
夫側も、妻の不機嫌を怖がってばかりいないで、もう一歩、妻の心の中に踏み込んでみたら、どこかうまく噛み合わなかった歯車が変わってくるかもしれない。
(文:亀山 早苗)